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第三話~ねぇ君、僕とやらないか?~
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快晴と言ってもいいのか分からないけど、温かくほのぼのとした空間で、俺は釣りをしていた。
たまたま近くにいた蜘蛛が糸をくれて、たまたま落ちていた枝を使って竿を作り、たまたまあった雲の湖に餌をつけることなく糸を垂らしてみた。
時々竿に何かが引っかかるので引き上げてみるが、糸が千切れてしまい、何も釣り上げることが出来ない。
なんだか悔しいと、再び糸を垂らしていると、サクレが口笛を吹きながらやってきた。
雑音がめちゃくちゃうざい。
「ダーリンもだいぶここでの生活に慣れて来たね」
「慣れてきたっていうか、やることがないんだよ。死人が出てここに魂が送られてこなけりゃ仕事ないだろ。あとは食っちゃ寝しかやることがない」
「何言ってんの。ここがどこだかわかっていないの」
「…………地獄?」
「天界よっ! しかも、麗しの女神、転生神サクレ様のために作られた転生を行うための場所、いわば、転生の間っ!」
目をクワッと開いて言ってきたが、こう、自分で麗しの女神と言っちゃっている時点で、頭がかなり残念なんだろうと思う。
「んで、ここで何ができるわけ?」
「何って、なんでもよ。転生神である私と、転生神の補佐役であるダーリンは、この空間にいる限り死ぬ以外はなんでもできる。この場所はそう作られているのよ」
「それまたなんで」
「だって、すごい力を使ってデモンストレーションしないと、誰も信じないでしょ」
そりゃ確かに、と思った。でも、俺はサクレが力を使っているところを見たことがないし、俺も力を使ったことがない。
そういえば、あのモニターやキッチンはそうやってつくられたのかなーと思いながら、試しにバーベキューセットを呼び出してみた。
するとどうだろうか、目の前にバーベキューセットが出て来たではないか。
「ちなみに、食材は出せても、調理済みのモノは出せないわよ。なんでも、私のパパが花嫁修業させたいらしくて……えへ。その他いろいろと誓約もあるけど、がっかりしないでね」
すげーと思った後に、なんかこう、どん底に落とされたような気持になった。
それ、最初に言ってくれないかな。
バーベキューセットだけ出しても仕方がない。どうせならいいもの食べたいし、釣った食材で料理したいなーと思いながら、再び、糸に視線を向けると、突然肩をたたかれた。
後ろを振り向くと、そこには、ガタイのいい半裸のお兄さんが、胸をひくひくさせていた。
「ねえ君、僕と……やらないか?」
「いや、結構です」
こう、表情が抜けた感覚ってこういうことを言うのかと思いながら、マッチョを見なかったことにする。
するとマッチョは肩を掴み、俺を無理やり押し倒してきた。
「大丈夫、心配しなくていい。最初は痛いかもしれないけど、やさしくするから、さあ、さあ!」
「おいまて、どこ触っている、ズボンを下ろそうとするなっ!」
俺のズボンのベルトをカチャカチャといじり、無理やり脱がそうとするマッチョ。
誰か助けてと心の中で叫んでいると、突然俺に影がかかった。
サクレが俺を助けに来てくれたようだ。
「サクレ……助けに来てくれたのか」
「うん、構図がいいね。このまま続けて頂戴。だけどゆっくり、ゆっくりやるのよ。じゃないと私が薄い本を描けないじゃない」
「うっす。任せてください。という訳で、いただきまーす」
「てめぇ、ふざけんじゃ、待て、本当にズボンを下ろすな、下半身をまさぐるなっ! 顔を……近づけるなあああああああああああ」
さんざんな目に遭いながらも、俺は何とか逃げ切ることに成功した。
サクレは少し残念そうだったが、げんこつをお見舞いしたら言うことを訊いてくれた。
これでやっと、転生神とその補佐の仕事ができるってもんだ。
「そうか、俺は死んだのか……。目の前に好みの男がいたからそこまで気にならなかったけど、そうか、そうなんだな」
「そうです、あなたは残念ながらお亡くなりになりました。やったねっ! 異世界転生だよ」
「全く、本当にそうだよ。異世界転生、なんて楽しみなんだ」
「「あはははははははははは」」
凄くすがすがしい表情をしている。あと、サクレと同調している辺り、このマッチョも残念な人物なのだろう。
「それで、俺はどんな世界に送られるんだ」
マッチョは、それはそれは嬉しそうに言ってきた。俺をキラキラした目で見つめて。
というか、俺は転生神補佐だから、サクレに訊いてほしんだが。
「異世界なんて無限の数あるから、好きなところでいいわよ。私たちの仕事は、魂を各世界に均等に送り届け、循環させることだから。どんな世界に行きたいの?」
「そうだな、男性同士で結婚出来て、そして子供が作れる世界があると理想だな」
何を言っているんだろうか、このマッチョは。そんな世界あるわけ……。
「あるわよ、男でも孕めて子供を産める世界。ちなみにその世界では、男女でも、女性同士でも子供を作れることが出来るわ」
「あるんだ、そんな世界、というかサクレ、もうちょっとオブラートに包んで話せ、なんか嫌だよ」
「いやんダーリン。そんなに褒めないで」
「いやいや、褒めてないから」
あるんだ、そんな世界。普通に嫌なんですけど。そして、そんな世界を無数にある世界からあっさりと見つけられることに驚いた。
「じゃあ、転生させるよ~。そりゃぁ~」
「ああ、心が安らいでいく。俺、今度こそ男と結婚して幸せになるよ」
マッチョは清らかな顔をして、その場から姿を消した。無事に転生したみたいだけど、去り際まで気持ち悪かった。最後に俺の方を見ながらウィンクするのはやめてほしい。
「…………あ」
「どうしたんだ、サクレ」
「どうしよう、ダーリン。あのマッチョに間違って、女性に好かれるハーレム体質っていう祝福をあげちゃった」
「あーー、別にいいんじゃね」
あいつはこの後地獄を見ることだろう。
まあ、俺の知ったことじゃないけどね。
たまたま近くにいた蜘蛛が糸をくれて、たまたま落ちていた枝を使って竿を作り、たまたまあった雲の湖に餌をつけることなく糸を垂らしてみた。
時々竿に何かが引っかかるので引き上げてみるが、糸が千切れてしまい、何も釣り上げることが出来ない。
なんだか悔しいと、再び糸を垂らしていると、サクレが口笛を吹きながらやってきた。
雑音がめちゃくちゃうざい。
「ダーリンもだいぶここでの生活に慣れて来たね」
「慣れてきたっていうか、やることがないんだよ。死人が出てここに魂が送られてこなけりゃ仕事ないだろ。あとは食っちゃ寝しかやることがない」
「何言ってんの。ここがどこだかわかっていないの」
「…………地獄?」
「天界よっ! しかも、麗しの女神、転生神サクレ様のために作られた転生を行うための場所、いわば、転生の間っ!」
目をクワッと開いて言ってきたが、こう、自分で麗しの女神と言っちゃっている時点で、頭がかなり残念なんだろうと思う。
「んで、ここで何ができるわけ?」
「何って、なんでもよ。転生神である私と、転生神の補佐役であるダーリンは、この空間にいる限り死ぬ以外はなんでもできる。この場所はそう作られているのよ」
「それまたなんで」
「だって、すごい力を使ってデモンストレーションしないと、誰も信じないでしょ」
そりゃ確かに、と思った。でも、俺はサクレが力を使っているところを見たことがないし、俺も力を使ったことがない。
そういえば、あのモニターやキッチンはそうやってつくられたのかなーと思いながら、試しにバーベキューセットを呼び出してみた。
するとどうだろうか、目の前にバーベキューセットが出て来たではないか。
「ちなみに、食材は出せても、調理済みのモノは出せないわよ。なんでも、私のパパが花嫁修業させたいらしくて……えへ。その他いろいろと誓約もあるけど、がっかりしないでね」
