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朝食を済ませてからは流れ作業のような一日であった。昨日と同じように執務室で仕事をこなし、メイドに昼食が用意できたと呼ばれ、昼食を済ましては仕事に戻る。少しの休憩を挟みつつ、残った仕事を夕食前に終わらせ、腹を満たすとお風呂に入り、共に就寝する準備をする。ここまで、流れるような一日であり、気がつけばベッドで横になっているかのような状態だった。
そんな日が一週間ほど続き、この生活にもなれてきた時のことだった。いつものようにメイドたちに起こされたマーガレットは何か廊下バタバタとうるさく、忙しないのを感じ取った。
「今日、何かあるのでしょうか?」
「あぁ。そういえば、今日は貴族が来るんだったな」
「もしかして、パーティーですか?」
「そうだな。すっかり、忘れていた」
「ここで開かれるということはあなた主催のパーティーなのでしょう?忘れるというのはどういうことですか」
「今日まで忙しかったからな。忘れるのも無理はない。ところでこのパーティーには参加するか?」
「参加はしたくないですね。顔馴染みの貴族にどういった目で見られるのか想像すると行きたくはないです」
「まぁ、そうだろうな。ただ、お前は私の側近だ。側近が私の隣にいなくてどうする」
「今日だけ側近というのはなしにしましょう」
「いや、それは出来ない」
「どうしてですか?」
「このパーティーに参加する貴族に言ったのだ。最近、側近ができたから見せてやると」
「どうしていつもあなたは余計なことばかり言うのですか!」
「すまない。その時は側近が出来たあまり何も考えずに言ってしまった」
「まぁ、いいです。出ればいいのでしょう」
「そうしてくれると助かる」
後先を考えずに無駄なことばかりを言う公爵に呆れる彼女だが、そうなってしまえば彼の面子を保つためにそのパーティーに出るしかなかった。貴族界には知り合いもいる彼女であるが事情を話せば、それほど深い詮索はしてこないだろう。それに公爵のそばにいるからそれほど尋ねられることはないはずだ。
「夕方から人が大勢来るだろうが、昼は面会がある。お前はその間自由にしてていいが、執務室には来るなよ」
「それほど重要なものなのですね。分かりました。では、私はメイドの部屋に行っています。その面会の終了予定時刻はいつですか?」
「だいたい三時間かかる予定だ」
「分かりました。では、それくらいの時間になったら執務室の傍で待つことにします」
「ああ、頼む」
食事を終えた彼女は公爵と別れ、メイドの部屋を訪ねた。グランデとレスターの二人は快くマーガレットを迎え入れて時間を潰すことにした。
「それで公爵と寝たって本当なのか」
「ちょっとレスター。そんな単刀直入に聞かなくとも」
「だって気になるだろ?それにグランデだってソワソワして聞きたそうにしてたじゃないか」
「それはそうだけど」
二人に向かい入れられてすぐにその話題が上がった。その話題をされること自体、彼女も危惧していたことだ。
「その噂ってどこまで広まっているのですか?」
「もうだいぶ広まってるんじゃないか?」
「ここ一帯のメイドは全員知ってるはずですよ。掃除してる時にみんな話していましたから」
「そうなのですか」
「メイドたちはそう言う話に目敏いからな。この屋敷にいる全員が知っていると思った方がいいだろうな」
噂の広がるペースが彼女が思っているよりも随分と早い。男子とほとんど触れ合わないメイドが男女の有事に関することを共有しないわけがないことを考えなくてはいけなかった。
「で、実際どうなんだ?寝てたって言うのは聞いたけど、その前後関係が分からない」
「お風呂が終わった後、公爵様の寝室に連れられて、そのまま寝ることになったのです。私は抵抗したんですけど、命令だとか言って聞かなくて、最終的に私が折れて一緒に寝ることになりました」
「その時、何にもされなかったのか」
「特に何もされませんでした」
「本当かー?」
「本当です!あなたたちが想像しているようなことは何もありませんでした」
「そうなのか。じゃあ残念だな。でも、なんでわざわざ隠れたんだ?」
「そこまで知っているのですね。隠れたと言ってもあれは咄嗟の行動で特に深い意味はなかったですよ」
「でも、隠れる時って大体やましいことがあった時だろ?咄嗟の行動って言っても何か自分にやましいことがあったんじゃないか」
「本当に何もないです!強いていえば、あの状態を見られてあらぬ憶測を立てれて肩身が狭くなってしまうんじゃないかと思ったぐらいで」
「まだあたしは怪しんでるぞ」
「その辺にしておきなさい。マーガレットの言うことが絶対なんですから、質問攻めをしてはいけません。何もなかったという結論でいいじゃないですか」
「グランデさん……」
レスターに質問攻めされていたマーガレットはグランデの一言に救われた。レスターがどれだけ怪しんでいようと彼女も真実を言っているからこれ以上言うことはない。
