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第3章 ゆるやかな流れの中で
榊の気持ち
しおりを挟む瞬がお仕置きを受けたあの日、あれから榊は堂島にそろそろ瞬を前で逝かせないのは限界だと申し出てはみたのだが、堂島の気持ちは固く、瞬には射精は絶対させてはならないの一点張りで、仕方がなく今までよりキツくそこを戒める事で射精をさせないようする事になった。
その代わりきちんとした制服があてがわれ昼間は規則正しい生活を送っている。
あの地下で過ごさせた時間に躾られた排泄の管理のお陰で、瞬はそれを何ら疑う事なく受け入れていた。
一見可愛らしい白いブラウスに半ズボン、そして細い襟元には赤いシルクサテンのリボンが結ばれていた。
その衣服から伸びる手足は筋肉のかけらもなく、ただ適度に柔らかな肉が乗っている、少年らしいしなやかな肢体をしていた。
それは榊の施術の賜物でもあった。
そんな愛らしい性的なものをいっさい感じさせない瞬の股間には、あの可愛らしく慎ましやかな瞬の陰経をキツく戒める貞操帯がつけられていると知っているのは、直接施術を掌る榊以外は主人と有栖川くらいのものだった。
だが、直にそれを目の当たりにしているのは榊だけだった。
主人の堂島も施設長の有栖川でさえ直にそれを目にした事は無い。
全ては瞬の躾を行う榊に委ねられていたのだった。
ただ彼らは瞬の躾の進捗状態をモニターを通じては知っているはずだった。
だから止めたければいつでもストップは掛けられる。
だが沈黙を守っているという事はそれを承諾しているという事だった。
だいぶ形は改良されていたが、陰経は常に下に引き下げられ上を向くことは禁じられたままに、排泄の時は榊の助けを借りてそれ用の管が挿し入れられ用を足し、それを外す事は叶わなかった。
唯一外す事が許される時間は腸内洗浄をされた後に入る風呂の時くらいだった。
昔から風呂の時間だけが全てのしがらみから解放されるのは変わってはいない。
だから、風呂の時間は瞬が一番リラックスして本音を晒せる時間でもあった。
そのリラックスした時間の後は制服に着替えて何事も無かったかのように榊が瞬の勉強を見てやる。
やがて陽が落ちると夕飯を食べ、再び風呂に入れてやり、肌が柔らかくなったところで寝る前に全身のマッサージを施し、その気持ちの良さに瞬は眠りに落ち、瞬の一日が終わる。
そうは言っても瞬が寝ている間こそ、その股間の戒めは一番きつくなっているのだった。
寝ている間こそ、そこに血液が流れ込む。
それを抑える為にも、瞬が無意識にそこを弄らないように外部からの刺激すら届かない形の物が瞬のその上に硬く被せられていた。
小さなカップの中に押し込まれた瞬の性器は、榊の目から見ても明らかに他の少年の物と比べても成長が遅かった。
まるでここに連れてこられた子供のままそこだけが時を止めてしまったかのようだった。
だが主人のオーダーは瞬には射精をさせない事だと厳しく言われていたので、それを覆す事は出来ない。
そして成長を遅らせる薬を投与されていた瞬は、相変わらず股間も手足もスベスベで少女のようだった。
射精はそうして食い止められて居ても、勃起すら極限まで抑えられている瞬がどんなに重く苦しいかは、そこでイク事を知っている榊には計り知れないものがあった。
ただ本人はその辛さにさえ気付いていないようで、射精をはなから知らない瞬にはその下腹に籠る熱の意味がわからなかったようだった。
榊は瞬の時折辛そうなそこの誇張感を和らげる為にも、瞬の陰経に管を入れせめて膀胱に溜まった尿を抜き少しでもそこが楽なように努めてやった。
榊にもそれくらいしか、瞬にしてやれる事はない。
今の榊にはどんなに足掻いたところで、瞬に掛けられている躾け料を肩代わりするほどの財力はなかった。
自分の養父が亡くなった時、相続した財産は必要最低限自分が生きていける分しか要求しなかった。
今になってそれが悔やまれるが、既に養子縁組まで終わっている堂島と瞬の間に赤の他人自分が口を挟めるはずもなかった。
それにこの施設を運営しているコミュニティに所属している者は、ある伝統のある学校のOB達で、彼らは世間的に名誉も地位もある者達ばかりだった。
この施設を利用出来る人間はコミュニティに認められた人間に限られていた。
コミュニティの結びつきは固く利用者はここでの秘密を口外してはならない事は当たり前だが、施設側も利用者の秘密を守る義務があった。
秘密を守れなかった者やコミュニティにたてついた人間は、コミュニティによって制裁を受ける事になるのだろう。
お互いに痛い腹は探り合わない事がルールであり、そこには同窓という縦横の繋がりで結ばれた深い絆があるようだった。
榊はコミュニティに拾われて育てもらった恩義があった。
コミュニティに所属する養父に拾ってもらえなければ、多分どこかでのたれ死んでいたと思うと、コミュニティには逆らえなかった。
例えその為にここで躾けを受けたとしても、養父にはきちんと就学の援助をしてもらえたし、可愛いがってももらえた。
ここでそれを教えてもらっていたから養父の夜の相手もスムーズに受け入れられたのだと思う。
養父が先に亡くならなければ、榊だってもっと幸せに養父との生活を楽しんでいたかもしれなかった。
だからここで躾けを受けた子供が必ずしも不幸だとは思わない。
主人の要望通りに躾けられた子供を主人が邪険にするはずがないのだった。
主人になる者だってコミュニティとここで躾けられた子供をいかなる事があろうと最後まで面倒を見る事を誓わせられているのだった。
だから瞬がこの先堂島に愛されない訳がないのだった。
嫌、むしろ深く執着した愛で瞬は堂島から既に愛されていた。
愛し崇拝しているからこそ、堂島は瞬に自ら手が出せないのだった。
自分だけの天使を手に入れて、その扱い方に困ってしまったのだろう。
ここに任せていればただの崇拝の対象として眺めているだけで癒されるとでも言いたいのだろうか?と榊は堂島を怒鳴りつけたい時もある。
だが自分もそうは言ってもいざこれから瞬を迎えに行くと堂島から言われたら…
きっと瞬を手放したくない気持ちでいっぱいになるのだろう。
その日の事を思うと榊でさえ胸の奥がギュッと締め付けられ苦しくもなるのだった。
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