上 下
43 / 98
第一部 失業したおっさんがVRMMOで釣りをしていたら伯爵と呼ばれるようになった理由(わけ)

降臨

しおりを挟む
「しかし、まずいわね。」
パルコが言った。
「更に何かあるんですか?」
タイマーが聞いた。
「いやあ、カラット君の優勝は決まったんだけどね。
 ヘルファイヤには、別の効果もあるのよ・・・。」
「何です?」
「3分間、防具が着れないのよね。」
「はあ?何のために?」
「モンス相手だと、防御が高い敵がいるでしょ。
 それが3分間防御が下がるって効果なんだけどね。」
「なるほど。」
「対人戦だと、防具が実際に脱げちゃうみたいね。」
「何故にそんな効果が・・・。」
「対人戦に使う人なんて、いると思ってなかったんじゃない?」
「しかし、防具が脱げる位で、何か問題でも?」
タイマーがこう聞いたのは、大した問題ではないからだ。
VFGXは、他のRPGと同じく裸はない。
最初は、みな、スポーティーな下着?のような物を着ている。
確かに肌の露出は多いが、水着よりも露出面は小さい。
そもそも、ゲームスタート時は、皆その恰好だからだ。
「いやねえ。武者たんって露出ないでしょ?」
「なるほど・・・。」
タイマーは理解した。
普段から鎧武者で身を固めてるクレインは、きっと肌を露出するのが、
嫌なタイプだと納得できた。
今回の限定戦は、R2までの防具しか装備できない。
それなのにわざわざ、鎧武者の格好をして来てる位だから、よっぽど
なのだろう。
会場には、チッパイ派もいるので、SSのシャッターチャンスとなるだろう。
さすがに、初期の姿を撮ったからといって、問題になることはない。
だが、会場内で、ヘルファイヤの効果を知ってる者は、パルコくらいだ。
皆、登りゆく炎を見つめてるだけだった。
まさか、この後、ご褒美ショットがあるなど思いもしていなかった。

炎が収まり、カラットの勝利が告げられた。
そして、炎の後には、初期の姿のクレインの姿が。
「きゃあああっ。」
自分の姿に気づいて、悲鳴と共にうずくまるクレイン。

「「「なっ!!!!」」」

目の前のご褒美ショットに、慌てるチッパイ派。
急いで、SSを用意して、シャッターを切る。

しかし、彼らのSSに写ったのは、真っ黒い画面だった。
「「「う、運営かっ??」」」

ヘルファイヤの効果を失念してた、運営が動いたわけではなかった。
彼らが、写したのは黒いマントだった。

黒いマントを翻し、颯爽と舞台に登場した者は、
マントでクレインを包み込むと、お姫様抱っこして、観客席へと
戻っていった。

「えっ、あの、ちょっ・・・。」
パーソナルエリアの警告音が鳴り響いているクレインは、突然の事で、
何もする事が出来なかった。

タイマーは、自分が元居た場所、パルコとローラの間にクレインを
座らせた。

「は、伯爵きたあああああああああああ。」
「伯爵様が降臨された!」
「なんだあれっ!!」
「武者たんがドラキュラに攫われたぞっ!」
「くそっ、おれのSS、マントで黒一色じゃねえかっ!」

会場中が大騒ぎになった。

「そういや、あれドラキュラスーツだ。」
ポンっと手を打ってカラットが呟いた。

「チーフ、チーフっ!」
突然の出来事にボーっとしてた、チーフに運営が通信で呼んだ。
「あっ・・・。」
チーフは、我に返り、会場を鎮めようとしたが、無理だった。

会場大騒ぎの中、カラットの優勝が告げられた。

「3分経ったから、鎧着れるんじゃない?」
パルコが、隣にいるマントに包まったクレインに言った。
「ノーカンです、ノーカンです・・・・。」
クレインは、そうやって呟いていた。
「ゲーム内だから、ノーカウントで大丈夫よ。」
ローラが言った。
「そうですよね?ね?」
「何を言ってるんだ?」
タイマーが聞いた。
「タイマーには関係ない事よ。」
ローラが言った。
「そうです!釣り仙人には関係ありませんからっ!」
クレインが強く言った。
「お姫様抱っこかあ、女の子の憧れよね。」
パルコが突っ込んだ。
「うっ・・・。」
クレインは思い出した様に落ち込んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

性転換ウイルス

廣瀬純一
SF
感染すると性転換するウイルスの話

戦艦大和、時空往復激闘戦記!(おーぷん2ちゃんねるSS出展)

俊也
SF
1945年4月、敗色濃厚の日本海軍戦艦、大和は残りわずかな艦隊と共に二度と還れぬ最後の決戦に赴く。 だが、その途上、謎の天変地異に巻き込まれ、大和一隻のみが遥かな未来、令和の日本へと転送されてしまい…。 また、おーぷん2ちゃんねるにいわゆるSS形式で投稿したものですので読みづらい面もあるかもですが、お付き合いいただけますと幸いです。 姉妹作「新訳零戦戦記」「信長2030」 共々宜しくお願い致しますm(_ _)m

勇者再び!!

奈落
SF
TSFの短い話です

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

烈風鉄火(シュトゥルム・ウント・フォイエル=S&F)!

クサナギ・モトハル
SF
 ……それは列強各国を始めとする大小の勢力が太陽系の半ば以上にまで進出し、開発を続ける「太陽系開拓時代」、または「烈風鉄火の季節(シュトゥルム・ウント・フォイエル)」とも称される、夢と活気に満ちた時代。しかし、その裏側ではさまざまな理由から、一歩間違えれば太陽系・人類社会すべてが破滅しても不思議ではないような事態が、公然・非公然を問わずに次々と起こっては消えている、そんな世界🌀🔥  主な舞台は、近地球軌道宙域=Near Earth Orbit Space――通称「NEOS(ネオス)」と呼ばれる宇宙空間、そしてそこに点在する各国の人工天体都市のひとつにして新生日本皇国=「日本」の領域である「星海道(セイカイドウ)・輝夜(カグヤ)市⭐🏙                                                        ……主な登場人物は、この宇宙都市に住み、基本的な活動の場とする「新世界人(ネオ・コスモス)」と呼ばれる人々――特にその代表としているのが、「太陽系・人類社会最強(最恐?)カップル」とも呼ばれる天才武道家=〝武闘士(ウォーリア)〟の御月煌子郎(ミヅキ・コウシロウ。通称、シロくん🌕)と完全義体者の〝戦乙女(ヴァルキューレ)〟であるエリゼフィーネ・ミツムラ=ファルケンフェルト(通称、エリーゼさん🐦)。                                               このふたりを中心とした、激しくアブない冒険活劇、そして甘く切ない恋愛模様――そんな(たぶん)架空の近未来での〝日常〟を描いた物語群。それが『烈風鉄火(S&F)!』である💪💕                                                         ※:本作は私のYouTubeチャンネル「クサナギ・モトハル電脳文芸制作室」内にあったフリートーク欄(現在は消失)で第3夜=第3章の途中まで不定期連載していた同名作品をアルファポリスさんで再開したものです😅 ともあれ、自分が考えた物語世界と登場人物たちを好きになってくださった方々に楽しんでもらいたい、ということを目的として書き始めた作品ですし、皆様からのご愛顧をいただければ、作者としては望外の幸せです🙏🌸

女神の太平洋戦争記(無職艦隊の原型没案)

中七七三
SF
女神がやってきて、日本を太平洋戦争に勝たせろと無理ゲーをいう女神と、ひねくれた研究者崩れの塾講師の話。

処理中です...