浮気な彼氏

月夜の晩に

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【浮気な彼氏#2-3】

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ここはとある東北の旅館。



こぢんまりとした旅館だが、風情があってすごく良かった。内装の指示なんかは上司がやったらしい。

あの人、一応センスは良いもんな。



和室のお部屋から外を見ていた。きっとシーズンには燃える様な紅葉だろうな。


「どう?気に入ってくれた?」

ニコニコ顔の上司が言う。


「え、あ、はい。良いところですね・・」

そう、なんか上司も来ちゃったんだ。 案内するよとかなんとか無理くりいって。




もちろん別の部屋に泊まってもらうけどね。それはそれだわよ。


近くに美味しい魚料理のお店があると夕飯に連れて行ってくれた。


確かにめちゃくちゃ美味しくて、ぱくぱく食べてしまった。


そんな僕を上司がニコニコと見守る。

上司は僕よりも5歳年上なんだけど、随分若く見える。


普通にしてれば結構男前なんだけどね。

ふいにじっと見つめられてドキッとしてしまった。

「それでさ・・こんな東北に逃避行、なんて結局何があったの?恋人いたよね?・・別れちゃった?」

「・・・」

なんでも聞くよ?と水を向けてくれて、僕はポツポツと話だした。

付き合っていた恋人とは最近うまくいってなかったこと。 ついに浮気されたこと。

 でもその浮気は初めてじゃないかもしれないこと、気づかなかった自分が情けないこと。 



辛くて家を飛び出したこと・・



上司はそれはひどいねえと辛いねえと僕の味方になっ
てくれた。


ぽろりと泣いてしまった。


この男、弱ってる僕に漬け込む気だぞと、意地の悪いもう1人の僕が囁いた。


でも、良いじゃないか。 今はちょっとだけ誰かに甘えたかった。






翌日。

上司はもう帰るというので、見送りに駅のホームに行った。


新幹線が出る直前、君ならいつまででもあそこに住んでて良いからねと言い残し、去り際にサッと一瞬僕を抱きしめてきた。


「!」


大人の良い匂いがして、ドキッとしてしまった。間近で見た上司の顔。少し垂れ目で色気のある顔ではある。

心臓がドッドッと言っている。今の僕は、顔が赤いかも。



それじゃさよなら!と上司を引き剥がして、電車に押し込んだ。


またね~とガラス窓から残念そうに手を振ってくる上司は、だんだんと遠ざかっていって・・。



電車が見えなくなったところで、ホームの椅子に座り込んだ。


ふう、やれやれ・・。 あれだ、僕は何とも思ってないからな。


携帯がブンブン言う。うん?と思ってみたら、知らない番号から大量の着信履歴。



わ、まただ、また来た。 震える手で一応出る。
聞こえてきたのは・・



『もしもし・・?俺だけど』





続く
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