41 / 59
【浮気な彼氏#13-7】最終話
しおりを挟む
その晩、暁都さんはベッドで僕をずっと離さなかった。
彼の無骨な手は驚くほど優しくて、でも情熱的だった。
我慢の糸が切れたんだと本人は言ったけれど。
良すぎて辛い、身体を震えさせながら僕は言った。
「・・僕っもうダメ、暁都さん・・!」
「良いよ、飛んでも!捕まえてて、やるから!」
「・・ー!!」
頭をぐしゃぐしゃと掻き、声にならない声で叫んだ。自分がこんな声出すなんて、自分ですら知らなかった。
僕のその様をじっと見下ろす双眸は、熱を孕んだままで。暁都さんは僕がどんなにお願いしても許してくれなかった。
彼は責め続けた。僕が自分が今どこにいて、誰なのかも分からなくなるくらい、ぐずぐずのどろどろになって、ただ暁都さんにしがみつくしかなくなるまで・・
ふと気がついたら明け方で、暁都さんはいなかった。
彼のシャツを羽織ってリビングへ行ってみたら、暁都さんはソファに座ってコーヒーを飲んでいた。
カーテンを開けた窓を、じっと見て何か考えている様だった。
「・・あ、起こしちゃった?君も飲む?」
「暁都さんの飲む・・」
彼の膝に座った。僕も明け方の空を見つめた。
コーヒーを一口分貰う。彼は僕を抱いて嬉しそうに見上げた。
「・・昨日の君、最高だったよ」
「やだ忘れて」
「絶対忘れない」
「早くボケたら良いのに」
「うるせえ~」
ははと彼は笑い、続けた。
「でもさ、君、才能あるよ」
「・・何の」
「俺を興奮させる才能。最高に可愛かった、本当」
じっと見つめられて頬がカッと熱くなった。苦し紛れにもう!と軽く暁都さんの頬をぶった。ふざけてだけど。
「わー痛え。はは・・そういえばさ、昨日。暁都!車止めなさいコラーッ!って君に怒られたの、新鮮で良かったな俺」
「M?」
「違ぇよ。Mは君でしょ。俺に噛みつかれて悦んでたじゃん。
ってそういう話じゃなくてさ・・俺、君に守られちゃったなーって。でも嬉しかったんだ・・。それに君にね?尻に敷かれるのも良いよなーって考えてた」
「何それ」
「良いの。俺の喜びは君には分かるまい。・・一緒にシャワー浴びに行こ」
彼は立ち上がり、僕の手を引いた。大人しく着いていく。
「シャワー浴びたら散歩行くよ俺、一緒に来る?」
「え、うーん・・寝てるからパンだけ買ってきて・・?」
「はは、冷てえなあ~まあ良いよ、今日はゆっくり寝てな」
僕らはそっとキスをした。
甘えて甘やかされて、時に守って守られて、笑い合って。僕らはこうやってこれからも生きてくんだろう。
元彼の浮気と引き換えに、僕はあまりにも幸せな日常を手に入れた。
シャワールームへ向かう前。もう一度明け方の空を振り返る。
暁都さんと見た二度目の暁の空は、やっぱりとてもとても綺麗だった。
end.
彼の無骨な手は驚くほど優しくて、でも情熱的だった。
我慢の糸が切れたんだと本人は言ったけれど。
良すぎて辛い、身体を震えさせながら僕は言った。
「・・僕っもうダメ、暁都さん・・!」
「良いよ、飛んでも!捕まえてて、やるから!」
「・・ー!!」
頭をぐしゃぐしゃと掻き、声にならない声で叫んだ。自分がこんな声出すなんて、自分ですら知らなかった。
僕のその様をじっと見下ろす双眸は、熱を孕んだままで。暁都さんは僕がどんなにお願いしても許してくれなかった。
彼は責め続けた。僕が自分が今どこにいて、誰なのかも分からなくなるくらい、ぐずぐずのどろどろになって、ただ暁都さんにしがみつくしかなくなるまで・・
ふと気がついたら明け方で、暁都さんはいなかった。
彼のシャツを羽織ってリビングへ行ってみたら、暁都さんはソファに座ってコーヒーを飲んでいた。
カーテンを開けた窓を、じっと見て何か考えている様だった。
「・・あ、起こしちゃった?君も飲む?」
「暁都さんの飲む・・」
彼の膝に座った。僕も明け方の空を見つめた。
コーヒーを一口分貰う。彼は僕を抱いて嬉しそうに見上げた。
「・・昨日の君、最高だったよ」
「やだ忘れて」
「絶対忘れない」
「早くボケたら良いのに」
「うるせえ~」
ははと彼は笑い、続けた。
「でもさ、君、才能あるよ」
「・・何の」
「俺を興奮させる才能。最高に可愛かった、本当」
じっと見つめられて頬がカッと熱くなった。苦し紛れにもう!と軽く暁都さんの頬をぶった。ふざけてだけど。
「わー痛え。はは・・そういえばさ、昨日。暁都!車止めなさいコラーッ!って君に怒られたの、新鮮で良かったな俺」
「M?」
「違ぇよ。Mは君でしょ。俺に噛みつかれて悦んでたじゃん。
ってそういう話じゃなくてさ・・俺、君に守られちゃったなーって。でも嬉しかったんだ・・。それに君にね?尻に敷かれるのも良いよなーって考えてた」
「何それ」
「良いの。俺の喜びは君には分かるまい。・・一緒にシャワー浴びに行こ」
彼は立ち上がり、僕の手を引いた。大人しく着いていく。
「シャワー浴びたら散歩行くよ俺、一緒に来る?」
「え、うーん・・寝てるからパンだけ買ってきて・・?」
「はは、冷てえなあ~まあ良いよ、今日はゆっくり寝てな」
僕らはそっとキスをした。
甘えて甘やかされて、時に守って守られて、笑い合って。僕らはこうやってこれからも生きてくんだろう。
元彼の浮気と引き換えに、僕はあまりにも幸せな日常を手に入れた。
シャワールームへ向かう前。もう一度明け方の空を振り返る。
暁都さんと見た二度目の暁の空は、やっぱりとてもとても綺麗だった。
end.
129
お気に入りに追加
272
あなたにおすすめの小説
Tally marks
あこ
BL
五回目の浮気を目撃したら別れる。
カイトが巽に宣言をしたその五回目が、とうとうやってきた。
「関心が無くなりました。別れます。さよなら」
✔︎ 攻めは体格良くて男前(コワモテ気味)の自己中浮気野郎。
✔︎ 受けはのんびりした話し方の美人も裸足で逃げる(かもしれない)長身美人。
✔︎ 本編中は『大学生×高校生』です。
✔︎ 受けのお姉ちゃんは超イケメンで強い(物理)、そして姉と婚約している彼氏は爽やか好青年。
✔︎ 『彼者誰時に溺れる』とリンクしています(あちらを読んでいなくても全く問題はありません)
🔺ATTENTION🔺
このお話は『浮気野郎を後悔させまくってボコボコにする予定』で書き始めたにも関わらず『どうしてか元サヤ』になってしまった連載です。
そして浮気野郎は元サヤ後、受け溺愛ヘタレ野郎に進化します。
そこだけ本当、ご留意ください。
また、タグにはない設定もあります。ごめんなさい。(10個しかタグが作れない…せめてあと2個作らせて欲しい)
➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
➡︎ 『番外編:本編完結後』に区分されている小説については、完結後設定の番外編が小説の『更新順』に入っています。『時系列順』になっていません。
➡︎ ただし、『番外編:本編完結後』の中に入っている作品のうち、『カイトが巽に「愛してる」と言えるようになったころ』の作品に関してはタイトルの頭に『𝟞』がついています。
個人サイトでの連載開始は2016年7月です。
これを加筆修正しながら更新していきます。
ですので、作中に古いものが登場する事が多々あります。
