浮気な彼氏

月夜の晩に

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【浮気な彼氏#1-3】

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翌日。上司からの指示で僕は1週間ほど出張に行かなきゃならなくなった。



上司もくっついてくるらしい。嫌すぎる。


『夜同じ部屋でも良いよね?男同士だし』って冗談めかして言ってくるのを『僕は無理ですね』と封じ、別々の部屋を予約した。



このセクハラ上司、本当どうにかして欲しい。





家に帰って、一応事の顛末を彼にグチがてら言ってみたけど、ふうんまあ気にしすぎじゃない?の一言。


焼いたり心配してほしかったんだけどな。無理か。


前から上司のことは相談してる。付き合い始めた頃からかな?でも彼は、ずっと無反応のままなんだよね。辛い、それが・・。



色々惨めになってしまって、僕はそれ以上何も言わなかった。





上司と1週間同じホテルの出張は、正直めちゃくちゃきつかった。


毎日飲みに誘われるのを毎日断った。

眠いんで無理です、疲れてるんで無理ですって。もう訴えてやろうかアイツ。




僕も色々しんどくて、1週間彼に特に連絡出来なかった。

彼から今どうしてる?なんて電話が来る事はもちろんなく。


ああ、塩対応でも良いから彼に、会いたいな・・。






ようやくの長い出張を終えて。


僕は1週間ぶりに一緒に住む家に帰った。


本当は午後に帰ってくる予定だったんだけど、ちょっとでも早く彼の顔が見たかった。美味しそうなお土産も買ったし。



だから朝8時着の電車で帰ってきた。驚かせようと思って、それは彼には内緒で。




会いたかったよー!とか、久しぶりに盛り上がるかな、なんてちょっとワクワクしてた。

距離を開ければ色々再燃することあると聞くし、なんて・・。



今は他の子に心移りしてても、また少しずつやり直していけたら良いな、とも思ってた。




だけど…



家のドアをそうっと開ける。


そしたら、彼の革靴の横にはハイヒールがきちんと揃えて置かれていた。



心臓がドクンと跳ねた。
こんな時間からお客さん・・?
しかも、家に?


嫌な予感がする。


限りなく音も気配も消して、僕は家に滑り込む。


リビングには誰もいない。
じゃあ・・寝室?



心臓が嫌な予感でばくばく言っているのを抑えて、祈る様な気持ちでドアを開けた。





そこには彼と女がベッドですやすやと寝ていた。例の子だった。本物は写真よりもっと可愛かった。



そして次に真っ先に目に入ったのは、
床には脱ぎ散らかした女のピンクの下着。


「・・何してるの」

感情の籠らない声で彼を起こした。



眠気まなこでむにゃむにゃと起きた彼。
暫くしてハッと起きた。



「ごめん、これは、違うんだ、理由があってっ!話聞いて!」


物凄く青ざめて慌てている。
掴まれた手を振り解いた。



「言い訳なんか、聞きたくない!!」

僕は家を飛び出した。

ゴミ箱に、うざったい手土産を袋ごと投げ捨てて。





雑踏の中を駆けた。

僕らの家に連れ込んで浮気するなんて!
信じられない、あり得ない!



やり直せるかもなんて、甘かった。
やっぱり僕じゃダメなんだ。

可愛くもない、おっぱいもない。どこまでも平凡な男。



とぼとぼと歩く。ショーウィンドウに映る自分はすごく惨めで。

その瞬間から、僕は世界で一番自分のことが大嫌いになった。




携帯には彼からの大量の着信。それにごめんだの誤解だの、沢山のメッセージ。



こんなに熱烈にかかってくるなんて久しぶりだった。こんな用事でだなんて、嫌だったけどね。


だから僕は、彼をブロックした。


何もかも失った世界の中で、残ったのは大嫌いな僕、ただひとり。





続く
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