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「その前にだ、まずはコンスタンスの意思を確認せねばな」
セントクレア伯爵は使用人にコンスタンスを呼びに行かせ、事前の打ち合わせ通りだったため、すぐにコンスタンスはやってきた。
コンスタンスはハインズ伯爵への挨拶を済ませ、さっそく本題に入る。
「さて、クライヴ殿の後始末をコンスタンスに一任するということだな、コンスタンスはどうしたい?」
「私としては慰謝料を請求する意思はありません。ですが式の準備にかかった費用の返還を求めます。それと婚約はクライヴ様の有責により解消することになったと発表します。あとクライヴ様が何を言おうとやり直すことはありません。そうならないよう、ハインズ伯爵にはお頼みいたします」
どれだけ慰謝料を吹っ掛けられるのか戦々恐々としていたハインズ伯爵は、慰謝料を請求しないというコンスタンスの発言に胸を撫で下ろし、他の要求は妥当であるため受け入れて問題ないと判断した。
「よかろう、その条件を呑もう」
コンスタンスにとっての最大の懸念事項はクライヴによる復縁だった。
復縁に応じる意思はないとはいえ、復縁しろと執拗に迫られれば迷惑であり、新たな婚約者探しに悪影響を及ぼすことは火を見るよりも明らかであり、そのためにハインズ伯爵に防いでもらうという意図だった。
「ふむ、これでこの件は終わりだな」
「クライヴが申し訳ないことをした。コンスタンス嬢の寛大な処遇、感謝する」
こうして一件落着となり、ハインズ伯爵は速やかに帰路へとついた。
セントクレア伯爵はコンスタンスへ訪ねる。
「これでただの令嬢とは違うと示せるな」
「はい。僅かなお金を得るよりも寛大な処置を示したほうが後の縁談に有利になるでしょうからね。クライヴ様の有責だと公表できるので婚約解消を問題視されたりはしないでしょう」
事前の打ち合わせ通りの要求であり、これから先の縁談に悪影響が及ばないようにと考えての判断だった。
だがそれよりも大きな懸念は他にある。
「しかしクライヴ殿が本当に何の問題も起こさないのか不安だな」
「はい……。いくらハインズ伯爵が対処するとはいえ完璧な対処は難しいでしょう。クライヴ様も何をするかわかりませんし……」
実際にどうなるかはなってみなければわからない。
コンスタンスもセントクレア伯爵も一抹の不安を覚えたが、現実のものとなるかわからない不安で今すべきことを見誤るわけにはいかない。
「それよりも新たな相手探しだな。希望はあるか?」
「具体的な人はいませんが……自分探しの旅に出るような人は遠慮したいですね」
「はははは、そんな人、滅多におらんよ。クライヴ殿が特殊過ぎたのだ」
「そうだと思います」
このような状況だからこそコンスタンスはあえて冗談を言い、二人は笑い合い、意図を見抜いたセントクレア伯爵はコンスタンスはもう大丈夫だと思った。
セントクレア伯爵は使用人にコンスタンスを呼びに行かせ、事前の打ち合わせ通りだったため、すぐにコンスタンスはやってきた。
コンスタンスはハインズ伯爵への挨拶を済ませ、さっそく本題に入る。
「さて、クライヴ殿の後始末をコンスタンスに一任するということだな、コンスタンスはどうしたい?」
「私としては慰謝料を請求する意思はありません。ですが式の準備にかかった費用の返還を求めます。それと婚約はクライヴ様の有責により解消することになったと発表します。あとクライヴ様が何を言おうとやり直すことはありません。そうならないよう、ハインズ伯爵にはお頼みいたします」
どれだけ慰謝料を吹っ掛けられるのか戦々恐々としていたハインズ伯爵は、慰謝料を請求しないというコンスタンスの発言に胸を撫で下ろし、他の要求は妥当であるため受け入れて問題ないと判断した。
「よかろう、その条件を呑もう」
コンスタンスにとっての最大の懸念事項はクライヴによる復縁だった。
復縁に応じる意思はないとはいえ、復縁しろと執拗に迫られれば迷惑であり、新たな婚約者探しに悪影響を及ぼすことは火を見るよりも明らかであり、そのためにハインズ伯爵に防いでもらうという意図だった。
「ふむ、これでこの件は終わりだな」
「クライヴが申し訳ないことをした。コンスタンス嬢の寛大な処遇、感謝する」
こうして一件落着となり、ハインズ伯爵は速やかに帰路へとついた。
セントクレア伯爵はコンスタンスへ訪ねる。
「これでただの令嬢とは違うと示せるな」
「はい。僅かなお金を得るよりも寛大な処置を示したほうが後の縁談に有利になるでしょうからね。クライヴ様の有責だと公表できるので婚約解消を問題視されたりはしないでしょう」
事前の打ち合わせ通りの要求であり、これから先の縁談に悪影響が及ばないようにと考えての判断だった。
だがそれよりも大きな懸念は他にある。
「しかしクライヴ殿が本当に何の問題も起こさないのか不安だな」
「はい……。いくらハインズ伯爵が対処するとはいえ完璧な対処は難しいでしょう。クライヴ様も何をするかわかりませんし……」
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コンスタンスもセントクレア伯爵も一抹の不安を覚えたが、現実のものとなるかわからない不安で今すべきことを見誤るわけにはいかない。
「それよりも新たな相手探しだな。希望はあるか?」
「具体的な人はいませんが……自分探しの旅に出るような人は遠慮したいですね」
「はははは、そんな人、滅多におらんよ。クライヴ殿が特殊過ぎたのだ」
「そうだと思います」
このような状況だからこそコンスタンスはあえて冗談を言い、二人は笑い合い、意図を見抜いたセントクレア伯爵はコンスタンスはもう大丈夫だと思った。
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