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7つのくてくてと放浪の賢者
No2は伊達じゃない_2
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ヴィスたちは王城の前に来ていた。
アティーラを引きずって来ていたためか、周りからの鋭い視線がヴィスたちに向かう。
「大丈夫か、セーラ」
「っく、何のこれしき。それにしても、心の修行ですか。これはなかなか効きますね」
ヴィスはアティーラを引きずって連れて行くことを心の修行だとセーラにさりげなく言ってみた。するとセーラは自発的に、アティーラを目立つような恰好にさせていく。
そんな目立つアティーラを引き摺って歩くセーラは人々の注目の的になる。もちろん、ダメな方向でだ。
人の視線、声、表情一つひとつがセーラのメンタルを削っていく。なるほど、これが心の修行かとセーラは納得した。
そして、修行のために奇抜な恰好をさせられたアティーラはと言うと……。
「あは、あはははは、皆見てる。私、汚れちゃった……」
アレなことされた後のような、死んだ魚の目のような感じになっていた。
ちなみにアティーラが着ているのは牛娘なりきりセットという、どんな貧乳娘でも巨乳の感覚を味わえるというアダルトなアイテムだ。一部の女性、特に貧乳がデフォの種族に大人気のアイテムである。
かといってそのアイテムを使って堂々と人前に出る奴なんていない。なんたってアダルトなアイテムなのだ。オープンに使うのなんて痴女か痴女ぐらいだろう。
服はちゃんと着ているにしても、アダルトなアイテムで巨乳になった状態で外を歩かされるのだ、しかも縛られて。人の視線が集まるのも仕方がない。そして、女神であるアティーラは羞恥心で顔が真っ赤になり、さらに視線を集めた。
堂々としていれば、そういう人だよねということで、一部の男性以外の視線は集めなかったはずだ。アティーラはすべてがわかりやすすぎた。
「もう、おうちに帰りたい。おうちで馬券握りしめて競馬中継を聞きたい」
「てめぇは馬券すら買う金がないんだから俺らに協力しろよ。ちゃんとセーラの修行代として金を出すからさ」
「じゃあ頑張るわっ!」
金が出ると聞いた瞬間、羞恥心をすてたアティーラだった。現金な奴だった。
「とりあえず中に入ってラセルアに話を聞きに行くぞ」
「はい師匠っ!」
「え、私こんな格好だよ。こんな格好で入っていいの」
「「…………」」
「二人とも何か言ってよっ!」
アティーラの存在は置いておき、セーラとヴィスは王城に入ろうとする。そして止められる。それは当然のことだった。
戦士と皇女様はまあいいだろう。ヴィスはラセルアのもと恋人だし、セーラに至っては他国の皇女様だ。適当な理由をつければあってくれる可能性もあった。それに今回は、放浪の叡智という怪しげな団体の調査のためにやってきているのだ。話ぐらいは聞いてくれるだろう。
だけどアティーラはだめだ。今のアティーラは女神面影もなく、ただの痴女だった。それでは門番怪しむはず……。
「ヴィス、貴様いったい何しに来た。これ以上ラセルア様をたぶらかすな。そしてそこの変態っ! 貴様なんて格好で出歩いているっ! この痴女めっ!」
アティーラはともかくとして、ヴィスまで止められるとは予想外だった。
ヴィスは、門番を無視して、真っすぐ突き進むことにする。
「俺はラセルアに用があるんだよ。さっさと通せ」
「駄目だっ! 貴様のようなロクデナシがそばにいるのはラセルア様の為にならん。どうしてラセルア様はこんなごみ屑をっ!」
「おうおう、結構ないいぐさじゃないか。セーラ。少し技を教えてやろうっ」
「はい、師匠っ!」
「し、師匠っ! 貴様! こんな幼気な子供に何を教える気だっ!」
門番は顔を真っ赤にしながら喚く。この門番はいったい何を想像したのだろうか。
ヴィスはちょっと引いた。さすがにその反応はないと思った。
