悪役師匠は手がかかる！ 魔王城は今日もワチャワチャです

悪役師匠は手がかかる！魔王城は今日もワチャワチャです

プロローグ４ きのこ騒動

　
　しかしすさまじい繁殖力のキノコは創造主の師匠でもすぐに止めることはできず、城を覆い尽くし森へ広がり、果ては麓の村にまで増殖した。

　当然村は大パニックで、師匠が菌糸を放出させないよう魔法をかけたときには村の家々も牧場も畑もキノコまみれだった。

「本当にごめんなさい！　ご迷惑をおかけしました！」

　麓の村までお詫びにやって来た僕は、カンカンに怒ったり困惑顔をしている村人の皆さんに向かって深々と頭を下げる。その隣で六人の弟弟子たちも僕に倣って頭を下げた。……訂正、アルケウスは頭を下げずにそっぽを向いている。あとポンちゃんは僕におぶられて寝てる。

「まったく、いい迷惑だよ。今年はただでさえ麦の出来が悪いってのに、これじゃ全滅だ」

「申し訳ありません。必ず弁償します」

「あんたたちの、その……師匠？　あのおっかない人がまたやったんでしょう？　怖いわねえ。悪気はないっていつも言うけど、やっぱりあの人って魔族か何かなんじゃないかしら」

「ち、違います。師匠は魔力が強くて変な実験ばっかりしてるけど、れっきとした人間です。悪者でも魔族でもないです」

　僕がペコペコと頭を下げていると、そっぽを向いていたアルケウスが「チッ」と舌打ちしてこちらを睨みながらやって来た。マズい、キレてる。アルケウスは誰に対しても攻撃的だけど、僕やみんなが責められるとものすごく怒るんだ。今ここで反論されたら余計に拗れる。

　すると、ヤバい空気を察知したのかドゥガーリンが場を切り替えるように手を叩きながら、ひときわ明るい声で言った。

「さあさあ！　グチャグチャ言ってもしゃーない！　キノコはワイらが全部掃除するから、おっちゃんらは家で待っとってくれ！」

　ナイス、ドゥガーリン！　おかげで村人は渋い顔をしつつ一旦家に戻り、僕はホッと息を吐いた。

「よーし、じゃあサッサと片づけちゃおう！」

　周囲に村人がいなくなり、残された僕らはあちらこちらに生えたキノコを手当たり次第に毟っていく。すると、魔法で僕の影に潜んでいた師匠がニュルリと姿を現した。