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7つのくてくてと放浪の賢者
No2は伊達じゃない_1
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「はっはっはっはっはっは。もうくてくてが二つもそろっちまったぜ。もう最高だなっ」
隠れ家に戻ってきて一日が経った。
ヴィスは調子に乗っていた。盗賊から奪った宝は売れなかったが、なんでも願いをかなえる願いの神様のもとへ連れて行ってくれる神秘のアイテム、くてくてが手に入ったのだ。しかも続けて、だ。順調すぎて高笑いしたくてもしょうがない。だがしかし、くてくてで願いをかなえるためには7つ集めなければならない。ヴィスたちが所持しているくてくては現在2つ。これでは願いをかなえることができない。
だけどヴィスが奪ったくてくての一つは、放浪の叡智というカルト集団というか犯罪者集団的な怪しい団体の一人が持っていたのだ。つまり、その放浪の叡智という組織の人間を襲えば、くてくてが手に入ることは間違いない。
思考が盗賊のそれであるが、ヴィスは気にしない。自分の思うがままに生きる、それがヴィスという男だ。
「よし、セーラ。今日は行きたい場所がある」
「はい師匠っ! 私はどこだってついていきます」
「そうか、ところでアティーラはどこに行った?」
「ああ、借金は、そこに……」
冷めた目で部屋の隅っこを指さす。そこには足を抱えて蹲るアティーラの姿があった。
「あひぃ、しょんな……どうしてこんにゃことに……」
瞳孔が激しく揺れており、髪が乱れ切っている。暗い顔をしながらぶつぶつと何かつぶやいている姿は、どう見たってやばいやつにしか見えない。
アティーラの周りには何かの券のような紙が大量に散らばっていた。
ヴィスはそのうちの一枚を拾う。それはスポーツくじだった。しかも全部外れてる。
スポーツくじなんて一枚大した値段じゃない。だけど当たるとそこそこでかい金額がもらえる。その分当たる確率も低い。アティーラは高額当選目当てで大量のスポーツくじを買ったようだ。競馬で借金をしたときの全く同じ姿だった。
「お前……もしかして…………」
「ヴィジュぅぅぅぅぅぅぅぅぅ、助けて、たすけてよぉぉぉぉぉぉぉぉ。当たると、当たると思ったのよ、だから全財産かけて買ったのに、全部外れるなんてあんまりよおおおおおおおおおお。こんだけ買ってるんだから高額当選じゃなくてもいいから少しぐらいあたりがでてもいいと思うのよおおおおおおお、うぁぁっぁぁぁぁぁぁん」
アティーラは鼻水を垂らしながらヴィスの足に縋りつく。殴られてまで稼いだお金を賭け事に使ってすべて失ったアティーラの心はボロボロだった。まあ、自業自得なわけだが、それはそれ、これはこれ、だ。
アティーラはたぶん、賭け事をする癖をなくさない限り幸せには慣れないだろう。だけど彼女は賭博の女神。たぶん一生幸せにはなれない。
「お前、借金は?」
アティーラは小さく首を振る。今回は借金をしていないようだ。前回の失敗から学んだのだろうか。それとも借金できなかっただけなのだろうか。それは誰にも分らない。
「でもお金が無くなっちゃった。お願いヴィス、私を助けて。私に人間らしい生活をさせてよっ」
「いやそれ、お前の自業自得だろう。賭け事なんてしなければ普通にいい生活ができるだけのお金を渡していただろう」
「だって私は賭博の女神なのよ。賭け事しないでどうしろっていうのよっ」
わがままで自分勝手なことを言うアティーラにセーラは冷めためで見下ろす。
「この借金、本当にダメ女ですね。捨てましょう。今すぐ捨てましょう」
セーラの気持ちが痛いほどわかるヴィスだが、アティーラを簡単には捨てられない事情があった。
彼女はこんなんでも女神なのだ。捨てられるわけがない。世界女神保護法に違反してしまう。女神は神聖な存在なので、人の手によって保護しなければならない。女神は恩恵を与える。その代わりに人間に養ってもらっているような感じなのだ。
まあ、アティーラには信者も誰もいなさそうなので無一文で、しかもだらしないから人間にお金を借りるという女神にあるまじき行為を普通にしているが、それを気にしても今更だろう。
とにかく、ヴィス達にはアティーラを捨てることができない。捨てたい場合は誰かに押し付ける必要がある。だけど押し付ける相手が誰もいない上に、きっと押し付けても勝手にヴィスたちのところに戻ってくるというのもわかっていた。
だからヴィスとセーラは、アティーラを板に括り付ける。
「うわぁぁぁっぁあん、私みたいな借金持ちのだめな女神は板に括り付けられてさらし者にされるのがお似合いなんだわ。うわぁぁぁぁぁん」
