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2巻
2-2
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その日の深夜。
就寝前、リュカはヴァンとピートを部屋に呼んで明日の警備の最終確認をしていた。明日はテレスをもてなすため、森で狩猟大会を開く予定だ。第一護衛騎士団と第二護衛騎士団には、リュカと客人たちの警備にあたってもらう。
「明日は忙しくなるから今夜はヴァンもピートもゆっくり休んで」
最終確認を終えたリュカは、ふたりに向かってそう言った。平時なら就寝時でも必ずどちらかひとりがリュカの護衛にあたるのだが、今回のように日中ふたりが揃って護衛につく場合は違う。いくら体力があるとはいえ、ヴァンもピートも生物である以上、睡眠が必要だ。こういうときは他の護衛騎士団員が就寝時の見張りを担うことになっている。
しかし、ヴァンはおとなしく部屋から出ていかない。
「いや、ルーチェ様の夜泣きもある。私もここで仮眠を取ろう」
「今日は大丈夫そうだよ。お昼寝しなかったからぐっすり寝てるし」
いつものように、執務室の隣にある寝室のベビーベッドではルーチェがスヤスヤ眠っている。ここ最近のルーチェの夜泣き率は四日に三回といったところだ。今夜は大丈夫だとリュカは思いたい。
「万が一ということもある。お前に負担をかけるわけにはいかない」
「いや大丈夫だから。きみの方が警備の準備で朝早いんだから寝て」
ヴァンがリュカのもとを離れたがらないのはいつものことだ。ピートが夜の護衛にあたるときは渋々任せるようになったのだが、ふたり揃って離れるときはいつもこうである。部下の騎士を信頼していないというよりは、自分がリュカを守らなければ気が済まないのだろう。
そしてそれはピートも同じなのだが……
「じゃあ俺は先に寝るぜ。お疲れさん」
意外なほどあっさり踵を返したピートに、リュカもヴァンも目を丸くする。
ピートが部屋から出ていこうとしたのを見て、リュカは彼がずっと不機嫌そうだったことを思い出し、咄嗟に声をかけた。
「あ、ちょっと待ってピート。少しだけ……十分でいいんだ、残ってくれる?」
明日は一日中慌ただしくなりそうなことを考えると、彼と私的な会話ができるのは今しかない。
振り返ったピートの顔は明らかに不満そうだった。公の時間ではないからだろう、感情をもろに顔に出している。それを見たヴァンが、すぐさま眉を吊り上げた。
「なんだ貴様、その顔は。リュカ様に何か不服でもあるのか」
「別に。もう寝ようと思ってたのに、めんどくせーなって思っただけだ」
「あ。ご、ごめんね」
つい謝ってしまいながら、やっぱり今日の彼は変だとリュカは感じる。けれど不服というよりは拗ねているその態度に、なんとなく心当たりが出てきた。
主の命令に面倒くさいと言ったピートにヴァンは怒り心頭になったけれど、リュカがすぐにそれを宥める。
「ヴァン、大丈夫だから。悪いけどピートとふたりにしてもらえるかな」
そう言われてしまっては、ヴァンは従わざるを得ない。
と言うのもヴァンとピートの間には、揉めに揉めた諍いの末に決めた事柄がある。それはリュカの意思が絶対であるということだ。
本音を言えば、互いに互いをリュカとふたりきりにはしたくない。けれどそれを妨害しようとすれば、護衛騎士の任務はもちろん日常生活だってまともに送れなくなってしまう。そこでふたりは任務であろうとプライベートであろうと、リュカが決定した事柄なら邪魔しないことを誓った。
そして今、リュカはピートとふたりになりたいと言っている。ヴァンは歯ぎしりをしたい気持ちをこらえて、部屋を出ていくしかなかった。
「……それでは、また明日。おやすみなさいませ」
まったく安らかに眠れそうにない声音で挨拶をして、ヴァンは出ていった。
そうして執務室にふたりきりになり、リュカは下唇を突き出していじけた顔をしているピートと向き合う。
「……怒ってるでしょ」
「別に」
「おいで。ギュッてしてよ」
リュカが困ったように笑って腕を広げる。ピートはしばらく黙っていたが、やがて間に挟んでいた机を回ってリュカを抱きしめにやってきた。
身長差四十四センチ。ピートは屈んでリュカの腰を抱くと、そのまま腕に持ち上げて立ち上がった。リュカはギュッと首に抱きつき、その手で彼の頭を撫でる。ピートは拗ねた表情のままだったが、それを避けるようなことはしなかった。
「……あんた、ときどき俺のことガキ扱いするよな」
「うん。だって俺の方がお兄さんだもん」
「何がお兄さんだよ、こんなちっせえナリして」
頬を触れ合わせていたふたりはやがて自然に唇を重ねる。リュカの小さな口を覆うようにピートは唇を重ね、ピアスのついた舌で口内を蹂躙していく。その動きはいつもより少し乱暴だ。
「口ん中もちっちぇ。舌も歯列もガキみてえ」
リュカの口内を散々ねぶってから、ピートは言う。リュカは息を乱しながら、今度はピートの頬を撫でた。
「今日はごめんね。きみを仲間外れにしてたわけじゃないんだ。テレス卿は古い知り合いだから、どうしても昔話が多くなって……。でも配慮が足りなかった。ごめん」
ピートとの付き合いはもう一年以上になる。彼がどんなときに不機嫌になるか、リュカはだんだんわかってきた。
ヴァンに妬くことは日常だけど、その中でもピートが一番嫌がるのが昔話だ。ヴァンは十年以上ずっとリュカのそばにいる。当然思い出の数も多いどころではない。ピートはそれが悔しい。
リュカを想っていた時間の長さは、ヴァンもピートも甲乙つけ難い。もちろん想いの深さなんてものは比べようもない。それなのに、そばにいた時間だけは決定的に違うのだ。
不可逆な時間は覆しようもない。そんなことはピートだってわかっている。普段は気にしないように努めているが、今日のように自分の知らない昔話をずっとされるのはさすがに面白くなかった。
「別に。あんたが謝ることでもねーし」
こんなことでリュカを責めるのは間違っている。そう頭でわかっていても、納得できないのが恋心だ。いつだって愛する人のすべてが欲しいのに、それは無理だと突きつけられたみたいで悲しくなる。そうしてゴチャゴチャとした気持ちが入り混じったあげく、ピートは子供みたいに拗ねた態度を取ってしまうのだった。
「……好きだよ、ピート」
リュカはそんなピートを可愛いと思う。
年下の仲間の面倒を見て生きてきた彼は、いつだって兄貴然としている。自由奔放のように見えて周囲を気遣い、大切な人や弱い者を優先してきた。そんな逞しい彼のことがリュカは好きだ。
