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浮気な彼氏シーズン2#3 勢揃い
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◆浮気な彼氏シーズン2#3
おそるおそる聞いてみる。
「せ、瀬川さん・・この近くって・・一体どこに?」
「このマンションのすぐ隣のとこ♪
本当はこの部屋の隣、とかが良かったんだけど。さすがに空きがなかったんだよねえ」
ひと懐っこい笑顔に、一瞬蛇の様な笑みが垣間見えた気がする。背筋がぴりっとゾワついた。
瀬川さんは、唖然としている暁都さんをチラと見てうふふと笑って言った。
「不動産業も色々やってるので融通は効くんですよ。まあこの隣も空き次第、僕が入りますがね。
覗き見には最高でしょう?」
「か、帰れ!!!!」
ニコニコ顔の元上司を、暁都さんは鬼の形相で追い返した。
『勢揃い』
ハアハアと荒い息を吐く。
「何なのあの人!?ウッ寒気がやばい!」
ブルルと身を震わせた暁都さん。
「すみませんウチの元上司が・・」
「いや、君が気にすることじゃない。でもくそ・・ここ引っ越すっても・・さすがになあ・・」
そりゃそうだ。この億ションを手放させる訳にはいかない。
暁都さんはそのウェーブがかった髪をガシガシと掻き、そして頭をブルと振った。
「たっくん・・!あのオッサンは危険だ。アイツはホンモノだ。俺には分かる」
しっかりと手を握られる。
「う、うん・・!」
暁都さんの人を見破る目は結構確かだ。
「だからな、これからは極力俺と一緒に過ごそう。1人で留守番させるのはヤバい気がする」
僕は小学生か何かかな?でも余計なこと言える状況じゃないし・・!
「って訳でさ、ちょっと俺が出版社行く時はたっくんもこれから一緒に来てよ。
そうだ、なんかこう俺の本のデザイン的な仕事でも適当にやってくれても良いし。何か事務でも。そうだ、それが良い。編集に聞いてみる。
待て、携帯を。・・もしもし」
そう言って即その場で電話した暁都さん。
それっぽい理由を作り上げて編集さんに捩じ込んでいる。
うわあんな強引に・・大丈夫かなあ・・
ソワソワしつつもしばらく待ったところで、暁都さんは指先でOKサインを作った。
「良いって!だから今度から一緒に出勤ね!」
ちょっと過保護な気持ちするけれど。
ホッと晴れやかになった暁都さんのその顔を見て、僕はただ頷いた。
こうして専業主婦(?)の身からプチ兼業主婦の身となった僕。
ゆるりとデザインの仕事をやればいれば良いらしい。
「たっくんデザインのセンスは良いから。まじで。惚れた欲目じゃなくて」
そう真面目に言う暁都さんに乗せられて、迎えた初オフィスの日。
とあるビルまで一緒に来て、僕は5階。暁都さんは7階。それぞれ一旦別れて、夜にまた合流しようねと言う話になっている。
久しぶりのスーツ、久しぶりの革靴。コート。
緊張感に包まれながら訪れたオフィス。
初めましてとオフィスの面々に挨拶していく。
「小春さんの上司になる方はあちらですよ。あの方も最近来られたんですけど」
あ、そうなんだ。新人同士?
そう促されて、向かっていく。
「すみません、これからお世話になります小春です!」
カチャカチャと作業をしているその背中に、深呼吸して一声掛けた。
すると・・
くるりと振り向いた男性。センスの良いスーツ。垂れ目気味の甘い顔立ち。
「・・・!!!!」
「こんにちは♪小春くん。これは本当に運命の再会だね。
こっちで条件良いデザインの仕事探してみたらここだったんだけど、まさか小春くんから追いかけてきてくれるなんて・・♪」
超ニコニコ顔の瀬川さんは言った。
元上司が、またどういう偶然か僕の直属の上司になることになってしまった。
やたら僕と瀬川さんに縁を持たせる神を、僕は呪った。
「じゃ、早速僕の隣座ってくれる?仕事教えてあげる♪」
ポンと肩に手を置かれてヒッとなる。
絡みつかれるオーラがやばい。そうだ、前の職場でもこんな感じだった・・!
