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【浮気な彼氏5-3】
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「お前はいつも俺のことを想ってくれてたんだ。
デートはいつも俺が行きたい場所で、俺が寝坊してデートをすっぽかしちまっても、『疲れてるんだから仕方ないよね』って俺を責めもせずに美味い飯作ってくれて・・。それも栄養たっぷりの旨い飯。
いつもそんな風に出来ることが、どんなにすごいことなのか俺はちっとも分かってなかった」
そうだよ。僕は昔はどんな君でも応援しようと思ってたんだ、本気でね。
「それに俺が飲み会行くっつって、何時に出かけて何時に帰ろうと、お前は怒らなかった。『若いんだもん、飲み会行きたいよね』って。
馬鹿みたいに飲んで家帰ると、すぐに冷たい飲みもん出してくれて、翌日は二日酔いの俺のためにお茶漬け出してくれてたよな」
そんなこともあったね。
晩御飯作って待ってても、急に飲み会入ったって言われて、日持ちしない料理を何度ゴミ箱に捨てただろう。
でも当時は、誘われればそうやって飲み会に飛んでってしまうやんちゃな君すら愛しいと思っていた、馬鹿な僕・・。
「俺は調子に乗ってたんだ。お前なら何でも許してくれるって・・」
「だから浮気しても許してくれるって思ったの?」
刺す様に冷たい声が出た。
ぐっと一瞬詰まった彼。でもすぐに言った。
「後悔してる」
ヒュウっと風が頬を冷やす。しかしカッとなった心までは鎮めてくれなかった。
一気にまくしたてた。
「でもどうして今更?若い女の子は、献身的じゃなかった?
歳上で、何でもやってくれて、何でも許してくれる僕は、いたらやっぱ便利だったなあって、そういうこと?」
自分で自分を追い詰めてしまう。
苛立ちが募って、無意識に指先をかりかりと掻いた。
「君、あの子以外にも浮気してたんでしょう?他の人ともうまくいかなかったの?」
初めてぎらりと睨んだ。
他にも浮気相手がいるというのは暁都さんの読みで、鎌掛けだったのだが。
彼が一瞬、ギクリとして目を見開いた。その反応で分かった。本当だったんだって・・。心の底からガッカリした。
「ち、違うんだ!その・・ごめん、うまく言えないんだけど。
ああ・・別の人にちょっかいを掛けてたのは、その、本当なんだ。浮ついてたのは、本当。ごめん。ごめんなさい。
だけど、なんて言うか・・どんなにお洒落だったり見た目が良くても、居心地の良さは別で。
俺にはお前が一番なんだって、思い知ったんだ!」
「・・!!」
それは僕が君に夢中になってた、あの日に言ってくれてたら。こんなんなる前に。
全てが遅かった。
「俺ともう一度やり直して欲しい」
「そんな・・」
手をギュッと握られる。でも・・!
「今までのお礼したらもう諦めるって言ったでしょ!こんなのズルいよ!」
揉み合う。離せ、離してくれ!
「ごめん、でもああでも言わなきゃお前は会ってくれなかっただろ?
次はちゃんとする。お前だけを見つめるから」
「無理でしょ君には」
「もう絶対迷わない、誓うよ!お前だけを愛してる!」
「・・・!!」
始めて見る真剣な顔と告白が、僕の心臓をギュッと掴んだ。
これは本当に改心してるかも?とも内心思ってしまった。が、すぐに打ち消した。
ダメだ、僕は最初からずっと僕だけを見てくれる人が良いんだ!
「・・離して!」
力ずくで手を振りほどいた。
「もう、会うの今日で本当に最後だから!バイバイ!」
彼を突き飛ばし、逃げる様に走り出した。ホームに逃げ込んだ。
ちょうど反対側に電車が来る。
「また来るから!また振り向いて貰えるまで、俺頑張るから!」
背中に突き刺さった言葉。
迷うな僕、振り返るな!幸せになりたいんだろ!