けれど、こんなふうに年下らしい甘えん坊な一面もたまらなく愛おしい。いっぱい甘やかしてあげたくなって、リュカは自分から唇を重ねた。啄むようにチュッチュとキスを繰り返し、小さな舌でペロペロとピートの唇を舐める。
すぐさまそれに応えるように、ピートの舌が絡められた。チタンのピアスが今日もリュカの舌を虐め、甘い快楽を呼び起こす。
「煽りやがって。明日起きられなくても知らねーかんな」
口の奥で小さく舌打ちして、ピートはリュカを抱きかかえたまま寝室へ入る。そしてベッドに下ろすと、体を組み敷きながら耳元で囁いた。
「声、抑えろよ。ルーチェが起きちまうからな」
五メートルも離れていない衝立の向こうで、ルーチェは寝息を立てている。リュカが自分の口元を手で押さえコクコクと頷くと、ピートの口角がフッと上がった。それを見てリュカは直感する。これは意地悪しようと企んでいる顔だと。
「……っ、ん……ん」
予感通り、今夜のピートはちょっと意地悪だった。感じやすいところばかり執拗に弄ってくる。おかげでリュカはまだ挿入されていないというのに甘イキが止まらず、必死に口元を押さえて体を震わせるしかない。
「中、ずっとビクビクしてんな。やらしー体」
耳元で囁かれる吐息にさえ、リュカは敏感に反応してしまう。
二年前はピュアだったリュカの体は随分と変わってしまった。なんたってピートはエッチがうまいのだ。
初めは上手にイクことができなかったお尻も、今ではお尻のみでイケるようになってしまった。同時に射精までさせられることもある。臍も乳首も敏感になってしまい、服の上から触られるだけでリュカは勃ってしまう。いわゆる『えっちな体に開発された』というやつだろう。リュカは恥ずかしくてたまらない。
そもそもリュカはまだ童貞だ。男としては清い体のままなのに、どういうわけか敏感な女の子のような体に日々進化していく。お尻を弄られ甘くて高い声で鳴くたびに、男としてのプライドが崩れていく気がするが、同時にどうしようもない幸せも感じるのだ。
好きな人に抱かれ心も体もとろけると、性別なんかどうでもよくなってしまう。そうやって幸福な快楽を享受しているうちに、リュカの体はすっかりエッチで感じやすい体になってしまったのだった。
「ふ、ぅ……っ、~~っ」
お尻に指を入れられじれったく動かされながら、もう片方の手で乳首を捏ねられキスされる。リュカは顔だけでなく首筋まで真っ赤にしながら、涙目で声をこらえていた。
「我慢汁が出っぱなしじゃん。腹がビショビショじゃねーか。どーする? 前もしごいてやろうか?」
やっぱり今夜のピートは意地悪だ。焦らしてばかりいる上に、突き放すような台詞を吐く。体も気持ちもつらくなってきて、リュカは両手でピートの顔を掴まえて言った。
「もう意地悪しないでよ……! ちゃんと抱いて、好きって言ってほしい……」
快楽と切ない気持ちが混じり合って、大きな目から涙がひと雫落ちた。それを見たピートが微笑を消し、キュッと唇を噛みしめる。そしてゆっくりとリュカを抱きしめた。
「……悪かった。ちょっと虐めすぎた。あんたの言う通りだよ、妬いてるしムカついてる。俺の知らない時間を無邪気に話すあんたにも、得意げなクソオオカミ野郎にも、こんなくだらねーことで妬いてる自分にも、ムカついて仕方ねえ」
「俺のこと虐めたらスッキリする?」
「全然。でも、ちょっと泣かせたかった。あんたが泣いて俺を求めればスッキリするかなと思ったけど、ちげーや。なんか可哀相になってきちまった」
そう言ってピートは、リュカの目尻に残っていた涙を舐めた。
「ごめんな。ちゃんと抱かせてくれ」
ピートは目尻を舐め、涙の跡が残る頬を舐め、そのまま唇を重ねた。リュカは小さな手で彼の大きな背中を一生懸命抱き寄せる。やっと素直な気持ちを吐露してくれたことが嬉しくて、胸がジンと熱くなった。
「ピート、好き。大好きだよ。だからお願い、これからもずっとそばにいてよ。それでいっぱい思い出作っていこう。十年、二十年、もっともっと。俺の人生にピートとの思い出をいっぱいちょうだい」
リュカはピートのこともヴァンのことも愛していると思う。ただその気持ちの彩は、はっきりと違う。
ピートへの気持ちは恋慕が強い。そばにいれば胸がときめいて、抱かれれば甘くとろけそうな気持ちになる。たくさん口づけたいと思うし、いつまでも抱き合って言葉を交わしていたいとも思う。
おそらく自分の初恋はピートだったのではとリュカは考えている。
十歳の冬、彼に言われた『特別』はリュカの胸を熱く焦がした。その頃は自分が同性に恋をするなんて思ってもいなかったけれど、いつまでも胸を疼かせたあの気持ちは初恋と呼んでもおかしくない気がする。だからこそ再会した彼に想いを告げられたとき、嫌悪なく受け入れられたのだ。
一方ヴァンに対しては、恋より愛が強いと思う。ただ彼に関しては強固な友愛がベースにあって、それが少しずつ恋愛に移行しているように感じる。好きよりも〝大切〟で、甘いより〝切ない〟気持ちの方が勝る。
ただ言えるのは、気持ちの彩は違えどリュカにとってはどちらも恋であり愛であり、命に代えても手放せない存在だということだ。
「リュカ……愛してる。あんたの人生、全部俺で埋められたらいいのに」
ピートは身に着けていた衣服を脱ぎ捨てると、いつものように潤滑油代わりの軟膏をリュカのお尻と自身の肉竿にたっぷりと塗りつけゆっくりと挿入した。
「あ、あぁ……んぅ」
過敏になっている中が熱い肉塊で押し広げられる感触に、思わず声が漏れる。唇を噛みしめてこらえようとすると、ピートがキスで口を塞ぐ。くぐもった喘ぎ声を漏らしながら、リュカは彼のすべてを呑み込んでいった。ところが。
「なあ、リュカ」
最奥まで雄茎をうずめたピートが、小声で囁く。
「もっと奥まで入れていいか?」
尋ねられて、リュカは意味がわからなかった。
ピートのモノは大きい。小柄なリュカの一番奥まで易々と届いてしまい、今も最奥の壁に肉竿の先端があたっているのを感じる。
「どういう意味? もう行き止まりまで入ってるよ」
入れられているだけで息を乱しながらリュカが問い返せば、ピートは驚くことを言い出した。
「いや、もうちょい入るんだよ。奥の奥、誰も入ったことのない場所。俺だけ入れさせてほしい」
「……」
さすがにリュカは固まってしまった。確かに人体の構造上、もっと奥の器官というのは存在する。しかしそれは受け入れていい場所なのだろうか。
