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番外編SS
ハイエナ彼氏の愛し方
しおりを挟むリュカはつくづくと思う。自分はピートに惚れているなあと。
「ほら、リュカはこうされるのが好きなんだろ?」
そう言ってピートは舌を絡めたキスをしながら、対面座位でリュカの尻を浅く揺り動かす。絶頂するような強烈な刺激ではないが、脳と体が甘く溶けるような快楽に、リュカは頬を赤らめうっとりとした表情を浮かべた。
「は、ぁ……、好き、これ好き……」
「何が好きなんだよ、ちゃんと言ってみな」
「あ……ぁ、ピートに……キスされながら気持ちよくしてもらうの、好き……」
「いい子。かわいいな、あんたは」
ご褒美のように優しく唇を重ねられ、指の背で頬を撫でられた。それだけでリュカは魂までとろけそうな多幸感に包まれる。
自分よりふたつも年下とは思えないほど妖艶な眼差しも、器用な指の大きな手も、耳に心地よく響く低い声も、しなやかな筋肉のついた体も、彼らしいタトゥーもピアスも。ピートの何もかもが、リュカの胸をときめかせてやまない。鼓動を高鳴らせたまま彼とひとつになるのは、この世に生まれてきて良かったと思えるほどに幸福だった。
「ピート、好き。大好き」
リュカは彼の首にギュッと腕を回して、甘えるように舌を出す。
ピートは嬉しそうに口角を上げるとリュカの舌を吸い、ねぶり、口腔ごとたっぷりと愛撫した。繋がったままの怒張がさらに大きさを増し、リュカの中をいっぱいにする。
「~~っ! ひ、あぁっ」
「あんた本当にかわいすぎ。これ以上好きにさせんなよ、気が狂いそうだ」
たまらないとばかりに激しく腰を動かしだしたピートに、リュカはしがみつくように抱きつきながら悦楽に溺れる。彼の熱を全身で感じる悦びに、つくづくと恋心を自覚した。
◆
コトが済むとピートはいつもリュカの体を綺麗にしてくれる。
体力の違いなのか、はたまたイカされ過ぎているせいなのかはわからないが、リュカは事後いつもヘロヘロだ。すぐには体を起こせない。
するとさっさとベッドから出たピートが水を張った桶と濡らした布を持ってきて、ぐったりしているリュカを隅々まで拭いてくれるのだった。
そして今日もお尻の残滓まで綺麗にされたリュカはダルい体を横たわらせたまま、ひと足先に服を着るピートの後ろ姿をぼんやり眺めていた。
(……カッコいい背中。筋肉すごいし、腰も引きしまってる。ピートの腰はタトゥーが入ってるせいかなんかエッチな感じ……)
逞しく色気のある背中はシャツに覆われ、すぐに見えなくなってしまった。リュカは少しだけ寂しくなる。
すると視線に気づいたのか、ピートが騎士団の上着に袖を通しながら近づいてきた。
「あんたはこのまま寝てな。残ってた書類の整理は、夜警のついでに俺がやっておいてやるよ」
ピートはフカフカとリュカの頭を撫で、肩口まで布団をかけてくれた。彼の手がする全てのことが心地よくて、目を細めずにはいられない。
(ピートは本当に面倒見がいいなあ。どっちが年上かわかんないや)
彼の優しさが嬉しい。けれどだからこそ、もう少しそばにいて欲しいと甘えた感情も同時に湧いて出る。
すると、執務室に向かおうとしたピートの背を眺めていたリュカは、ふと、あることに気づいた。
「ピート、待って。忘れ物」
まだ少しダルい体を起こし、ベッドサイドテーブルに置かれていた小さな耳飾を手に取る。
「ああ、そっか。忘れてた」
それを見てピートは自分の耳をさわると、ピアスを外していたことを思い出した。
さっきの熱烈な情交の際、彼の頭を抱きしめようとしたリュカの手がピアスに引っかかってしまい、危ないからとピートが外してくれていたのだ。
ピートはのんびりとした足取りで戻ってくるとそれを受け取り、それから少し考えて口角を上げた。
「つけてくれよ。五歳児のおにーちゃん」
そう言って手にピアスを渡し返してきた彼に、リュカは「えっ」と一瞬驚いたあと、ふにゃっと顔を緩ませる。
「うまくできるかな。やったことない」
「もともと穴は開いてるんだから簡単だ」
上着だけ脱ぎ捨てて、ピートは再びベッドに上がると、座っているリュカの腿に頭を乗せて寝そべった。
「これでできるか?」
膝枕状態で見上げてくる顔は、なんだか嬉しそうだ。リュカは目を細めて頷くと、慎重にピアスの針をフカフカの毛に埋もれる耳のホールへ通していった。
右耳にみっつ。左耳にふたつ。
ゆっくりとそれを嵌め終わったリュカは、そのまま彼の頭を撫でる。
「もう少し休んでいきなよ」
「ん」
口角が上がりっぱなしのピートは、素直に目を閉じる。その表情はどこか幼げで、甘えっ子のようだ。
(こうしてるとやっぱ年下って感じだな。可愛い)
ピートはスラムにいた頃、年下の子たちの面倒をずっと見てきたらしい。だからだろう、彼はいつだって兄貴然としていて頼もしい。リュカは彼のそんなところがとても好きだ。
けれど、こうして時々見せてくれる年下の顔も愛おしい。ずっと頭を撫でて、甘やかしてあげたくなる。
「ねえ、ピート」
「ん?」
「これからはエッチのあとは、俺がピアスをつけてあげてもいい?」
そう尋ねると、ピートの頬がほんのり赤くなった。
彼は肩を竦め照れくさそうに「へへっ」と笑うと「それって最高じゃねーか」と、頭を撫でていたリュカの手に擦り寄って言った。
そんな愛くるしい恋人の姿に、リュカはたまらなくなってキスをひとつ落としたのだった。
FIN
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