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稼業が嫌で逃げたらそこは異世界だった
2.目が覚めたら、そこは奈落の底でした
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ぴちゃりと、水が落ちる音がする。額に冷たい何かが当たったような気がした。
静けさのせいで響く水の音の反響がうるさくて眠れない。俺は思わず体を起こして、眠気眼をこすった。
そういや、ずっと落下していて、途中で寝始めたんだけど、あれからどうなったっけ?
そう思いながらあたりを見渡すと、そこは薄暗い洞窟の中だった。
多分洞窟ってわかるような場所にいるだけで、もしかしたら、ファンタジーなノベルや漫画にあるようなダンジョンと呼ばれる場所の中にいるのかもしれない。そんな展開だったらかなりテンプレートな感じだよな。
「それにしても、不思議なものがあるもんだな」
起き上がって、目についたそれをじっくりと観察する。形は苔のようなものだが、かなり明るく発光している。色は蛍の光のようで綺麗だった。そんな光る謎の苔が洞窟内を照らすことで、何とか辺りを見ることが出来ている。もしこれがなかったら、真っ暗な闇の中をさまようことになってしまいそうだった。正直、助かったと思っている。
さて、現状分析はこのぐらいにして、今の状況を整理しよう。
飛鳥と一緒に歩いていると、突然魔法陣のようなものが現れて、俺は不純物的な扱いを受けて魔法陣から放り出された。そこが俺の知っている世界に放り出されたのならよかったんだが、残念なことに真っ暗な謎空間に落とされてしまった。
なるほど、何も分からん。手持ちの荷物は、じっちゃんのとこを飛び出して来たから何も持ってないな。こうなってくると、不安を感じてくる。一応、家の流派にも無手で戦う型もある。だからある程度のモノと遭遇しても生きられるだろう。だが、もし仮に、ここが本当にファンタジーな世界だとして、元の世界に存在する鬼、それも特別個体級の敵と遭遇して、俺はこのまま生きていられるだろうか。うん、絶対に無理だな。
それに、食料の問題もある。見たところ生物らしいものは何もいない。さて、どうしたものか。
「こういう時は何も考えずに散策するか。うだうだ考えていても仕方がない。うん、そうしよう」
という訳で、散策が始まった。
こういう洞窟を見るのはテレビの中だけで、実際に歩くのは初めてだ。鬼狩り時代だって、基本的に山とかで、密閉した空間に攻め入ることなんてほとんどなかったからな。
初めての経験と考えるだけで、あらゆる不安が頭に浮かんでくる。こういう時は、できるだけリスク回避するよう行動すれば大抵は生き残れることを俺は知っている。
あたりを注意深く観察し、情報を集め、整理する。たったこれだけのことをやるかやらないかが生存率にかかってくるからな。徹底しなきゃ。
そう思っての行動だったが、そのおかげで面白いモノを見つけることが出来た。
「こっちの方から風が流れている。とりあえず行ってみるか」
風が流れているということは、どこかしらの空洞があるか、もしくは外と繋がっている道があるはずだ。この流れを辿って行けば、今の場所から脱出できるかもしれない。
そう思って進んでみると、人工的に作られたであろう扉を見つけた。
こんな辺鄙な場所で誰かが暮らしているとは思いたくないが、だからと言ってこんな場所に扉があるとかありえないと思ってしまう。
もし、ここがゲームの中って言うなら、盗賊のアジトとかにありそうだよな。
…………ここ、盗賊のアジトとかじゃないよね。
とりあえず、俺は「ごめんくださーい」と小さい声で言いつつ、コンコンと2回ノックをした。そしてすぐに扉から一定の距離をとる。正直、中に誰もいないことは分かっている。だから半分は悪ふざけ。もう半分は、もし俺が気が付けない何かがいた場合に即座に反応するための確認、と言ったところか。
反応しない扉を再度調べる。罠などが仕掛けられていないことを確認して、ゆっくりと扉を開けると、信じられないものがそこにあった。
「なんでこんなものがここに?」
誰かが昔使っていたであろう部屋っぽかった。古ぼけて、ずっと誰も使っていない、それがすぐにわかるぐらい汚れていた。だけど、俺が見て驚いているのは、そんな分かり切ったことについてではなかった。
家紋が、掘られていたのだ。岩を削って作られたその家紋は、幼少期からずっと目にしていた、鬼月家のものと同じだった。
掘られた家紋を手でなぞり、じっくりと観察する。もしかしたら見間違いかもしれない、そんなことを思ったりもしたが、見れば見る程、鬼月家の家紋であることがはっきりと感じられた。
目が覚めたら変な洞窟の中にいたんだ、ラノベやゲーム展開ならここが異世界であると思うのが普通だろう。それともなんだ、鬼の襲撃にでもあったのか?
