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【浮気な彼氏#3-1】浮気な彼氏からの再アタックをかわす方法、誰か教えて
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「もしもし・・?」
『俺だよ、久しぶり』
久しぶりの、彼の声だった。
涙がじんわり浮かんだ。本当はずっと聞きたかった。大嫌いなはずなのに、本当は会いたかった。
『今どこにいんの?家帰ったら荷物なくなってるからすげえびっくりしたよ。連絡もつかないし』
捲し立てるような声。あは、懐かしいな。彼は怒るといつも少し早口だった。
「・・ごめん」
何て言えば良いのか言葉が浮かばなくて、とりあえず謝ってしまう。僕の悪い癖・・。
視線を逃した先で、隣のホームに電車が入ってきた。仲の良さそうカップルがいる。僕らがあんな時もあった。
『それで・・無事でいんのか?』
彼はずるい。僕をこうやって時々心配するこの声音。これが本当あったかいんだ。
ほだされそうになる。全部彼のせいなのに。だから言った。
「も、電話切るね」
彼は叫んだ。
『俺が愛してるのはお前だけだから!LINE、見ろよな!』
「!」
珍しく切羽詰まった声。
即電話を切った。着信拒否も。
それから駅のホームでしゃがみこんだ。
滑り込んできた最後のセリフに心臓がギュッと掴まれていた。今の僕、すごくみっともない顔をしてる。
アテもなくふらふらと海沿いの道を歩く。こうして悩んで歩く時、海の近くっていうのは良い。
海沿いの街に引っ越してきて良かった。
平日の午前10時。
こんな時間は外にあまり人がいない。皆会社や学校に行ってて、どこにも属していない僕だけが、孤独に街中で浮いていた。
ー俺が愛してるのはお前だけ!
さっきの台詞が頭の中で何度も響いていた。
じゃあなんで浮気するんだよ!って腹わた煮え繰り返ってる自分と、
密かに嬉しがってる自分がいた。
僕の心の中の一部が飛んで彼の元に帰ろうとしていた。さみしいさみしい!って。
くそ、ふざけるなよ!
自分で自分をコントロール出来ないことが悲しい。
ああ、自分の感情なんかなくなってしまえば良いのに。
上司も帰っちゃったし。僕に構いたがりの上司が今いれば、気が紛れたのにな。タイミング悪、本当・・。
続く
『俺だよ、久しぶり』
久しぶりの、彼の声だった。
涙がじんわり浮かんだ。本当はずっと聞きたかった。大嫌いなはずなのに、本当は会いたかった。
『今どこにいんの?家帰ったら荷物なくなってるからすげえびっくりしたよ。連絡もつかないし』
捲し立てるような声。あは、懐かしいな。彼は怒るといつも少し早口だった。
「・・ごめん」
何て言えば良いのか言葉が浮かばなくて、とりあえず謝ってしまう。僕の悪い癖・・。
視線を逃した先で、隣のホームに電車が入ってきた。仲の良さそうカップルがいる。僕らがあんな時もあった。
『それで・・無事でいんのか?』
彼はずるい。僕をこうやって時々心配するこの声音。これが本当あったかいんだ。
ほだされそうになる。全部彼のせいなのに。だから言った。
「も、電話切るね」
彼は叫んだ。
『俺が愛してるのはお前だけだから!LINE、見ろよな!』
「!」
珍しく切羽詰まった声。
即電話を切った。着信拒否も。
それから駅のホームでしゃがみこんだ。
滑り込んできた最後のセリフに心臓がギュッと掴まれていた。今の僕、すごくみっともない顔をしてる。
アテもなくふらふらと海沿いの道を歩く。こうして悩んで歩く時、海の近くっていうのは良い。
海沿いの街に引っ越してきて良かった。
平日の午前10時。
こんな時間は外にあまり人がいない。皆会社や学校に行ってて、どこにも属していない僕だけが、孤独に街中で浮いていた。
ー俺が愛してるのはお前だけ!
さっきの台詞が頭の中で何度も響いていた。
じゃあなんで浮気するんだよ!って腹わた煮え繰り返ってる自分と、
密かに嬉しがってる自分がいた。
僕の心の中の一部が飛んで彼の元に帰ろうとしていた。さみしいさみしい!って。
くそ、ふざけるなよ!
自分で自分をコントロール出来ないことが悲しい。
ああ、自分の感情なんかなくなってしまえば良いのに。
上司も帰っちゃったし。僕に構いたがりの上司が今いれば、気が紛れたのにな。タイミング悪、本当・・。
続く
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