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第六話~お告げと神の使徒3~
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ーーー王都ルディリア パーティー会場
神に心酔し、まるで誰かに洗脳されているかのように病んだ瞳をレイラ姫が俺に向けてきた。
「さぁ使徒様。私を好きなようにお使いください。あなたの為なら何でも致しましょう。夜の相手でもいいですし、ストレス発散のために痛めつけてもらっても構いません」
「もし、断ると言ったら……」
「そうですね。死にましょうか」
「……は?」
「使ってもらえないということは、何か気に食わないものがあったのでしょう。そういったものは捨てられる運命にあるのです。いわば廃棄物。廃棄物はこの世界に不要です。神イディア様のために、そして使徒様のために、私はこの命を絶ちましょう」
そう言って、テーブルの上に置いてあった肉を切り分ける用のナイフを手に取り、そのナイフで自分の首を刺そうとした。
俺はとっさに「待て」と言う。
レイラ姫の首にちょっと刺さったところでナイフが止まる。ツーっと、赤い血がレイラ姫の首に垂れた。
危なかった。女性嫌いの俺でも、今のはさすがに止めてしまう。それに、死ぬ理由が俺に使われないからなんて言うのがもっと最悪だ。
まるで俺が殺しているみたいじゃないか。
「……今すぐ使うつもりはない。俺はこの世界に来たばっかりなんだ。考えさせてくれ」
そう言って納得してくれるか不安だったが、レイラ姫はにこりと笑い「はい」と返事を返してくれた。
これでレイラ姫がいきなり自殺することはないだろう。
「ふふふ、お姉さまは甘いですね……」
俺が安心しきったところでシリア姫が目を覚ます。
ゆらりと体を起こし、姉であるレイラ姫を睨みつけていた。
シリア姫はレイラ姫みたいに神を狂信しているわけではないようだが、病的なまでに愛に飢えているように見える。
求めているものは異なっているが、やっぱる姉妹なんだなと思わせる。
「一体何が甘いっていうのですか、シリア」
「使ってもらえるまで待つ? これだから得体のしれない神を信仰しているものはいけないんです」
「いくら妹とはいえ、神イディア様を侮辱することは許しませんよ。その命で償っていただきますけど、よろしいですか?」
命で償えだって。ただちょっとだけ信仰心のかけらもない言葉を言っただけだぞ。
レイラ姫は先ほど自分の首を刺そうとしたナイフをまだ手で握っている。
そのナイフを持っている手に力が入った。今言ったことが本気なんだということがわかる。
「レイラ姫、落ち着いてください。そんなことをされても神イディアは嘆くだけです。家族を愛しなさい、隣人を愛しなさい、神は信仰を持つものも持たないものも平等に愛しているのですから。それなのに、身勝手な感情で家族を殺してしまったならば、神イディアも嘆きます」
「そ、そうですわね……。使徒様、私が過ちを犯しそうになったところを止めていただきありがとうございます」
ノリと勢いで買ったあの漫画を読んでいて正解だった。
西洋の黒歴史について書かれた本に、なぜかエルサレムで行われたイエスの磔の刑について描かれていた。
エルサレムに着いたばかりのイエスが言っていた「天なる父も、みんなをもれなく愛しています」という言葉を知っていたからこそ、俺はレイラ姫を止めることが出来たんだと思う。
もし、俺の言葉で止まらず、シリア姫を殺していたならば、俺のせいで殺してしまったことを後悔し、罪悪感でつぶれていたことだろう。あと、トラウマが一つ増える。
俺が安心しきっていると、「ぷぷっ」とシリア姫がレイラ姫を指差しながら笑った。
どっからどう見ても馬鹿にしているようにしか見えない。
「お姉さまは頭が固すぎるのですわ。愛されないなら愛されるようにすればいい。使われないのなら使われるようにすればいい、ですわ」
「あなたは何を言っているのっ!」