ほかに手がかりになりそうなものを探してみたが、大したものはなかった。一つだけ、気になるものは見つけた。それは一冊の手記。でも、ボロボロでところどころ文字がかけてる上に、見たこともない文字で書かれている。こりゃ読めるはずもない。
だけど、なんとなく鬼月家が関係している、ということだけは分かった。
記されている図だけで、おおよそ見当がつく。ここに記されているのは、鬼月家が保管している、鬼を狩るための妖刀についてだった。
鬼を狩るには普通の刀では不可能とされている。どこでどのように作られたかは知らないが、俺の家、鬼月家には鬼伐刀と呼ばれる鬼を狩るための刀を持っていた。その刀は使用者を選ぶ不思議な妖刀で、まるで意志があるかのように使用者の心に合わせて姿、形を変える。まるでアニメに出てきそうな不思議な刀。全部で71本、そのすべてがここに記されていた。
いったいなんだってこんなものが。
鬼伐刀は一般的に知られていない情報だし、何よりここは異世界なんだろう? 情報なんてあるはずないんだけど。
そう思いながら、ペラペラとページをめくると、最後のページに知らない刀の絵が載っていた。文字は読めない。けどなんとなくわかる。俺も一応鬼月家の一員だからな。料理人を目指そうと思ってはいても、家のことなのでその辺の知識は自然と入ってくる。
でも、ここに書かれている刀は俺の知らないものだった。
72本目の鬼伐刀? そんなの聞いたことがないぞ。文字さえ読めればいろいろとわかるんだけど、読めないものは仕方がない。
没頭するかのように、手記を読んでいると、スゥーっと、風が頬を撫でた。
顔を上げて奥を見る。でも、見えるのはただの壁。風が通りそうなところなど、どこにもない。
こういうのってRPGのお約束だよな。
俺は手記をポケットにしまい、壁を触って確かめる。すると、いかにもっぽい不自然な出っ張りを見つけたので押してみた。
「よし、思った通りっ」
ゲームの中でよくある、隠し扉。どうやらここから風が流れて来たみたいだ。でも何だろう。それだけじゃない気がする。霊気というか、妖気というか、そんなものが混じっている気がする。
こういう隠し扉の奥って、大抵二択だよな。宝箱が置いてあるか、ボスがいるか。
この気配、ボスっぽいんだけど……確認してみたいことには始まらない。
何かあるなら確かめないと、今の状況を打破することなんて出来ないからな。
「よし、いくかっ」
俺は覚悟を決めて奥に進んだ。そこで、凄いものを見つける。
台座に深々と刺さった、禍々しい刀だ。
ごくりと唾を飲む。まるでゲームで聖剣か魔剣が刺さっていそうな、そんな台座に、我ここにありと主張しているかのように、刀が刺さっているっ。
な、なんだろう。これはこれでなんか違くね?
静けさのせいで響く水の音の反響がうるさくて眠れない。俺は思わず体を起こして、眠気眼をこすった。
そういや、ずっと落下していて、途中で寝始めたんだけど、あれからどうなったっけ?
そう思いながらあたりを見渡すと、そこは薄暗い洞窟の中だった。
多分洞窟ってわかるような場所にいるだけで、もしかしたら、ファンタジーなノベルや漫画にあるようなダンジョンと呼ばれる場所の中にいるのかもしれない。そんな展開だったらかなりテンプレートな感じだよな。
「それにしても、不思議なものがあるもんだな」
起き上がって、目についたそれをじっくりと観察する。形は苔のようなものだが、かなり明るく発光している。色は蛍の光のようで綺麗だった。そんな光る謎の苔が洞窟内を照らすことで、何とか辺りを見ることが出来ている。もしこれがなかったら、真っ暗な闇の中をさまようことになってしまいそうだった。正直、助かったと思っている。
さて、現状分析はこのぐらいにして、今の状況を整理しよう。
飛鳥と一緒に歩いていると、突然魔法陣のようなものが現れて、俺は不純物的な扱いを受けて魔法陣から放り出された。そこが俺の知っている世界に放り出されたのならよかったんだが、残念なことに真っ暗な謎空間に落とされてしまった。
なるほど、何も分からん。手持ちの荷物は、じっちゃんのとこを飛び出して来たから何も持ってないな。こうなってくると、不安を感じてくる。一応、家の流派にも無手で戦う型もある。だからある程度のモノと遭遇しても生きられるだろう。だが、もし仮に、ここが本当にファンタジーな世界だとして、元の世界に存在する鬼、それも特別個体級の敵と遭遇して、俺はこのまま生きていられるだろうか。うん、絶対に無理だな。
それに、食料の問題もある。見たところ生物らしいものは何もいない。さて、どうしたものか。
「こういう時は何も考えずに散策するか。うだうだ考えていても仕方がない。うん、そうしよう」
という訳で、散策が始まった。
こういう洞窟を見るのはテレビの中だけで、実際に歩くのは初めてだ。鬼狩り時代だって、基本的に山とかで、密閉した空間に攻め入ることなんてほとんどなかったからな。
初めての経験と考えるだけで、あらゆる不安が頭に浮かんでくる。こういう時は、できるだけリスク回避するよう行動すれば大抵は生き残れることを俺は知っている。
