2 / 32
第二話~初仕事はあの子だった件~
しおりを挟む
転生神の補佐兼旦那に任命された俺は今、スパゲッティーを茹でていた。
市販で売られているスパゲッティーは便利なもので、時間通りに茹でるだけでしっかりとアルデンテになっている。
茹で上がったスパゲッティーを水切りして、ベーコンを白ワインで炒めたフライパンに投入。軽く熱した後、火を消して、卵、卵黄、生クリーム、粉チーズを混ぜて作ったソースを絡め、再び火をつけて1分ほど炒めた。出来上がったものをお皿に移し、ブラックペッパーを少々、ついでに温玉をのせて、完成だ。
漂ってくる香りが食欲をそそる。我ながらいい感じにできたと思う。
ついでに作ったスープと一緒にお盆にのっけて、俺はサクレの元に行った。
「ほれ、飯作ったぞ」
「ふわぁ、おいしそうっ。ありがとね、ダーリン」
そこでふと思った。
俺、一体何をしているんだろう。
「ねへ、たーふぃん。ほうはふぁふふぃふぉどにふぁふとおふぉふふぉ」
「食うか喋るか、どっちかにしろよ」
俺がそう言うと、10秒ほど俺のことを見つめた後、カルボナーラを食べ始めた。
全く、なんなんだよ、この駄女神は。
気が付けば、溜息をついていた。
そんな俺の服を引っ張る何者かがいた。ここ、あの世だから俺と駄女神しかいない気がするんだが……。
ゆっくりと、引っ張られている服に視線を向けると……。
「大変そうだね、お兄ちゃん」
くまさんパンツの女の子が立っていた。
え、この子死んだの。まさか、俺が助けるのを失敗したから……。
なんだか罪悪感が湧いて来た。
そんな俺に対して、サクレは言った。
「ねえ、ダーリン。今日は初仕事になると思うよ。頑張ってね」
「もうちょっと早く言えよっ!」
ふざけんなと思いました。
俺は目線を少女と同じ位置に合わせた。
「ねえ君、お名前は」
「えっと……あれ、私の名前、なんだっけ?
くまさん? パンツ」
「いや、それだけはない。おい、これってどういうことだよ」
記憶に支障がでてるって、何かトラブルでも起きているんじゃないだろうか。そう思って問いかけたのに、あの駄女神は60インチの大型テレビとこたつ、ミカンまで用意していた。
「さぁ、座って座って。記憶が変になるのはよくあることだから。とりあえず定番の回想シーンに入りましょう」
「なんか適当過ぎねぇか、おい!」
「あはははははは」
「お前、笑ってんじゃねぇよ、これがお前の仕事だろうっ!」
そんなやり取りをしていると、少女はクスクスと笑った。そして、「早く座りましょう」といって、こたつに入った。
あれ、今のって俺が悪いの、ねぇ!
「さぁ、回想シーンを流すわよ。見てなさい」
サクレはどこからともなくリモコンを取り出した。
ボタンを押すと、60インチの大型テレビの電源が入り、ムービーが始まる。
最初に映されたのは、少女がいじめられているシーンだった。
「あなた、人を殺したのになんで平然と生きていられるのよ、この犯罪者っ!」
「ほら、ちゃんと遺書を用意しておいてやったんだから、死ねば?」
「あ、あう、うう」
学校にある個人用の椅子に立たされて、首つり用のロープを握りしめた少女の姿。
おいおいおいおい、なんてヘビィーなことになっているの! これってどういうことっ!
というか、なんで少女が人を殺したことに…………俺か。
少女が本当に首を吊りそうになったところで、先生が止めた。しかも、周りの生徒たちは、おとがめなしで少女が怒られている、なんて理不尽な。
「あれは楽しかったですね」
「ほんと、楽しそうだね」
「「あははははははは」」
「いや、その発言おかしくねぇ、絶対におかしいよねっ」
よく見ると、ムービーに映っている少女も満更でもない様子。え、ナニコレ、いじめられて喜んでいる?
