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「あ、もう時間経ったんじゃねえか?」
「言われてみればそうですね」
「公爵様は時間に厳しいからな。もう言っておいた方がいいぞ」
「ありがとうございます、レスターさん。では、私戻りますね。二人ともお話、とても楽しかったです。ありがとうございました」
「こちらこそ。仕事頑張ってくださいね」
「はい、行ってきます」
二人とは別れ、彼女は執務室の扉の傍で待つことにした。このあと、頃合いを見て公爵が来るはずで彼女はそれまだ扉を見つめることにした。
彼女が扉を見てから少し経ち、ようやく扉が開く。ようやく公爵が来たのかと思えば、それは公爵ではなく、ドレスを着た女性であった。すぐに彼女はお辞儀をする。元は貴族の彼女も今はただの側近。これが公爵の言っていた面会相手なら確実に目上の人である。
お辞儀をして通り過ぎるのを待つ中、彼女の鼻腔をくすぐったのは慣れ親しんだ匂いだった。
「うん?」
ハッとして顔を上げる。すると、目の前を通り過ぎようとしていた女性もこちらを見ていたようで視線があってしまった。
「お姉様?」
「マーガレット……。どうして、ここに?」
目の前にいる女性こそ、彼女の姉リリアン・ターナーであった。慣れ親しんだ匂いというのはリリアンが好きであった香水の匂いでずっとそばにいたマーガレットにとっては嗅ぎ慣れていた匂いだった。
リリアンはひどく困惑しているようだった。ターナー家で別れたはずの妹がメイド服を着て公爵の執務室の側で頭を垂れている光景は彼女を悩ませる分にはこと足りた。事情の知らない彼女にとって何がなんだかサッパリであった。
「どうしたんだ?リリアン」
「いえ、私の妹がここに」
「本当だ。おい、ウィリアム。ちょっと来い」
「どうしたんだ、侯爵。あと、プライベート以外で名前呼びをするな」
「これはどういうことだ?お前は自分の嫁にこういうプレイをさせる変態だったのか?」
「勝手に変態扱いするな。それにこいつは嫁なんかではない」
「……面会は終わったがまだ少し話したいことがあるな。もう一度執務室に戻ろう」
この場に侯爵がくるとさらに事態は悪化してフレンドリーな感じで公爵に接すると四人は執務室に入ることになった。
マーガレットはリリアンの隣に座らせられ、頭を永遠に撫でられている。
「私の妹を無言で嫁に迎え入れることには賛成しますが、それでこんなことをさせないでほしいです」
「いや、私はそういうことをしていない」
「じゃあ、マーガレットが自らしたということですか!?」
「違う、そんなことは断じてない!」
「以前から、嫁候補の中にマーガレット・ターナーがいたことは知っていたが、これはないんじゃないか」
「侯爵、勝手にその情報を言うな」
「結婚するのはいいとしてこのプレイは許しませんからね」
「だから、違うと言っている!はぁ、話をちゃんと聞いてくれ」
質問攻めにあった公爵はなかなか本当のことを言い出せずにいたが、ようやく真実を語った。その話を聞いた二人はどうやら納得したようだった。
「私がいない間にそんなことが」
「じゃあ、嫁候補云々の話をしてはまずかったのか」
「そういうことになるな。ただ、後でマーガレットにも話す。まぁ、先ほど話した通りだ。だから、今側近をしてもらっている。メイド服を着ているのもそういう趣味があるわけじゃないからな。分かったなら、そろそろ帰れ。時間が迫っているだろ」
「もっと詳しく話したいのですが、時間がないのもおっしゃる通りです。この話の続きは今日のパーティーの際に聞くとしましょう」
「そうしてくれ。じゃあな」
「ああ、また。ウィリアム」
「だから、人前では公爵と言え」
名残惜しそうに侯爵夫婦は帰っていった。久しぶりに会った姉との再会も束の間、別れたマーガレットは寂しく思った。
「公爵様」
「ああ、分かっている。話すから、まずは紅茶を淹れてくれ」
マーガレットが公爵に対して話しかけると先延ばしするかのように彼から紅茶を淹れほしいと頼まれた。ただ、今彼女は彼の側近である。だから、それには反抗せずに紅茶を淹れることにした。
