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まずは、メノウの石の型を紙に描いていく。
そこから、周囲のデザインだ。
なるべく細かくならないように。
カリカリカリ・・・。
カリカリカリ・・・。
い、いかんっ・・・、細かくなりすぎた。
とりあえず、他の作業をしていたエンリに聞いてみる。
「こんなん出来るかな?」
「・・・。」
無言だった。
ま、まあ成せばなる。
この通りに、正確にやるわけじゃなし。
マシンじゃないんだから。
という事で、大まかな型をエンリに作って貰い、そこから彫金開始。
4種の彫金鏨を使い、コンコンやる訳だが。
使い方を一通りエンリに説明してもらい。
いざ、実彫っ!
コンコンコン・・・。
カンカンカン・・・。
キンキンキン・・・。
高い音だけあって、響く音は、半端ない。
コンコンコン・・・。
カンカンカン・・・。
キンキンキン・・・。
くっ、細かいっ!
誰だ、こんなデザインにした奴は・・・。
自呪しながらも、作業を続ける。
コンコンコン・・・。
カンカンカン・・・。
キンキンキン・・・。
う、うーん?こんなもんじゃないかな?
精度は、全く出ていない。
ハンドメイドの彫金なんて、こんなもんだろ。
他の作業を・・・。
してなかった。
エンリは、私の作業を見つめていた。
「こんなもんかな?」
エンリを見上げながら聞いてみた。
「・・・。」
また無言だ。
どないやっちゅうねん。
仕方ないので、リリアーヌに聞いてみた。
「どうかな?」
「素晴らしい出来栄えです。」
褒めてくれた。
身内贔屓としても、嬉しいものだ。
「やっぱり、私はこの道は向いてないようです。」
ようやく絞り出した声が、この世の終わりと言わんばかりの暗い声質だった。
「ど、どうしたの?」
「私は、レントン商会の娘として商人の道を歩みますので、お嬢様は、レントン商会の専属職人をお願いします。」
何言ってくれてんの、この人。
「侯爵令嬢たるお嬢様が、職人になる事は、100%ありえません。」
リリアーヌがズバッと言ってくれた。
「そ、そんな・・・。」
「エンリの将来は置いといて。」
私がそう言うと。
「置いとかないでください。」
「ええー、まずは、仕上げをしてくれないかしら?」
「鏡面仕上げと宝石の取り付けですか?」
「ええ、鏡面仕上げは、他所に頼むの?」
「いえ、私が。」
「へえ、鏡面仕上げって難しいでしょ?」
「鏡面仕上げだ(・)け(・)は、師匠に褒められています。」
「ドワーフに褒められるって凄いじゃない?」
そりゃあ、そうか完全に不器用な人間が弟子入りなんて出来る訳がない。
「でも磨くだけだと、アクセサリーは出来ません。」
「・・・。」
な、なんも言えねえ・・・。
「後は私の方でやっておきますので、出来ましたら連絡しますね。」
「よ、よろしくね。」
正直、鏡面仕上げもやってみたいとは思うが、私が作った物を丁寧にやると、何日かかるかわかったものじゃない。
ここはプロにお任せして、大人しく退散しよう。
本来なら、これで屋敷に戻るところだが、パーシが私に頼みたい事があるらしく、レントン商会へ呼び出して貰った。
レントン商会で応接室をお借りして、冒険者のパーシヴァルと話し合う。
「実はお嬢様に相談したい事が。」
「一緒に冒険者になってとかいうのは無理よ。」
「そんな事言う人居ませんよ。」
「いや、居たし。」
「えっ?まさか・・・。」
「どこぞのポンコツエルフが私に言ったのよ。」
「・・・。」
パーシは絶句した。
「それで相談って何?」
「実は売り上げが落ちていて困ってる菓子屋があるのですが・・・。」
「ちょっと待って、何で私?」
「えっ?」
いや、えっ?って驚くのは私の方だろっ!
私、コンサルじゃないんやで?
どこぞの高級家具屋の娘ちゃうしっ!
「お嬢様は、困っていたガラス職人の男性を救ったではないですか?」
「何それ?」
「お嬢様、恐らく飴屋の事かと。」
後ろに立っていたリリアーヌが教えてくれた。
ああ、あれか。
あれこそ、偶然の産物ではなかろうか?
「私、こう見えて子供だし。」
「お嬢様は、どう見ても子供です。」
後ろからリリアーヌに突っ込まれた。
「商売をどうこうなんて、無理よ。」
「せめて、菓子屋を見るだけでも見て頂けないでしょうか?」
「親戚が経営してるとか?」
「いえ、私は孤児です。孤児院にも定期的にお菓子を寄付してくれたりと、親切な老夫婦が経営してるんです。」
ええ、話しや~。
だが、しかしっ!
親切と商売は別物だ。
まあ、いいか、見るだけなら。
「とりあえず、見るだけよ。」
「お菓子は、私が奢りますので。」
「直ぐ行きましょっ!」
私たちは急遽、お菓子屋に向かう事となった。
なんだろう、見た目は古い。
王都であるのに、ここだけ田舎?
そもそもお菓子屋なのか?
そんなイメージのお店へと入っていく。
「ばあちゃん、2つほどお願い。」
パーシが奥の方へ向けて、声を掛ける。
「はいはい、2つだね。」
そう言って、老婆が2つのお菓子を持って出てきた。
パーシはそれを受け取ると私とリリアーヌに渡した。
こ、これはっ!
先に食べるのはリリアーヌ。
リリアーヌが頷き、私も饅頭を口にした。
オーソドックスな茶色の皮で包まれた、所謂、茶饅頭という奴だが。
中身はなんだろう?
パクっ
なっ、餡子だと?
あったんか餡子?
この世界に生まれて、はや(?)10年。
始めて餡子と邂逅した。
ん~・・・、多分、前世と同じ味だとは思うが。
小豆があるのか?この世界に・・・。
「この中身は何?」
私は老婆に聞いた。
「餡子だよ。大黒豆から作ってるんだよ。」
確か、小豆で作る餡子は砂糖を大量に使ったはず。これ高いんじゃないの?
「これ1つ、おいくら?」
「200ゴールドだよ。」
や、やっすぅ、砂糖使ってたら大赤字だ。
「この甘さは?」
「元々、大黒豆は甘いからね。粒も大きいから、餡子にするときは、必ずこすんだよ。」
なるほど。というか旨いわ、この饅頭。
「何で売れてないの?」
私は疑問をパーシにぶつけた。
「それが、わからないので・・・。」
うーむ・・・。
「最近の子供たちは、もっと美味しいお菓子を食べているんじゃないかね?」
そんなに旨いものがあるんだろうか?
「他に美味しいお菓子って、あるものなの?」
私は、疑問に思ってパーシに聞いた。
「いやあ、私はお菓子自体を買わないので・・・。」
「リリアーヌはどう?」
「当家のお菓子は、ほぼダリアが作っておりますから。」
そうだった・・・。
「客層って、どうなの?」
「殆どが子供だねえ。」
うーむ・・・饅頭1個200ゴールド・・・、庶民の子供には無理じゃね?
「子供に200ゴールドって厳しいよね?」
パーシに聞いてみた。
「飴屋は同じ値段ですが、行列が出来てますよ。」
や、やるな飴屋っ!
うちからの仕事もたまにあるし。
だが、アレを期待して貰っても困るんだが・・・。
「とりあえず、5個持ち帰りで。」
リリアーヌにお金の支払いを頼んだ。
「まあ、どうするかわかんないけど、考えてみる。」
私は、パーシにそう告げた。
さてどうしたものか、消費期限は大体、一週間らしい。
まさか、饅頭を貴族に勧める訳にはいかないし。
思案しながら、家路につく、家の正門を抜けると即、クロヒメに纏わりつかれた。
鬱陶しいこと、この上ないが、私は、条件反射で、頬を撫でる。
うん、もう体が覚えてるな、これ。
今日は、鉄仮面三姉妹の休憩タイムが無かったので、夕食後、自室にダリアを呼んだ。
何故かダリアだけでなくエルミナまで来た。
更にお母様も・・・。
「・・・。」
「ダリアが呼ばれたようなので、私も来ました。」
エルミナが、そう言った。
いや、待て、何故そこで、来るのか意味が解らない。
「エルミナが、アウエリアの部屋に行くと言うので、私も来てみたのよ。」
お母様・・・普通、側仕えについてきますか?
まあいい、来てしまったものはしょうがない。
「リリアーヌ、お饅頭を4分割にしてちょうだい。」
「私も欲しいです。」
「ちゃんと数に入っているわ。」
「1つ足りませんが?」
「私は要らないわ。」
夕食後にお饅頭とか、太るでしょっ!
私は5人分のお茶を淹れた。
紅茶でなく、緑茶を。
そこから、周囲のデザインだ。
なるべく細かくならないように。
カリカリカリ・・・。
カリカリカリ・・・。
い、いかんっ・・・、細かくなりすぎた。
とりあえず、他の作業をしていたエンリに聞いてみる。
「こんなん出来るかな?」
「・・・。」
無言だった。
ま、まあ成せばなる。
この通りに、正確にやるわけじゃなし。
マシンじゃないんだから。
という事で、大まかな型をエンリに作って貰い、そこから彫金開始。
4種の彫金鏨を使い、コンコンやる訳だが。
使い方を一通りエンリに説明してもらい。
いざ、実彫っ!
コンコンコン・・・。
カンカンカン・・・。
キンキンキン・・・。
高い音だけあって、響く音は、半端ない。
コンコンコン・・・。
カンカンカン・・・。
キンキンキン・・・。
くっ、細かいっ!
誰だ、こんなデザインにした奴は・・・。
自呪しながらも、作業を続ける。
コンコンコン・・・。
カンカンカン・・・。
キンキンキン・・・。
う、うーん?こんなもんじゃないかな?
精度は、全く出ていない。
ハンドメイドの彫金なんて、こんなもんだろ。
他の作業を・・・。
してなかった。
エンリは、私の作業を見つめていた。
「こんなもんかな?」
エンリを見上げながら聞いてみた。
「・・・。」
また無言だ。
どないやっちゅうねん。
仕方ないので、リリアーヌに聞いてみた。
「どうかな?」
「素晴らしい出来栄えです。」
褒めてくれた。
身内贔屓としても、嬉しいものだ。
「やっぱり、私はこの道は向いてないようです。」
ようやく絞り出した声が、この世の終わりと言わんばかりの暗い声質だった。
「ど、どうしたの?」
「私は、レントン商会の娘として商人の道を歩みますので、お嬢様は、レントン商会の専属職人をお願いします。」
何言ってくれてんの、この人。
「侯爵令嬢たるお嬢様が、職人になる事は、100%ありえません。」
リリアーヌがズバッと言ってくれた。
「そ、そんな・・・。」
「エンリの将来は置いといて。」
私がそう言うと。
「置いとかないでください。」
「ええー、まずは、仕上げをしてくれないかしら?」
「鏡面仕上げと宝石の取り付けですか?」
「ええ、鏡面仕上げは、他所に頼むの?」
「いえ、私が。」
「へえ、鏡面仕上げって難しいでしょ?」
「鏡面仕上げだ(・)け(・)は、師匠に褒められています。」
「ドワーフに褒められるって凄いじゃない?」
そりゃあ、そうか完全に不器用な人間が弟子入りなんて出来る訳がない。
「でも磨くだけだと、アクセサリーは出来ません。」
「・・・。」
な、なんも言えねえ・・・。
「後は私の方でやっておきますので、出来ましたら連絡しますね。」
「よ、よろしくね。」
正直、鏡面仕上げもやってみたいとは思うが、私が作った物を丁寧にやると、何日かかるかわかったものじゃない。
ここはプロにお任せして、大人しく退散しよう。
本来なら、これで屋敷に戻るところだが、パーシが私に頼みたい事があるらしく、レントン商会へ呼び出して貰った。
レントン商会で応接室をお借りして、冒険者のパーシヴァルと話し合う。
「実はお嬢様に相談したい事が。」
「一緒に冒険者になってとかいうのは無理よ。」
「そんな事言う人居ませんよ。」
「いや、居たし。」
「えっ?まさか・・・。」
「どこぞのポンコツエルフが私に言ったのよ。」
「・・・。」
パーシは絶句した。
「それで相談って何?」
「実は売り上げが落ちていて困ってる菓子屋があるのですが・・・。」
「ちょっと待って、何で私?」
「えっ?」
いや、えっ?って驚くのは私の方だろっ!
私、コンサルじゃないんやで?
どこぞの高級家具屋の娘ちゃうしっ!
「お嬢様は、困っていたガラス職人の男性を救ったではないですか?」
「何それ?」
「お嬢様、恐らく飴屋の事かと。」
後ろに立っていたリリアーヌが教えてくれた。
ああ、あれか。
あれこそ、偶然の産物ではなかろうか?
「私、こう見えて子供だし。」
「お嬢様は、どう見ても子供です。」
後ろからリリアーヌに突っ込まれた。
「商売をどうこうなんて、無理よ。」
「せめて、菓子屋を見るだけでも見て頂けないでしょうか?」
「親戚が経営してるとか?」
「いえ、私は孤児です。孤児院にも定期的にお菓子を寄付してくれたりと、親切な老夫婦が経営してるんです。」
ええ、話しや~。
だが、しかしっ!
親切と商売は別物だ。
まあ、いいか、見るだけなら。
「とりあえず、見るだけよ。」
「お菓子は、私が奢りますので。」
「直ぐ行きましょっ!」
私たちは急遽、お菓子屋に向かう事となった。
なんだろう、見た目は古い。
王都であるのに、ここだけ田舎?
そもそもお菓子屋なのか?
そんなイメージのお店へと入っていく。
「ばあちゃん、2つほどお願い。」
パーシが奥の方へ向けて、声を掛ける。
「はいはい、2つだね。」
そう言って、老婆が2つのお菓子を持って出てきた。
パーシはそれを受け取ると私とリリアーヌに渡した。
こ、これはっ!
先に食べるのはリリアーヌ。
リリアーヌが頷き、私も饅頭を口にした。
オーソドックスな茶色の皮で包まれた、所謂、茶饅頭という奴だが。
中身はなんだろう?
パクっ
なっ、餡子だと?
あったんか餡子?
この世界に生まれて、はや(?)10年。
始めて餡子と邂逅した。
ん~・・・、多分、前世と同じ味だとは思うが。
小豆があるのか?この世界に・・・。
「この中身は何?」
私は老婆に聞いた。
「餡子だよ。大黒豆から作ってるんだよ。」
確か、小豆で作る餡子は砂糖を大量に使ったはず。これ高いんじゃないの?
「これ1つ、おいくら?」
「200ゴールドだよ。」
や、やっすぅ、砂糖使ってたら大赤字だ。
「この甘さは?」
「元々、大黒豆は甘いからね。粒も大きいから、餡子にするときは、必ずこすんだよ。」
なるほど。というか旨いわ、この饅頭。
「何で売れてないの?」
私は疑問をパーシにぶつけた。
「それが、わからないので・・・。」
うーむ・・・。
「最近の子供たちは、もっと美味しいお菓子を食べているんじゃないかね?」
そんなに旨いものがあるんだろうか?
「他に美味しいお菓子って、あるものなの?」
私は、疑問に思ってパーシに聞いた。
「いやあ、私はお菓子自体を買わないので・・・。」
「リリアーヌはどう?」
「当家のお菓子は、ほぼダリアが作っておりますから。」
そうだった・・・。
「客層って、どうなの?」
「殆どが子供だねえ。」
うーむ・・・饅頭1個200ゴールド・・・、庶民の子供には無理じゃね?
「子供に200ゴールドって厳しいよね?」
パーシに聞いてみた。
「飴屋は同じ値段ですが、行列が出来てますよ。」
や、やるな飴屋っ!
うちからの仕事もたまにあるし。
だが、アレを期待して貰っても困るんだが・・・。
「とりあえず、5個持ち帰りで。」
リリアーヌにお金の支払いを頼んだ。
「まあ、どうするかわかんないけど、考えてみる。」
私は、パーシにそう告げた。
さてどうしたものか、消費期限は大体、一週間らしい。
まさか、饅頭を貴族に勧める訳にはいかないし。
思案しながら、家路につく、家の正門を抜けると即、クロヒメに纏わりつかれた。
鬱陶しいこと、この上ないが、私は、条件反射で、頬を撫でる。
うん、もう体が覚えてるな、これ。
今日は、鉄仮面三姉妹の休憩タイムが無かったので、夕食後、自室にダリアを呼んだ。
何故かダリアだけでなくエルミナまで来た。
更にお母様も・・・。
「・・・。」
「ダリアが呼ばれたようなので、私も来ました。」
エルミナが、そう言った。
いや、待て、何故そこで、来るのか意味が解らない。
「エルミナが、アウエリアの部屋に行くと言うので、私も来てみたのよ。」
お母様・・・普通、側仕えについてきますか?
まあいい、来てしまったものはしょうがない。
「リリアーヌ、お饅頭を4分割にしてちょうだい。」
「私も欲しいです。」
「ちゃんと数に入っているわ。」
「1つ足りませんが?」
「私は要らないわ。」
夕食後にお饅頭とか、太るでしょっ!
私は5人分のお茶を淹れた。
紅茶でなく、緑茶を。
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