上 下
53 / 85
番外編SS

ハイエナ彼氏の愛し方

しおりを挟む
 
 リュカはつくづくと思う。自分はピートに惚れているなあと。


「ほら、リュカはこうされるのが好きなんだろ?」

 そう言ってピートは舌を絡めたキスをしながら、対面座位でリュカの尻を浅く揺り動かす。絶頂するような強烈な刺激ではないが、脳と体が甘く溶けるような快楽に、リュカは頬を赤らめうっとりとした表情を浮かべた。
 
「は、ぁ……、好き、これ好き……」
「何が好きなんだよ、ちゃんと言ってみな」
「あ……ぁ、ピートに……キスされながら気持ちよくしてもらうの、好き……」
「いい子。かわいいな、あんたは」

 ご褒美のように優しく唇を重ねられ、指の背で頬を撫でられた。それだけでリュカは魂までとろけそうな多幸感に包まれる。

 自分よりふたつも年下とは思えないほど妖艶な眼差しも、器用な指の大きな手も、耳に心地よく響く低い声も、しなやかな筋肉のついた体も、彼らしいタトゥーもピアスも。ピートの何もかもが、リュカの胸をときめかせてやまない。鼓動を高鳴らせたまま彼とひとつになるのは、この世に生まれてきて良かったと思えるほどに幸福だった。

「ピート、好き。大好き」

 リュカは彼の首にギュッと腕を回して、甘えるように舌を出す。
 ピートは嬉しそうに口角を上げるとリュカの舌を吸い、ねぶり、口腔ごとたっぷりと愛撫した。繋がったままの怒張がさらに大きさを増し、リュカの中をいっぱいにする。

「~~っ! ひ、あぁっ」
「あんた本当にかわいすぎ。これ以上好きにさせんなよ、気が狂いそうだ」

 たまらないとばかりに激しく腰を動かしだしたピートに、リュカはしがみつくように抱きつきながら悦楽に溺れる。彼の熱を全身で感じる悦びに、つくづくと恋心を自覚した。





 コトが済むとピートはいつもリュカの体を綺麗にしてくれる。
 体力の違いなのか、はたまたイカされ過ぎているせいなのかはわからないが、リュカは事後いつもヘロヘロだ。すぐには体を起こせない。
 するとさっさとベッドから出たピートが水を張った桶と濡らした布を持ってきて、ぐったりしているリュカを隅々まで拭いてくれるのだった。

 そして今日もお尻の残滓まで綺麗にされたリュカはダルい体を横たわらせたまま、ひと足先に服を着るピートの後ろ姿をぼんやり眺めていた。

(……カッコいい背中。筋肉すごいし、腰も引きしまってる。ピートの腰はタトゥーが入ってるせいかなんかエッチな感じ……)

 逞しく色気のある背中はシャツに覆われ、すぐに見えなくなってしまった。リュカは少しだけ寂しくなる。
 すると視線に気づいたのか、ピートが騎士団の上着に袖を通しながら近づいてきた。

「あんたはこのまま寝てな。残ってた書類の整理は、夜警のついでに俺がやっておいてやるよ」

 ピートはフカフカとリュカの頭を撫で、肩口まで布団をかけてくれた。彼の手がする全てのことが心地よくて、目を細めずにはいられない。

(ピートは本当に面倒見がいいなあ。どっちが年上かわかんないや)

 彼の優しさが嬉しい。けれどだからこそ、もう少しそばにいて欲しいと甘えた感情も同時に湧いて出る。
 すると、執務室に向かおうとしたピートの背を眺めていたリュカは、ふと、あることに気づいた。

「ピート、待って。忘れ物」

 まだ少しダルい体を起こし、ベッドサイドテーブルに置かれていた小さな耳飾を手に取る。

「ああ、そっか。忘れてた」

 それを見てピートは自分の耳をさわると、ピアスを外していたことを思い出した。
 さっきの熱烈な情交の際、彼の頭を抱きしめようとしたリュカの手がピアスに引っかかってしまい、危ないからとピートが外してくれていたのだ。

 ピートはのんびりとした足取りで戻ってくるとそれを受け取り、それから少し考えて口角を上げた。

「つけてくれよ。五歳児のおにーちゃん」

 そう言って手にピアスを渡し返してきた彼に、リュカは「えっ」と一瞬驚いたあと、ふにゃっと顔を緩ませる。

「うまくできるかな。やったことない」
「もともと穴は開いてるんだから簡単だ」

 上着だけ脱ぎ捨てて、ピートは再びベッドに上がると、座っているリュカの腿に頭を乗せて寝そべった。

「これでできるか?」

 膝枕状態で見上げてくる顔は、なんだか嬉しそうだ。リュカは目を細めて頷くと、慎重にピアスの針をフカフカの毛に埋もれる耳のホールへ通していった。

 右耳にみっつ。左耳にふたつ。
 ゆっくりとそれを嵌め終わったリュカは、そのまま彼の頭を撫でる。

「もう少し休んでいきなよ」
「ん」

 口角が上がりっぱなしのピートは、素直に目を閉じる。その表情はどこか幼げで、甘えっ子のようだ。

(こうしてるとやっぱ年下って感じだな。可愛い)

 ピートはスラムにいた頃、年下の子たちの面倒をずっと見てきたらしい。だからだろう、彼はいつだって兄貴然としていて頼もしい。リュカは彼のそんなところがとても好きだ。
 けれど、こうして時々見せてくれる年下の顔も愛おしい。ずっと頭を撫でて、甘やかしてあげたくなる。

「ねえ、ピート」
「ん?」
「これからはエッチのあとは、俺がピアスをつけてあげてもいい?」

 そう尋ねると、ピートの頬がほんのり赤くなった。

 彼は肩を竦め照れくさそうに「へへっ」と笑うと「それって最高じゃねーか」と、頭を撫でていたリュカの手に擦り寄って言った。

 そんな愛くるしい恋人の姿に、リュカはたまらなくなってキスをひとつ落としたのだった。


 FIN
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・不定期

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった

ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」  15歳の春。  念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。 「隊長とか面倒くさいんですけど」  S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは…… 「部下は美女揃いだぞ?」 「やらせていただきます!」  こうして俺は仕方なく隊長となった。  渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。  女騎士二人は17歳。  もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。   「あの……みんな年上なんですが」 「だが美人揃いだぞ?」 「がんばります!」  とは言ったものの。  俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?  と思っていた翌日の朝。  実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた! ★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。 ※2023年11月25日に書籍が発売しています!  イラストレーターはiltusa先生です! ※コミカライズも進行中!

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 時々おまけのお話を更新しています。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。