俺の目の前で姉妹がヒートアップしていく。このままではこちらに火種が飛んできそうだと思い、逃げようとしたのだが、姉妹に「「そこを動かないでください」」と強く言われてしまったのでどうすることもできない。
女性にそういわれると、足が竦む。寒気と吐き気が同時に襲って来て、正直もう限界だ。
「いいですかお姉さま。使われないということは、廃棄されるという意味ではないのです。一度使ってもらい、その後使われなくなったのならまだしも、お姉さまはまだ一度も使われていませんよね」
「……ええ、その通りよ」
「ですが、奏太様は私にも、お姉さまにも興味を示さない、それはなぜでしょうか」
「……まさか、私たちに魅力がない?」
いや、レイラ姫もシリア姫もすごく魅力的な女性だと思うぞ。それと同時に、俺がかかわったらすごいトラブルに巻き込まれそうな予感もしている。
だから関わり合いたくないだけなんだけど。
あと、俺は女性が嫌いです、そう言えたらすぐに終わりそうなんだけど……状況的にそんなことを言い出せない。
俺はこの茶番を静かに見守ることにした。気持ち悪い。
「魅力、それもあっていますが、正解は奏太様がメリットを感じていないということです」
「メリット?」
「メリット、すなわち利点ということですね。顔は好みじゃないけど、この人と一緒にいるとなんだか落ち着く、これも立派なメリットです。一緒にいると幸せを感じる、この人と家庭を作ることが出来たらうれしい、そういった心のメリットを求め合うこと、これが愛っ!」
なんか違う気がする。そういうのは利点とは言わないんじゃ……あれ?
「つまり、あなたは、使徒様が私を使用することになんのメリットも感じていない、ということを言っているのですね。なるほど」
「その通りですわ。だから自分を廃棄するなんて十年早いです。まずは私たちを知ってもらい、一緒にいることのメリットを感じてもらう、そこから始めなければいけないのです」
「だけど逃げられたらそこで終わりじゃなくて?」
「だからこそ既成事実を作るのです。ヤったもの勝ちです」
いや、なんでそうなるんだよ。
このままではまずいという気持ちからか、瞳に涙が溜まる。
周りに視線を送るが、皆が顔を逸らし、知らんぷりをする。
使徒様と持ち上げておいて、こういうときは誰も助けて……この二人、この国のお姫様でした。
そりゃ助けてくれないわな。権力には逆らえない。
そんなことをしている間に、姉妹の会話はエスカレートしていく。
「でも、私もシリアも単独で使徒様に迫って何も反応されませんでしたよ」
「一瞬、男色なのかと思いました」
「まぁ、それって男の人同士の愛し合い……」
普通なら嫌な勘違いなんだが、今はうれしい。このまま俺が男好きってことでこの姉妹には退場してもらいたいところだ。
「ええ、ですが神の使徒様であろうお方が子孫を残す意思がないのは大問題です」
「そうですね、ということは、どういうことでしょう」
「ふっふっふ、お姉さまも甘いですね。一人だからいけないのですよ、一人だから」
「そ、それはまさかっ!」
「そう、その通りっ!」
「「姉妹丼っ!」」
姉妹は可愛らしく人差し指を立てながら、声をそろえて言った。
あの話し合いからどうしてそういう結論になるんだろうか。狂信者と狂愛者が合わさるとこういうことになるのかと、現実逃避をする。もう嫌だ、誰か助けて。
「さぁ奏太様。私とお姉さまでしっぽりと楽しみましょう」
「ふふふ、使徒様にご満足いただけるように精一杯ご奉仕しますね」
「「ふふ、うふふふふふ」」
姉妹は、手をワキワキとさせながら、じわり、じわりと寄ってくる。
信仰に狂った瞳と愛に狂った瞳が俺を見つめる。
俺の女性アレルギーの症状がではじめ、胸が苦しく、気持ち悪さを感じる。
そして、いつもよりひどいのは、触れられていないのに蕁麻疹がではじめていたことだ。
背筋に冷たいものが走る。俺がこのまま彼女たちにつかまれば、そのまま死ぬだろう。
命の危機を感じた俺は当然ーー
「うわぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁ」
みっともなく喚き散らしながらその場を逃げた。
神に心酔し、まるで誰かに洗脳されているかのように病んだ瞳をレイラ姫が俺に向けてきた。
「さぁ使徒様。私を好きなようにお使いください。あなたの為なら何でも致しましょう。夜の相手でもいいですし、ストレス発散のために痛めつけてもらっても構いません」
「もし、断ると言ったら……」
「そうですね。死にましょうか」
「……は?」
「使ってもらえないということは、何か気に食わないものがあったのでしょう。そういったものは捨てられる運命にあるのです。いわば廃棄物。廃棄物はこの世界に不要です。神イディア様のために、そして使徒様のために、私はこの命を絶ちましょう」
そう言って、テーブルの上に置いてあった肉を切り分ける用のナイフを手に取り、そのナイフで自分の首を刺そうとした。
俺はとっさに「待て」と言う。
レイラ姫の首にちょっと刺さったところでナイフが止まる。ツーっと、赤い血がレイラ姫の首に垂れた。
危なかった。女性嫌いの俺でも、今のはさすがに止めてしまう。それに、死ぬ理由が俺に使われないからなんて言うのがもっと最悪だ。
まるで俺が殺しているみたいじゃないか。
「……今すぐ使うつもりはない。俺はこの世界に来たばっかりなんだ。考えさせてくれ」
そう言って納得してくれるか不安だったが、レイラ姫はにこりと笑い「はい」と返事を返してくれた。
これでレイラ姫がいきなり自殺することはないだろう。
「ふふふ、お姉さまは甘いですね……」
俺が安心しきったところでシリア姫が目を覚ます。
ゆらりと体を起こし、姉であるレイラ姫を睨みつけていた。
シリア姫はレイラ姫みたいに神を狂信しているわけではないようだが、病的なまでに愛に飢えているように見える。
求めているものは異なっているが、やっぱる姉妹なんだなと思わせる。
「一体何が甘いっていうのですか、シリア」
「使ってもらえるまで待つ? これだから得体のしれない神を信仰しているものはいけないんです」
「いくら妹とはいえ、神イディア様を侮辱することは許しませんよ。その命で償っていただきますけど、よろしいですか?」
命で償えだって。ただちょっとだけ信仰心のかけらもない言葉を言っただけだぞ。
レイラ姫は先ほど自分の首を刺そうとしたナイフをまだ手で握っている。
そのナイフを持っている手に力が入った。今言ったことが本気なんだということがわかる。
「レイラ姫、落ち着いてください。そんなことをされても神イディアは嘆くだけです。家族を愛しなさい、隣人を愛しなさい、神は信仰を持つものも持たないものも平等に愛しているのですから。それなのに、身勝手な感情で家族を殺してしまったならば、神イディアも嘆きます」
「そ、そうですわね……。使徒様、私が過ちを犯しそうになったところを止めていただきありがとうございます」
ノリと勢いで買ったあの漫画を読んでいて正解だった。
西洋の黒歴史について書かれた本に、なぜかエルサレムで行われたイエスの磔の刑について描かれていた。
エルサレムに着いたばかりのイエスが言っていた「天なる父も、みんなをもれなく愛しています」という言葉を知っていたからこそ、俺はレイラ姫を止めることが出来たんだと思う。
もし、俺の言葉で止まらず、シリア姫を殺していたならば、俺のせいで殺してしまったことを後悔し、罪悪感でつぶれていたことだろう。あと、トラウマが一つ増える。
俺が安心しきっていると、「ぷぷっ」とシリア姫がレイラ姫を指差しながら笑った。
どっからどう見ても馬鹿にしているようにしか見えない。
「お姉さまは頭が固すぎるのですわ。愛されないなら愛されるようにすればいい。使われないのなら使われるようにすればいい、ですわ」
「あなたは何を言っているのっ!」