「お前、結構元気ありそうだな。引きずっていくか?」
「それがいいと思いますよ、師匠。こいつに板は贅沢ってものですよ。ちゃんと運んでほしかったら借金全額返済してギャンブル癖を直せってんだ、っけ」
「お前、こいつのこと嫌いだよな」
「大っ嫌いですよ。特にギャンブルで借金しちゃうダメな奴。世界の敵です。害悪です。ギャンブルを娯楽としてではなく、人生破滅しちゃうぐらいのレベルで全力投球するダメな人間は世界の害悪でしかありませんから。あくまで娯楽として楽しむ分にはいいんです。でも娯楽として楽しめない人は、ほかのことでも絶対にやらかしますから……犯罪とか犯罪とか犯罪とか。つまり、ギャンブルで人生やらかしちゃってる人たちは、犯罪者予備軍なんですよ。私の正義が許せません」
「ああ、確かにいるよな。ギャンブルで金が無くなって、それでもギャンブルがしたくて他人の家に忍び込んで金品を盗む奴。ろくでもない人間だよな」
ギャンブルで借金を負ったというだけでアティーラの評価はズタボロだ。本人も立ち直れなさそうな表情をしている。目が死んだ魚のようだ。
犯罪者予備軍と言われたアティーラはひもで縛られ、犯罪者のごとくずるずると引きずられることとなった。
城下町の人たちも、アティーラがどういう存在かなんとなく理解したのか、だれもツッコミは入れない。
「それで師匠、これからどこに行くのですか?」
「ああ、言ってなかったな。これから行くのはラセルアのところだ」
「はぁ、ラセルア……ラセルアっ! そそそ、それってこの国の女神様であらせられるラセルア様ですか」
「そのラセルアだが、お前ビビりすぎだろ。セーラだって皇女様じゃないか」
「皇女と女神じゃ立場が違いますっ! 女神ですよ。神様ですよ」
そういって慌てふためくセーラに向かって、ヴィスはアティーラを指さしながら真顔で言った。
「こいつは?」
「ただの借金です」
同じ女神でも普段の行いが違うだけでこうも扱いが違うらしい。
ラセルアは国民全員から崇められている女神様だ。各国にもファンがいるというなかなかにすごい女神なのである。
ただ一つ欠点があるとすれば、男の趣味が悪いことだ。
ヴィスと言うロクデナシの男を一途に愛し続けて、貢続けている。その唯一の欠点はお偉いさんしか知らないが、さてここで問題が起こる。
果たしてヴィスはラセルアに会うことが出来るのだろうか。
まあでも、きっと大丈夫だろうとヴィスは思う。なんだかんだ言ってラセルアはヴィスに甘い。今回もどうにかなるだろうとヴィスは思った。
隠れ家に戻ってきて一日が経った。
ヴィスは調子に乗っていた。盗賊から奪った宝は売れなかったが、なんでも願いをかなえる願いの神様のもとへ連れて行ってくれる神秘のアイテム、くてくてが手に入ったのだ。しかも続けて、だ。順調すぎて高笑いしたくてもしょうがない。だがしかし、くてくてで願いをかなえるためには7つ集めなければならない。ヴィスたちが所持しているくてくては現在2つ。これでは願いをかなえることができない。
だけどヴィスが奪ったくてくての一つは、放浪の叡智というカルト集団というか犯罪者集団的な怪しい団体の一人が持っていたのだ。つまり、その放浪の叡智という組織の人間を襲えば、くてくてが手に入ることは間違いない。
思考が盗賊のそれであるが、ヴィスは気にしない。自分の思うがままに生きる、それがヴィスという男だ。
「よし、セーラ。今日は行きたい場所がある」
「はい師匠っ! 私はどこだってついていきます」
「そうか、ところでアティーラはどこに行った?」
「ああ、借金は、そこに……」
冷めた目で部屋の隅っこを指さす。そこには足を抱えて蹲るアティーラの姿があった。
「あひぃ、しょんな……どうしてこんにゃことに……」
瞳孔が激しく揺れており、髪が乱れ切っている。暗い顔をしながらぶつぶつと何かつぶやいている姿は、どう見たってやばいやつにしか見えない。
アティーラの周りには何かの券のような紙が大量に散らばっていた。
ヴィスはそのうちの一枚を拾う。それはスポーツくじだった。しかも全部外れてる。
スポーツくじなんて一枚大した値段じゃない。だけど当たるとそこそこでかい金額がもらえる。その分当たる確率も低い。アティーラは高額当選目当てで大量のスポーツくじを買ったようだ。競馬で借金をしたときの全く同じ姿だった。
「お前……もしかして…………」
「ヴィジュぅぅぅぅぅぅぅぅぅ、助けて、たすけてよぉぉぉぉぉぉぉぉ。当たると、当たると思ったのよ、だから全財産かけて買ったのに、全部外れるなんてあんまりよおおおおおおおおおお。こんだけ買ってるんだから高額当選じゃなくてもいいから少しぐらいあたりがでてもいいと思うのよおおおおおおお、うぁぁっぁぁぁぁぁぁん」