「……こ、怖い」
素直に告げれば、ピートは目を細めて小さく笑った。
「ビビり。大丈夫だよ、怖くない。もっとリュカの全部で俺を受け入れてくれ」
温かく大きな手が、小さくて柔らかい手をギュッと握る。それだけでリュカの体からは強張りが抜けていった。
リュカは思い出す。初めて抱かれたときもそうだった。お尻で性交するなんて信じられなかったけど、ピートに委ねれば何も怖いことはなかった。
「……いいよ。ピートになら何されても大丈夫。でも、優しくしてね」
見つめ合いながら微笑めば、ピートは嬉しそうに破顔してチュッとキスを落とした。そしてリュカの腿をいつもより開かせ、圧し潰すように抱きしめる。
「あんたの初めても、一番奥も、全部俺がもらう。昔の時間は手に入らねーけど、あんたの体は全部俺のもんだ」
ピートはリュカの体が逃げないように抱きしめながら、グッと腰を押し進めた。その瞬間、リュカは自分の中で肉の壁が抉じ開けられた感触を覚える。
「あ゛……ッッ!?」
喉の奥から初めて聞く声が漏れた。目の前がチカチカと点滅し呼吸すら忘れる。
言葉では表せられない異常な感覚。けれどそれは、間違いなく快感だった。
「入った……。わかるか、リュカ。あんたの一番奥まで俺が入った」
リュカの大きな耳を食みながら、ピートがうっとりした声音で言う。しかし今のリュカに応えられる余裕はない。今の一瞬だけでイッてしまい、頭の中が真っ白になった。
ピートが浅く腰を揺り動かす。奥の肉壁を擦られるたびに喉から悲鳴のような声が漏れて、リュカは泣きながらピートの体に爪を立てた。
「待っ……ッ、駄目これ、ぇッ!! ぃッ、あ゛、~~ッッ」
「でけえ声出すとルーチェが起きるぞ」
そんなことを言われても、リュカは声を抑えることができなかった。恐ろしいほどの刺激に体が言うことを聞かない。腰から下が痙攣したように何度もビクビクと跳ね、自身のモノからは何かが勝手に溢れ出る。
「潮吹きかよ。はは、サイコーじゃん」
体の中でピートの肉杭が一段と大きくなったのを感じて、リュカは仰け反った。緩かった抽挿が勢いを増し、ガツガツと中を穿つ。
可愛い顔を涙と涎と汗でグシャグシャにして喘いでいたリュカは、大きすぎる快感に耐えられずついに意識を飛ばした。
「あ? キャパオーバーかよ」
力の抜けたリュカの体を抱きしめながらピートは激しい抽挿を続ける。気を失ってしまっても下半身はまだビクビクと震え、ピートの肉塊をうねって締めつけていた。
やがてピートは奥の壁を超えた最奥にたっぷりと吐精し、ようやく肉竿を抜いた。奥で出したせいでなかなか溢れてこない様子に目を細め、満足そうに呟く。
「マーキング完了……っと」
さっきまで燻っていた嫉妬の気持ちはもうない。凄まじい独占欲で塗り替えたからだ。
ベッドに横たわる小さな体。一見すると少年に見える無垢な体に、愛も快楽も教え込んだのは自分だとピートは高揚感を覚える。
過去の思い出は作れない。けれど再会してからリュカの〝初めて〟は、ほとんどピートがもらった。キスもセックスも、口淫も、お尻でイカせたのさえピートが初めてだ。
そして今日、禁断で最上の快楽を覚えさせた。絶対に忘れられないであろう思い出が、リュカの中に降り積もっていく。
「あー可愛い……」
リュカの体を綺麗にし、濡れたシーツを取り換えたピートは、そのまま寝入ってしまったリュカの隣に横たわる。あどけなささえ感じる恋人の顔を見て、幸福に目を細めた。
「……愛してる」
小さく呟いた自分の声に少しだけ胸が痛んだ。
以前この三角関係の未来を問われたとき、ピートはリュカを丸ごともらおうとは思っていないと宣言した。それはリュカの立場や気持ちを考えてのことだった。
今でもそのスタンスは変わっていない。リュカは素晴らしい領主だ。彼の領主としての才能と太陽のような慈愛は本物で、だからこそピートはリュカを心から尊敬し、命を賭けてでも守る覚悟でいる。自分のせいで彼が窮地に追い込まれたり、人々に非難を受けたりするようなことがあってはいけない。ある意味崇拝にも似た想いを、ピートはリュカに抱いている。
けれどその一方で、リュカのすべてを独り占めしたい願望が日々膨らんでいく。恋をしているなら誰でも抱く、純粋なエゴだ。
尊敬と崇拝と恋とエゴ。絡まる想いが、時々苦しい。
「愛してる」
もう一度呟きそっと頬にキスを落とすと、ピートはリュカを起こさないようにベッドから出ていった。
明日はリュカにとって大切な客人をもてなす日だ。警備に不備があってはいけない。自室に戻りもう一度計画書に目を通してから、今夜はしっかり体を休めようと思った。
それがリュカの右腕である、第二護衛騎士団団長の自分に課せられた役割だからだ。
五日後。テレス卿は滞在を無事に終え帰っていった。
遠ざかっていく彼の馬車を見ながら、なんとも濃い数日だったとリュカは思う。数々の思い出話に花を咲かせるだけでなく、その陰でひっそりとピートの嫉妬も受け止めた。おかげでリュカの体はまたひとつエッチな開発をされてしまった。
(でも楽しかったな。テレス卿からは父上や祖父上の話もたくさん聞けたし。それに……)
リュカは昨晩のことをふと思い出す。
テレスが二年ぶりにリュカのもとへはるばるやってきたのは、別に思い出話をしにきたわけではない。テレス辺境伯領での近況や出来事、収穫の傾向などを報告に来たのだ。それから、もうひとつ――
『遺跡です。それもかなり広大な』
テレスは昨晩、リュカとふたりきりの応接室でそう話した。
『まだ一部の者しか知りません。現場を保持しながら発掘調査を進めていますが、緘口令も敷いています。これを公にするか否かは、リュカ様の判断に委ねます』
真剣な表情で語るテレスは、布で包んだ何かをリュカに差し出した。それは見たこともない白い石のような欠片で、微かに魔力を帯びていた。
テレス辺境伯が治めているのは、『虚空の神殿』に接している領地だ。神殿から五キロほど離れた土地で小規模な水害があったのだが、押し流された土の下から遺跡が発見されたという。
テレスの采配で専門家が発掘と調査を進めていて、どうやらとんでもない規模の建物の一部らしい。専門家の見立てでは、虚空の神殿を中心にした巨大な宮殿ではないかという話だ。
これは世紀の大発見である。この大陸に神と勇者と獣人の伝説は色濃く残っているが、遺物はほとんど現存しない。そのため勇者がいた頃の国がどのようなものだったのか、初代四大公爵はどのような人物だったのかなどは、おとぎ話としてのみ残っている。
