婚約解消したのに嫌な予感がします。……もう振り回されませんよね?

Mayoi

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パーティーに参加してからというもの、コンスタンスの心はどこか別のところにあるようで、両親を始めとして使用人たちも想い人ができたのではないかと思っていた。

こういうときは強気の母親の出番だ。

「ねえコンスタンス、誰か良い人ができたの?」
「お母様……。実は先日参加したパーティーで、ある殿方とお会いしてしまったのです」
「そうだったの。それは良かったわね」
「はい。どうもそれ以来、私はその方のことばかり考えてしまうようになってしまったようです」
「あらあら、いいじゃない。それで相手はコンスタンスのことをどう考えているのかわかる?」
「自信はありませんけど……悪い相手だとは思っていないはずです」
「そうだったのね。相手は婚約者がいないのよね?」
「そのはずです。そうでなければパーティーに参加しているはずがありませんし」

一部の例外を除けば婚約者探しを兼ねたパーティーであるため、原則として参加者は婚約者がいない。
例外も主催者の子女であり、アーネストは当てはまらない。

「それなら問題ないわよね。それでどうしたいの?」
「どう……」

コンスタンスの中ではアーネストが婚約者になるなら嬉しいと思い、同時に自分がアーネストの相手として相応しいかも気になってしまった。
家格ならセントクレア伯爵家であればカーライル侯爵家との婚姻も可能であり、同じ派閥内の結束を強める意味でも反対はされないだろう。

「悩んでしまうような相手なの? 相手はどの家なの?」
「カーライル侯爵家です」
「良い家柄だと思うわ。当家なら縁を結ぶにしても問題ないはずよ。そうなると後は二人の気持ちの問題かしら?」
「気持ちの問題……」

コンスタンスは自分の胸に問いかけ、答えは簡単に見いだせた。

「私、アーネスト様と婚約したいです」
「わかったわ。そうなるよう取り計らいましょう。大丈夫、きっと上手くいくわよ」

母親に言われてコンスタンスも大丈夫という気持ちになり、悩んでいても幸せになれないと思い、もっと積極的になろうと決意した。





その変化が幸運を招きこんだのか、数日後、カーライル侯爵家からアーネストがコンスタンスと婚約したいという知らせが来た。

「喜べ、コンスタンス。アーネスト殿がコンスタンスと婚約したいとカーライル侯爵家から連絡があったぞ」
「本当ですか!?」
「ああ、本当だとも」

信じられない知らせにコンスタンスは驚き、アーネストも自分のことを婚約したいと思えるほどに想っていてくれたことを喜んだ。

「良かったわね、コンスタンス。それで返事はどうするの?」
「もちろんお受けします!」

母親の言葉にコンスタンスは元気よく返事し、それだけ嬉しいのだと両親は思い、コンスタンスは今度こそ幸せになってほしいと願った。

「ならば返事をしておこう。これで婚約も決まったな。両家にとって良い縁となるだろう」

こうしてコンスタンスとアーネストは婚約した。
だがこれはまだ幸せの始まりに過ぎない。





「アーネスト様と婚約できて、私、幸せです」
「あの日、パーティーから帰ってからもコンスタンスのことが忘れられなかったんだ。その気持ちは数日経っても変わらず、もうコンスタンスしかいないと思ったんだ」
「嬉しいです」

そこまで強い気持ちを抱かれていたことが嬉しく、それだけ望んでの婚約の申し出だったことも嬉しく、そのようなアーネストだから、今度こそ絶対に幸せになれるとコンスタンスは信じた。

「これからお互いをもっとよく知っていこう。悪い部分があっても話し合って解決していこう。僕たちならきっと大丈夫」
「はい!」

前向きなアーネストが頼もしく、コンスタンスは幸せになれると確信した。





それからも二人の関係は良好で、些細な問題はあっても大事には至らず、順調に愛を育み、多くの人に祝福され結婚に至った。
結婚しても二人の愛は変わらず、いや、むしろ一層深まっていた。

そのような日々を過ごしていた二人に、招かれざる客がやってきた。
クライヴ・ハインズが何の連絡もなしに、突然訪問してきたのだ。
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