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第二章:スイーツ王子と盗難事件

第十四話~あっさりと犯人が分かりました~

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 これから始まる裁判。
 今回の事件は、私の部屋に置かれていたケーキを食べたところから始まった。
 あれはベルトリオが買って、大切に食べようとしていた、行列のできるお店のケーキだった。
 いったい誰が私の部屋に置いたのか、今日、ここで明らかにしてやる。
 やってやるぞ、破滅の運命。今回も、私が勝つ!



「では最初に、加害者の意見から聞こうか」

 私は公平ですという素敵な雰囲気をか持ち出すディールライト皇帝陛下。でもさりげなく私を犯人だと決めつけている感じが何だか気に食わない。
 私は、若干苛立ちながらも反論する。

「今回の事件ですけど、ケーキを食べたから私が犯人っておかしくないですか。そもそも、目が覚めたら私の眠っていた部屋にケーキがおいてあったんです。私はそれを食べただけなの……」

「意義ありっ!」

 私が言い訳している最中なのに、豚のベルトリオが邪魔をしてきた。
 というか、『意義あり』ってなんか違くない? 『異議あり』だと思うんだけど……。

「そもそも、なぜケーキが貴様の部屋にある。あのケーキの存在は、一部の者しか知らぬ」

「じゃあ誰が知っていたというのさ」

「それは、バハム、クリスティラ、そして貴様だっ!」

「ちょ、それなんて言いがかりっ!」

 私はそんなこと知らないんだけど。なのに、勝手に私をケーキの存在を知る一人にしないでほしいかな、かなっ!

「正確には、貴様の忍びだがな」

「半蔵、ここに来なさい」

「っは。でも、こんな場所にきていいでござるか?」

 私の一声で半蔵が現れる。普通、人が突然シュパっと現れたら驚きそうなものだけど、この場に驚く人は誰もいない。なんだか不思議だ。
 と思ったら、一人、驚き過ぎて泡拭いて気絶している人がいた。
 ディールライト皇帝陛下である。
 皇帝陛下、それでいいんですか?

「半蔵、あなたに訊きたいことが一つあるんだけど、いいかな」

「拙者に何を聞きたいでござるか、主殿」

「あなたが、ケーキの所在を知っていたって、今知ったんだけど、本当?」

「本当でござるよ」

 そして半蔵は語る。
 このネズミ一匹入るのも難しい城で、どう私を守ろうかといろいろ散策していた時、ベルトリオと出会ったそうな。
 その出会った場所が、例のケーキがあるところ。時間はちょうど、私が納豆巻きを食べているころね。
 触手をむさぼっていた豚トリオがなんでそんな場所にいるのか知らないんだけど、たまたま半蔵と出くわしてしまったらしい。
 その時、ケーキの自慢をされたとかされていないだとか。
 知らない人に自分の大切なものの隠し場所をべらべらとしゃべっちゃうなんて、あたまどうかしてんじゃないのとツッコミたい。
 それよりも、私、そんなこと知らないんだけど……。

「貴様はケーキについて知っていた。この中で部外者なのはお前だけ、貴様が犯人だっ! よし、処刑しよう」

「ちょっとまって、おかしいでしょうっ!」

 知っているから私が犯人って、話がおかしいでしょうに、この豚トリオは……。

「っむ、なんか失礼なことを思われたような気がするのだが」

「気のせいよ」

「そうか、気のせいか」

 相変わらずのちょろベルトさんで助かった。
 さて、ここから反論と行きましょうか。私はすでに、犯人が分かっているっ!

「まず最初に話すべき点、それは、どうやって頑丈にしまわれたケーキを奪ったかを話すべきなのよっ!」

「ふん、そんなもの…………あれ、貴様、どうやって開けたっ!」

「あらあら、我が愚息は、本当に愚か者ですね」

 セルシリア様、息子に結構厳しいことを言うのね。まあ、あの豚を息子としてみたくないという気持ちからかもしれないけど。
 おっと、思考がずれた。今は助かる方法を考えよう。

「それじゃあ、ベルトリオがケーキをしまっていた場所が指紋認証式の金庫だった件について話しましょうか」

「まて、なぜ金庫が指紋認証式だと知っている。やはり貴様が犯人ではーー」

「うるさいですよ、ベルトリオ様っ!」

 クリスティラの渾身の一撃が、ベルトリオのあごを打ち抜いた。
 そば付きメイドがそんなことしていいのだろうか。
 セルシリア様は特に何も言わない。満足そうな笑顔を浮かべている。
 実はベルトリオって、セルシリア様に嫌われている? 