すげーと思った後に、なんかこう、どん底に落とされたような気持になった。
それ、最初に言ってくれないかな。
バーベキューセットだけ出しても仕方がない。どうせならいいもの食べたいし、釣った食材で料理したいなーと思いながら、再び、糸に視線を向けると、突然肩をたたかれた。
後ろを振り向くと、そこには、ガタイのいい半裸のお兄さんが、胸をひくひくさせていた。
「ねえ君、僕と……やらないか?」
「いや、結構です」
こう、表情が抜けた感覚ってこういうことを言うのかと思いながら、マッチョを見なかったことにする。
するとマッチョは肩を掴み、俺を無理やり押し倒してきた。
「大丈夫、心配しなくていい。最初は痛いかもしれないけど、やさしくするから、さあ、さあ!」
「おいまて、どこ触っている、ズボンを下ろそうとするなっ!」
俺のズボンのベルトをカチャカチャといじり、無理やり脱がそうとするマッチョ。
誰か助けてと心の中で叫んでいると、突然俺に影がかかった。
サクレが俺を助けに来てくれたようだ。
「サクレ……助けに来てくれたのか」
「うん、構図がいいね。このまま続けて頂戴。だけどゆっくり、ゆっくりやるのよ。じゃないと私が薄い本を描けないじゃない」
「うっす。任せてください。という訳で、いただきまーす」
「てめぇ、ふざけんじゃ、待て、本当にズボンを下ろすな、下半身をまさぐるなっ! 顔を……近づけるなあああああああああああ」
さんざんな目に遭いながらも、俺は何とか逃げ切ることに成功した。
サクレは少し残念そうだったが、げんこつをお見舞いしたら言うことを訊いてくれた。
これでやっと、転生神とその補佐の仕事ができるってもんだ。
「そうか、俺は死んだのか……。目の前に好みの男がいたからそこまで気にならなかったけど、そうか、そうなんだな」
「そうです、あなたは残念ながらお亡くなりになりました。やったねっ! 異世界転生だよ」
「全く、本当にそうだよ。異世界転生、なんて楽しみなんだ」
「「あはははははははははは」」
凄くすがすがしい表情をしている。あと、サクレと同調している辺り、このマッチョも残念な人物なのだろう。
「それで、俺はどんな世界に送られるんだ」
マッチョは、それはそれは嬉しそうに言ってきた。俺をキラキラした目で見つめて。
というか、俺は転生神補佐だから、サクレに訊いてほしんだが。
「異世界なんて無限の数あるから、好きなところでいいわよ。私たちの仕事は、魂を各世界に均等に送り届け、循環させることだから。どんな世界に行きたいの?」
「そうだな、男性同士で結婚出来て、そして子供が作れる世界があると理想だな」
何を言っているんだろうか、このマッチョは。そんな世界あるわけ……。
「あるわよ、男でも孕めて子供を産める世界。ちなみにその世界では、男女でも、女性同士でも子供を作れることが出来るわ」
「あるんだ、そんな世界、というかサクレ、もうちょっとオブラートに包んで話せ、なんか嫌だよ」
「いやんダーリン。そんなに褒めないで」
「いやいや、褒めてないから」
あるんだ、そんな世界。普通に嫌なんですけど。そして、そんな世界を無数にある世界からあっさりと見つけられることに驚いた。
「じゃあ、転生させるよ~。そりゃぁ~」
「ああ、心が安らいでいく。俺、今度こそ男と結婚して幸せになるよ」
マッチョは清らかな顔をして、その場から姿を消した。無事に転生したみたいだけど、去り際まで気持ち悪かった。最後に俺の方を見ながらウィンクするのはやめてほしい。
「…………あ」
「どうしたんだ、サクレ」
「どうしよう、ダーリン。あのマッチョに間違って、女性に好かれるハーレム体質っていう祝福をあげちゃった」
「あーー、別にいいんじゃね」
あいつはこの後地獄を見ることだろう。
まあ、俺の知ったことじゃないけどね。
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