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◆浮気な彼氏シーズン2#11 たっくん大ピンチ
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◆浮気な彼氏シーズン2#11 たっくん大ピンチ
瀬川さん達のことが一瞬気にはなったものの、喧騒の中にそれは流れていった。
そしてそんなことよりも、僕らにはもっと大事なことがあった。旅行だ。
暁都さんがこれから結構忙しくなるから、近々行っちゃおうって話になったんだ。それにこの間のプチ喧嘩が逆に良い刺激になったのもある。
帰りに本屋さんでるるぶ買ってきて部屋でキャッキャした。行き先は京都にした。
「たっくん♪縁結び神社とかあるじゃん。行こうよ~」
「良いねえ~お守りとか買っちゃう?」
「買っちゃう~!」
30代のおじさん2人にしてはキャッキャし過ぎてる僕らだけど良いんだ別に。
時期的にイルミネーションやるみたいで僕的にも楽しみ。何かお高い温泉旅館を予約しようとしてくれるみたいで、それはありがたく任せておいた。ほら、下手に止めるとムキになってもっと高いとこ予約されちゃうからさ・・
***
翌週のオフィス。
「ねえねえ、再来週の土日ってどっか空いてるう?」
「あ~その日空いてないですね」
なんか機嫌よく絡んできた瀬川さんに僕は塩な返事を返した。
「何でよおBBQしようよお。間男のアキトさんも来ていいからさあ」
「ちょっと!?」
何を言うんだこの男!シッと人差し指を口に当てて僕は言った。
「内緒にしてくださいよ!っていうか間男は!瀬川さんの方なんですけど!」
ヒソヒソと反撃した。
「つれないねえ~破局すれば良いのに」
「何を縁起でもないことを!?って言うか僕ら、再来週の土日旅行行くんですよ、りょ、こ、う!めっちゃ仲良しです破局とかしません!!」
ちょっと目を丸くした瀬川さん。
「あらら?まじで?それ俺も行って良いのかな?」
「ダメですけど!!!?」
「・・ふ~ん?」
つめたあいと拗ねてみせた瀬川さん。そして悪戯な、というか悪い笑顔で言ってきたこんな台詞。
「恋人とは順調なんだ?」
「そうです」
だから貴方がつけいる隙はないですよっ!
しかしニヤニヤ小悪魔みたいな悪い笑顔が止まらない瀬川さん。ハンサムな風貌なんだけど勿体無い表情を時々する。
「どこ行く予定?」
「京都です」
「そりゃまたしっぽりと・・良いですねえ~」
「そうですよっ」
「ふ~んへえ~ほお~~んははあん?」
「何なんですか!?」
なんかイライラしてしまった僕に、瀬川さんは『楽しんでねえ♪』とだけ答えて仕事に戻った。
なんだ?ホント・・ってその時は思ってたんだけど。
その『楽しんでねえ』っていうのは、『今の間だけせいぜい楽しみにしておきなよ』って意味だったんだよ、後から振り返ればさ・・。
***
その日の仕事終わり、帰ろうとした時。
「あ、そう言えばたっくんさ♪」
ものすごく自然に肩をポンされてヒッとなった。めちゃ馴れ馴れしく肩ポンしてきたのが瀬川さんだったから。暁都さんじゃなく。
苛立ちあらわにその手を振り落とす。上司だろうが関係なかった。
「何ですか?」
「つれないねえ~。ところで聞いた?今度展示会イベントあるでしょここの。人手足りないとかで、僕らも手伝いに任命されたよ」
「えっそうなんですか?」
まあ別にいっかと思った僕に、瀬川さんは爆弾を放り投げてきた。
「それが東京の方でやるんだよ。だから泊まり。俺たち隣の部屋、手配しといたよ♡ちなみに当日アキトさんは別の出版イベントがあってトークショーに出なきゃいけないので来れませんので~♡
あと真面目な話、人手が今全然足りてないから俺もたっくんも休めないからねえ~」
「ウグッ・・!!!」
「露天風呂とかもあるし!部屋でふたりでUNOとかしようねえ浴衣で」
やたら浴衣を強調した瀬川さん。
セクハラ上司は依然、健在だった。
机に寄りかかり、腕を組んでニッコリと僕を見下ろす。
いや、この人背は高いんだよ。肩幅も広めでスタイルは良いんだよ。顔はハンサムでお坊ちゃんぽい育ち良さそうな感じなのに・・でもネットリとした視線、何かが肌に絡みつくようなその雰囲気。
醸し出してくるネオンの薄紫色のオーラに、『無理』と僕は久々に思った。
***
「な、なにい!!瀬川のおっさんと泊まりで出張だと・・!?」
家に帰って早速報告すると。
暁都さんが持っていた果汁100%ジュースの紙パックから液体がブシッと飛んだ。
ボトボトとその手に零れ落ちている。
「あ、暁都さん、手!手えー!!溢れてる溢れてる!高い絨毯に!!」
僕はバタバタとタオルを持ってきて拭いた。
予想通り暁都さんは鬼みたいな顔で切れた。
「ぬぬぬぬぬその日は俺は確かにこっちでトークショーやらその後の偉い人との飲み会やらが・・くっそおおおおお!!!!」
顔を覆って天を仰いだ。
「たっくん!!!!そんなの行かなくて良いから!!!」
「いやでもホントに人手も足りてないみたいだしさあ。暁都さんのゴリ押しで入れてもらったじゃない?あの職場。出張には行くよ」
「ぐぬぬぬぬっくう~!!!」
僕を強く抱きしめてきた暁都さん。
「たっくんの貞操は俺が守る!!!」
後日ごちゃと渡された数々の防犯グッズ。防犯ブザー、催涙スプレー、スタンガン、縄(瀬川さんが暴れ出したら縛り上げる用)。
「これじゃ犯罪起こそうとしてる人みたいだよ僕」
「そんなことない!!!連絡は定期的に送るように!!!!」
***
さて問題の出張の日。
当然のごとく電車で隣に陣取った瀬川さん。
「たっくん♪やっと2人っきりだねえ」
「小春って呼んでくれません?」
「やだ♡」
この・・!流石に怒ろうとしたら突然太ももに手を置かれてヒッとなった。
その高い時計の嵌る手首、ほんのり浮いた手の甲の血管。色気ある佇まいが僕には逆に怖い。
「あ、間違えちゃったよごめんごめん俺上司失格だねえ」
僕にブチギレられるよりも先にしゃあしゃあと謝って見せた瀬川さん。
うふふと垂れ目気味の瞳を更に垂れさせて
、その男は言った。
「邪魔者がいないって最高♡」
展示会での仕事は確かに諸々大変なものだった。あれこれ搬入もあるし、お客さん対応も色々あるし、慣れない仕事に僕は結構へとへと。
それは逐一僕にウザ絡みをしてくる瀬川さんのせいでもあって・・。
「たっくん、休憩しよ♪」
そう言ってはやたら近くに座りたがったり、なぜか耳に息吹きかけてきたり時には腰を(!)抱いてきたり。『やめろ!!』って僕はブチギレつつ、そんな瀬川さんを俊敏に避け続けた。そんなことずっと続けてたらそりゃへとへとにもなるんだよ。
展示会での仕事を何とか終えて、ホテルへと向かう。ホテルにさえつけば離れられるし!
ホテルへの道すがら。色々ぺちゃくちゃ機嫌良く話しかけてくる瀬川さんをガン無視した。なんか昔も同じ様なことあったよなあ。元彼・辰也とまだ付き合ってた時の瀬川さんとの出張の時・・。
はあ、やだやだ辛い記憶は封印っと。
ホテルのフロントにて。
瀬川さんが受付してきてくれるというので、僕はおとなしく待っていた。もー、ようやく離れられる。足パンパンだよ。
ものすごく機嫌良く戻ってきた瀬川さん。
「ねえ~たっくんさ。荷物部屋に運ぶのだけ手伝ってくれない?おじさん、へとへと」
それはあんたのせいだろうという言葉を飲み込み、僕は手伝うことにした。一応上司だからね・・。
部屋に瀬川さんの荷物をあれこれ運び入れ、それじゃと部屋を出ようとした、その時。
「あっそういえば瀬川さん、僕のキーもらって良いです?」
「ないよ」
「・・え?」
「俺、手配間違えちゃって2人で同じ部屋になっちゃった!ゴメン♡って訳で今日はよろしく!」
ドアを後ろ手に立つ瀬川さんは、ニッコリ僕を見下ろしている。ジワジワと薄紫のオーラが漂いだす瀬川さん。いや冗談言ってる場合じゃない。
やばいかも、まじでこれ・・
続く
瀬川さん達のことが一瞬気にはなったものの、喧騒の中にそれは流れていった。
そしてそんなことよりも、僕らにはもっと大事なことがあった。旅行だ。
暁都さんがこれから結構忙しくなるから、近々行っちゃおうって話になったんだ。それにこの間のプチ喧嘩が逆に良い刺激になったのもある。
帰りに本屋さんでるるぶ買ってきて部屋でキャッキャした。行き先は京都にした。
「たっくん♪縁結び神社とかあるじゃん。行こうよ~」
「良いねえ~お守りとか買っちゃう?」
「買っちゃう~!」
30代のおじさん2人にしてはキャッキャし過ぎてる僕らだけど良いんだ別に。
時期的にイルミネーションやるみたいで僕的にも楽しみ。何かお高い温泉旅館を予約しようとしてくれるみたいで、それはありがたく任せておいた。ほら、下手に止めるとムキになってもっと高いとこ予約されちゃうからさ・・
***
翌週のオフィス。
「ねえねえ、再来週の土日ってどっか空いてるう?」
「あ~その日空いてないですね」
なんか機嫌よく絡んできた瀬川さんに僕は塩な返事を返した。
「何でよおBBQしようよお。間男のアキトさんも来ていいからさあ」
「ちょっと!?」
何を言うんだこの男!シッと人差し指を口に当てて僕は言った。
「内緒にしてくださいよ!っていうか間男は!瀬川さんの方なんですけど!」
ヒソヒソと反撃した。
「つれないねえ~破局すれば良いのに」
「何を縁起でもないことを!?って言うか僕ら、再来週の土日旅行行くんですよ、りょ、こ、う!めっちゃ仲良しです破局とかしません!!」
ちょっと目を丸くした瀬川さん。
「あらら?まじで?それ俺も行って良いのかな?」
「ダメですけど!!!?」
「・・ふ~ん?」
つめたあいと拗ねてみせた瀬川さん。そして悪戯な、というか悪い笑顔で言ってきたこんな台詞。
「恋人とは順調なんだ?」
「そうです」
だから貴方がつけいる隙はないですよっ!
しかしニヤニヤ小悪魔みたいな悪い笑顔が止まらない瀬川さん。ハンサムな風貌なんだけど勿体無い表情を時々する。
「どこ行く予定?」
「京都です」
「そりゃまたしっぽりと・・良いですねえ~」
「そうですよっ」
「ふ~んへえ~ほお~~んははあん?」
「何なんですか!?」
なんかイライラしてしまった僕に、瀬川さんは『楽しんでねえ♪』とだけ答えて仕事に戻った。
なんだ?ホント・・ってその時は思ってたんだけど。
その『楽しんでねえ』っていうのは、『今の間だけせいぜい楽しみにしておきなよ』って意味だったんだよ、後から振り返ればさ・・。
***
その日の仕事終わり、帰ろうとした時。
「あ、そう言えばたっくんさ♪」
ものすごく自然に肩をポンされてヒッとなった。めちゃ馴れ馴れしく肩ポンしてきたのが瀬川さんだったから。暁都さんじゃなく。
苛立ちあらわにその手を振り落とす。上司だろうが関係なかった。
「何ですか?」
「つれないねえ~。ところで聞いた?今度展示会イベントあるでしょここの。人手足りないとかで、僕らも手伝いに任命されたよ」
「えっそうなんですか?」
まあ別にいっかと思った僕に、瀬川さんは爆弾を放り投げてきた。
「それが東京の方でやるんだよ。だから泊まり。俺たち隣の部屋、手配しといたよ♡ちなみに当日アキトさんは別の出版イベントがあってトークショーに出なきゃいけないので来れませんので~♡
