異世界チートハーレムというテンプレ展開に巻き込まれた男がハーレムだけは嫌だと逃げるような物語

日向 葵

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第十五話~カルディナ村1~

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ーーールーディア王国 安らぎの里

 ミーナと別れてから、4日ぐらい経った頃。俺が安らぎの里で荷物整理をしていると、ミーナから連絡が来た。
 昨日で仕事が終わり、やっとカルディナ村に行けるらしい。久しぶりに妹に会えるからだろうか、声が少し高かった。

 だけど残念なことに、カルディナ村に向かう準備が何もできていないので、準備に今日一日かかると言っていた。
 にしても、ミーナから連絡が来たときは驚いた。俺はてっきり宿に来るものだと思っていた。

 けど、ミーナからの連絡は、異世界版携帯電話からだった。小説の舞台になるような異世界は、そこまで文明が発展していないようなイメージがある俺にとって、無駄に高い技術力に驚きを隠せないでいた。

 男心くすぐる一品ではあったが、それは置いておこう。
 少しばかし遠い村の為、食料などの買い出しが必要だった。ミーナから、これから買い出しに行こうとの誘いの連絡が来ていたので、俺は身支度を整えて外に出た。

 外に出ると、日がまぶしく、カラッとした暑さだった。日本に比べて湿度が低い分、ジメジメとした暑さではないので、ちょっとばかし快適に感じる。

 俺はミーナと約束している商業区に足を運んだ。
 待ち合わせ場所は、この前話を聞いた喫茶店の前。
 なんだかデートの待ち合わせをしているみたいだな。そう思ったら、急に気持ち悪くなってきた。

 ミーナに限ってそんなことはないよな。
 女性が大嫌いであるが、だからと言ってかかわりを一切絶とうとは思っていない。
 現代日本だって、男女の差など少なく、女性も普通に仕事をしている。

 どんな業界にだって一定以上の女性がいる以上、かかわりあってしまうのは必然だった。
 そんな現代社会に生まれているのに、女性との関わり合いを一切絶つというほうが難しいという話だ。

 ある程度のことは我慢して、自分が無理だと感じたならば距離をとる、俺にできることといえばそれぐらいしかない。
 それで今まで何とかなっているわけだし、ミーナだって、双子姫のように迫ってくる子じゃない。大丈夫、大丈夫。

 自分にそう言い聞かせながら、約束の場所にたどり着く。
 動きやすさを重視した服装をしているミーナを見つけた。たくさんあるポケットの付いた服にポーチなんかもつけていて、なんだかこれから仕事に行く冒険者のようにも見える。

「おまたせ」

 俺が声をかけると、ミーナはこちらに振り向いた。

「やっと来た。さっさと買い物を終わらせましょう」

「そうだな。ミーナは妹さんに会いに行くんだよな」

「そうよ。たった一人の家族なの。心細い生活をさせている以上、早く帰って安心させてあげたいわ」

 ミーナの家族はとても貧しく、生活も苦しい。だから、遠く離れた場所で姉であるミーナが出稼ぎに来ている。

 現代日本だったら、あまり考えられないような出来事だが、貧富の差が日本よりさらに激しいこの世界では、よくあることなのだろう。

「とりあえず、カルディナ村に行くまでに必要な食料などを買い足しましょう。馬車は運んでくれるだけだから、食料は自分たちでどうにかしないと」

「カルディナ村までは、どれぐらいかかるんだ」

「4日ぐらいかな。ちょっとだけ遠いけど、大丈夫、道中は安心してっ! 冒険者である私がしっかりと守るから」

 ミーナがとても頼もしく見えた。でも、冒険者の仕事って害虫や害獣の駆除だよね?
 道中襲われることなんてあまりなさそうな気がするのは気のせいなのだろうか。

「さっき冒険者ギルドの掲示板にお知らせが貼ってあったんだけど、最近魔物が大量発生しているみたいなんだよね。私たちがこれから向かうカルディナ村の近くに、永遠の森と呼ばれている不気味な森が広がっているの。最近そこら辺から魔物が大量発生しているって話よ。魔物はすごく危険な獣だから気をつけないと」