「言われてみればそうですね」
「公爵様は時間に厳しいからな。もう言っておいた方がいいぞ」
「ありがとうございます、レスターさん。では、私戻りますね。二人ともお話、とても楽しかったです。ありがとうございました」
「こちらこそ。仕事頑張ってくださいね」
「はい、行ってきます」
二人とは別れ、彼女は執務室の扉の傍で待つことにした。このあと、頃合いを見て公爵が来るはずで彼女はそれまだ扉を見つめることにした。
彼女が扉を見てから少し経ち、ようやく扉が開く。ようやく公爵が来たのかと思えば、それは公爵ではなく、ドレスを着た女性であった。すぐに彼女はお辞儀をする。元は貴族の彼女も今はただの側近。これが公爵の言っていた面会相手なら確実に目上の人である。
お辞儀をして通り過ぎるのを待つ中、彼女の鼻腔をくすぐったのは慣れ親しんだ匂いだった。
「うん?」
ハッとして顔を上げる。すると、目の前を通り過ぎようとしていた女性もこちらを見ていたようで視線があってしまった。
「お姉様?」
「マーガレット……。どうして、ここに?」
目の前にいる女性こそ、彼女の姉リリアン・ターナーであった。慣れ親しんだ匂いというのはリリアンが好きであった香水の匂いでずっとそばにいたマーガレットにとっては嗅ぎ慣れていた匂いだった。
リリアンはひどく困惑しているようだった。ターナー家で別れたはずの妹がメイド服を着て公爵の執務室の側で頭を垂れている光景は彼女を悩ませる分にはこと足りた。事情の知らない彼女にとって何がなんだかサッパリであった。
「どうしたんだ?リリアン」
「いえ、私の妹がここに」
「本当だ。おい、ウィリアム。ちょっと来い」
「どうしたんだ、侯爵。あと、プライベート以外で名前呼びをするな」
「これはどういうことだ?お前は自分の嫁にこういうプレイをさせる変態だったのか?」
「勝手に変態扱いするな。それにこいつは嫁なんかではない」
「……面会は終わったがまだ少し話したいことがあるな。もう一度執務室に戻ろう」
この場に侯爵がくるとさらに事態は悪化してフレンドリーな感じで公爵に接すると四人は執務室に入ることになった。
マーガレットはリリアンの隣に座らせられ、頭を永遠に撫でられている。
「私の妹を無言で嫁に迎え入れることには賛成しますが、それでこんなことをさせないでほしいです」
「いや、私はそういうことをしていない」
「じゃあ、マーガレットが自らしたということですか!?」
「違う、そんなことは断じてない!」
「以前から、嫁候補の中にマーガレット・ターナーがいたことは知っていたが、これはないんじゃないか」
「侯爵、勝手にその情報を言うな」
「結婚するのはいいとしてこのプレイは許しませんからね」
「だから、違うと言っている!はぁ、話をちゃんと聞いてくれ」
質問攻めにあった公爵はなかなか本当のことを言い出せずにいたが、ようやく真実を語った。その話を聞いた二人はどうやら納得したようだった。
「私がいない間にそんなことが」
「じゃあ、嫁候補云々の話をしてはまずかったのか」
「そういうことになるな。ただ、後でマーガレットにも話す。まぁ、先ほど話した通りだ。だから、今側近をしてもらっている。メイド服を着ているのもそういう趣味があるわけじゃないからな。分かったなら、そろそろ帰れ。時間が迫っているだろ」
「もっと詳しく話したいのですが、時間がないのもおっしゃる通りです。この話の続きは今日のパーティーの際に聞くとしましょう」
「そうしてくれ。じゃあな」
「ああ、また。ウィリアム」
「だから、人前では公爵と言え」
名残惜しそうに侯爵夫婦は帰っていった。久しぶりに会った姉との再会も束の間、別れたマーガレットは寂しく思った。
「公爵様」
「ああ、分かっている。話すから、まずは紅茶を淹れてくれ」
マーガレットが公爵に対して話しかけると先延ばしするかのように彼から紅茶を淹れほしいと頼まれた。ただ、今彼女は彼の側近である。だから、それには反抗せずに紅茶を淹れることにした。
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