浮気な彼氏

月夜の晩に

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【浮気な彼氏#3-4】

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「あ、そういえばあなたもこの辺りに住んでるんですか?」

もう何も僕のこと突っ込まれたくないから相手に水を向けた。


「ん、俺?そうだよ。この本当すぐ近く。もうちょっと行ったところ海あるでしょ、あの辺のマンション。俺ね、小説家やってるんだよ」


海の近くに住む小説家。それ自体が題材になりそうだ。やっぱ小説家って趣あるところに住んでるんだな。



それからは『え~すごいですね!』ととりあえずアレコレ相手の仕事の話を聞いてみた。



自分とは違う世界の話を聞くのって面白いし。



話上手な相手につられて、長らく話し込んでしまった。久しぶりに沢山笑って、気づけば2時間あっという間だった。






バーからの帰り道、海沿いを一緒に歩く。


あまり街灯のないこの街では、星が良く見えた。その分、並んで歩く相手の顔は良く見えないけれど。



暗闇の中で相手は言った。

「・・ところで君さ、男いるだろ。イヤ、いた、かな?」


ぎくりとして振り返った。暗闇の中、見据える様な瞳と目が合った。


「付き合ってる女のことを恋人って表現する奴いないからね。そう言う奴には大抵男がいる。

・・でも迷惑メールって言ってたしね。前の男からもっかい付き合おうって言われてる。違う?」



全て言い当てられてどきりとした。つい頷いた。



「一度別れたやつとヨリ戻したって、何も生まれないよ」

「・・それは分かってます僕も・・」



忘れていた苦しみがギュウっと胸を刺した。せっかく楽しかったのに・・。



「だからさ、俺を試してみない?」

「!」


さっと手を繋がれた。その長い指で僕の手のひらをカリッと少し掻き、そして手を離した。

あまりにも一瞬。でも手短な愛撫みたいだった。



「それじゃまたね」



びっくりしてドキドキして何も言えない僕を置き去りにして、相手は去って行った。


いきなり不躾なまでに僕に急接近してきたあの人。






でも、イヤじゃない自分がいた。

もしかしたら、僕は元彼を忘れられるかもしれない、なんて思っていた。



時間を確認したくて見た携帯には、また元彼から山ほどのメッセージ。


それをそのまま鞄にしまって、僕は暗闇のなか旅館の灯りに向かって歩き出した。





続く
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