ぎりぎり電車に滑り込んだ僕は、ハアハアと荒い息を吐きドアにもたれかかった。
ふと見た踏切前で、こちらを切なげに見上げる彼と目が合って慌てて身体を反転した。
反対側の窓では、お前はそんなんだからいつまでも幸せになれないんだよと、闇夜に浮かぶ三日月が僕を嗤っていた。
続く
デートはいつも俺が行きたい場所で、俺が寝坊してデートをすっぽかしちまっても、『疲れてるんだから仕方ないよね』って俺を責めもせずに美味い飯作ってくれて・・。それも栄養たっぷりの旨い飯。
いつもそんな風に出来ることが、どんなにすごいことなのか俺はちっとも分かってなかった」
そうだよ。僕は昔はどんな君でも応援しようと思ってたんだ、本気でね。
「それに俺が飲み会行くっつって、何時に出かけて何時に帰ろうと、お前は怒らなかった。『若いんだもん、飲み会行きたいよね』って。
馬鹿みたいに飲んで家帰ると、すぐに冷たい飲みもん出してくれて、翌日は二日酔いの俺のためにお茶漬け出してくれてたよな」
そんなこともあったね。
晩御飯作って待ってても、急に飲み会入ったって言われて、日持ちしない料理を何度ゴミ箱に捨てただろう。
でも当時は、誘われればそうやって飲み会に飛んでってしまうやんちゃな君すら愛しいと思っていた、馬鹿な僕・・。
「俺は調子に乗ってたんだ。お前なら何でも許してくれるって・・」
「だから浮気しても許してくれるって思ったの?」
刺す様に冷たい声が出た。
ぐっと一瞬詰まった彼。でもすぐに言った。
「後悔してる」
ヒュウっと風が頬を冷やす。しかしカッとなった心までは鎮めてくれなかった。
一気にまくしたてた。
「でもどうして今更?若い女の子は、献身的じゃなかった?
歳上で、何でもやってくれて、何でも許してくれる僕は、いたらやっぱ便利だったなあって、そういうこと?」
自分で自分を追い詰めてしまう。
苛立ちが募って、無意識に指先をかりかりと掻いた。
「君、あの子以外にも浮気してたんでしょう?他の人ともうまくいかなかったの?」
初めてぎらりと睨んだ。
他にも浮気相手がいるというのは暁都さんの読みで、鎌掛けだったのだが。
彼が一瞬、ギクリとして目を見開いた。その反応で分かった。本当だったんだって・・。心の底からガッカリした。
「ち、違うんだ!その・・ごめん、うまく言えないんだけど。
ああ・・別の人にちょっかいを掛けてたのは、その、本当なんだ。浮ついてたのは、本当。ごめん。ごめんなさい。
だけど、なんて言うか・・どんなにお洒落だったり見た目が良くても、居心地の良さは別で。
俺にはお前が一番なんだって、思い知ったんだ!」
「・・!!」
それは僕が君に夢中になってた、あの日に言ってくれてたら。こんなんなる前に。
全てが遅かった。
「俺ともう一度やり直して欲しい」
「そんな・・」
手をギュッと握られる。でも・・!
「今までのお礼したらもう諦めるって言ったでしょ!こんなのズルいよ!」
揉み合う。離せ、離してくれ!
「ごめん、でもああでも言わなきゃお前は会ってくれなかっただろ?
次はちゃんとする。お前だけを見つめるから」
「無理でしょ君には」
「もう絶対迷わない、誓うよ!お前だけを愛してる!」
「・・・!!」
始めて見る真剣な顔と告白が、僕の心臓をギュッと掴んだ。
これは本当に改心してるかも?とも内心思ってしまった。が、すぐに打ち消した。
ダメだ、僕は最初からずっと僕だけを見てくれる人が良いんだ!
「・・離して!」
力ずくで手を振りほどいた。
「もう、会うの今日で本当に最後だから!バイバイ!」
彼を突き飛ばし、逃げる様に走り出した。ホームに逃げ込んだ。
ちょうど反対側に電車が来る。
「また来るから!また振り向いて貰えるまで、俺頑張るから!」
背中に突き刺さった言葉。
迷うな僕、振り返るな!幸せになりたいんだろ!
ぎりぎり電車に滑り込んだ僕は、ハアハアと荒い息を吐きドアにもたれかかった。
ふと見た踏切前で、こちらを切なげに見上げる彼と目が合って慌てて身体を反転した。
反対側の窓では、お前はそんなんだからいつまでも幸せになれないんだよと、闇夜に浮かぶ三日月が僕を嗤っていた。
続く
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