俺の常識が崩れ去っていく気がする。
ムービーに映っている少女はうっすらと笑っていた。とてもうれしそうだ。
本当に、何か間違っているよこれ。
先生のお説教から解放された少女はそのまま帰宅、自宅のマンションまでたどり着く。そこで見つけてしまったのだ。自宅のマンション近くにある駐輪場、その屋根の上に輝く10円を。
「あ、あれがあれば うまか棒を買えるっ!」
手をわなわな震わす少女。キリッと、何か決意を固めたような表情をする。
そして、駐輪場の屋根の上に登り始めた。
少女はおどおどしながら、10円の元に進んでいき、そっと、10円を拾った。
「やった、やったよ、お母さん」
君は本当にそれでいいのか。10円だぞ、どんだけ貧しいんだよ。
そんなツッコミを心の中で入れていると、ムービーに出ている、駐輪場の屋根の上にいた少女が体勢を崩した。
そしてそのまま……。
回想ムービーはここで終わっている。
「ごめんなさいお兄ちゃん。私、へまして死んじゃったんです。せっかく助けてもらったのに……」
「いや、えっと、なんていうか……」
今の回想を見てしまうと、コメントに困ってしまうのだが。
「でも、お兄ちゃんとあえてうれしいーーーー」
「あ、え、ええええええええええええええええええええ」
少女は突然、神々しい光に包まれて、天に召された。いや、ここが天だから、転生したってことか?
「へへ、あまりにも長いからやっちゃった」
「やっちゃったじゃねぇよ。これから、転生神としていろいろと仕事をやらなきゃいけないんじゃねぇのかよ!」
「あーー引っ張らないで、痛い、痛いから。わーーん、ごめんなさい」
あの少女、ちゃんと幸せになれるといいんだけど。
「なんか虐められるの好きそうだから、かなり過酷な世界に転生させてあげたんだ。喜んでくれるかな?」
「ざけんなっ!」
この後、いろんな神様に頭を下げに行って、何とかあの少女を幸せな普通の世界に導くことが出来た。
この駄女神、早く何とかしないと、俺が苦労しそうな予感がする。
市販で売られているスパゲッティーは便利なもので、時間通りに茹でるだけでしっかりとアルデンテになっている。
茹で上がったスパゲッティーを水切りして、ベーコンを白ワインで炒めたフライパンに投入。軽く熱した後、火を消して、卵、卵黄、生クリーム、粉チーズを混ぜて作ったソースを絡め、再び火をつけて1分ほど炒めた。出来上がったものをお皿に移し、ブラックペッパーを少々、ついでに温玉をのせて、完成だ。
漂ってくる香りが食欲をそそる。我ながらいい感じにできたと思う。
ついでに作ったスープと一緒にお盆にのっけて、俺はサクレの元に行った。
「ほれ、飯作ったぞ」
「ふわぁ、おいしそうっ。ありがとね、ダーリン」
そこでふと思った。
俺、一体何をしているんだろう。
「ねへ、たーふぃん。ほうはふぁふふぃふぉどにふぁふとおふぉふふぉ」
「食うか喋るか、どっちかにしろよ」
俺がそう言うと、10秒ほど俺のことを見つめた後、カルボナーラを食べ始めた。
全く、なんなんだよ、この駄女神は。
気が付けば、溜息をついていた。
そんな俺の服を引っ張る何者かがいた。ここ、あの世だから俺と駄女神しかいない気がするんだが……。
ゆっくりと、引っ張られている服に視線を向けると……。
「大変そうだね、お兄ちゃん」
くまさんパンツの女の子が立っていた。
え、この子死んだの。まさか、俺が助けるのを失敗したから……。
なんだか罪悪感が湧いて来た。
そんな俺に対して、サクレは言った。
「ねえ、ダーリン。今日は初仕事になると思うよ。頑張ってね」
「もうちょっと早く言えよっ!」
ふざけんなと思いました。
俺は目線を少女と同じ位置に合わせた。
「ねえ君、お名前は」
「えっと……あれ、私の名前、なんだっけ?