冷や汗どころじゃない。
これ何て暁都さんに説明したら良いんだろう・・
初出勤(?)、覚えることも沢山あって、とにかく瀬川さんに上司としてアレコレ話しかけられまくり、暁都さんにLINEすら入れられずにあっという間に一日が過ぎた。
仕事終わり、一緒に夕食でも♪と楽しげな瀬川さんをどうにか振りきり、僕はダッシュでビルを出た。
暁都さんと一緒に帰りたいけど、今日は遅いって言ってたし。オフィスにいると瀬川さんに捕まるので、僕は1人早々に家路に着くことにした。
はあ・・今日は疲れた・・。
冬迫るなか、寒さが身に沁みる。
ヘトヘトになりながら家に帰ると、ドアの前に一人の女性が立っていた。
ふわふわのコートに白いワンピース、ブーツを合わせた愛嬌ある感じの清楚系美人。
僕を見ると、頭を下げた。ん?この人見たことあるような・・
「こんにちは。ここの家主を待ってるんですけど、中々帰ってこなくて」
え、こんな寒い中待たせちゃってたのか。気の毒なことをしちゃったな。
出版関連の人かな?それかお客さんかな?
「えーっと暁都さんなら・・」
確か今日の予定は・・と頭のなかで確認する。
多分あと4時間後くらいに帰ってくるんだよなあ。ウチ入れて待たせてあげようかな?寒いし。
そう頭の中で算段を弾いて伝えようとした時。
ハッとした。
そうだ、この人。頭の中の残像と重なった。ピンと来た。と同時にさああっと血圧が急降下するのを実感した。
一瞬間が空いた僕をどう解釈したのか。
「あ、申し遅れました。私、暁都の妻です。訳あって離れて暮らしてるんだけど。
あなた編集さんかしら?」
続く
おそるおそる聞いてみる。
「せ、瀬川さん・・この近くって・・一体どこに?」
「このマンションのすぐ隣のとこ♪
本当はこの部屋の隣、とかが良かったんだけど。さすがに空きがなかったんだよねえ」
ひと懐っこい笑顔に、一瞬蛇の様な笑みが垣間見えた気がする。背筋がぴりっとゾワついた。
瀬川さんは、唖然としている暁都さんをチラと見てうふふと笑って言った。
「不動産業も色々やってるので融通は効くんですよ。まあこの隣も空き次第、僕が入りますがね。
覗き見には最高でしょう?」
「か、帰れ!!!!」
ニコニコ顔の元上司を、暁都さんは鬼の形相で追い返した。
『勢揃い』
ハアハアと荒い息を吐く。
「何なのあの人!?ウッ寒気がやばい!」
ブルルと身を震わせた暁都さん。
「すみませんウチの元上司が・・」
「いや、君が気にすることじゃない。でもくそ・・ここ引っ越すっても・・さすがになあ・・」
そりゃそうだ。この億ションを手放させる訳にはいかない。
暁都さんはそのウェーブがかった髪をガシガシと掻き、そして頭をブルと振った。
「たっくん・・!あのオッサンは危険だ。アイツはホンモノだ。俺には分かる」
しっかりと手を握られる。
「う、うん・・!」
暁都さんの人を見破る目は結構確かだ。
「だからな、これからは極力俺と一緒に過ごそう。1人で留守番させるのはヤバい気がする」
僕は小学生か何かかな?でも余計なこと言える状況じゃないし・・!