あと真面目な話、人手が今全然足りてないから俺もたっくんも休めないからねえ~」
「ウグッ・・!!!」
「露天風呂とかもあるし!部屋でふたりでUNOとかしようねえ浴衣で」
やたら浴衣を強調した瀬川さん。
セクハラ上司は依然、健在だった。
机に寄りかかり、腕を組んでニッコリと僕を見下ろす。
いや、この人背は高いんだよ。肩幅も広めでスタイルは良いんだよ。顔はハンサムでお坊ちゃんぽい育ち良さそうな感じなのに・・でもネットリとした視線、何かが肌に絡みつくようなその雰囲気。
醸し出してくるネオンの薄紫色のオーラに、『無理』と僕は久々に思った。
***
「な、なにい!!瀬川のおっさんと泊まりで出張だと・・!?」
家に帰って早速報告すると。
暁都さんが持っていた果汁100%ジュースの紙パックから液体がブシッと飛んだ。
ボトボトとその手に零れ落ちている。
「あ、暁都さん、手!手えー!!溢れてる溢れてる!高い絨毯に!!」
僕はバタバタとタオルを持ってきて拭いた。
予想通り暁都さんは鬼みたいな顔で切れた。
「ぬぬぬぬぬその日は俺は確かにこっちでトークショーやらその後の偉い人との飲み会やらが・・くっそおおおおお!!!!」
顔を覆って天を仰いだ。
「たっくん!!!!そんなの行かなくて良いから!!!」
「いやでもホントに人手も足りてないみたいだしさあ。暁都さんのゴリ押しで入れてもらったじゃない?あの職場。出張には行くよ」
「ぐぬぬぬぬっくう~!!!」
僕を強く抱きしめてきた暁都さん。
「たっくんの貞操は俺が守る!!!」
後日ごちゃと渡された数々の防犯グッズ。防犯ブザー、催涙スプレー、スタンガン、縄(瀬川さんが暴れ出したら縛り上げる用)。
「これじゃ犯罪起こそうとしてる人みたいだよ僕」
「そんなことない!!!連絡は定期的に送るように!!!!」
***
さて問題の出張の日。
当然のごとく電車で隣に陣取った瀬川さん。
「たっくん♪やっと2人っきりだねえ」
「小春って呼んでくれません?」
「やだ♡」
この・・!流石に怒ろうとしたら突然太ももに手を置かれてヒッとなった。
その高い時計の嵌る手首、ほんのり浮いた手の甲の血管。色気ある佇まいが僕には逆に怖い。
「あ、間違えちゃったよごめんごめん俺上司失格だねえ」
僕にブチギレられるよりも先にしゃあしゃあと謝って見せた瀬川さん。
うふふと垂れ目気味の瞳を更に垂れさせて
、その男は言った。
「邪魔者がいないって最高♡」
展示会での仕事は確かに諸々大変なものだった。あれこれ搬入もあるし、お客さん対応も色々あるし、慣れない仕事に僕は結構へとへと。
それは逐一僕にウザ絡みをしてくる瀬川さんのせいでもあって・・。
「たっくん、休憩しよ♪」
そう言ってはやたら近くに座りたがったり、なぜか耳に息吹きかけてきたり時には腰を(!)抱いてきたり。『やめろ!!』って僕はブチギレつつ、そんな瀬川さんを俊敏に避け続けた。そんなことずっと続けてたらそりゃへとへとにもなるんだよ。
展示会での仕事を何とか終えて、ホテルへと向かう。ホテルにさえつけば離れられるし!
ホテルへの道すがら。色々ぺちゃくちゃ機嫌良く話しかけてくる瀬川さんをガン無視した。なんか昔も同じ様なことあったよなあ。元彼・辰也とまだ付き合ってた時の瀬川さんとの出張の時・・。
はあ、やだやだ辛い記憶は封印っと。
ホテルのフロントにて。
瀬川さんが受付してきてくれるというので、僕はおとなしく待っていた。もー、ようやく離れられる。足パンパンだよ。
ものすごく機嫌良く戻ってきた瀬川さん。
「ねえ~たっくんさ。荷物部屋に運ぶのだけ手伝ってくれない?おじさん、へとへと」
それはあんたのせいだろうという言葉を飲み込み、僕は手伝うことにした。一応上司だからね・・。
部屋に瀬川さんの荷物をあれこれ運び入れ、それじゃと部屋を出ようとした、その時。
「あっそういえば瀬川さん、僕のキーもらって良いです?」
「ないよ」
「・・え?」
「俺、手配間違えちゃって2人で同じ部屋になっちゃった!ゴメン♡って訳で今日はよろしく!」
ドアを後ろ手に立つ瀬川さんは、ニッコリ僕を見下ろしている。ジワジワと薄紫のオーラが漂いだす瀬川さん。いや冗談言ってる場合じゃない。
やばいかも、まじでこれ・・
続く
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