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「49点ですね。」

はっ?
何それ?中途半端っ!
半分なら50点でよくね?

「大変おいしゅうございます。」

おおーっ!エルミナからは高評価っ!
おのれ、リリアーヌ、あんた厳しすぎでしょっ。

「ご自分で採点してみてください。」

リリアーヌが挑発したように言う。

私は、一口、自分でいれた紅茶を飲む。

ぐっ、ぐぬぬぬぬっ・・・。

「よ、よんじう・・・きゅうてん・・・。」

いつも最高の紅茶を飲んでる私は舌が肥えている。
その私だからこそ、この点になってしまう。

半分には今一歩、到達していない紅茶。
それが私が、いれた紅茶だ。

「昨日は何点でしたか?」

エルミナが聞いてきた。

「17点よ。」

私はぶっきらぼうに答えた。

「たった一日で、30点以上も上達しています。さすがお嬢様です。」

エルミナが褒めてくれた。

そうだっ!たった一日で、この上達。
昔の偉い人は言いました。
ローマは一日にして成らずと。
ローマと私の紅茶を同列にするのは、どうかと思うが、そういう事じゃない?
うん、そういう事にしておこう。

「明日も楽しみにしています。」

明日も来るんかいっ!

エルミナが去った後、私は、リリアーヌに聞いてみた。

「なんで、エルミナは私がリリアーヌに紅茶をいれてるのを知ってたのかしら?」

「・・・。」

何も答えないリリアーヌ。

あ、あんた・・・自慢したのね・・・。




翌日、午前中は授業。
ダリアは、孤児院へと出向いていた為、一人でおやつを食べた。

いかん、ねむい・・・。

家族が利用する広いリビングでつい、うとうとと。
部屋に戻って、寝ようかなと考えていると。
リリアーヌがソファーに座った。
そして、膝をぽんぽんと叩く。

なるほど、膝枕してくれるわけね。

私はねむねむで、思考能力も低下していたので、遠慮なく、リリアーヌの膝枕で眠った。





「何をしているのっ!」
突然の大声で、私は、びくっとなった。
びくっとなったからには、一瞬で目が覚める。
眠気も吹っ飛んだ。

「そこをどきなさい。」

なんで、鬼になってんの?お母様・・・。
意味不明だ・・・。

お母様は徐にソファーに腰をおろし、膝をポンポンと叩いた。

えっ?
どういうこと?
完全に目が覚めた私に、また寝ろと?
いくらのび子さんの私でも、それは無理な相談だ。

だが、今、この状況で、断れるのか?
いや、無理だ。

私は、大人しくお母様の膝枕に身を沈めた。





何やら気配がする?
びっくりするくらい、私は熟睡してたようだが。
ゆっくりと目を開くと。

私を覗き込むように見ている顔が三つ。

「ほら、アウエリアが起きてしまったでしょう?」
その3人に向けて、お母様が言う。

「いやあ、寝顔が可愛かったもので。」

お父様だ。

「娘に会いたくなってしまったよ。」

叔父様だ。

「姉さん、かわいいです。」

いや、あんたの方が可愛いよ、弟よ。

私は顔を真っ赤にすることしかできなかった。
うん、次から眠い時は、部屋で寝よう。
私は、羞恥心から、そう強く思った。

自室で少し休もうと戻ると。
テーブルにリリアーヌが着く。

はいはい、紅茶でしょ?

どうせエルミナも来るんだろうと思って、部屋の扉を見ると案の定、ノックが。

エルミナとダリアが入室してきた。

何故にダリアまで?

私は、ダリアにも自慢したのかと非難の目でリリアーヌを見た。

「私ではありません。」

リリアーヌはキッパリと答えた。
ということは、犯人は、エルミナか。

「今日は、お嬢様とお茶会が出来ませんでしたので。」
とダリアが言った。

しかし、アレだ。
ダリアがいると緊張してしまう。
ダリアに習っているんだから、それはそうだろう。

平常心、平常心。

私は、いつも以上に緊張し、いつも以上に丁寧に紅茶をいれた。

「合格点です。」
そう言ってくれたのは、ダリアだった。

おおーっ!ダリアに合格頂きましたっ!

「これなら誰にでも出せると思います。」

うんうん、エルミナの評価はいつもいい。

して、リリアーヌは?
「80点です。」

お、おおおーーーっ!
高得点、高得点ですよ?
やりました、やったよ、私。

歓喜の中、一口飲む。

「うん、80点だ。」

満足するとともに、不安がよぎる。

えっ、これ以上何をすれば、いつも飲んでる紅茶に近づけるの?と・・・。

「ご安心ください、お嬢様。明日からも私がお教えいたしますので。」

私の不安を見越して、ダリアが言ってくれた。

うん、それなら安心だ。




翌日のお茶会は、私とお母様、ダリアの3人だ。
ダリアが傍に居ていれる紅茶は、普段の紅茶と遜色がない。
一体、何が違うのだろうか?
細かな違いだとは思うのだが。

「毎日の繰り返しの中、私と一緒の時と、一人でいれた時、何が違うのか考えながらいれてみてください。きっと理想の紅茶に近づけるでしょう。」

ダリアの言葉に私は頷く。

「繰り返しが重要なのね。」

「はい。」

その日の紅茶もお母様に絶賛してもらった。

「昨日は、言い忘れましたが、冒険者のパーシヴァルさんが、お嬢様に相談があるとか。」

ダリアが言った。

「へえ、パーシがねえ。」

ヒャッハーなボスが私に何の用だろ?
監禁中の私なので、相談に乗る事は出来ないのだが。

「その方は、確か、アウエリアを護衛してくださった方かしら?」

「いし拾いの時に、宿の警護をしてくださりました。」

お母様の問いに私が答えた。

「無碍には出来ませんね。等級は?」

なんだ?等級って・・・。

「C級です。」

私が答えあぐねていると、リリアーヌが答えてくれた。

「それでは、当家に出向いてもらうのも厳しいわね。」

「等級が関係あるんですか?」

気になったので、お母様に聞いてみた。

「貴族街に入るには、許可が必要なのよ。商人は商人用の入場許可証が、冒険者には、冒険者用の入場許可証が必要になるの。」

「なるほど。」

「冒険者で、許可証を発行するには、A級冒険者でないと厳しいわね。」

「A級冒険者って少ないんじゃ?」

「そうよ。そもそも冒険者が貴族街に用なんてないでしょ?」

確かに。

「お父様に相談しましょう。」

お母様が、そう言ってくれた。
何が何でも監禁って訳じゃあ、ないのだろう。
王宮にも行かないとだし。

「出来たら、レントン商会にも行きたいんですが。」

「そうねえ、アクセサリーの件もあるし、それもお父様に相談しておくわ。」

おおー、何か知らないが、要望が通ってしまった。

お父様に相談=決まったようなもの。
なんて、考えが私の中にある。

決してお父様を舐めている訳ではない。
うん・・・。

夕食時。

「うん、話しはわかったよ。貴族内に主だった動きはないようだし。構わないよ。」

お、おおーっ!監禁解除キタっ!

「それに、ドワーフ国で、大々的に展示も開催されるようだしね。」

(。´・ω・)ん?

「是非、見に行きたいわね。」

お母様が言った。

「無理を言わないでくれ。」

「何の展示が?」

気になったので聞いてみた。

「テセウスの涙の展示だよ。1カ月くらい開催されるようで、一部の貴族たちは、ドワーフ国へ行くようだよ。」

「へえ。テセウスの涙って何ですか?」

聞いた事あるような?ないような?

「「・・・。」」

何故かお父様とお母様に無言で見つめられた。

「お嬢様がテリーの涙と呼ばれているアレです。」

私の後ろで給仕をしてくれていたリリアーヌが教えてくれた。

「ああ、アレね。展示するのかぁ。行ってみたいな。」

「駄目だ。」

「駄目よ。」

うぉっ。
ダブルで、ダメ出しを食らってしまった。
しかも、お父様から、即ダメ出しを食らうのは初めてではないだろうか?

「テセウスの涙は、ドワーフのディグレットさんが見つけ、物はドワーフ国にあり、ドワーフ国の国宝になったという事を見せつける為の展示だよ。アウエリアは関わらない方がいい。」

「ドワーフ国へ行くなんてもってのほかです。そもそもあなたは、実物を見ているんでしょ?」

見てると言われてもなあ・・・。
見つけた時は、暗かったし、ディグレットさんの前に出したのだって、一瞬だったしなあ。

何よりも、ドワーフ国へ行ってみたいなあ。

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