「いいかセーラ。こういう変態はな、こうするんだよ!」
ヴィスは門番の鎧を見えない速さで打ち抜いた。鎧がメキメキのへこんで拳の跡ができる。門番は地面を転がってそのまま意識を失った。
「ほら、行くぞ」
「こんなことしていいんでしょうか?」
「知り合いに会いに来たのに邪魔したんだし、あいつ悪だろう」
「確かにそうですねっ!」
敵を悪と言うだけで素直に信じる、セーラは純情な子だった。何も考えず、ヴィスの言うことにうんと頷く。
アティーラは、「ヤダこの子、洗脳されてるんじゃ……」なんてことを思ったが、屑でロクデナシであるヴィスがそんなことできるはずもないと思ったので何も言わないことにした。
邪魔しに来る敵をことごとく倒しながらラセルアの部屋に向かう。
最後の砦。ラセルアの部屋の前までたどり着いた。部屋の目の前には、結構しっかりとした武装をしているメイドが立っている。いわゆる、武装メイドという奴だ。
「始めまして。いえ、お久しぶりです、と言ったほうが良いかしら」
「えっと、誰だっけ?」
「この際私の名前などどうでもいいのです。私のことはただのメイドと思い下さい」
「うーん、一晩関係を持ったような……」
「あの夜はとても激しかったですね」
「うん、思い出せん。ただ、命の危険があったということだけは覚えているよ」
ヴィスの言葉に顔をほんのりと赤くさせたアティーラとセーラ。だけど最後の命の危険という言葉を聞いて、一体何があったのか分からなくなる。その事情は本人たちしか分からない。
「今日はラセルアに会いに来た。そこを通してくれないか」
ヴィスはまじめにそう言うが、メイドはゆっくりと首を振る。
「ここを通すわけにはいきません。通りたければ……」
メイドはゆっくりと、セーラとアティーラを指差した。
「後ろの女を排除してください。そんなのを連れているあなたを見てしまったら、あなたのことになると一瞬でお金を貢ぐだけの駄女神になるラセルア様の心が大変なことにになります」
「それは無理だ。セーラは神聖セルーア帝国の皇女だし、この変態みたいなアティーラって女は俺に付きまとう女神だ。セーラはまともな皇女だし、俺の弟子みたいなものだからいいけどアティーラは正直邪魔だ。捨てたいけど女神保護法のせいで捨てられないんだよ。察してくれ」
「そうですか、ならしかたありませんね。我らが女神ラセルア様の部屋にご案内します」
案内と言っても、メイドの後ろにある扉を開くだけだ。ヴィスは呆れた目でメイドを見つめる。
するとメイドがハリガネを取り出して鍵穴に差し込んだ。
「お前、何やってんの?」
「見てわかりませんか。ピッキングです」
ドヤ顔で言った。ドヤ顔で言うことではないのだが、メイドは凄いドヤ顔だった。
「いや、なんでピッキング? 普通にラセルアを呼んでくれればいいんだけど……」
「ラセルア様はお前に捨てられてあれからずっと寝込んでいるのです。鍵も内側からかけられて無理なんですよ。だからピッキングです。静かにやっているのでこれなら気が付かれませんよ」
「そっか、セーラから見てあれはセーフか?」
ヴィスは心配だった。セーラは何よりも正義を愛す。ということは、下手するとセーラが暴れる可能性があるからだ。
だけど、セーラは特に暴れる様子もなく、普通にメイドの行動を見つめていた。
「別にいいんじゃないですか? これが全く知らない人ならいざ知らず、今回は身内ですから。あれですよ。引きこもりの息子を部屋から引きずり出す親の行動です」
「そうか。なるほどな……」
と言いながらヴィスの内心はちょっとだけ複雑だった。身内なら犯罪はセーフ。確かに、親の財布からお金を盗む、この行動は窃盗に値するのだが、家族内のため犯罪に発展させないということができる。ちゃんと法律で決まっているのだ。
メイドの行動は確かに身内の行動。法律を破っているわけではない。ならセーラ的にセーフというのはなんとなくわかるが、勝手に部屋を開けられるのは個人的に不愉快な気持になるのをわかっているので、複雑だと感じてしまう。