アティーラは鼻水を垂らしながらヴィスの足に縋りつく。殴られてまで稼いだお金を賭け事に使ってすべて失ったアティーラの心はボロボロだった。まあ、自業自得なわけだが、それはそれ、これはこれ、だ。
アティーラはたぶん、賭け事をする癖をなくさない限り幸せには慣れないだろう。だけど彼女は賭博の女神。たぶん一生幸せにはなれない。
「お前、借金は?」
アティーラは小さく首を振る。今回は借金をしていないようだ。前回の失敗から学んだのだろうか。それとも借金できなかっただけなのだろうか。それは誰にも分らない。
「でもお金が無くなっちゃった。お願いヴィス、私を助けて。私に人間らしい生活をさせてよっ」
「いやそれ、お前の自業自得だろう。賭け事なんてしなければ普通にいい生活ができるだけのお金を渡していただろう」
「だって私は賭博の女神なのよ。賭け事しないでどうしろっていうのよっ」
わがままで自分勝手なことを言うアティーラにセーラは冷めためで見下ろす。
「この借金、本当にダメ女ですね。捨てましょう。今すぐ捨てましょう」
セーラの気持ちが痛いほどわかるヴィスだが、アティーラを簡単には捨てられない事情があった。
彼女はこんなんでも女神なのだ。捨てられるわけがない。世界女神保護法に違反してしまう。女神は神聖な存在なので、人の手によって保護しなければならない。女神は恩恵を与える。その代わりに人間に養ってもらっているような感じなのだ。
まあ、アティーラには信者も誰もいなさそうなので無一文で、しかもだらしないから人間にお金を借りるという女神にあるまじき行為を普通にしているが、それを気にしても今更だろう。
とにかく、ヴィス達にはアティーラを捨てることができない。捨てたい場合は誰かに押し付ける必要がある。だけど押し付ける相手が誰もいない上に、きっと押し付けても勝手にヴィスたちのところに戻ってくるというのもわかっていた。
だからヴィスとセーラは、アティーラを板に括り付ける。
「うわぁぁぁっぁあん、私みたいな借金持ちのだめな女神は板に括り付けられてさらし者にされるのがお似合いなんだわ。うわぁぁぁぁぁん」
「お前、結構元気ありそうだな。引きずっていくか?」
「それがいいと思いますよ、師匠。こいつに板は贅沢ってものですよ。ちゃんと運んでほしかったら借金全額返済してギャンブル癖を直せってんだ、っけ」
「お前、こいつのこと嫌いだよな」
「大っ嫌いですよ。特にギャンブルで借金しちゃうダメな奴。世界の敵です。害悪です。ギャンブルを娯楽としてではなく、人生破滅しちゃうぐらいのレベルで全力投球するダメな人間は世界の害悪でしかありませんから。あくまで娯楽として楽しむ分にはいいんです。でも娯楽として楽しめない人は、ほかのことでも絶対にやらかしますから……犯罪とか犯罪とか犯罪とか。つまり、ギャンブルで人生やらかしちゃってる人たちは、犯罪者予備軍なんですよ。私の正義が許せません」
「ああ、確かにいるよな。ギャンブルで金が無くなって、それでもギャンブルがしたくて他人の家に忍び込んで金品を盗む奴。ろくでもない人間だよな」
ギャンブルで借金を負ったというだけでアティーラの評価はズタボロだ。本人も立ち直れなさそうな表情をしている。目が死んだ魚のようだ。
犯罪者予備軍と言われたアティーラはひもで縛られ、犯罪者のごとくずるずると引きずられることとなった。
城下町の人たちも、アティーラがどういう存在かなんとなく理解したのか、だれもツッコミは入れない。
「それで師匠、これからどこに行くのですか?」
「ああ、言ってなかったな。これから行くのはラセルアのところだ」
「はぁ、ラセルア……ラセルアっ! そそそ、それってこの国の女神様であらせられるラセルア様ですか」
「そのラセルアだが、お前ビビりすぎだろ。セーラだって皇女様じゃないか」
「皇女と女神じゃ立場が違いますっ! 女神ですよ。神様ですよ」
そういって慌てふためくセーラに向かって、ヴィスはアティーラを指さしながら真顔で言った。
「こいつは?」
「ただの借金です」
同じ女神でも普段の行いが違うだけでこうも扱いが違うらしい。
ラセルアは国民全員から崇められている女神様だ。各国にもファンがいるというなかなかにすごい女神なのである。
ただ一つ欠点があるとすれば、男の趣味が悪いことだ。
ヴィスと言うロクデナシの男を一途に愛し続けて、貢続けている。その唯一の欠点はお偉いさんしか知らないが、さてここで問題が起こる。
果たしてヴィスはラセルアに会うことが出来るのだろうか。
まあでも、きっと大丈夫だろうとヴィスは思う。なんだかんだ言ってラセルアはヴィスに甘い。今回もどうにかなるだろうとヴィスは思った。
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