 魔物、獣の突然変異種だから姿形こそそこまで変化がないのだが、人を死に至らしめる程の危険性がある。
 俺はミーナと食料の買い出しついでに、魔物避けに仕えそうものを探していた。
 食料自体はミーナの指示に従っていれば大丈夫だろう。

 冒険者という職業のせいか、長期的な作業を行う場合がある。そういった時は、現場を離れることが出来ず、野宿するらしい。そういった仕事を請け負っているミーナは、こういった食料の買い出し作業が手馴れている。
 その代わり俺が荷物持ちをやっているのだけど、ついていって荷物を持つだけだから、意外といろんな店のものを見て回れることが出来た。

「あ、ミーナっ ちょっと待ってくれ」

 とある店の前で足を止め、ミーナを呼ぶ。商業区には多種多様の商品が集まる。食料、武器、家具、花、その種類は豊富で、中にはこんなものまであった。

「奏太、何もっているの? おいしい水?」

「いや、商品名は聖水ってなっているぞ」

 俺が見つけたのは、イディア教印の聖水だった。透明度の高い水にしか見えないが、香水を入れるようなきれいな入れ物に入っている。なんだか、ゲームに出てくる聖水のグラフィックとその形が酷似していた。
 そのせいか、本物なんじゃないだろうかと思わせる。

「おお、あなたはお目が高い。それは、振りかければ獣が逃げていく、とてもご利益のある聖水でございます。イディア教の教会でもそうそうお目にかからない逸品ですよ」

「そんなたいそうなものがなんでこんな場所に……」

「実はですね、私もよく分からないのですよ」

「はあ?」

 分からないなんてことはないだろう。商品を仕入れているのだから、何を購入しているのかはわかっているはずだ。それなのに分からないって、何か曰く付きの商品なのだろうか。

「私どもの商会では、毎朝仕入先から荷物が届くようになっているんですよ。仕入れたものを確認したときにはなかったのですが、こちらで品出しをしたところ、この聖水が混じっていたんです。なんで入っていたかは知りませんが、荷物に入っていたので、ラッキー程度の気分で店に並べておいたんです」

 それって犯罪っぽくない。そう思った時、ミーナがそっと耳元でささやいた。

「ねえ、あの聖水、とても怪しく見えるんだけど」

 耳元にかかる吐息に俺はびっくりして、距離をとった。不意打ちだったせいか、心臓が不自然に高鳴る。緊張からくるドキドキではなく、恐怖からくる異常な高鳴りといった感じだった。少し、胸が苦しくなる。

 次第に耳がかゆくなってきた。どうやら蕁麻疹がでてきたようだ。俺は「ったく」とつぶやきながら、塗り薬を取り出して、患部に塗った。

 そして、店主とミーナのほうに視線を向けた。
 ミーナは顔を真っ赤にして、ぷるぷると震えている。なんだか怒っているように見えた。
 そして店主は、なんかニマニマして気持ち悪かった。

「おやおや、仲がよろしいことで」

 何やら勘違いをしているように見えるが、気にしたら負けだと思ったので何も言い返さなかった。

「話は戻りますけど、その聖水は本来すぐに売れてもいいはずだったんですよ。ですが、今日に限って誰も見向きもしない。不気味に思っていたのでどこかに捨ててしまおうと思っていたところだったんです。もしお買い上げになるのでしたら……………とてもお安くしときますよ?」

 そう言って、店主は俺にそっと手を差し出した。買えってことなんだろうな。
 俺は仕方なく聖水を買った。水よりも安かった。

「はは、変なものかわされちゃったね。でも、ちゃんとした聖水を買うとかなり高いから、本物だったらすごく得したことになるんだよ」

「はは、そうだね」

 ミーナは笑いながら言ってきたので相槌を打った。
 ミーナは俺が買った聖水を本物だとは思っていないようだ。あんな怪しいもの、偽物以外にあり得ないのかもしれない。
 だけど何だろう、俺にはこれが重要なアイテムのような気がした。
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