この話題が終わるとすぐにまた新しい話題が始まった。どこからそんな話題が出てくるのか分からないが、そのおかげもあってか暇な時間が嘘のように早く終わった。
そんな日が一週間ほど続き、この生活にもなれてきた時のことだった。いつものようにメイドたちに起こされたマーガレットは何か廊下バタバタとうるさく、忙しないのを感じ取った。
「今日、何かあるのでしょうか?」
「あぁ。そういえば、今日は貴族が来るんだったな」
「もしかして、パーティーですか?」
「そうだな。すっかり、忘れていた」
「ここで開かれるということはあなた主催のパーティーなのでしょう?忘れるというのはどういうことですか」
「今日まで忙しかったからな。忘れるのも無理はない。ところでこのパーティーには参加するか?」
「参加はしたくないですね。顔馴染みの貴族にどういった目で見られるのか想像すると行きたくはないです」
「まぁ、そうだろうな。ただ、お前は私の側近だ。側近が私の隣にいなくてどうする」
「今日だけ側近というのはなしにしましょう」
「いや、それは出来ない」
「どうしてですか?」
「このパーティーに参加する貴族に言ったのだ。最近、側近ができたから見せてやると」
「どうしていつもあなたは余計なことばかり言うのですか!」
「すまない。その時は側近が出来たあまり何も考えずに言ってしまった」
「まぁ、いいです。出ればいいのでしょう」
「そうしてくれると助かる」
後先を考えずに無駄なことばかりを言う公爵に呆れる彼女だが、そうなってしまえば彼の面子を保つためにそのパーティーに出るしかなかった。貴族界には知り合いもいる彼女であるが事情を話せば、それほど深い詮索はしてこないだろう。それに公爵のそばにいるからそれほど尋ねられることはないはずだ。
「夕方から人が大勢来るだろうが、昼は面会がある。お前はその間自由にしてていいが、執務室には来るなよ」
「それほど重要なものなのですね。分かりました。では、私はメイドの部屋に行っています。その面会の終了予定時刻はいつですか?」
「だいたい三時間かかる予定だ」
「分かりました。では、それくらいの時間になったら執務室の傍で待つことにします」
「ああ、頼む」
食事を終えた彼女は公爵と別れ、メイドの部屋を訪ねた。グランデとレスターの二人は快くマーガレットを迎え入れて時間を潰すことにした。
「それで公爵と寝たって本当なのか」
「ちょっとレスター。そんな単刀直入に聞かなくとも」
「だって気になるだろ?それにグランデだってソワソワして聞きたそうにしてたじゃないか」
「それはそうだけど」
二人に向かい入れられてすぐにその話題が上がった。その話題をされること自体、彼女も危惧していたことだ。
「その噂ってどこまで広まっているのですか?」
「もうだいぶ広まってるんじゃないか?」
「ここ一帯のメイドは全員知ってるはずですよ。掃除してる時にみんな話していましたから」
「そうなのですか」
「メイドたちはそう言う話に目敏いからな。この屋敷にいる全員が知っていると思った方がいいだろうな」
噂の広がるペースが彼女が思っているよりも随分と早い。男子とほとんど触れ合わないメイドが男女の有事に関することを共有しないわけがないことを考えなくてはいけなかった。
「で、実際どうなんだ?寝てたって言うのは聞いたけど、その前後関係が分からない」
「お風呂が終わった後、公爵様の寝室に連れられて、そのまま寝ることになったのです。私は抵抗したんですけど、命令だとか言って聞かなくて、最終的に私が折れて一緒に寝ることになりました」
「その時、何にもされなかったのか」
「特に何もされませんでした」
「本当かー?」
「本当です!あなたたちが想像しているようなことは何もありませんでした」
「そうなのか。じゃあ残念だな。でも、なんでわざわざ隠れたんだ?」
「そこまで知っているのですね。隠れたと言ってもあれは咄嗟の行動で特に深い意味はなかったですよ」
「でも、隠れる時って大体やましいことがあった時だろ?咄嗟の行動って言っても何か自分にやましいことがあったんじゃないか」
「本当に何もないです!強いていえば、あの状態を見られてあらぬ憶測を立てれて肩身が狭くなってしまうんじゃないかと思ったぐらいで」
「まだあたしは怪しんでるぞ」
「その辺にしておきなさい。マーガレットの言うことが絶対なんですから、質問攻めをしてはいけません。何もなかったという結論でいいじゃないですか」
「グランデさん……」
レスターに質問攻めされていたマーガレットはグランデの一言に救われた。レスターがどれだけ怪しんでいようと彼女も真実を言っているからこれ以上言うことはない。
この話題が終わるとすぐにまた新しい話題が始まった。どこからそんな話題が出てくるのか分からないが、そのおかげもあってか暇な時間が嘘のように早く終わった。
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