もやもやした気持ちで待っていると、ガチャリと鍵が空いた。
ラセルアが閉ざした扉が、開こうとしていた。
アティーラを引きずって来ていたためか、周りからの鋭い視線がヴィスたちに向かう。
「大丈夫か、セーラ」
「っく、何のこれしき。それにしても、心の修行ですか。これはなかなか効きますね」
ヴィスはアティーラを引きずって連れて行くことを心の修行だとセーラにさりげなく言ってみた。するとセーラは自発的に、アティーラを目立つような恰好にさせていく。
そんな目立つアティーラを引き摺って歩くセーラは人々の注目の的になる。もちろん、ダメな方向でだ。
人の視線、声、表情一つひとつがセーラのメンタルを削っていく。なるほど、これが心の修行かとセーラは納得した。
そして、修行のために奇抜な恰好をさせられたアティーラはと言うと……。
「あは、あはははは、皆見てる。私、汚れちゃった……」
アレなことされた後のような、死んだ魚の目のような感じになっていた。
ちなみにアティーラが着ているのは牛娘なりきりセットという、どんな貧乳娘でも巨乳の感覚を味わえるというアダルトなアイテムだ。一部の女性、特に貧乳がデフォの種族に大人気のアイテムである。
かといってそのアイテムを使って堂々と人前に出る奴なんていない。なんたってアダルトなアイテムなのだ。オープンに使うのなんて痴女か痴女ぐらいだろう。
服はちゃんと着ているにしても、アダルトなアイテムで巨乳になった状態で外を歩かされるのだ、しかも縛られて。人の視線が集まるのも仕方がない。そして、女神であるアティーラは羞恥心で顔が真っ赤になり、さらに視線を集めた。
堂々としていれば、そういう人だよねということで、一部の男性以外の視線は集めなかったはずだ。アティーラはすべてがわかりやすすぎた。
「もう、おうちに帰りたい。おうちで馬券握りしめて競馬中継を聞きたい」
「てめぇは馬券すら買う金がないんだから俺らに協力しろよ。ちゃんとセーラの修行代として金を出すからさ」
「じゃあ頑張るわっ!」
金が出ると聞いた瞬間、羞恥心をすてたアティーラだった。現金な奴だった。
「とりあえず中に入ってラセルアに話を聞きに行くぞ」
「はい師匠っ!」
「え、私こんな格好だよ。こんな格好で入っていいの」
「「…………」」
「二人とも何か言ってよっ!」
アティーラの存在は置いておき、セーラとヴィスは王城に入ろうとする。そして止められる。それは当然のことだった。
戦士と皇女様はまあいいだろう。ヴィスはラセルアのもと恋人だし、セーラに至っては他国の皇女様だ。適当な理由をつければあってくれる可能性もあった。それに今回は、放浪の叡智という怪しげな団体の調査のためにやってきているのだ。話ぐらいは聞いてくれるだろう。
だけどアティーラはだめだ。今のアティーラは女神面影もなく、ただの痴女だった。それでは門番怪しむはず……。
「ヴィス、貴様いったい何しに来た。これ以上ラセルア様をたぶらかすな。そしてそこの変態っ! 貴様なんて格好で出歩いているっ! この痴女めっ!」
アティーラはともかくとして、ヴィスまで止められるとは予想外だった。
ヴィスは、門番を無視して、真っすぐ突き進むことにする。
「俺はラセルアに用があるんだよ。さっさと通せ」
「駄目だっ! 貴様のようなロクデナシがそばにいるのはラセルア様の為にならん。どうしてラセルア様はこんなごみ屑をっ!」
「おうおう、結構ないいぐさじゃないか。セーラ。少し技を教えてやろうっ」
「はい、師匠っ!」
「し、師匠っ! 貴様! こんな幼気な子供に何を教える気だっ!」
門番は顔を真っ赤にしながら喚く。この門番はいったい何を想像したのだろうか。
ヴィスはちょっと引いた。さすがにその反応はないと思った。
「いいかセーラ。こういう変態はな、こうするんだよ!」
ヴィスは門番の鎧を見えない速さで打ち抜いた。鎧がメキメキのへこんで拳の跡ができる。門番は地面を転がってそのまま意識を失った。
「ほら、行くぞ」
「こんなことしていいんでしょうか?」
「知り合いに会いに来たのに邪魔したんだし、あいつ悪だろう」
「確かにそうですねっ!」
敵を悪と言うだけで素直に信じる、セーラは純情な子だった。何も考えず、ヴィスの言うことにうんと頷く。
アティーラは、「ヤダこの子、洗脳されてるんじゃ……」なんてことを思ったが、屑でロクデナシであるヴィスがそんなことできるはずもないと思ったので何も言わないことにした。
邪魔しに来る敵をことごとく倒しながらラセルアの部屋に向かう。
最後の砦。ラセルアの部屋の前までたどり着いた。部屋の目の前には、結構しっかりとした武装をしているメイドが立っている。いわゆる、武装メイドという奴だ。
「始めまして。いえ、お久しぶりです、と言ったほうが良いかしら」
「えっと、誰だっけ?」
「この際私の名前などどうでもいいのです。私のことはただのメイドと思い下さい」
「うーん、一晩関係を持ったような……」
「あの夜はとても激しかったですね」
「うん、思い出せん。ただ、命の危険があったということだけは覚えているよ」
ヴィスの言葉に顔をほんのりと赤くさせたアティーラとセーラ。だけど最後の命の危険という言葉を聞いて、一体何があったのか分からなくなる。その事情は本人たちしか分からない。
「今日はラセルアに会いに来た。そこを通してくれないか」
ヴィスはまじめにそう言うが、メイドはゆっくりと首を振る。
「ここを通すわけにはいきません。通りたければ……」
メイドはゆっくりと、セーラとアティーラを指差した。
「後ろの女を排除してください。そんなのを連れているあなたを見てしまったら、あなたのことになると一瞬でお金を貢ぐだけの駄女神になるラセルア様の心が大変なことにになります」
「それは無理だ。セーラは神聖セルーア帝国の皇女だし、この変態みたいなアティーラって女は俺に付きまとう女神だ。セーラはまともな皇女だし、俺の弟子みたいなものだからいいけどアティーラは正直邪魔だ。捨てたいけど女神保護法のせいで捨てられないんだよ。察してくれ」
「そうですか、ならしかたありませんね。我らが女神ラセルア様の部屋にご案内します」
案内と言っても、メイドの後ろにある扉を開くだけだ。ヴィスは呆れた目でメイドを見つめる。
するとメイドがハリガネを取り出して鍵穴に差し込んだ。
「お前、何やってんの?」
「見てわかりませんか。ピッキングです」
ドヤ顔で言った。ドヤ顔で言うことではないのだが、メイドは凄いドヤ顔だった。
「いや、なんでピッキング? 普通にラセルアを呼んでくれればいいんだけど……」
「ラセルア様はお前に捨てられてあれからずっと寝込んでいるのです。鍵も内側からかけられて無理なんですよ。だからピッキングです。静かにやっているのでこれなら気が付かれませんよ」
「そっか、セーラから見てあれはセーフか?」
ヴィスは心配だった。セーラは何よりも正義を愛す。ということは、下手するとセーラが暴れる可能性があるからだ。
だけど、セーラは特に暴れる様子もなく、普通にメイドの行動を見つめていた。
「別にいいんじゃないですか? これが全く知らない人ならいざ知らず、今回は身内ですから。あれですよ。引きこもりの息子を部屋から引きずり出す親の行動です」
「そうか。なるほどな……」
と言いながらヴィスの内心はちょっとだけ複雑だった。身内なら犯罪はセーフ。確かに、親の財布からお金を盗む、この行動は窃盗に値するのだが、家族内のため犯罪に発展させないということができる。ちゃんと法律で決まっているのだ。
メイドの行動は確かに身内の行動。法律を破っているわけではない。ならセーラ的にセーフというのはなんとなくわかるが、勝手に部屋を開けられるのは個人的に不愉快な気持になるのをわかっているので、複雑だと感じてしまう。
もやもやした気持ちで待っていると、ガチャリと鍵が空いた。
ラセルアが閉ざした扉が、開こうとしていた。
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