くまさん? パンツ」
「いや、それだけはない。おい、これってどういうことだよ」
記憶に支障がでてるって、何かトラブルでも起きているんじゃないだろうか。そう思って問いかけたのに、あの駄女神は60インチの大型テレビとこたつ、ミカンまで用意していた。
「さぁ、座って座って。記憶が変になるのはよくあることだから。とりあえず定番の回想シーンに入りましょう」
「なんか適当過ぎねぇか、おい!」
「あはははははは」
「お前、笑ってんじゃねぇよ、これがお前の仕事だろうっ!」
そんなやり取りをしていると、少女はクスクスと笑った。そして、「早く座りましょう」といって、こたつに入った。
あれ、今のって俺が悪いの、ねぇ!
「さぁ、回想シーンを流すわよ。見てなさい」
サクレはどこからともなくリモコンを取り出した。
ボタンを押すと、60インチの大型テレビの電源が入り、ムービーが始まる。
最初に映されたのは、少女がいじめられているシーンだった。
「あなた、人を殺したのになんで平然と生きていられるのよ、この犯罪者っ!」
「ほら、ちゃんと遺書を用意しておいてやったんだから、死ねば?」
「あ、あう、うう」
学校にある個人用の椅子に立たされて、首つり用のロープを握りしめた少女の姿。
おいおいおいおい、なんてヘビィーなことになっているの! これってどういうことっ!
というか、なんで少女が人を殺したことに…………俺か。
少女が本当に首を吊りそうになったところで、先生が止めた。しかも、周りの生徒たちは、おとがめなしで少女が怒られている、なんて理不尽な。
「あれは楽しかったですね」
「ほんと、楽しそうだね」
「「あははははははは」」
「いや、その発言おかしくねぇ、絶対におかしいよねっ」
よく見ると、ムービーに映っている少女も満更でもない様子。え、ナニコレ、いじめられて喜んでいる?
俺の常識が崩れ去っていく気がする。
ムービーに映っている少女はうっすらと笑っていた。とてもうれしそうだ。
本当に、何か間違っているよこれ。
先生のお説教から解放された少女はそのまま帰宅、自宅のマンションまでたどり着く。そこで見つけてしまったのだ。自宅のマンション近くにある駐輪場、その屋根の上に輝く10円を。
「あ、あれがあれば うまか棒を買えるっ!」
手をわなわな震わす少女。キリッと、何か決意を固めたような表情をする。
そして、駐輪場の屋根の上に登り始めた。
少女はおどおどしながら、10円の元に進んでいき、そっと、10円を拾った。
「やった、やったよ、お母さん」
君は本当にそれでいいのか。10円だぞ、どんだけ貧しいんだよ。
そんなツッコミを心の中で入れていると、ムービーに出ている、駐輪場の屋根の上にいた少女が体勢を崩した。
そしてそのまま……。
回想ムービーはここで終わっている。
「ごめんなさいお兄ちゃん。私、へまして死んじゃったんです。せっかく助けてもらったのに……」
「いや、えっと、なんていうか……」
今の回想を見てしまうと、コメントに困ってしまうのだが。
「でも、お兄ちゃんとあえてうれしいーーーー」
「あ、え、ええええええええええええええええええええ」
少女は突然、神々しい光に包まれて、天に召された。いや、ここが天だから、転生したってことか?
「へへ、あまりにも長いからやっちゃった」
「やっちゃったじゃねぇよ。これから、転生神としていろいろと仕事をやらなきゃいけないんじゃねぇのかよ!」
「あーー引っ張らないで、痛い、痛いから。わーーん、ごめんなさい」
あの少女、ちゃんと幸せになれるといいんだけど。
「なんか虐められるの好きそうだから、かなり過酷な世界に転生させてあげたんだ。喜んでくれるかな?」
「ざけんなっ!」
この後、いろんな神様に頭を下げに行って、何とかあの少女を幸せな普通の世界に導くことが出来た。
この駄女神、早く何とかしないと、俺が苦労しそうな予感がする。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。


日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる