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英雄様だけが真実を知らないらしい
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私は英雄の後を追って一緒に村に向かった。何の変哲もないただの町だ。特産品はジャガイモらしく、それ以外は何もない。外を見れば辺り一面ジャガイモ畑が広がっている、そんな村だった。英雄は慣れた様子で宿の店主に言っていた。
「おじちゃん! 今日も一泊お願いね」
正直気持ち悪かった。齢172歳のジジイが無垢な子供のような笑顔を向けている仕草が様になっていて、ジジイと幼女のギャップに吐き気を覚えた私はきっと悪くないだろう。
私は英雄になぜあんな仕草をするのか訊いてみた。
「なぜって、当たり前じゃろう。子供、それも女子の姿をしていると多くの人がちょろくなるんじゃよ。ほっほっほっほ」
確かにその通りだ。余程ひどい大人でない限り子供にひどいことはしないだろう。ましてや女の子だ。この村のように村びと同士の繋がりが強い場所ならなおさらだろう。問題を起こせばその村にいられなくなるだろう。そこを狙ってやっている英雄の姿は、なんというかセコイように見えた。
ここで一つ、疑問が浮かんだ。ここの店主はすんなりと英雄を受け入れているように見えた。あのような子供が親の同伴もなく宿に泊まること自体不自然に思わないのだろうかと。成人しているなら問題ないかもしれないが、英雄の今の姿は小さな女子。どう見ても成人しているようには見えない。さすがに女子の正体が英雄であることを伝えられないので、英油であることを伏せて店主に訊いてみた。
「ん? ああ、君はよそ者か。だったら知らないだろうが、今の女の子は英雄様なんだよ。俺らよりよっぽど年上さ。いつもは山奥でトカゲとじゃれ合っているが、時折あのようなお姿で宿に泊まられるのだ。なぜ女の子の姿で無邪気な子供を演じてるのかは分からないけど、昔この村を救ってもらったことがあるとうちの爺さんが言っていてな。それで気にしないことにしているよ」
完全に身バレしていたようだった。であるならばあのような姿にならなくても宿には泊まれるし何も困らないのではと思う。もしや英雄だけが何も気づいていないなんてこと、ありえない。
「あ、そうそう。この件について英雄様には内密にな。本人は俺らが知っているって気が付いていないようだからさ」
私は店主に肯定の意を示し、その日は就寝した。
そして翌日、英雄の朝は早かった。まだ日が昇ったばかりの、まだ少し肌寒さを感じる時間に、外から声が聞こえてきた。そっと窓を覗くと、英雄と思しき幼女の黒服の可憐な女性が殴り合っていた。
ただ、喧嘩というわけではないだろう。英雄と謎の女性の手にはグローブと呼ばれる喧嘩賭博の時に使用される安全具のようなものが使われていた。おそらく朝の修練という奴だろう。ただ、実力差があり過ぎて英雄様が一方的に謎の女性をいたぶっているように見える感が非常に残念である。
「トカゲ! もっと気合をいれんかいっ!」
「ちょ、待ってください。無理! 無理ですからぁぁぁぁぁぁ!」
トカゲと呼ばれた女性は必死に英雄の相手を行っていた。少し涙目になっているように見えたが、きっと気のせいだろう。英雄の相手ができるということはそれほどの実力者ということなのだろう。あとで話を聞こうとメモを取った後、私は一波人には考えられないような壮絶な修行が終わるまで眺めていることにした。
「おじちゃん! 今日も一泊お願いね」
正直気持ち悪かった。齢172歳のジジイが無垢な子供のような笑顔を向けている仕草が様になっていて、ジジイと幼女のギャップに吐き気を覚えた私はきっと悪くないだろう。
私は英雄になぜあんな仕草をするのか訊いてみた。
「なぜって、当たり前じゃろう。子供、それも女子の姿をしていると多くの人がちょろくなるんじゃよ。ほっほっほっほ」
確かにその通りだ。余程ひどい大人でない限り子供にひどいことはしないだろう。ましてや女の子だ。この村のように村びと同士の繋がりが強い場所ならなおさらだろう。問題を起こせばその村にいられなくなるだろう。そこを狙ってやっている英雄の姿は、なんというかセコイように見えた。
ここで一つ、疑問が浮かんだ。ここの店主はすんなりと英雄を受け入れているように見えた。あのような子供が親の同伴もなく宿に泊まること自体不自然に思わないのだろうかと。成人しているなら問題ないかもしれないが、英雄の今の姿は小さな女子。どう見ても成人しているようには見えない。さすがに女子の正体が英雄であることを伝えられないので、英油であることを伏せて店主に訊いてみた。
「ん? ああ、君はよそ者か。だったら知らないだろうが、今の女の子は英雄様なんだよ。俺らよりよっぽど年上さ。いつもは山奥でトカゲとじゃれ合っているが、時折あのようなお姿で宿に泊まられるのだ。なぜ女の子の姿で無邪気な子供を演じてるのかは分からないけど、昔この村を救ってもらったことがあるとうちの爺さんが言っていてな。それで気にしないことにしているよ」
完全に身バレしていたようだった。であるならばあのような姿にならなくても宿には泊まれるし何も困らないのではと思う。もしや英雄だけが何も気づいていないなんてこと、ありえない。
「あ、そうそう。この件について英雄様には内密にな。本人は俺らが知っているって気が付いていないようだからさ」
私は店主に肯定の意を示し、その日は就寝した。
そして翌日、英雄の朝は早かった。まだ日が昇ったばかりの、まだ少し肌寒さを感じる時間に、外から声が聞こえてきた。そっと窓を覗くと、英雄と思しき幼女の黒服の可憐な女性が殴り合っていた。
ただ、喧嘩というわけではないだろう。英雄と謎の女性の手にはグローブと呼ばれる喧嘩賭博の時に使用される安全具のようなものが使われていた。おそらく朝の修練という奴だろう。ただ、実力差があり過ぎて英雄様が一方的に謎の女性をいたぶっているように見える感が非常に残念である。
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「ちょ、待ってください。無理! 無理ですからぁぁぁぁぁぁ!」
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