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第2章 制服と征服
お仕置き(3)
しおりを挟む今、榊は久しぶりに興奮していた。
興奮といってもはしたなく股間を勃てたりはしないが、確実に体温は上昇しているだろう。
幼い瞬のサイズに作らせた黒革の貞操帯は想像以上の出来映えで、しっくりと色白の瞬に映えていた。
今日は黒を選択したが、少し違うデザインで赤い色の貞操帯も用意してある。
瞬にはどちらの色でも良く似合うと思ったが、今日は取り敢えずそこをきつく締め上げるタイプのものを使う事にした。
コックニッパーで小さな陰経を締め上げ、陰嚢もその戒められた小さなコックも、みな一纏めにして黒い革の袋の中にぎゅうぎゅうに押し込まれてしまった。
そうなると瞬の性器は榊の掌にすっぽりと入ってしまうどころか、指先で摘めるくらい可愛らしいものになってしまう。
本人にもその姿をしっかりと目に焼き付かせておこうと、瞬に鏡の前に立つように言った。
榊の言葉は親愛なる父の言葉だと言い聞かせられていた瞬は、陰経を締め上げられ、内臓が腹の中で吊り上げられるような初めての感覚の意味も分からず、ただ榊に言われるままにフラフラと歩き、そして鏡の前まで行く。
勿論それは本人だけでなく、鏡の向こうでモニターを凝視しているであろう主人にも良く見てもらう為であった。
虚ろな瞬の視点が自分の裸身に定まると、カッと大きく見開かれた。
自分のその姿をあらためて目の当たりにした瞬は、一瞬にして身体中が朱に染まってしまった。
風呂上がりでただでさえ透き通るような白い肌がピンク色に色付き、胸はペタンとしていても二つの小さな乳輪の中心には小粒な乳首が綺麗なサクランボ色に染まっていた。
そして頭部には黒目が大きなぱっちりとした瞳と、鼻筋の通った小鼻の締まった鼻と、その下には何も塗ってもいないのに赤い紅を塗ったかのように艶やかな唇が付いていた。
ここに連れて来られてからも何度となくその鏡に映る自分の姿を見てはいたが、こんな風に間近で見るのは初めてだった。
見ろと言われても診察台の上からではよく分からなかった。
それに施術中ではそんなまじまじと自分を観察している余裕なんてない。
あそこに縛られていて見えるのは自分の股間ばかりで、全身を映すことはなかったのである。
そして手足に視線をはせると、さっき自分の足であって別の生き物のように感じた力が入らなかった足は、明らかに細くなったように見えた。
まるでそこに居るのは着物を着ていない日本人形のようだと思う。
瞬が昔ひと時だけ預けられていた実父の実家の蔵に、そういった人形がいくつか仕舞われてあるのを思い出していた。
そして瞬はそこによく一人で閉じ込められていた事を思い出してしまったのだ。
さっきお仕置きをされた事はないかと榊に聞かれた時は忘れていた。
だがそれを忘れていたのは、昔の自分が、自分の心を必死に守ろうとして心の奥底にしまい込んでしまった悲しい記憶だったからだ。
それを今全てを克明に思い出してしまった。
思い出してしまうと勝手に恐怖心がわいて来る。
あの時も何か瞬が粗相をする度お仕置きだとそこに閉じ込められた。
そんな時、人形達が瞬の事をじっと見詰めているようで怖かった。
そして長く閉じ込められていると怖くなってお漏らしをしてしまう。
まだオムツをしていてそこが濡れるのが気持ち悪かったのを思い出す。
母親に捨てられた要らない子は黙ってそこでおとなしくしていろと言われた事も思い出してしまった。
あの時は誰も瞬のおしっこなんて気にも止めてくれなかった。
タレ流そうと気持ち悪くなるのは瞬の股間に当てられたオムツだけだった。
濡れるとどんどん重くなるし、不快な痒みに襲われる事もある。
それでも大人達は日が暮れるまで瞬を迎えには来てくれなかった。
あの時の不快感に比べたら、今の自分が置かれている状況は真逆のようだった。
新しいお父様は瞬のトイレの世話もこうして全部榊に命じて見てくれるのだった。
ここに来てから身体は筋肉が落ちてしまった以外はいたって問題はない。