あたりを注意深く観察し、情報を集め、整理する。たったこれだけのことをやるかやらないかが生存率にかかってくるからな。徹底しなきゃ。
そう思っての行動だったが、そのおかげで面白いモノを見つけることが出来た。
「こっちの方から風が流れている。とりあえず行ってみるか」
風が流れているということは、どこかしらの空洞があるか、もしくは外と繋がっている道があるはずだ。この流れを辿って行けば、今の場所から脱出できるかもしれない。
そう思って進んでみると、人工的に作られたであろう扉を見つけた。
こんな辺鄙な場所で誰かが暮らしているとは思いたくないが、だからと言ってこんな場所に扉があるとかありえないと思ってしまう。
もし、ここがゲームの中って言うなら、盗賊のアジトとかにありそうだよな。
…………ここ、盗賊のアジトとかじゃないよね。
とりあえず、俺は「ごめんくださーい」と小さい声で言いつつ、コンコンと2回ノックをした。そしてすぐに扉から一定の距離をとる。正直、中に誰もいないことは分かっている。だから半分は悪ふざけ。もう半分は、もし俺が気が付けない何かがいた場合に即座に反応するための確認、と言ったところか。
反応しない扉を再度調べる。罠などが仕掛けられていないことを確認して、ゆっくりと扉を開けると、信じられないものがそこにあった。
「なんでこんなものがここに?」
誰かが昔使っていたであろう部屋っぽかった。古ぼけて、ずっと誰も使っていない、それがすぐにわかるぐらい汚れていた。だけど、俺が見て驚いているのは、そんな分かり切ったことについてではなかった。
家紋が、掘られていたのだ。岩を削って作られたその家紋は、幼少期からずっと目にしていた、鬼月家のものと同じだった。
掘られた家紋を手でなぞり、じっくりと観察する。もしかしたら見間違いかもしれない、そんなことを思ったりもしたが、見れば見る程、鬼月家の家紋であることがはっきりと感じられた。
目が覚めたら変な洞窟の中にいたんだ、ラノベやゲーム展開ならここが異世界であると思うのが普通だろう。それともなんだ、鬼の襲撃にでもあったのか?
ほかに手がかりになりそうなものを探してみたが、大したものはなかった。一つだけ、気になるものは見つけた。それは一冊の手記。でも、ボロボロでところどころ文字がかけてる上に、見たこともない文字で書かれている。こりゃ読めるはずもない。
だけど、なんとなく鬼月家が関係している、ということだけは分かった。
記されている図だけで、おおよそ見当がつく。ここに記されているのは、鬼月家が保管している、鬼を狩るための妖刀についてだった。
鬼を狩るには普通の刀では不可能とされている。どこでどのように作られたかは知らないが、俺の家、鬼月家には鬼伐刀と呼ばれる鬼を狩るための刀を持っていた。その刀は使用者を選ぶ不思議な妖刀で、まるで意志があるかのように使用者の心に合わせて姿、形を変える。まるでアニメに出てきそうな不思議な刀。全部で71本、そのすべてがここに記されていた。
いったいなんだってこんなものが。
鬼伐刀は一般的に知られていない情報だし、何よりここは異世界なんだろう? 情報なんてあるはずないんだけど。
そう思いながら、ペラペラとページをめくると、最後のページに知らない刀の絵が載っていた。文字は読めない。けどなんとなくわかる。俺も一応鬼月家の一員だからな。料理人を目指そうと思ってはいても、家のことなのでその辺の知識は自然と入ってくる。
でも、ここに書かれている刀は俺の知らないものだった。
72本目の鬼伐刀? そんなの聞いたことがないぞ。文字さえ読めればいろいろとわかるんだけど、読めないものは仕方がない。
没頭するかのように、手記を読んでいると、スゥーっと、風が頬を撫でた。
顔を上げて奥を見る。でも、見えるのはただの壁。風が通りそうなところなど、どこにもない。
こういうのってRPGのお約束だよな。
俺は手記をポケットにしまい、壁を触って確かめる。すると、いかにもっぽい不自然な出っ張りを見つけたので押してみた。
「よし、思った通りっ」
ゲームの中でよくある、隠し扉。どうやらここから風が流れて来たみたいだ。でも何だろう。それだけじゃない気がする。霊気というか、妖気というか、そんなものが混じっている気がする。
こういう隠し扉の奥って、大抵二択だよな。宝箱が置いてあるか、ボスがいるか。
この気配、ボスっぽいんだけど……確認してみたいことには始まらない。
何かあるなら確かめないと、今の状況を打破することなんて出来ないからな。
「よし、いくかっ」
俺は覚悟を決めて奥に進んだ。そこで、凄いものを見つける。
台座に深々と刺さった、禍々しい刀だ。
ごくりと唾を飲む。まるでゲームで聖剣か魔剣が刺さっていそうな、そんな台座に、我ここにありと主張しているかのように、刀が刺さっているっ。
な、なんだろう。これはこれでなんか違くね?
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