俺の目の前で姉妹がヒートアップしていく。このままではこちらに火種が飛んできそうだと思い、逃げようとしたのだが、姉妹に「「そこを動かないでください」」と強く言われてしまったのでどうすることもできない。
女性にそういわれると、足が竦む。寒気と吐き気が同時に襲って来て、正直もう限界だ。
「いいですかお姉さま。使われないということは、廃棄されるという意味ではないのです。一度使ってもらい、その後使われなくなったのならまだしも、お姉さまはまだ一度も使われていませんよね」
「……ええ、その通りよ」
「ですが、奏太様は私にも、お姉さまにも興味を示さない、それはなぜでしょうか」
「……まさか、私たちに魅力がない?」
いや、レイラ姫もシリア姫もすごく魅力的な女性だと思うぞ。それと同時に、俺がかかわったらすごいトラブルに巻き込まれそうな予感もしている。
だから関わり合いたくないだけなんだけど。
あと、俺は女性が嫌いです、そう言えたらすぐに終わりそうなんだけど……状況的にそんなことを言い出せない。
俺はこの茶番を静かに見守ることにした。気持ち悪い。
「魅力、それもあっていますが、正解は奏太様がメリットを感じていないということです」
「メリット?」
「メリット、すなわち利点ということですね。顔は好みじゃないけど、この人と一緒にいるとなんだか落ち着く、これも立派なメリットです。一緒にいると幸せを感じる、この人と家庭を作ることが出来たらうれしい、そういった心のメリットを求め合うこと、これが愛っ!」
なんか違う気がする。そういうのは利点とは言わないんじゃ……あれ?
「つまり、あなたは、使徒様が私を使用することになんのメリットも感じていない、ということを言っているのですね。なるほど」
「その通りですわ。だから自分を廃棄するなんて十年早いです。まずは私たちを知ってもらい、一緒にいることのメリットを感じてもらう、そこから始めなければいけないのです」
「だけど逃げられたらそこで終わりじゃなくて?」
「だからこそ既成事実を作るのです。ヤったもの勝ちです」
いや、なんでそうなるんだよ。
このままではまずいという気持ちからか、瞳に涙が溜まる。
周りに視線を送るが、皆が顔を逸らし、知らんぷりをする。
使徒様と持ち上げておいて、こういうときは誰も助けて……この二人、この国のお姫様でした。
そりゃ助けてくれないわな。権力には逆らえない。
そんなことをしている間に、姉妹の会話はエスカレートしていく。
「でも、私もシリアも単独で使徒様に迫って何も反応されませんでしたよ」
「一瞬、男色なのかと思いました」
「まぁ、それって男の人同士の愛し合い……」
普通なら嫌な勘違いなんだが、今はうれしい。このまま俺が男好きってことでこの姉妹には退場してもらいたいところだ。
「ええ、ですが神の使徒様であろうお方が子孫を残す意思がないのは大問題です」
「そうですね、ということは、どういうことでしょう」
「ふっふっふ、お姉さまも甘いですね。一人だからいけないのですよ、一人だから」
「そ、それはまさかっ!」
「そう、その通りっ!」
「「姉妹丼っ!」」
姉妹は可愛らしく人差し指を立てながら、声をそろえて言った。
あの話し合いからどうしてそういう結論になるんだろうか。狂信者と狂愛者が合わさるとこういうことになるのかと、現実逃避をする。もう嫌だ、誰か助けて。
「さぁ奏太様。私とお姉さまでしっぽりと楽しみましょう」
「ふふふ、使徒様にご満足いただけるように精一杯ご奉仕しますね」
「「ふふ、うふふふふふ」」
姉妹は、手をワキワキとさせながら、じわり、じわりと寄ってくる。
信仰に狂った瞳と愛に狂った瞳が俺を見つめる。
俺の女性アレルギーの症状がではじめ、胸が苦しく、気持ち悪さを感じる。
そして、いつもよりひどいのは、触れられていないのに蕁麻疹がではじめていたことだ。
背筋に冷たいものが走る。俺がこのまま彼女たちにつかまれば、そのまま死ぬだろう。
命の危機を感じた俺は当然ーー
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