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
【doll】僕らの記念日に本命と浮気なんてしないでよ
月夜の晩に
BL
平凡な主人公には、不釣り合いなカッコいい彼氏がいた。
しかしある時、彼氏が過去に付き合えなかった地元の本命の身代わりとして、自分は選ばれただけだったと知る。
それでも良いと言い聞かせていたのに、本命の子が浪人を経て上京・彼氏を頼る様になって…
だから愛した
佐治尚実
BL
大学生の礼嗣は恋人の由比に嫉妬させようと、せっせと飲み会に顔を出す毎日を送っている。浮気ではなく社交と言いつくろい、今日も一杯の酒で時間を潰す。帰り道に、礼嗣と隣り合わせた女性が声をかけてきて……。
※がっつり女性が出てきます。
浮気性の攻めが飲み会で隣り合わせた女性に説教されて受けの元に戻る話です。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
婚約者は運命の番(笑)を見つけたらしいので俺も運命の番を見つけます
i
BL
俺の婚約者であるオリオ・オフニス侯爵令息は、浮気をしていた。しかもその相手は平民のオメガだった。俺はオリオに問い詰めようとしたが、偶然にも平民のオメガとオリオが関係を持っている現場を目撃してしまった。
翌日、俺は婚約破棄の手紙を受け取った。
俺はどうしても彼を許すことが出来ず、彼に小さな復讐をしてやろうと決意する──。
大好きな幼馴染は僕の親友が欲しい
月夜の晩に
BL
平凡なオメガ、飛鳥。
ずっと片想いしてきたアルファの幼馴染・慶太は、飛鳥の親友・咲也が好きで・・。
それぞれの片想いの行方は?
◆メルマガ
https://tsukiyo-novel.com/2022/02/26/magazine/
運命なんて要らない
あこ
BL
幼い頃から愛を育む姿に「微笑ましい二人」とか「可愛らしい二人」と言われていた第二王子アーロンとその婚約者ノア。
彼らはお互いがお互いを思い合って、特にアーロンはノアを大切に大切にして過ごしていた。
自分のせいで大変な思いをして、難しく厳しい人生を歩むだろうノア。アーロンはノアに自分の気持ちを素直にいい愛をまっすぐに伝えてきていた。
その二人とは対照的に第一王子とその婚約者にあった溝は年々膨らむ。
そしてアーロンは兄から驚くべきことを聞くのであった。
🔺 本編は完結済
🔺 10/29『ぼくたちも、運命なんて要らない(と思う)』完結しました。
🔺 その他の番外編は時々更新
✔︎ 第二王子×婚約者
✔︎ 第二王子は優男(優美)容姿、婚約者大好き。頼られる男になりたい。
✔︎ 婚約者は公爵家長男ふんわり美人。精霊に祝福されてる。
✔︎ あえてタグで触れてない要素、あります。
✔︎ 脇でGL要素があります。
✔︎ 同性婚可能で同性でも妊娠可能な設定(作中で妊娠した描写は一切ありません)
▶︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
【 『セーリオ様の祝福シリーズ』とのクロスオーバーについて 】
『セーリオ様の祝福』及び『セーリオ様の祝福:カムヴィ様の言う通り』のキャラクターが登場する(名前だけでも)話に関しては、『セーリオ様の祝福』『セーリオ様の祝福:カムヴィ様の言う通り』のどちらの設定でも存在する共通の話として書いております。
どちらの設定かによって立場の変わるマチアスについては基本的に『王子殿下』もしくは『第一王子殿下』として書いておりますが、それでも両方の設定共通の話であると考え読んでいただけたら助かります。
また、クロスオーバー先の話を未読でも問題ないように書いております。
🔺でも一応、簡単な説明🔺
➡︎『セーリオ様の祝福シリーズ』とは、「真面目な第一王子殿下マチアス」と「外見は超美人なのに中身は超普通の婚約者カナメ」のお話です。
➡︎『セーリオ様の祝福』はマチアスが王太子ならない設定で、短編連作の形で書いています。
➡︎『セーリオ様の祝福:カムヴィ様の言う通り』はマチアスが王太子になる設定で、長編連載として書いています。
➡︎マチアスはアーロンの友人として、出会ってからずっといわゆる文通をしています。ノアとカナメも出会ったあとは友人関係になります。
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる