39 / 67
【浮気な彼氏#13-5】
しおりを挟む
「・・!」
僕は絶句していた。そんな、過酷すぎる傷を背負っていたなんて・・!声が出ない。
一方で、いつぞや暁都さんに言われた『元彼、こんな可愛い女が落とせるなら他も落とせる。多分他も浮気してるよ』ってアドバイスはこういうことだったのかと腑に落ちていた。
「さっき俺に、浮気ぐらいしたことあるだろ、って言ったよな?ねえよ、人生で一回も!裏切られたことならあるけどな!
逆に聞くけどさ、分かる?裏切られた側のリアルな気持ちが、お前に!」
暁都さんの未だ癒えない心の傷口から血が溢れ出していた。
その人差し指を拳銃の様に元彼の胸にトンと当てて、暁都さんは言った。怒りと悲しみに支配された瞳で。
「眠れない、食べれない、もう誰も信じられない!笑うことなんざすっかり忘れちまって、あるのは無限に続く絶望だけさ!世界がひっくり返っちまうんだよ!
お前みたいな人間がお気楽に浮気する一方で、された側は苦しみ抜く、ずっとだ、何年も!
どうせ分からないだろうがなお前みたいな奴には!
・・だがな?俺には分かる。この子の気持ちが。痛みも、苦しみも、全部!だから俺は絶対にこの子を裏切らない、悲しませないって誓えるんだ。お前よりずっとこの子に近くて幸せに出来ると誓えるのは、俺なんだよ!!!」
そう叫ぶ様に言う。
「暁都さん、もう良いよ!」
暁都さんを宥め、僕は元彼に言った。
「もう話し合い終わり!とにかくもう二度と会わないから!僕は暁都さんを大事にしたい。他にこんな風に思える人、いないんだ。
・・さようなら」
「・・そういうことだ、そんじゃな」
暁都さんは僕の腕を引いて今度こそ歩き出した。
車に乗る前、一度だけ振り返ったら元彼はただただ悔しそうな苦しそうな顔で僕らを見つめていた。
「ちょっと海沿い走ってくよ」
僕を車の助手席に放り込むと、僕がもたもたとシートベルトを着けるのに手間取っている内に、暁都さんは車を走らせ出した。らしくなかった。
その内スピード上げて道路を飛ばし始めた。車の通りはない真っ直ぐな道だけどこんな乱暴な運転、暁都さんじゃなかった。
黙って車を走らせる横顔は時折海をじっと見つめている。きっと綺麗な景色に救いを求めてきたんだろう。僕の様に。彼が海沿いの街に住んでいる理由が初めてちゃんと分かった気がした。
「・・バツイチだったの黙っててごめんね」
「ううん良いよ」
責める気なんかなかった。
むしろ何でこんな人がこの歳まで独身だったんだろう?ってずっと思ってた。
「・・でも嘘さ、あんな話。俺小説家だから、ドラマチックなストーリー考えるのが得意なだけで。君の元彼に引導を渡すための、ただの演出さ。あんなこと、俺には起こらなかった・・」
言いながらグスと鼻を啜った。目の縁が赤い。そんな哀しい嘘、つかないで欲しかった。聞いてる僕自身もすごく辛い。
信じてあげたかった。なあんだそうだったんだって言ってあげたかった。けれど。
「・・僕が側にいるから、ずっと・・」
「・・くそ!くそくそ、くそ!!
前の家も、ファミリカーも処分した!
それに全部捨てたんだ!ベッドも、寝巻きも!タオルだって、残らず全部!なんであんなこと!!俺を裏切るなんて!!しかも俺たちの家で・・!!」
彼の心は今ここにない。苦しい過去に、1人で居させちゃいけない。
「車止めて!!落ち着いついて!暁都さん、ゆっくり話そう!」
「くそ、くそ・・」
彼の心は過去に囚われたまま。それに外車は更に加速する。苛立ちが悪い方へ向かって発散されている。この調子じゃ色々まずい!
「暁都!!車止めて!!僕を殺しても良いのか!あんなに好きって言ったくせに!!」
大声で叱りつけた。暁都さんはビクッとして我に返ると、さっと周囲を確認して急ブレーキを踏んだ。
続く
僕は絶句していた。そんな、過酷すぎる傷を背負っていたなんて・・!声が出ない。
一方で、いつぞや暁都さんに言われた『元彼、こんな可愛い女が落とせるなら他も落とせる。多分他も浮気してるよ』ってアドバイスはこういうことだったのかと腑に落ちていた。
「さっき俺に、浮気ぐらいしたことあるだろ、って言ったよな?ねえよ、人生で一回も!裏切られたことならあるけどな!
逆に聞くけどさ、分かる?裏切られた側のリアルな気持ちが、お前に!」
暁都さんの未だ癒えない心の傷口から血が溢れ出していた。
その人差し指を拳銃の様に元彼の胸にトンと当てて、暁都さんは言った。怒りと悲しみに支配された瞳で。
「眠れない、食べれない、もう誰も信じられない!笑うことなんざすっかり忘れちまって、あるのは無限に続く絶望だけさ!世界がひっくり返っちまうんだよ!
お前みたいな人間がお気楽に浮気する一方で、された側は苦しみ抜く、ずっとだ、何年も!
どうせ分からないだろうがなお前みたいな奴には!
・・だがな?俺には分かる。この子の気持ちが。痛みも、苦しみも、全部!だから俺は絶対にこの子を裏切らない、悲しませないって誓えるんだ。お前よりずっとこの子に近くて幸せに出来ると誓えるのは、俺なんだよ!!!」
そう叫ぶ様に言う。
「暁都さん、もう良いよ!」
暁都さんを宥め、僕は元彼に言った。
「もう話し合い終わり!とにかくもう二度と会わないから!僕は暁都さんを大事にしたい。他にこんな風に思える人、いないんだ。
・・さようなら」
「・・そういうことだ、そんじゃな」
暁都さんは僕の腕を引いて今度こそ歩き出した。
車に乗る前、一度だけ振り返ったら元彼はただただ悔しそうな苦しそうな顔で僕らを見つめていた。
「ちょっと海沿い走ってくよ」
僕を車の助手席に放り込むと、僕がもたもたとシートベルトを着けるのに手間取っている内に、暁都さんは車を走らせ出した。らしくなかった。
その内スピード上げて道路を飛ばし始めた。車の通りはない真っ直ぐな道だけどこんな乱暴な運転、暁都さんじゃなかった。
黙って車を走らせる横顔は時折海をじっと見つめている。きっと綺麗な景色に救いを求めてきたんだろう。僕の様に。彼が海沿いの街に住んでいる理由が初めてちゃんと分かった気がした。
「・・バツイチだったの黙っててごめんね」
「ううん良いよ」
責める気なんかなかった。
むしろ何でこんな人がこの歳まで独身だったんだろう?ってずっと思ってた。
「・・でも嘘さ、あんな話。俺小説家だから、ドラマチックなストーリー考えるのが得意なだけで。君の元彼に引導を渡すための、ただの演出さ。あんなこと、俺には起こらなかった・・」
言いながらグスと鼻を啜った。目の縁が赤い。そんな哀しい嘘、つかないで欲しかった。聞いてる僕自身もすごく辛い。
信じてあげたかった。なあんだそうだったんだって言ってあげたかった。けれど。
「・・僕が側にいるから、ずっと・・」
「・・くそ!くそくそ、くそ!!
前の家も、ファミリカーも処分した!
それに全部捨てたんだ!ベッドも、寝巻きも!タオルだって、残らず全部!なんであんなこと!!俺を裏切るなんて!!しかも俺たちの家で・・!!」
彼の心は今ここにない。苦しい過去に、1人で居させちゃいけない。
「車止めて!!落ち着いついて!暁都さん、ゆっくり話そう!」
「くそ、くそ・・」
彼の心は過去に囚われたまま。それに外車は更に加速する。苛立ちが悪い方へ向かって発散されている。この調子じゃ色々まずい!
「暁都!!車止めて!!僕を殺しても良いのか!あんなに好きって言ったくせに!!」
大声で叱りつけた。暁都さんはビクッとして我に返ると、さっと周囲を確認して急ブレーキを踏んだ。
続く
65
お気に入りに追加
294
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
素直じゃない人
うりぼう
BL
平社員×会長の孫
社会人同士
年下攻め
ある日突然異動を命じられた昭仁。
異動先は社内でも特に厳しいと言われている会長の孫である千草の補佐。
厳しいだけならまだしも、千草には『男が好き』という噂があり、次の犠牲者の昭仁も好奇の目で見られるようになる。
しかし一緒に働いてみると噂とは違う千草に昭仁は戸惑うばかり。
そんなある日、うっかりあられもない姿を千草に見られてしまった事から二人の関係が始まり……
というMLものです。
えろは少なめ。
【完結】遍く、歪んだ花たちに。
古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。
和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。
「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」
No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
まだ、言えない
怜虎
BL
学生×芸能系、ストーリーメインのソフトBL
XXXXXXXXX
あらすじ
高校3年、クラスでもグループが固まりつつある梅雨の時期。まだクラスに馴染みきれない人見知りの吉澤蛍(よしざわけい)と、クラスメイトの雨野秋良(あまのあきら)。
“TRAP” というアーティストがきっかけで仲良くなった彼の狙いは別にあった。
吉澤蛍を中心に、恋が、才能が動き出す。
「まだ、言えない」気持ちが交差する。
“全てを打ち明けられるのは、いつになるだろうか”
注1:本作品はBLに分類される作品です。苦手な方はご遠慮くださいm(_ _)m
注2:ソフトな表現、ストーリーメインです。苦手な方は⋯ (省略)
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる