婚約解消したのに嫌な予感がします。……もう振り回されませんよね?

Mayoi

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クライヴのやらかしたことは親であるハインズ伯爵の知るところとなった。
旅に出たはずのクライヴが連絡もなしに戻ってきたことでこのような事態を招いてしまったが、このまま放置するわけにもいかず、使用人に命じてクライヴを探し出し連行させた。

「久しぶりだな、クライヴ」
「お久しぶりです、父上」

自信に満ち、自分が悪いことをしたという自覚が感じられないクライヴを見て、ハインズ伯爵はクライヴを見限ることに決めた。

「いろいろと話そうかと考えていたが、それはやめることにした」
「では俺の旅の苦労話や真実の愛に気付いたことについて語るとしましょう」

得意気に話し出そうとしたクライヴをハインズ伯爵は手で制し、無慈悲に告げる。

「それは不要だ。クライヴ、お前は許されないことをしたのだ。これ以上問題を起こすようではハインズ伯爵家が危うくなる。そこでだ、お前は辺境の農村にでも送ることにしよう」
「どうしてですか! 俺はコンスタンスと婚約し結婚しなければならないのですよ!?」

ハインズ伯爵は深いため息をつき、どうしてこのような不出来な息子に育ってしまったのかと思ったものの、ここで親心を出して甘い処分にすれば、それこそハインズ伯爵兼の終わりだと考え、厳しい処分を下すことは間違いではないと強く思った。

「もういい。お前には何を言っても無駄だろう。それに黙って金や宝石を持ちだして旅に出たことは悪いと思っていないのだろう?」
「自分の本当の気持ちを知るためには必要なことでした。悪いはずがありません」
「もういい。農村送りは決定だ。どこにするか決まるまでは家から出るな。もし指示に従わないようなら……」

親として我が子を処刑するとは口に出したくもなく、ハインズ伯爵は言葉を濁した。
クライヴも普通ではない厳しい処分を考えているのであろうと察し、不本意ながら指示に従うことを選んだ。

(本当の気持ちに気付いた今、今度は乗り越えるべき障害か。コンスタンスと結ばれるのは容易ではないな。だがそれを乗り越えてこその愛というものだ)

クライヴは反省していなかった。

その後、辺境の農村送りになったクライヴは逃げ出すことも叶わず、ひたすら農業に勤しむ日々を送ることとなった。





「ハインズ伯爵から謝罪とクライヴの処分について連絡がきたよ」
「どうなったの?」
「辺境の農村送りだって。監視付きだし簡単に逃げ出せるような場所でもないし、これでもう大丈夫だろう」
「良かったわ。いろいろとごめんなさい、アーネスト」
「いいんだ。コンスタンスを脅かす存在がいなくなって安心できるよ」

いつだってアーネストはコンスタンスに心配させないよう気を使い、負担を感じさせないようにしている。
だから今回も転んでもただでは起きないことをアピールし、コンスタンスが負担に感じないようにする。

「ハインズ伯爵家も派閥内で立場を失うだろうね。その分はカーライル侯爵家やセントクレア伯爵家の立場が強まることになるだろう」

負担に感じさせないように気を使っていることはコンスタンスだって気付いている。
あえて指摘したりはせず、こんなにも気を使ってくれて優しく頼りがいのある男性と結婚できたことに感謝した。

「難しい話は終わりにしましょう。また楽しく幸せな日々を過ごしましょう。それが私にとって何よりも大切なことだから」
「そうだね。特別なことをしなくてもコンスタンスがいてくれるだけで僕は幸せだけどね」
「あら、私だってアーネストがこうやっていてくれることが幸せなのよ?」

そして二人は笑いあった。
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