浮気な彼氏

月夜の晩に

文字の大きさ
上 下
18 / 67

【浮気な彼氏#6-2】

しおりを挟む
暁都さんも大概推しが強いけど、これに流されて良いんだろうか。流されつつあるんだけど。


深い仲になった途端にポイとか、あったりするんだろうか・・。また浮気されたりとか・・。



なくはない可能性に思い至って心底ゾワッとした。足元の高さのある展望台から下を覗きこむ。こっから落ちるのと同じくくらい無理だな、それは・・。



惹かれてはいるのに、暁都さんに飛び込みきれない自分がいた。





その後近くの美味しい和食のお店でご飯を食べた。デート帰りっぽい人たちは多かった。

あいかわらず暁都さんの話はテンポが良くて楽しかった。彼は雰囲気はちょっと軽薄だけど、楽しい人なんだ。



次はどこいく?なんて暁都さんは上機嫌だった。どっか旅行も良いよねーだなんて。


なんとも言えなくて、僕は曖昧に笑うのみだ。


迷いなく人を好きになれる人生でありたかったな、なんて・・。






ご飯屋さんを出て、帰りの車内で。

車を運転しつつ、当たり前の様に暁都さんは言った。


「帰り、俺ん家で飲み直そうよ」

家に寄るっていうのはつまりそういうことだよね・・?



関係を進めるのが、不安な僕。


「今日は帰りたい、かなって。ちょっと疲れちゃって」

濁してなんとかそう答えてた。



チラと僕を一瞬伺う。

「そっかー。じゃあ明日は?」

「えっと仕事がありがたいことにちょっと忙しくて」



「・・じゃあ明後日は?」

「明後日締めのクライアントさんがいまして・・」



「ふ~~ん忙しいのねアナタ。・・仕事全部飛べば良いのにね」



なんて事言うんですか!と憤る僕に、ケラケラとわざと意地悪く笑ってゴメン嘘、頑張ってよと彼は答えた。






僕の住む旅館の駐車場に着いた。

入り口まで送るよといって暁都さんも車を降りて僕に着いてきた。



鈴虫が鳴く声が聞こえる。もう秋も随分深まってきた。
肌寒くて僕は腕をなんとなしにさすった。



「次はいつ会える?」

予定を先延ばしにする口実を必死に考えた。


「えっと・・また予定みて僕から連絡します」

そっか待ってるわと彼はポツリと言った。




もう旅館の入り口に着く、という時。

大きな観葉植物の影に入ったとこでさっと背後から僕を抱きしめた。

「!」

「・・嫌われちゃったかな?」

彼の匂いがフワッとして、途端にドキッとしてしまった。




「嫌ってなんかないです」

「嘘だね俺を避けてる」

「避けてません・・」



僕の手に、彼はそっと自分の手を重ねた。



「また元彼の方に気持ち傾いてるのかと思って俺不安にちゃったよ」

「!いやそんな訳・・!」

「だよねー?ま、頑張るよ、俺」



また連絡すると言って、僕にさっとキスすると踵を返して帰っていった。

「!」


そのシュッとした後ろ姿を見送りつつ、僕も部屋に向かって歩き出す。




ばくばくする心臓を押さえつつ。

彼を信じて良いのか、
本当に進んで良いのか。


 
運命の神様に答えを教えて欲しかった。






続く
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果

はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話

雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。  諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。  実は翔には諒平に隠している事実があり——。 諒平(20)攻め。大学生。 翔(20) 受け。大学生。 慶介(21)翔と同じサークルの友人。

生意気な弟がいきなりキャラを変えてきて困っています!

あああ
BL
おれはには双子の弟がいる。 かわいいかわいい弟…だが、中学になると不良になってしまった。まぁ、それはいい。(泣き) けれど… 高校になると───もっとキャラが変わってしまった。それは─── 「もう、お兄ちゃん何してるの?死んじゃえ☆」 ブリッコキャラだった!!どういうこと!? 弟「──────ほんと、兄貴は可愛いよな。 ───────誰にも渡さねぇ。」 弟×兄、弟がヤンデレの物語です。 この作品はpixivにも記載されています。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

知らないうちに実ってた

キトー
BL
※BLです。 専門学生の蓮は同級生の翔に告白をするが快い返事はもらえなかった。 振られたショックで逃げて裏路地で泣いていたら追いかけてきた人物がいて── fujossyや小説家になろうにも掲載中。 感想など反応もらえると嬉しいです!  

処理中です...