「って訳でさ、ちょっと俺が出版社行く時はたっくんもこれから一緒に来てよ。
そうだ、なんかこう俺の本のデザイン的な仕事でも適当にやってくれても良いし。何か事務でも。そうだ、それが良い。編集に聞いてみる。
待て、携帯を。・・もしもし」
そう言って即その場で電話した暁都さん。
それっぽい理由を作り上げて編集さんに捩じ込んでいる。
うわあんな強引に・・大丈夫かなあ・・
ソワソワしつつもしばらく待ったところで、暁都さんは指先でOKサインを作った。
「良いって!だから今度から一緒に出勤ね!」
ちょっと過保護な気持ちするけれど。
ホッと晴れやかになった暁都さんのその顔を見て、僕はただ頷いた。
こうして専業主婦(?)の身からプチ兼業主婦の身となった僕。
ゆるりとデザインの仕事をやればいれば良いらしい。
「たっくんデザインのセンスは良いから。まじで。惚れた欲目じゃなくて」
そう真面目に言う暁都さんに乗せられて、迎えた初オフィスの日。
とあるビルまで一緒に来て、僕は5階。暁都さんは7階。それぞれ一旦別れて、夜にまた合流しようねと言う話になっている。
久しぶりのスーツ、久しぶりの革靴。コート。
緊張感に包まれながら訪れたオフィス。
初めましてとオフィスの面々に挨拶していく。
「小春さんの上司になる方はあちらですよ。あの方も最近来られたんですけど」
あ、そうなんだ。新人同士?
そう促されて、向かっていく。
「すみません、これからお世話になります小春です!」
カチャカチャと作業をしているその背中に、深呼吸して一声掛けた。
すると・・
くるりと振り向いた男性。センスの良いスーツ。垂れ目気味の甘い顔立ち。
「・・・!!!!」
「こんにちは♪小春くん。これは本当に運命の再会だね。
こっちで条件良いデザインの仕事探してみたらここだったんだけど、まさか小春くんから追いかけてきてくれるなんて・・♪」
超ニコニコ顔の瀬川さんは言った。
元上司が、またどういう偶然か僕の直属の上司になることになってしまった。
やたら僕と瀬川さんに縁を持たせる神を、僕は呪った。
「じゃ、早速僕の隣座ってくれる?仕事教えてあげる♪」
ポンと肩に手を置かれてヒッとなる。
絡みつかれるオーラがやばい。そうだ、前の職場でもこんな感じだった・・!
冷や汗どころじゃない。
これ何て暁都さんに説明したら良いんだろう・・
初出勤(?)、覚えることも沢山あって、とにかく瀬川さんに上司としてアレコレ話しかけられまくり、暁都さんにLINEすら入れられずにあっという間に一日が過ぎた。
仕事終わり、一緒に夕食でも♪と楽しげな瀬川さんをどうにか振りきり、僕はダッシュでビルを出た。
暁都さんと一緒に帰りたいけど、今日は遅いって言ってたし。オフィスにいると瀬川さんに捕まるので、僕は1人早々に家路に着くことにした。
はあ・・今日は疲れた・・。
冬迫るなか、寒さが身に沁みる。
ヘトヘトになりながら家に帰ると、ドアの前に一人の女性が立っていた。
ふわふわのコートに白いワンピース、ブーツを合わせた愛嬌ある感じの清楚系美人。
僕を見ると、頭を下げた。ん?この人見たことあるような・・
「こんにちは。ここの家主を待ってるんですけど、中々帰ってこなくて」
え、こんな寒い中待たせちゃってたのか。気の毒なことをしちゃったな。
出版関連の人かな?それかお客さんかな?
「えーっと暁都さんなら・・」
確か今日の予定は・・と頭のなかで確認する。
多分あと4時間後くらいに帰ってくるんだよなあ。ウチ入れて待たせてあげようかな?寒いし。
そう頭の中で算段を弾いて伝えようとした時。
ハッとした。
そうだ、この人。頭の中の残像と重なった。ピンと来た。と同時にさああっと血圧が急降下するのを実感した。
一瞬間が空いた僕をどう解釈したのか。
「あ、申し遅れました。私、暁都の妻です。訳あって離れて暮らしてるんだけど。
あなた編集さんかしら?」
続く
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