つまり、歴史に基づいた正しい情報は誰も知らないのだ。三千年にわたるその謎が今、解き明かされるかもしれない。大陸中を揺るがす大事件になるはずだ。しかしだからこそ、慎重にならざるを得ないのである。
虚空の神殿は四大公爵領に跨る形で建っており、どの領地にも属さないことになっている。もし専門家の言う通り大規模な遺跡が眠っているのなら、四大公爵家の領地すべてを跨ぐ調査になるだろう。その際、誰が指揮を執るか、他家とのバランスが重要だ。
ましてやことは四大公爵家の成り立ちにも関わりかねない。四大公爵家は均等で平等でなくてはならないのだ。勝手に調査を進め公表すれば、歴史を独り占めすると誤解されて不和が生まれる懸念もある。
それでなくともリュカはルーチェの件を少し反省している。仕方なかったとはいえ、ルーチェを神から授かった子としたせいで他の三公爵家からは少々睨まれているのを感じている。レイナルド家だけ神の恩寵を授かってしまったことで、バランスが揺らいでしまったのは迂闊だった。
『テレス卿の賢明な判断に感謝します。確かにこの情報をレイナルド家だけで独占するわけにはいきません。次の当主合議で議題として挙げることにします』
答えながら、リュカは遺跡の欠片を両手で包む。
(温かくて懐かしい感じがする……)
欠片から感じる魔力は、虚空の神殿が帯びているものと同じだ。間違いなく神殿と連なっていた、もしくは地下で未だに連なっているかもしれない建物の一部だろう。
虚空の神殿は常に魔力を帯びており、四大公爵家の中で魔力の強いレイナルド家だけが唯一それを感じられる。レイナルド家が一番虚空の神殿に近い存在なのではないかと、心の奥底で考えたこともあった。だからこそ、できることならレイナルド家が中心となって発掘と調査を進めたいとリュカは密かに思う。叶うのならこの手で三千年の歴史を紐解きたいが、それは個人の感傷なので口には出さない。
リュカは欠片を布で包み直すと、テレスに改めてこの件を内密にするよう頼んだ。
『四大公爵家が協力して調査を進めれば、きっと偉大な歴史を掘り起こすことができると思うよ。調査と報告をありがとう、テレス卿。レイナルド家当主として心から感謝します』
リュカの言葉に、テレスは椅子から立ち上がると胸に手をあて深々と頭を下げた。
(虚空の神殿の遺跡か……。『トップオブビースト』のゲームではそこまで綴られてなかったな。もしかして俺が死んだあと追加シナリオが出たりしたのかな)
リュカは懐にしまってある遺跡の欠片を無意識にギュッと握りしめる。
「リュカ様? どうかされましたか」
「ずっと突っ立ってたら体冷やすぞ。そろそろ部屋へ戻ろうぜ」
「あ、うん」
テレスを見送ったまま立ち尽くしていたリュカは、ヴァンとピートに促され屋敷内へ戻る。
胸が温かくて少しだけ切ないのは、賑やかな客人が去ったせいか、それとも背に添えられたふたりの恋人の手のせいか。或いは……懐にしまった欠片のせいか。
どれが理由なのか、リュカにはわからなかった。
第二章 新入り騎士と漢の戦い
リュカが当主の座に就き二年が過ぎた。それは同時に、両護衛騎士団も設立から二年が経ったということでもある。
この二年間、モンスターの討伐やゲヘナ侵攻など色々あった。そのせいで大きな怪我を負い退団せざるを得ない者が幾人か出て、護衛騎士団は設立当初よりいささか人数が減っている。
そんな理由により、このたび黄金麦穂団、白銀魔女団共に新たな人員が若干名補充された。モンスターとの戦いで怪我人が出たせいで通例よりは早いが、数年に一度は補充の人員募集は行われるので珍しくはない。
ただ今回、騎士団員たちの間であることが話題になった。それは、黄金麦穂団の新人でありながら副団長の座に就いたベッセル・ド・インセングリムについてだ。
家名の通り、彼はインセングリム家の嫡子だ。つまりヴァンの弟である。
インセングリム家は代々レイナルド家に仕える騎士の家系なので、十八歳になったベッセルの入団も予定調和といえよう。子供の頃から厳しく育てられてきた彼は、剣の腕も申し分なければ礼儀作法も完璧である。ヴァンと同じくインセングリム家本家の子息であることを考えれば、新人でありながら副団長に就いたのも納得だ。
血筋と伝統に則り就任した期待の新人副団長。それだけでも十分に注目の的だが、話題になっている理由はそれだけではない。ベッセルは次男でありながら、インセングリム家の次期家長なのだ。
それというのも、ヴァンが一生結婚をせず子を作らず家督を継がないと父親に宣言したせいである。表向きはリュカの護衛騎士として人生のすべてを尽くすという理由だが、彼の真意をリュカだけはわかっている。ヴァンは騎士として生涯の忠誠を誓うだけでなく、リュカに生涯の愛を誓ったのだ。
インセングリム家では揉めに揉めたらしいが、最終的にベッセルが家督を継ぐことで落ち着いたらしい。
ただしベッセルにしてみれば寝耳に水だ。大変真面目な性格の彼は相当驚き、プレッシャーに圧し潰されそうになったらしい。真面目なところはヴァンとよく似ているベッセルだが、兄に比べるとメンタルはやや弱いようだ。おまけに気が優しいので、振り回されたにもかかわらず兄を慕い続けている。名門貴族の家督を継げるというのは光栄なことのはずなのに、そんなベッセルの姿はなんとなく哀愁を誘うのだった。
長兄で騎士団長のヴァンと、次男だけど次期家長で副団長のベッセル。名門騎士一族の輝かしくもちょっぴり複雑な兄弟の事情は、騎士たちの間でしばらく話題となった。
主であるリュカも新人副団長のベッセルに注目しているが、実は密かに気になっている新入り団員がもうひとりいる。
ロイ・ド・レスター、十八歳。こちらは白銀魔女団の新人だ。
入団試験の模擬戦で見せたナイフを使った戦い方は、誰かさんを彷彿とさせた。いや、そもそも初見のときからして既視感ありありだったのだ。両耳にピアス、派手なバングル、騎士候補と思えぬ着崩した服装。そして何よりピートと同じハイエナ族。
入団後にピートに聞いてみたところ、やはり知り合いだという。スラムにいた頃、共に住んでいた仲間だと。それ自体は別にいい、何も問題はない。
ただ、リュカがひっかかったのは、ピートがサラリと『みっつ年下で弟みたいなもんだ』と口にしたことである。
騎士の応募条件には、貴族で十八歳以上という年齢制限を設けてある。書類上ではシレッと十八歳と書いてあるが、二十歳のピートのみっつ下ならロイは十七歳ではないのだろうか。さらに多分、ロイもピートと同じく貴族の戸籍を買っている。レスター家というハイエナ族の貴族はレイナルド領にはいない。