食事も与えられ、例え裸であろうと寒いと感じる頃には優しく風呂にもいれてもらえる。
殆どがこの榊に身を任せていれば、痛い事も苦しい事も、結局は優しく褒めてもらえて、心の中は充実感でいっぱいだった。
お父様に深く愛されていると錯覚してしまいそうな程、瞬にはこれが幸せだったのだ。
でも実際まだそのお父様には一度も会ってはいないのだから、時々本当はただ自分が作りあげた夢の中にいて、夢から冷めたらお父様なんていないんじゃないかと不安になる。
またひとりぼっちで暗い蔵に閉じこめられてやしないかと不安になる。
瞬の瞳からは自分の意思とは関係なく涙が溢れて来た。
止めようと思っても止まらない。
それはまだ痛い事は何もされてもいないのにお仕置きが怖くて嫌だと言っているように思われるかもしれないとは思ったが、そうじゃないのに一人にされるのが怖くなってきて泣きじゃくってしまうのだった。
さすがの榊にも今の瞬の心の中は読めずにいた。
それが分からないから余計榊も心の中ではかなり狼狽えていた。
榊は瞬がこんな姿に戒められて躾を受ける事に不安を抱き、それが悲しくて泣き始めたのではないかと心配になってしまう。
「どうしたのです?お仕置きが怖くなってしまったのですか?」
泣き叫ぶ瞬を押さえつけてまでお仕置きするのは榊の趣味では無かった。
もしここで嫌だと瞬がパニックになったらそれは自分のミスだとも思う。
ここまで順調に躾けて来て信頼を失うのはもったいない事だった。
一度信頼を失うとそれを取り戻すのは並大抵の事ではない。
ただ恐怖心だけで子供を支配するのは簡単だが、それは主人に愛される子供として躾て欲しいという主人のオーダーからは反してしまう。
だからその時は堂島に詫びて、後日瞬の心が落ち着いたら、また機会を見て瞬を追い込む事にしてもらい、今日はこの貞操帯を着けるところまでで許してやるしかないかと、半ば諦めはじめてもいた。
その時瞬が小さく呟いたのだった。
「お父様は僕をひとりぼっちにはしないかな?
僕が悪い子だから要らないって言わないかな?」
「瞬を一人になんてしないですよ。
この世で瞬の事を一番愛してくださっているのがお父様です。
お父様がいなかったら誰が瞬のおしっこのお世話をしてくれるんです?
お父様は瞬の事は全部ご自分でしてあげたいと思ってくれているからこそ、私にこうして瞬を任せてくださっているのですから」
何が正解かは分からなかったが、榊の今の言葉で瞬の気持ちは落ち着いたようだった。
「僕は…お父様に本当に愛してもらえているんですか?」
「今の言葉は新たにお仕置きをしなければいけないかもしれませんね」
「お仕置き?」
瞬はデジャヴを感じて今自分が何の為にこんな格好をしているのかすら忘れていたようだった。
「そうです。
これから瞬はお父様に罪を許してもらう為にお仕置きを受けるはずだったでしょ?
でも、無理にとは言いません。
瞬が自ら進んで受けない罰なら罰の意味がありません。
私も無理矢理痛い事をするのは趣味じゃありません。
だから瞬がご自身で選択するのですよ」
瞬はじっと鏡に映る自分を見詰めていた。
「お父様はこんな僕の事本当に愛してくれているの?」
「それを疑う事は罪な事です。
誰が愛していない子供にこんな躾を受けさせるというのですか?
既にいっぱい愛されていますよ。
だからお父様の事だけ考えていれば瞬はそれでいいんです。
瞬…お父様への罪の償いはどうしますか?
お父様は泣いている瞬に酷い事は出来ないと言うと思います。
でも瞬が、それでも自らお仕置きを受けて自分の冒した過ちを償いたいと申し出てくれたら、もっとお悦びになり今以上に瞬の事を愛してくれると思いますよ」
榊の言葉に瞬はキッと目を見開くとはっきりと言った。
「お仕置きをして…ください。
罪を償ってお父様にもっと愛して欲しいです」
榊は思わず瞬を抱きしめたい衝動に駆られた。
だが思っている事とは180度違う事をするしか無かった。
それが躾士としての定めだからである。
「では、まだ続きがあるので、瞬はじっと鏡を見ていてください」
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