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【浮気な彼氏#5-2】
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夜23時の10分前。半信半疑で僕は駅にいた。
東北の夜は寒い。やや震えながら駅に突っ立っている。
てか何してんだろう僕は・・?
どうせ別れるんだから、やっぱLINEでさよならで良かったかな・・?
頭の中がぐるぐるしだした時、ちょうど元上司からLINEが来た。
『大丈夫?俺がいなくて寂しがってない?またそっち遊びに行こうか?』って。
そんな絡みLINEに、なぜかすこしホッとした。
『大丈夫ですよーあと今から元彼と会うことになりました。負けない様に祈っててください』ってだけ返しておいた。
そしたら・・
「久しぶり」
低くて艶のある良い声。間違いない、これは・・
携帯から視線をあげると、彼がいた。
男前で、かつて僕が大好きだった・・
ひと気のない駅のベンチに座って話し出した。蛍光灯の灯が、ホリの深い彼の顔に濃い影を落としていた。
「来てくれてありがとう、いないと思ってたから」
「・・ううん」
静かな声が耳に響く。久しぶりに聞く懐かしい声。
「今まで本当、ありがとな」
「・・ん」
かすかな間。お互いが、何を話せば良いのか模索していた。
彼が切り出した。
「新しい人ってどんな人?」
「ん?渋くて僕よりも歳上の人だよ。これからはおじさん同士、仲良くやってくよ」
へへと笑ってみせた。
「・・・」
ふと視線を落とした彼。彼の履く明るい色のスニーカーは、やっぱり若い子特有だなあなんて思った。
暁都さんは、こういうのは履かないもんな。渋くて高そうな革靴だけ。
・・暁都さんに会いたいな、なんてチラと思った。だから。
「・・それじゃ、もう僕行くね」
僕は立ち上がった。
だけど彼がグイと引いて引き留めた。
「!・・何?」
「あの子とはちゃんと別れたよ。もう会ってない」
まっすぐ僕を見上げる瞳。
フラッシュバックしたあの日の記憶。
脱ぎ散らかしたピンクの下着に、
僕らのベッドで眠るとびきり可愛い女の子・・。
グワッと込み上げた憤怒が僕の心を膝蹴りし、平凡な自分へのコンプレックスが僕に右ストレートを打った。
僕は一瞬であの日にあの時、あの場に引き戻され、べこぼこに再度打ちのめされていた。
反射的にぽろりと溢れ出た一筋の涙。
何も言わない僕に、彼は続けた。
「お前がいなくなって、お前の大事さがよく分かったんだ」
「・・・」
大事って、何が?
失って分かる大切さなんてたかが知れてる。
夜の海辺の冷たい風が、ひゅうひゅうと鳴る。ぽっかりと空いた僕の心を通り抜けていく音と同じ。
続く
東北の夜は寒い。やや震えながら駅に突っ立っている。
てか何してんだろう僕は・・?
どうせ別れるんだから、やっぱLINEでさよならで良かったかな・・?
頭の中がぐるぐるしだした時、ちょうど元上司からLINEが来た。
『大丈夫?俺がいなくて寂しがってない?またそっち遊びに行こうか?』って。
そんな絡みLINEに、なぜかすこしホッとした。
『大丈夫ですよーあと今から元彼と会うことになりました。負けない様に祈っててください』ってだけ返しておいた。
そしたら・・
「久しぶり」
低くて艶のある良い声。間違いない、これは・・
携帯から視線をあげると、彼がいた。
男前で、かつて僕が大好きだった・・
ひと気のない駅のベンチに座って話し出した。蛍光灯の灯が、ホリの深い彼の顔に濃い影を落としていた。
「来てくれてありがとう、いないと思ってたから」
「・・ううん」
静かな声が耳に響く。久しぶりに聞く懐かしい声。
「今まで本当、ありがとな」
「・・ん」
かすかな間。お互いが、何を話せば良いのか模索していた。
彼が切り出した。
「新しい人ってどんな人?」
「ん?渋くて僕よりも歳上の人だよ。これからはおじさん同士、仲良くやってくよ」
へへと笑ってみせた。
「・・・」
ふと視線を落とした彼。彼の履く明るい色のスニーカーは、やっぱり若い子特有だなあなんて思った。
暁都さんは、こういうのは履かないもんな。渋くて高そうな革靴だけ。
・・暁都さんに会いたいな、なんてチラと思った。だから。
「・・それじゃ、もう僕行くね」
僕は立ち上がった。
だけど彼がグイと引いて引き留めた。
「!・・何?」
「あの子とはちゃんと別れたよ。もう会ってない」
まっすぐ僕を見上げる瞳。
フラッシュバックしたあの日の記憶。
脱ぎ散らかしたピンクの下着に、
僕らのベッドで眠るとびきり可愛い女の子・・。
グワッと込み上げた憤怒が僕の心を膝蹴りし、平凡な自分へのコンプレックスが僕に右ストレートを打った。
僕は一瞬であの日にあの時、あの場に引き戻され、べこぼこに再度打ちのめされていた。
反射的にぽろりと溢れ出た一筋の涙。
何も言わない僕に、彼は続けた。
「お前がいなくなって、お前の大事さがよく分かったんだ」
「・・・」
大事って、何が?
失って分かる大切さなんてたかが知れてる。
夜の海辺の冷たい風が、ひゅうひゅうと鳴る。ぽっかりと空いた僕の心を通り抜けていく音と同じ。
続く
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