優しい時間

ときのはるか

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第2章 制服と征服

特別な子

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なんの飾り気もない無機質な部屋にシュッという空気を引き裂く音の後、パシッと何かが弾ける音が鳴り響いていた。

それは榊のパドルが瞬のお尻に当たって弾ける軽やかな音だった。

榊の手元から繰り出されるパドルは瞬の一掴み出来そうな可愛いらしいお尻に向かって容赦無く打ち付けられていた。

初めてのお仕置きだった。

お尻を叩かれると言っても服の上から平手で叩かれた事ならあっても、剥き出しの肌を鞭で叩かれるのは勿論これが初めてだった。

鞭を打ち付けられる痛みは一回一回は大した事が無いようでも、蓄積された痛みはドンドン大きくなって行くばかりで、回数が増えれば増える程、瞬の瞳は見開かれ、勝手に涙が溢れ出していた。

涙だけではない。

穴という穴から体液が流れ出してしまう程、瞬には衝撃が強かった。

涙と鼻水と涎まで垂らし、パドルを打ちすえられる度にその細いスラリとした肢体がしなる。
背中や額からは汗が滴っていた。


パンッ!

「あぁっ!!!さんじゅう…はぁはぁ…あり…がとうございます」

二十回くらいまでは順調に数もありがとうも言えていた瞬だったが、後半に入ってだいぶ意識が朦朧として来たのか、カウントを唱える時自分が何回言ったのかが曖昧になって来たようだった。

間違えたらはじめからだと言われていた。
間違える訳にはいかないと必死に自分の記憶を辿り、噛みしめるように数を唱える。

榊はわざとゆっくりと間合いを取って瞬にそれを繰り出していた。

一回一回の鞭の味が瞬の身体に回るようにじっくりとゆっくりパドルが打ちこまれる。

白くすべすべしていた瞬のお尻は見事に左右とも赤く腫れ上がっていた。
切れたり肉が裂けたりはしていないが、きっとそこは今晩熱を持ち瞬を苦しめるだろうと思う。

だが容赦はしない。

これは大事な主人への忠誠を示す罰だった。

それは瞬も子供心にもよくわかっているらしく、お父様に愛して欲しい捨てられたくないという思いが従順な瞬を支配していた。

どうしても見えない主人より身近な躾を行うチューターに縋ってしまいたくなるのは子供なら当然の事だった。

だがそれはここでは主人あっての自分である事が第一である事を忘れてはいけなかった。

だから瞬にもそれを身をもって覚えさせる。

ここではその為だったら体罰も許される。
それを了承している主人達に預けられたのだから仕方がないのだという事もここにいる子供ははじめに言われていた。

痛い思いをしたくなければ、主人の言いつけ通りの子供になる事だった。

ここにいる子供達は自分達が他に行くあてがない事を知っている。

外の世界では親も親戚もなく、誰も彼らの世話をしてくれる人はいない。

それぞれの事情を抱えて主人に奉仕する為の教育を受ける為にここに入れられてる事を子供は子供なりに理解していた。

理解がまだ出来ない子供でもチューターがそれを優しく受け入れられるように子供達を指導して行く。

けして無理矢理教え込む訳ではなく、主人あっての自分なのだと徐々にその身体と心に覚えさせて行く。

だが酷いようだが、考えようによっては、ここに入れられた子供達はまだ幸せだと榊は思う。

外の世界では子供が一人で生きて行くのは難しかった。

親がいようと中には子供の世話をしない者だってたくさん居る。
やがて放置され餓死していくものだって少なくない。

あるいはそんな親から逃れるように飛び出しても何の後ろ盾もない子供はまともな職につける訳もなく、やがては野たれ死ぬか、悪い奴に捕まり力で捩伏せられ奴隷のように蔑まれ、家畜同然な生活が待っているか、良くて児童施設に送られるそれだけだった。

だが、瞬はその中には当てはまらない、もっと特別な子供なのだった。



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