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【浮気な彼氏#5-1】浮気した元彼の襲来
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悪戯な手が身体を這う。
壁に押し付けられて、キスが深くなっていく。
息が上がる。このままだと・・
ぷはと束の間唇を離した暁都さんのその瞳が、ベッドへと誘っている。
間近で見つめられてドキドキと心臓が胸を打つ。聞こえてしまわないだろうか。
でも・・
僕は瞳を伏せて、ぐいとその身体を押し返した。この先は、まだ僕には早かった。
「帰ります、今日は・・」
暁都さんは残念そうに眉を顰めてみせると、僕を一度だけギュウッと強く抱きしめた。
「・・またね。次は止めないよ」
耳元で言われて心の柔らかい部分がざわりと震えた。
早朝の海辺をひとり歩いて帰る。
なんだか足取りがふわふわして、現実味がなかった。
ここ最近、一気にいろんなことがありすぎた。
もしかして僕、夢でも見てるんじゃないかと思うくらいに。
・・ふと、自分は浮気されたショックで白昼夢を見ていて、ハッと気づいたらあの日あの場所にまだいるんじゃないか、なんて考えて怖くなった。
本当はこんな東北の海沿いの街なんてなくて、僕は惨めなあの日のまま・・
『ピイィ!』
びくっとして我に帰る。見上げれば、鳥が弧を描いて飛んでいく所だった。
そして鳥の羽ばたく空にはいまだ暁が残り、それがあの人を連想させた。
「・・・!」
さっきの行為が一気に思い出されて、ドッドッと心臓が脈打ち、カァッと頬が熱くなった。
いや、こんなにドキドキしてる。夢なんかじゃない。
暁都さんに出会ったことも、あの情熱的な視線も、一歩踏みこんだ関係になったことも。
僕は暁都さんのことが頭から離れなくなってしまった。何をしても、どこにいても・・
その日の夜。
相変わらず大量にLINEを送ってきていた元彼に僕は意を決してあるメッセージを送った。
『僕ねえ、他の人と付き合うことにしたよ。今までありがとう!さようなら』
厳密に言えば違うのだが、そういうことにしておいた。
気持ちの上ではもう暁都さんに傾いているのだ。ならケジメをつけなきゃと思った。
交際していた時の楽しい記憶が頭の中を駆け巡った。この後に及んで寂しかった。
一瞬で既読がついて、電話が来たけど無視した。
ブロックして本当に終了・・と思っていたら、メッセージが滑り込んできた。
『分かった。そしたら最後に一度だけ会ってくれないか?
今まで付き合ってくれたお礼を言わせて欲しい。それで諦めるから』
こんなメッセージが来て、ふいに迷ってしまった。
長く付き合ってたし、確かに終わりだけはちゃんと会った方が良いのかな・・と思ったんだ。
せっかくの楽しかった思い出は、『今までありがとう』で締めたい。そんな想いもあった。
だから今の僕の最寄駅、から5つ隣の駅を教えてみた。
ま、どうせこんな遠いところまでは結局会いになんて来ないだろう。
思ってたより遠いから、面倒になってどうせ音信不通に・・と思ってはいたのだが。
『今から行く』
って返信がすぐに来た。間も無くして次にスクショが。
23時着の電車で行くからって。
だから慌てて返信した。
『ウチには泊めれないよ』
って。その辺期待されても本当に困る。
『良いよ、お前に会えれば俺は野宿でも』
『下手したら1分とかしか、会えないかもよ?てか、やっぱり僕は待ち合わせ場所に行かないかもしれないし』
そう返信したら。
『良いよ、それでも』
って。
信じられない。今から彼はこっちに本当に来るらしかった。
以前はあんなに塩対応だった彼が。
続く
壁に押し付けられて、キスが深くなっていく。
息が上がる。このままだと・・
ぷはと束の間唇を離した暁都さんのその瞳が、ベッドへと誘っている。
間近で見つめられてドキドキと心臓が胸を打つ。聞こえてしまわないだろうか。
でも・・
僕は瞳を伏せて、ぐいとその身体を押し返した。この先は、まだ僕には早かった。
「帰ります、今日は・・」
暁都さんは残念そうに眉を顰めてみせると、僕を一度だけギュウッと強く抱きしめた。
「・・またね。次は止めないよ」
耳元で言われて心の柔らかい部分がざわりと震えた。
早朝の海辺をひとり歩いて帰る。
なんだか足取りがふわふわして、現実味がなかった。
ここ最近、一気にいろんなことがありすぎた。
もしかして僕、夢でも見てるんじゃないかと思うくらいに。
・・ふと、自分は浮気されたショックで白昼夢を見ていて、ハッと気づいたらあの日あの場所にまだいるんじゃないか、なんて考えて怖くなった。
本当はこんな東北の海沿いの街なんてなくて、僕は惨めなあの日のまま・・
『ピイィ!』
びくっとして我に帰る。見上げれば、鳥が弧を描いて飛んでいく所だった。
そして鳥の羽ばたく空にはいまだ暁が残り、それがあの人を連想させた。
「・・・!」
さっきの行為が一気に思い出されて、ドッドッと心臓が脈打ち、カァッと頬が熱くなった。
いや、こんなにドキドキしてる。夢なんかじゃない。
暁都さんに出会ったことも、あの情熱的な視線も、一歩踏みこんだ関係になったことも。
僕は暁都さんのことが頭から離れなくなってしまった。何をしても、どこにいても・・
その日の夜。
相変わらず大量にLINEを送ってきていた元彼に僕は意を決してあるメッセージを送った。
『僕ねえ、他の人と付き合うことにしたよ。今までありがとう!さようなら』
厳密に言えば違うのだが、そういうことにしておいた。
気持ちの上ではもう暁都さんに傾いているのだ。ならケジメをつけなきゃと思った。
交際していた時の楽しい記憶が頭の中を駆け巡った。この後に及んで寂しかった。
一瞬で既読がついて、電話が来たけど無視した。
ブロックして本当に終了・・と思っていたら、メッセージが滑り込んできた。
『分かった。そしたら最後に一度だけ会ってくれないか?
今まで付き合ってくれたお礼を言わせて欲しい。それで諦めるから』
こんなメッセージが来て、ふいに迷ってしまった。
長く付き合ってたし、確かに終わりだけはちゃんと会った方が良いのかな・・と思ったんだ。
せっかくの楽しかった思い出は、『今までありがとう』で締めたい。そんな想いもあった。
だから今の僕の最寄駅、から5つ隣の駅を教えてみた。
ま、どうせこんな遠いところまでは結局会いになんて来ないだろう。
思ってたより遠いから、面倒になってどうせ音信不通に・・と思ってはいたのだが。
『今から行く』
って返信がすぐに来た。間も無くして次にスクショが。
23時着の電車で行くからって。
だから慌てて返信した。
『ウチには泊めれないよ』
って。その辺期待されても本当に困る。
『良いよ、お前に会えれば俺は野宿でも』
『下手したら1分とかしか、会えないかもよ?てか、やっぱり僕は待ち合わせ場所に行かないかもしれないし』
そう返信したら。
『良いよ、それでも』
って。
信じられない。今から彼はこっちに本当に来るらしかった。
以前はあんなに塩対応だった彼が。
続く
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