浮気な彼氏

月夜の晩に

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【浮気な彼氏#13-7】最終話

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その晩、暁都さんはベッドで僕をずっと離さなかった。

彼の無骨な手は驚くほど優しくて、でも情熱的だった。




我慢の糸が切れたんだと本人は言ったけれど。
良すぎて辛い、身体を震えさせながら僕は言った。


「・・僕っもうダメ、暁都さん・・!」
「良いよ、飛んでも!捕まえてて、やるから!」
「・・ー!!」




頭をぐしゃぐしゃと掻き、声にならない声で叫んだ。自分がこんな声出すなんて、自分ですら知らなかった。

僕のその様をじっと見下ろす双眸は、熱を孕んだままで。暁都さんは僕がどんなにお願いしても許してくれなかった。

彼は責め続けた。僕が自分が今どこにいて、誰なのかも分からなくなるくらい、ぐずぐずのどろどろになって、ただ暁都さんにしがみつくしかなくなるまで・・






ふと気がついたら明け方で、暁都さんはいなかった。

彼のシャツを羽織ってリビングへ行ってみたら、暁都さんはソファに座ってコーヒーを飲んでいた。
カーテンを開けた窓を、じっと見て何か考えている様だった。




「・・あ、起こしちゃった?君も飲む?」
「暁都さんの飲む・・」



彼の膝に座った。僕も明け方の空を見つめた。


コーヒーを一口分貰う。彼は僕を抱いて嬉しそうに見上げた。



「・・昨日の君、最高だったよ」
「やだ忘れて」
「絶対忘れない」
「早くボケたら良いのに」
「うるせえ~」



ははと彼は笑い、続けた。


「でもさ、君、才能あるよ」
「・・何の」
「俺を興奮させる才能。最高に可愛かった、本当」




じっと見つめられて頬がカッと熱くなった。苦し紛れにもう!と軽く暁都さんの頬をぶった。ふざけてだけど。



「わー痛え。はは・・そういえばさ、昨日。暁都!車止めなさいコラーッ!って君に怒られたの、新鮮で良かったな俺」

「M?」

「違ぇよ。Mは君でしょ。俺に噛みつかれて悦んでたじゃん。
ってそういう話じゃなくてさ・・俺、君に守られちゃったなーって。でも嬉しかったんだ・・。それに君にね?尻に敷かれるのも良いよなーって考えてた」

「何それ」

「良いの。俺の喜びは君には分かるまい。・・一緒にシャワー浴びに行こ」



彼は立ち上がり、僕の手を引いた。大人しく着いていく。



「シャワー浴びたら散歩行くよ俺、一緒に来る?」
「え、うーん・・寝てるからパンだけ買ってきて・・?」
「はは、冷てえなあ~まあ良いよ、今日はゆっくり寝てな」




僕らはそっとキスをした。
甘えて甘やかされて、時に守って守られて、笑い合って。僕らはこうやってこれからも生きてくんだろう。


元彼の浮気と引き換えに、僕はあまりにも幸せな日常を手に入れた。






シャワールームへ向かう前。もう一度明け方の空を振り返る。

暁都さんと見た二度目の暁の空は、やっぱりとてもとても綺麗だった。







end.
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