「うるさいのは黙らせたわよっ!」

 私にぐっと親指を立ててくる。うん、わかった。わかったからそのきらびやかな笑顔を向けないで。汚れた心が浄化しちゃう。
 まあいいや。

「じゃあ説明を始めるよ。何人かだんまりしているけどさ」

「俺は今晩の夕食を考えているだけさ」

 ロディさんや、今は裁判の時間ですよ。

「私は筋肉と会話をしているんですよ」

「アンタは話に入れよっ!」

 バハム執事長、あんた、仕事しなさいよっ!
 この執事長、ダメなんじゃないだろうか。

「じゃあ説明するよ。この指紋認証式、指紋という鍵さえあれば、簡単にかけられるのよっ!」

「「「な、なんだってーーーーー」」」

「なんでみんな驚くのっ!」

「だ、だって指紋ですよ」

 と、セルシリア様。キャラがぶれぶれだよ。

「ど、どうやって……。それさえ知ることができれば、ベルトリオ様の部屋に侵入できるのに……」

 ベルトリオの部屋、指紋認証式なんだ。暴露したら大変なことになりそうだ。へへ、暴露しよう。

「指紋さえあれば、簡単に開けられるわっ!」

「指紋って、もしかして腕でも切り落としたの。怖いわっ」

「その発想に至るセルシリア様のほうが怖いです。そうではなくて、指紋の代わりとなるものを作ればいいんですっ」

「「「代わりって?」」」

 馬鹿だ、こいつら。はぁ、仕方ないな……。

「型か何か作って、作ればいいでしょうに」

「「「確かに……」」」

「今回はゼラチンね。だって、量の少ないゼラチンの箱があったもの。ここで証拠を提示するわ」

 私はカラスさんと戦ったあそこで拾ったゼラチンのごみを見せる。

「なんだこれ、臭いな。俺に近づけるな」

 ロディに証拠を渡そうとしたら、嫌な顔をされた。見ろよ。ほら、ほらほらっ!

「ロディ、ちゃんと見なさい。このゼラチン、あなたの大切な調理場になかったでしょう。そうでしょう、ねぇそうでしょう」

「ああそうだよ、だから近づけ……やめ、やめろぉぉぉぉぉ」

「認めたのならそれでいいわ」

「っほ、よかーーーー」

「ほれっ」

「うぎゃあああああああ」

 私はロディに向けてごみを投げつけた。綺麗好きなロディは、当然発狂したさ。
 …………ゴメン、ちょっとやりすぎたかもしれない。ゴメン、ほんとごめんよ。

「それで、筋肉のないそのゼラチンで、一体どうするというのだ」

「バハム執事長、筋肉から離れましょうよ。んで、指紋の作り方だけど、そのゼラチンを使って型に流せば、指紋なんて簡単にごまかせるでしょう?」

「ってことは……犯人はあの人に違いありません、なんてけしからん」

「……え? 犯人って誰?」

 私はまだ気が付いていないんだけど、どういうこと?
 クリスティラは何かに気が付いたみたい。

「そこの犯罪者が言っていました」

「おい、まだ私は犯罪者と決まったわけでは……」

「そう、この前のベルトリオ様の誕生日の時に取った手形。それをバハム執事長が持って行ってしまったんです。きっといかがわしいことをしようとしているんだと思ったんですが……」

 いかがわしいことってなんだよ。ほんと、クリスティラって頭おかしいよ。

「きっと、手形を見つめながらはぁはぁしているんだろうなと思っていたんですが、まさか、犯人があなただったなんて」

「ちょっとまって、ツッコミたいことが多すぎて話についていけないんだけど」

「犯罪者、よく聞きなさい。バハム執事長はこの前、型を手に入れていたんですよ。ゼラチンなんて街で買えます。ということは、手形をこっそり隠し持っていた、バハム執事長が犯人に違いありません」

「いやいや、それは違うでしょうに。型を持っていたのは掃除とかのためじゃ……」

 あれ、クリスティラの言い分がなんか正しい気がする。けど何だろう。筋肉馬鹿がそこまで考えるようには思えないんだけど。

「はい、私が犯人です」

 ……………予想外に自白したよ、こいつ。
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