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第1章 執着と躾
施設の説明
しおりを挟む警官のような制服着た男に誘われ建物の中に入って行くと、学校でいうところの校長室のようなところに連れて行かれた。
柔らかく足元にしっとりと纏わりつく絨毯が敷かれ豪華な照明や応接セットが置かれた部屋に通されると、制服の男にしばらくソファーに座って待つように言われ、瞬はぽつんとこの豪華な部屋に取り残され、ソファーに腰掛けて待つ事になった。
そのソファーは身体が沈みそうになるほどふかふかしていて、また気を抜くと眠ってしまいそうになるくらい座り心地が良かった。
だが今はその眠気より他の心配事の方がまさっていて、それどころではない瞬だった。
早くだれか来てくれないかとソワソワしてきた頃、ようやく部屋の扉が開く。
そこには優しそうな面持ちの上等なスーツを着た男性が現れて、瞬の向かい側に座った。
「はじめまして私はここの施設を任されている有栖川と申します。
瞬くんはここでお勉強とこれからお父さまのご期待に添えるだけの身のこなしやマナーを身につけていただきます。
その全ての過程をクリアしていただいた後、お父さまでいらっしゃいます堂島様のもとにお戻しする事になっております。全ての過程が習得できない場合は期間は延長しても構わないとお許しは頂いておりますが、瞬くんの頑張り次第では飛び級もありますからね。
瞬くんの頑張り次第では予定より早く卒業する事も可能ですよ。
堂島様も一日も早く瞬くんと一緒に暮らせる日を楽しみにしていらっしゃるそうです。
ここの施設は普通の学校よりお勉強の進度早いですが、だいたい三年くらいで義務教育が終わるくらいまでお勉強は進めさせていただきます。
心配しなくても外の学校と同じように単位は取得できます。
堂島様がお望みならここで高校卒業までの単位を取得する事だって可能です。
この施設にはそういった外の学校には馴染めなかった大きなお兄さん達もいますよ。彼らはここを出たら海外の大学に通う事を視野に入れて頑張っている子達でもあります。
ですが瞬くんのお父さまは少しでも早く瞬くんと一緒に暮らしたいそうなので、ここで頑張っていただいた分、外の世界ではゆっくりと過ごせるよう私達も精一杯努めさせていただきますね。
お勉強以外にも覚えていただく事はたくさんありますので、瞬くんもお父様の為にも 頑張ってお勉強しましょうね。
ただし、お勉強は厳しいですし、課題が出来ない時は体罰も行います。
ここはそういう施設ですから親子さんも了承されているので逆らう事は出来ないと思ってください。
瞬くんはこれから一人で頑張れますよね。堂島様もそれを大変期待されておりましたよ」
新しい父親の苗字が堂島という名前だというのも今初めて聞いた事だった。
そういう事は自分の名前も堂島 瞬に変わったんだと改めて気付く。
今瞬は小学五年生にあたるが、あと三年で中学卒業までの単位を取得するというのはたいして難しい事には思わなかった。
外の学校でも周りの友達はそういった私立の中高一貫校などを目指す子供も多く、その学校ではだいたいそれくらいの進度で勉強が進められる。
瞬だって父の事業が傾かなければそこに行っていたかもしれなかったが、途中で雲行きが怪しくなり子供心に進学は公立の学校でいいと諦めた事でもあった。
それがどんな形であれ、同じ教育を受けられるなら、どこか言い知れぬ不安もあるが、同時に嬉しくワクワクする期待もわいてくる。
とにかくここを少しでも早く卒業できればその堂島という新しい父親に会えるのだ。
この施設長が言う事が本当なら、自分の頑張り次第で修業過程が早く終わる事も可能なのだった。
だったら精一杯頑張り予定より早く過程を終わらせたい。
新しい父を喜ばせたいと、まだ顔も知らない父の喜ぶ顔を想像したら、この先どんな辛い試練が待ち受けていようと耐えられるそんな気がしていた。
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