就寝前、リュカはヴァンとピートを部屋に呼んで明日の警備の最終確認をしていた。明日はテレスをもてなすため、森で狩猟大会を開く予定だ。第一護衛騎士団と第二護衛騎士団には、リュカと客人たちの警備にあたってもらう。
「明日は忙しくなるから今夜はヴァンもピートもゆっくり休んで」
最終確認を終えたリュカは、ふたりに向かってそう言った。平時なら就寝時でも必ずどちらかひとりがリュカの護衛にあたるのだが、今回のように日中ふたりが揃って護衛につく場合は違う。いくら体力があるとはいえ、ヴァンもピートも生物である以上、睡眠が必要だ。こういうときは他の護衛騎士団員が就寝時の見張りを担うことになっている。
しかし、ヴァンはおとなしく部屋から出ていかない。
「いや、ルーチェ様の夜泣きもある。私もここで仮眠を取ろう」
「今日は大丈夫そうだよ。お昼寝しなかったからぐっすり寝てるし」
いつものように、執務室の隣にある寝室のベビーベッドではルーチェがスヤスヤ眠っている。ここ最近のルーチェの夜泣き率は四日に三回といったところだ。今夜は大丈夫だとリュカは思いたい。
「万が一ということもある。お前に負担をかけるわけにはいかない」
「いや大丈夫だから。きみの方が警備の準備で朝早いんだから寝て」
ヴァンがリュカのもとを離れたがらないのはいつものことだ。ピートが夜の護衛にあたるときは渋々任せるようになったのだが、ふたり揃って離れるときはいつもこうである。部下の騎士を信頼していないというよりは、自分がリュカを守らなければ気が済まないのだろう。
そしてそれはピートも同じなのだが……
「じゃあ俺は先に寝るぜ。お疲れさん」
意外なほどあっさり踵を返したピートに、リュカもヴァンも目を丸くする。
ピートが部屋から出ていこうとしたのを見て、リュカは彼がずっと不機嫌そうだったことを思い出し、咄嗟に声をかけた。
「あ、ちょっと待ってピート。少しだけ……十分でいいんだ、残ってくれる?」
明日は一日中慌ただしくなりそうなことを考えると、彼と私的な会話ができるのは今しかない。
振り返ったピートの顔は明らかに不満そうだった。公の時間ではないからだろう、感情をもろに顔に出している。それを見たヴァンが、すぐさま眉を吊り上げた。
「なんだ貴様、その顔は。リュカ様に何か不服でもあるのか」
「別に。もう寝ようと思ってたのに、めんどくせーなって思っただけだ」
「あ。ご、ごめんね」
つい謝ってしまいながら、やっぱり今日の彼は変だとリュカは感じる。けれど不服というよりは拗ねているその態度に、なんとなく心当たりが出てきた。
主の命令に面倒くさいと言ったピートにヴァンは怒り心頭になったけれど、リュカがすぐにそれを宥める。
「ヴァン、大丈夫だから。悪いけどピートとふたりにしてもらえるかな」
そう言われてしまっては、ヴァンは従わざるを得ない。
と言うのもヴァンとピートの間には、揉めに揉めた諍いの末に決めた事柄がある。それはリュカの意思が絶対であるということだ。
本音を言えば、互いに互いをリュカとふたりきりにはしたくない。けれどそれを妨害しようとすれば、護衛騎士の任務はもちろん日常生活だってまともに送れなくなってしまう。そこでふたりは任務であろうとプライベートであろうと、リュカが決定した事柄なら邪魔しないことを誓った。
そして今、リュカはピートとふたりになりたいと言っている。ヴァンは歯ぎしりをしたい気持ちをこらえて、部屋を出ていくしかなかった。
「……それでは、また明日。おやすみなさいませ」
まったく安らかに眠れそうにない声音で挨拶をして、ヴァンは出ていった。
そうして執務室にふたりきりになり、リュカは下唇を突き出していじけた顔をしているピートと向き合う。
「……怒ってるでしょ」
「別に」
「おいで。ギュッてしてよ」
リュカが困ったように笑って腕を広げる。ピートはしばらく黙っていたが、やがて間に挟んでいた机を回ってリュカを抱きしめにやってきた。
身長差四十四センチ。ピートは屈んでリュカの腰を抱くと、そのまま腕に持ち上げて立ち上がった。リュカはギュッと首に抱きつき、その手で彼の頭を撫でる。ピートは拗ねた表情のままだったが、それを避けるようなことはしなかった。
「……あんた、ときどき俺のことガキ扱いするよな」
「うん。だって俺の方がお兄さんだもん」
「何がお兄さんだよ、こんなちっせえナリして」
頬を触れ合わせていたふたりはやがて自然に唇を重ねる。リュカの小さな口を覆うようにピートは唇を重ね、ピアスのついた舌で口内を蹂躙していく。その動きはいつもより少し乱暴だ。
「口ん中もちっちぇ。舌も歯列もガキみてえ」
リュカの口内を散々ねぶってから、ピートは言う。リュカは息を乱しながら、今度はピートの頬を撫でた。
「今日はごめんね。きみを仲間外れにしてたわけじゃないんだ。テレス卿は古い知り合いだから、どうしても昔話が多くなって……。でも配慮が足りなかった。ごめん」
ピートとの付き合いはもう一年以上になる。彼がどんなときに不機嫌になるか、リュカはだんだんわかってきた。
ヴァンに妬くことは日常だけど、その中でもピートが一番嫌がるのが昔話だ。ヴァンは十年以上ずっとリュカのそばにいる。当然思い出の数も多いどころではない。ピートはそれが悔しい。
リュカを想っていた時間の長さは、ヴァンもピートも甲乙つけ難い。もちろん想いの深さなんてものは比べようもない。それなのに、そばにいた時間だけは決定的に違うのだ。
不可逆な時間は覆しようもない。そんなことはピートだってわかっている。普段は気にしないように努めているが、今日のように自分の知らない昔話をずっとされるのはさすがに面白くなかった。
「別に。あんたが謝ることでもねーし」
こんなことでリュカを責めるのは間違っている。そう頭でわかっていても、納得できないのが恋心だ。いつだって愛する人のすべてが欲しいのに、それは無理だと突きつけられたみたいで悲しくなる。そうしてゴチャゴチャとした気持ちが入り混じったあげく、ピートは子供みたいに拗ねた態度を取ってしまうのだった。
「……好きだよ、ピート」
リュカはそんなピートを可愛いと思う。
年下の仲間の面倒を見て生きてきた彼は、いつだって兄貴然としている。自由奔放のように見えて周囲を気遣い、大切な人や弱い者を優先してきた。そんな逞しい彼のことがリュカは好きだ。
けれど、こんなふうに年下らしい甘えん坊な一面もたまらなく愛おしい。いっぱい甘やかしてあげたくなって、リュカは自分から唇を重ねた。啄むようにチュッチュとキスを繰り返し、小さな舌でペロペロとピートの唇を舐める。
すぐさまそれに応えるように、ピートの舌が絡められた。チタンのピアスが今日もリュカの舌を虐め、甘い快楽を呼び起こす。
「煽りやがって。明日起きられなくても知らねーかんな」
口の奥で小さく舌打ちして、ピートはリュカを抱きかかえたまま寝室へ入る。そしてベッドに下ろすと、体を組み敷きながら耳元で囁いた。
「声、抑えろよ。ルーチェが起きちまうからな」
五メートルも離れていない衝立の向こうで、ルーチェは寝息を立てている。リュカが自分の口元を手で押さえコクコクと頷くと、ピートの口角がフッと上がった。それを見てリュカは直感する。これは意地悪しようと企んでいる顔だと。
「……っ、ん……ん」
予感通り、今夜のピートはちょっと意地悪だった。感じやすいところばかり執拗に弄ってくる。おかげでリュカはまだ挿入されていないというのに甘イキが止まらず、必死に口元を押さえて体を震わせるしかない。
「中、ずっとビクビクしてんな。やらしー体」
耳元で囁かれる吐息にさえ、リュカは敏感に反応してしまう。
二年前はピュアだったリュカの体は随分と変わってしまった。なんたってピートはエッチがうまいのだ。
初めは上手にイクことができなかったお尻も、今ではお尻のみでイケるようになってしまった。同時に射精までさせられることもある。臍も乳首も敏感になってしまい、服の上から触られるだけでリュカは勃ってしまう。いわゆる『えっちな体に開発された』というやつだろう。リュカは恥ずかしくてたまらない。
そもそもリュカはまだ童貞だ。男としては清い体のままなのに、どういうわけか敏感な女の子のような体に日々進化していく。お尻を弄られ甘くて高い声で鳴くたびに、男としてのプライドが崩れていく気がするが、同時にどうしようもない幸せも感じるのだ。
好きな人に抱かれ心も体もとろけると、性別なんかどうでもよくなってしまう。そうやって幸福な快楽を享受しているうちに、リュカの体はすっかりエッチで感じやすい体になってしまったのだった。
「ふ、ぅ……っ、~~っ」
お尻に指を入れられじれったく動かされながら、もう片方の手で乳首を捏ねられキスされる。リュカは顔だけでなく首筋まで真っ赤にしながら、涙目で声をこらえていた。
「我慢汁が出っぱなしじゃん。腹がビショビショじゃねーか。どーする? 前もしごいてやろうか?」
やっぱり今夜のピートは意地悪だ。焦らしてばかりいる上に、突き放すような台詞を吐く。体も気持ちもつらくなってきて、リュカは両手でピートの顔を掴まえて言った。
「もう意地悪しないでよ……! ちゃんと抱いて、好きって言ってほしい……」
快楽と切ない気持ちが混じり合って、大きな目から涙がひと雫落ちた。それを見たピートが微笑を消し、キュッと唇を噛みしめる。そしてゆっくりとリュカを抱きしめた。
「……悪かった。ちょっと虐めすぎた。あんたの言う通りだよ、妬いてるしムカついてる。俺の知らない時間を無邪気に話すあんたにも、得意げなクソオオカミ野郎にも、こんなくだらねーことで妬いてる自分にも、ムカついて仕方ねえ」
「俺のこと虐めたらスッキリする?」
「全然。でも、ちょっと泣かせたかった。あんたが泣いて俺を求めればスッキリするかなと思ったけど、ちげーや。なんか可哀相になってきちまった」
そう言ってピートは、リュカの目尻に残っていた涙を舐めた。
「ごめんな。ちゃんと抱かせてくれ」
ピートは目尻を舐め、涙の跡が残る頬を舐め、そのまま唇を重ねた。リュカは小さな手で彼の大きな背中を一生懸命抱き寄せる。やっと素直な気持ちを吐露してくれたことが嬉しくて、胸がジンと熱くなった。
「ピート、好き。大好きだよ。だからお願い、これからもずっとそばにいてよ。それでいっぱい思い出作っていこう。十年、二十年、もっともっと。俺の人生にピートとの思い出をいっぱいちょうだい」
リュカはピートのこともヴァンのことも愛していると思う。ただその気持ちの彩は、はっきりと違う。
ピートへの気持ちは恋慕が強い。そばにいれば胸がときめいて、抱かれれば甘くとろけそうな気持ちになる。たくさん口づけたいと思うし、いつまでも抱き合って言葉を交わしていたいとも思う。
おそらく自分の初恋はピートだったのではとリュカは考えている。
十歳の冬、彼に言われた『特別』はリュカの胸を熱く焦がした。その頃は自分が同性に恋をするなんて思ってもいなかったけれど、いつまでも胸を疼かせたあの気持ちは初恋と呼んでもおかしくない気がする。だからこそ再会した彼に想いを告げられたとき、嫌悪なく受け入れられたのだ。
一方ヴァンに対しては、恋より愛が強いと思う。ただ彼に関しては強固な友愛がベースにあって、それが少しずつ恋愛に移行しているように感じる。好きよりも〝大切〟で、甘いより〝切ない〟気持ちの方が勝る。
ただ言えるのは、気持ちの彩は違えどリュカにとってはどちらも恋であり愛であり、命に代えても手放せない存在だということだ。
「リュカ……愛してる。あんたの人生、全部俺で埋められたらいいのに」
ピートは身に着けていた衣服を脱ぎ捨てると、いつものように潤滑油代わりの軟膏をリュカのお尻と自身の肉竿にたっぷりと塗りつけゆっくりと挿入した。
「あ、あぁ……んぅ」
過敏になっている中が熱い肉塊で押し広げられる感触に、思わず声が漏れる。唇を噛みしめてこらえようとすると、ピートがキスで口を塞ぐ。くぐもった喘ぎ声を漏らしながら、リュカは彼のすべてを呑み込んでいった。ところが。
「なあ、リュカ」
最奥まで雄茎をうずめたピートが、小声で囁く。
「もっと奥まで入れていいか?」
尋ねられて、リュカは意味がわからなかった。
ピートのモノは大きい。小柄なリュカの一番奥まで易々と届いてしまい、今も最奥の壁に肉竿の先端があたっているのを感じる。
「どういう意味? もう行き止まりまで入ってるよ」
入れられているだけで息を乱しながらリュカが問い返せば、ピートは驚くことを言い出した。
「いや、もうちょい入るんだよ。奥の奥、誰も入ったことのない場所。俺だけ入れさせてほしい」
「……」
さすがにリュカは固まってしまった。確かに人体の構造上、もっと奥の器官というのは存在する。しかしそれは受け入れていい場所なのだろうか。
「……こ、怖い」
素直に告げれば、ピートは目を細めて小さく笑った。
「ビビり。大丈夫だよ、怖くない。もっとリュカの全部で俺を受け入れてくれ」
温かく大きな手が、小さくて柔らかい手をギュッと握る。それだけでリュカの体からは強張りが抜けていった。
リュカは思い出す。初めて抱かれたときもそうだった。お尻で性交するなんて信じられなかったけど、ピートに委ねれば何も怖いことはなかった。
「……いいよ。ピートになら何されても大丈夫。でも、優しくしてね」
見つめ合いながら微笑めば、ピートは嬉しそうに破顔してチュッとキスを落とした。そしてリュカの腿をいつもより開かせ、圧し潰すように抱きしめる。
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ピートはリュカの体が逃げないように抱きしめながら、グッと腰を押し進めた。その瞬間、リュカは自分の中で肉の壁が抉じ開けられた感触を覚える。
「あ゛……ッッ!?」
喉の奥から初めて聞く声が漏れた。目の前がチカチカと点滅し呼吸すら忘れる。
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「入った……。わかるか、リュカ。あんたの一番奥まで俺が入った」
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ピートが浅く腰を揺り動かす。奥の肉壁を擦られるたびに喉から悲鳴のような声が漏れて、リュカは泣きながらピートの体に爪を立てた。
「待っ……ッ、駄目これ、ぇッ!! ぃッ、あ゛、~~ッッ」
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そんなことを言われても、リュカは声を抑えることができなかった。恐ろしいほどの刺激に体が言うことを聞かない。腰から下が痙攣したように何度もビクビクと跳ね、自身のモノからは何かが勝手に溢れ出る。
「潮吹きかよ。はは、サイコーじゃん」
体の中でピートの肉杭が一段と大きくなったのを感じて、リュカは仰け反った。緩かった抽挿が勢いを増し、ガツガツと中を穿つ。
可愛い顔を涙と涎と汗でグシャグシャにして喘いでいたリュカは、大きすぎる快感に耐えられずついに意識を飛ばした。
「あ? キャパオーバーかよ」
力の抜けたリュカの体を抱きしめながらピートは激しい抽挿を続ける。気を失ってしまっても下半身はまだビクビクと震え、ピートの肉塊をうねって締めつけていた。
やがてピートは奥の壁を超えた最奥にたっぷりと吐精し、ようやく肉竿を抜いた。奥で出したせいでなかなか溢れてこない様子に目を細め、満足そうに呟く。
「マーキング完了……っと」
さっきまで燻っていた嫉妬の気持ちはもうない。凄まじい独占欲で塗り替えたからだ。
ベッドに横たわる小さな体。一見すると少年に見える無垢な体に、愛も快楽も教え込んだのは自分だとピートは高揚感を覚える。
過去の思い出は作れない。けれど再会してからリュカの〝初めて〟は、ほとんどピートがもらった。キスもセックスも、口淫も、お尻でイカせたのさえピートが初めてだ。
そして今日、禁断で最上の快楽を覚えさせた。絶対に忘れられないであろう思い出が、リュカの中に降り積もっていく。
「あー可愛い……」
リュカの体を綺麗にし、濡れたシーツを取り換えたピートは、そのまま寝入ってしまったリュカの隣に横たわる。あどけなささえ感じる恋人の顔を見て、幸福に目を細めた。
「……愛してる」
小さく呟いた自分の声に少しだけ胸が痛んだ。
以前この三角関係の未来を問われたとき、ピートはリュカを丸ごともらおうとは思っていないと宣言した。それはリュカの立場や気持ちを考えてのことだった。
今でもそのスタンスは変わっていない。リュカは素晴らしい領主だ。彼の領主としての才能と太陽のような慈愛は本物で、だからこそピートはリュカを心から尊敬し、命を賭けてでも守る覚悟でいる。自分のせいで彼が窮地に追い込まれたり、人々に非難を受けたりするようなことがあってはいけない。ある意味崇拝にも似た想いを、ピートはリュカに抱いている。
けれどその一方で、リュカのすべてを独り占めしたい願望が日々膨らんでいく。恋をしているなら誰でも抱く、純粋なエゴだ。
尊敬と崇拝と恋とエゴ。絡まる想いが、時々苦しい。
「愛してる」
もう一度呟きそっと頬にキスを落とすと、ピートはリュカを起こさないようにベッドから出ていった。
明日はリュカにとって大切な客人をもてなす日だ。警備に不備があってはいけない。自室に戻りもう一度計画書に目を通してから、今夜はしっかり体を休めようと思った。
それがリュカの右腕である、第二護衛騎士団団長の自分に課せられた役割だからだ。
五日後。テレス卿は滞在を無事に終え帰っていった。
遠ざかっていく彼の馬車を見ながら、なんとも濃い数日だったとリュカは思う。数々の思い出話に花を咲かせるだけでなく、その陰でひっそりとピートの嫉妬も受け止めた。おかげでリュカの体はまたひとつエッチな開発をされてしまった。
(でも楽しかったな。テレス卿からは父上や祖父上の話もたくさん聞けたし。それに……)
リュカは昨晩のことをふと思い出す。
テレスが二年ぶりにリュカのもとへはるばるやってきたのは、別に思い出話をしにきたわけではない。テレス辺境伯領での近況や出来事、収穫の傾向などを報告に来たのだ。それから、もうひとつ――
『遺跡です。それもかなり広大な』
テレスは昨晩、リュカとふたりきりの応接室でそう話した。
『まだ一部の者しか知りません。現場を保持しながら発掘調査を進めていますが、緘口令も敷いています。これを公にするか否かは、リュカ様の判断に委ねます』
真剣な表情で語るテレスは、布で包んだ何かをリュカに差し出した。それは見たこともない白い石のような欠片で、微かに魔力を帯びていた。
テレス辺境伯が治めているのは、『虚空の神殿』に接している領地だ。神殿から五キロほど離れた土地で小規模な水害があったのだが、押し流された土の下から遺跡が発見されたという。
テレスの采配で専門家が発掘と調査を進めていて、どうやらとんでもない規模の建物の一部らしい。専門家の見立てでは、虚空の神殿を中心にした巨大な宮殿ではないかという話だ。
これは世紀の大発見である。この大陸に神と勇者と獣人の伝説は色濃く残っているが、遺物はほとんど現存しない。そのため勇者がいた頃の国がどのようなものだったのか、初代四大公爵はどのような人物だったのかなどは、おとぎ話としてのみ残っている。
つまり、歴史に基づいた正しい情報は誰も知らないのだ。三千年にわたるその謎が今、解き明かされるかもしれない。大陸中を揺るがす大事件になるはずだ。しかしだからこそ、慎重にならざるを得ないのである。
虚空の神殿は四大公爵領に跨る形で建っており、どの領地にも属さないことになっている。もし専門家の言う通り大規模な遺跡が眠っているのなら、四大公爵家の領地すべてを跨ぐ調査になるだろう。その際、誰が指揮を執るか、他家とのバランスが重要だ。
ましてやことは四大公爵家の成り立ちにも関わりかねない。四大公爵家は均等で平等でなくてはならないのだ。勝手に調査を進め公表すれば、歴史を独り占めすると誤解されて不和が生まれる懸念もある。
それでなくともリュカはルーチェの件を少し反省している。仕方なかったとはいえ、ルーチェを神から授かった子としたせいで他の三公爵家からは少々睨まれているのを感じている。レイナルド家だけ神の恩寵を授かってしまったことで、バランスが揺らいでしまったのは迂闊だった。
『テレス卿の賢明な判断に感謝します。確かにこの情報をレイナルド家だけで独占するわけにはいきません。次の当主合議で議題として挙げることにします』
答えながら、リュカは遺跡の欠片を両手で包む。
(温かくて懐かしい感じがする……)
欠片から感じる魔力は、虚空の神殿が帯びているものと同じだ。間違いなく神殿と連なっていた、もしくは地下で未だに連なっているかもしれない建物の一部だろう。
虚空の神殿は常に魔力を帯びており、四大公爵家の中で魔力の強いレイナルド家だけが唯一それを感じられる。レイナルド家が一番虚空の神殿に近い存在なのではないかと、心の奥底で考えたこともあった。だからこそ、できることならレイナルド家が中心となって発掘と調査を進めたいとリュカは密かに思う。叶うのならこの手で三千年の歴史を紐解きたいが、それは個人の感傷なので口には出さない。
リュカは欠片を布で包み直すと、テレスに改めてこの件を内密にするよう頼んだ。
『四大公爵家が協力して調査を進めれば、きっと偉大な歴史を掘り起こすことができると思うよ。調査と報告をありがとう、テレス卿。レイナルド家当主として心から感謝します』
リュカの言葉に、テレスは椅子から立ち上がると胸に手をあて深々と頭を下げた。
(虚空の神殿の遺跡か……。『トップオブビースト』のゲームではそこまで綴られてなかったな。もしかして俺が死んだあと追加シナリオが出たりしたのかな)
リュカは懐にしまってある遺跡の欠片を無意識にギュッと握りしめる。
「リュカ様? どうかされましたか」
「ずっと突っ立ってたら体冷やすぞ。そろそろ部屋へ戻ろうぜ」
「あ、うん」
テレスを見送ったまま立ち尽くしていたリュカは、ヴァンとピートに促され屋敷内へ戻る。
胸が温かくて少しだけ切ないのは、賑やかな客人が去ったせいか、それとも背に添えられたふたりの恋人の手のせいか。或いは……懐にしまった欠片のせいか。
どれが理由なのか、リュカにはわからなかった。
第二章 新入り騎士と漢の戦い
リュカが当主の座に就き二年が過ぎた。それは同時に、両護衛騎士団も設立から二年が経ったということでもある。
この二年間、モンスターの討伐やゲヘナ侵攻など色々あった。そのせいで大きな怪我を負い退団せざるを得ない者が幾人か出て、護衛騎士団は設立当初よりいささか人数が減っている。
そんな理由により、このたび黄金麦穂団、白銀魔女団共に新たな人員が若干名補充された。モンスターとの戦いで怪我人が出たせいで通例よりは早いが、数年に一度は補充の人員募集は行われるので珍しくはない。
ただ今回、騎士団員たちの間であることが話題になった。それは、黄金麦穂団の新人でありながら副団長の座に就いたベッセル・ド・インセングリムについてだ。
家名の通り、彼はインセングリム家の嫡子だ。つまりヴァンの弟である。
インセングリム家は代々レイナルド家に仕える騎士の家系なので、十八歳になったベッセルの入団も予定調和といえよう。子供の頃から厳しく育てられてきた彼は、剣の腕も申し分なければ礼儀作法も完璧である。ヴァンと同じくインセングリム家本家の子息であることを考えれば、新人でありながら副団長に就いたのも納得だ。
血筋と伝統に則り就任した期待の新人副団長。それだけでも十分に注目の的だが、話題になっている理由はそれだけではない。ベッセルは次男でありながら、インセングリム家の次期家長なのだ。
それというのも、ヴァンが一生結婚をせず子を作らず家督を継がないと父親に宣言したせいである。表向きはリュカの護衛騎士として人生のすべてを尽くすという理由だが、彼の真意をリュカだけはわかっている。ヴァンは騎士として生涯の忠誠を誓うだけでなく、リュカに生涯の愛を誓ったのだ。
インセングリム家では揉めに揉めたらしいが、最終的にベッセルが家督を継ぐことで落ち着いたらしい。
ただしベッセルにしてみれば寝耳に水だ。大変真面目な性格の彼は相当驚き、プレッシャーに圧し潰されそうになったらしい。真面目なところはヴァンとよく似ているベッセルだが、兄に比べるとメンタルはやや弱いようだ。おまけに気が優しいので、振り回されたにもかかわらず兄を慕い続けている。名門貴族の家督を継げるというのは光栄なことのはずなのに、そんなベッセルの姿はなんとなく哀愁を誘うのだった。
長兄で騎士団長のヴァンと、次男だけど次期家長で副団長のベッセル。名門騎士一族の輝かしくもちょっぴり複雑な兄弟の事情は、騎士たちの間でしばらく話題となった。
主であるリュカも新人副団長のベッセルに注目しているが、実は密かに気になっている新入り団員がもうひとりいる。
ロイ・ド・レスター、十八歳。こちらは白銀魔女団の新人だ。
入団試験の模擬戦で見せたナイフを使った戦い方は、誰かさんを彷彿とさせた。いや、そもそも初見のときからして既視感ありありだったのだ。両耳にピアス、派手なバングル、騎士候補と思えぬ着崩した服装。そして何よりピートと同じハイエナ族。
入団後にピートに聞いてみたところ、やはり知り合いだという。スラムにいた頃、共に住んでいた仲間だと。それ自体は別にいい、何も問題はない。
ただ、リュカがひっかかったのは、ピートがサラリと『みっつ年下で弟みたいなもんだ』と口にしたことである。
騎士の応募条件には、貴族で十八歳以上という年齢制限を設けてある。書類上ではシレッと十八歳と書いてあるが、二十歳のピートのみっつ下ならロイは十七歳ではないのだろうか。さらに多分、ロイもピートと同じく貴族の戸籍を買っている。レスター家というハイエナ族の貴族はレイナルド領にはいない。
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