浮気な彼氏

月夜の晩に

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【浮気な彼氏#4-1】浮気した元彼はくれなかった言葉

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「俺のことはアキトさん、て呼んでよ」


次の日もつい来てしまったバーで、小説家の男は言った。


「ちなみに苗字は教えない。理由?
好きな子には下の名前で呼んで欲しいから」


整った顔立ちにとろりと色気のある視線をまっすぐ送ってこられて。告白めいた言葉に僕は・・。


ダメ押しとばかりにテーブルの下で繋がれた手。


「あの、離して・・」


良い加減頬が熱い。恥ずかしくてそう絞り出すと、イヤだねと言って彼は手指を絡めた。




どうしてイケメンて生き物は、こう手が早いんだろう。僕の元彼もアタックし始めはこんなだったな、なんて余計な記憶がよぎって消えた。







それで前の男ってどんな奴なのと、その尋問は始まった。


依然として手を離してくれる気配はない。しかも敏感な指先を軽く引っ掻かれて変な声が出そうになり、僕は諦めた。


「えっと年下でイケメンで、若い女と浮気して終わりました。以上です・・」

「情報が少なすぎるだろうがよ。写真とかないの」


じっと見つめられると困ってしまう。



空いてる手で携帯を出して、見せてみた。久しぶりに見る元彼の顔に、胸がギュッとなった。



「ふ~~ん、まあまあ良い男じゃん。ま、俺の方がいい男だけどね。・・でもこれは女に人気だろうな。浮気相手って相当可愛かったんじゃない?」


グサグサと胸に色んな思いが突き刺さって、僕はただ頷いた。


「まあなんか精力ありそうだもんねコイツ。ただ正直、浮気相手ひとりじゃないと思うよ。そんな可愛い女と浮気できるなら他も落とせる。
この手の男が、1人2人で我慢できる様に俺には見えない」



ー浮気相手は1人じゃ、なかった・・?


大きな言葉のハンマーに僕は叩き潰された。うまく息が吸えない。真っ暗闇が僕を支配していく。



嫌なこと言ってゴメンネと、アキトさんは僕の手をギュッと優しく握った。


「まあ俺コイツに会ったことないしさ?分かんないけどね。まあでも俺さ、小説で飯食ってるし、人を見抜く目はあるつもり。だからさ・・目覚ませよ」



諭す様な優しい瞳が、これは嘘じゃないと言っていた。


元彼本人に浮気相手もっといる?て聞いた訳じゃないけど、でも彼ならあり得ると僕ですら思う。


信じたくないけど、でもきっとこの人の言うことは正しいのだろう。直感的にそう思った。



僕の手指が冷たい。血圧が下がっていくのを感じる。



そうやって打ちのめされているところに、しかし元彼からまたぽんぽんとメッセージが来た。





続く
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