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美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛
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「はあ~・・映画、面白かったねえ」
映画館でたったいま見終えたばかりの映画の余韻に浸ってそんな感想を漏らし、僕はうっとりと虚空を見上げた。
「あ~!その表情かわいい、もらい!」
そんな僕・彩葉(いろは)の横顔は、大層な台詞と共にカシャと勝手に撮られた。
幼馴染の秋良(あきら)だ。
「あのさあ・・」
居た堪れない思いで振り返る。
「何?」
にこにこ満面な超ハンサムボーイ・秋良は悪びれる様子などない。
「秋良、良い加減」
「『恥ずかしいから辞めてくれない?』でしょ?」
「僕の気持ちが分かってるなら辞めてよお・・」
この要請も何度目か。
でも今だって後ろの方にいる女子2人組にチラチラ見られているのだ。
「死んでも辞めない。俺、彩葉コレクターだからって前も言ったじゃん」
大声で言うのをワーっと制して止めた。
僕はため息を吐いた。
秋良は良いところのお坊ちゃんで正統派ハンサムボーイ、将来有望なアルファなのに偉そうなところがなく優しい性格の超完璧人間。身長178。
なのにこの平凡オメガの僕がツボだと言う、すごく勿体無い謎の性癖を持つ男の子。
なお趣味は僕の観察。生きがいは僕の写真を撮ること・・。
『コレクション』
映画館帰りの喫茶店。秋良にせっかくだし寄ってこうよと連れ込まれ、コーヒーに併せてドーナツまでご馳走されている。遠慮しないでとホイップまで増量。僕はいつもこうやって甘やかされている。
ドーナツにかぶりつく僕をうっとり見つめる主はもちろん秋良・・
「ほんと、可愛いなあ彩葉は」
すっと携帯に手を伸ばして僕の写真を撮ろうとしたのを察知し、僕は阻止した。
「・・けち」
ふふと苦笑した秋良。そんな顔もカッコ良かった。ただひたすらに写真を撮られるべきなのはどう考えたって秋良の方だ。
「ま、そんなことよりさ。彩葉のさっきの映画の感想教えてよ」
「・・や、その。大層な意見は言えないんだ。面白かったです、みたいな小学生の読書感想文みたいなヤツでさ・・」
偏差値70越えの秋良に、僕のちっぽけな頭脳を晒すことは憚られた。
「それでも全然良いよ。彩葉の話なら何でも聞きたいんだ。
・・俺の予想だとそうだなあ。彩葉が一番気に入ったシーンは多分あれだ。
脇役くんがヒロインに報われない片想いしてて誕生日プレゼント準備するんだけど、結局渡せなくて妹にあげちゃうシーンとかじゃない?
「えっ何で分かったの!?」
正確に言い当てられてビックリした。ちっぽけな自分に重なるものがあったんだ。
「おっ当たり?そうだなあ。彩葉は自分から好きって言ったり出来ないから・・自分に重なってあのシーン気に入ったんじゃない?」
「すごい秋良、どうしてそこまで分かるの?」
「俺、彩葉のことなら何でも分かるよ。彩葉コレクターだからね」
秋良は嬉しそうにニコニコと笑う。僕は嬉しくなって、ぺらぺらと沢山映画の話をした。
映画の脇役くんと、僕は重なるところがあった。身の丈に合わない想いを抱えてるってところ。
喫茶店からの帰り道。僕ん家の前まで送ってくれた秋良。
「それじゃ彩葉、今日はありがとう」
「うん」
「そういえば俺さあ、言ってなかったんだけど」
「何?」
「俺もね、あの映画の脇役くんに共感するとこあるんだよ」
ええ?どう見てもメインヒーローになれる秋良が?
「素直に好きっていうのは、俺もなかなか言えないからね」
そう言ってさっと僕のおでこにキスをしていった。
「!!!」
「じゃあね!」
機嫌良く帰っていく後ろ姿を、しゅ~っと赤い顔をして僕はただ見つめていた。ファーストキスどころかおでこにキスでさえ、人生で初めてだったから。
家の扉を開ければ、おかえりと聞こえてきた母さんの声。なんとなく罪悪感で母さんと顔を合わせられず、僕は帰ってきたばかりで風呂場へ直行した。
洗面台の鏡には、ぽや~っと頬の赤い僕が立っていた。それもまた恥ずかしくって、ぱっと目を逸らすとばばばっと服を脱いでガラと風呂場の扉を開けた。
浴槽につかって目を閉じる。ほわほわほわ~ん・・と思い出すのは今日の秋良。
相変わらずカッコ良かった、優しかった、ありがとう。こんなどこにでもいそうな平凡オメガになんか興味持ってくれて。あまつさえお出かけ帰りにはおでこにキスとか、多分世の女子に言ったら僕は刺し殺されるだろう。
今日のあれはどういう意味だったんだろう。
期待とかしても良いのかな・・?
いや、いや!揶揄われただけ!
というより、僕なんかが好きになって良い相手じゃないし。
ファンサービスを間に受けて本気で好きになっちゃうのと一緒でさ。思いあまって告白なんかして『え?俺そんなつもりないけど?』とか言われたら、僕は一生立ち直れないし・・。
まあ、アレだよね。可愛いとか普段言われてはいるけれど、あれはぶさかわいいペットを愛でるとかそういう気持ちだ多分。手持ち無沙汰に湯船の中で浴用タオルを弄ぶ。まあこんな姿ですら秋良に見られたら『カワイイ~!』とか言われて写真撮られてしまう、不思議・・。
翌日。いつもの高校への通学路の待ち合わせ場所で秋良を待っていた。幼馴染なんで学校は今までずっと一緒に通ってる。
家を出る時に飴ちゃんを口に一個放り込んできたので、カラコロと鳴っている。お気に入りの桃味・・がなかったので今日はレモン味。
しばらく待ってると、後ろから秋良が颯爽と現れた。
「おはよう彩葉。寝癖ついてる!珍しい。かわいいねえ~」
また朝からパシャと一枚撮られた。
「あ、うん、そういうのやめて・・」
「辞めない」
ニコニコ顔の秋良。何でもかんでもこう。なぜ彼がこうなってしまったのは僕にも分からない。
並んで歩き出す。
「彩葉、飴舐めてんの。俺にもちょうだいよ」
「ごめんコレ一個しかない」
「どれ?」
「これ」
「だからどれ?」
「だからあコレ!」
あ、と口を開けてレモンキャンディを見せたその瞬間。それを指で掠め取られた。
「彩葉のレアアイテムゲットー♪今日はレモンか、珍しいね」
そしてそのハンサム男はあむと自身の口に迷わず入れた。
「えっ・・さすがにそれはちょっと・・」
やや引き気味の僕に、秋良は良いじゃんと満足そうに笑った。その綺麗な横顔と言ったら。
あ、飴がそんなに欲しかったのかなあ・・明日は秋良の分も持ってきてあげよう。そう決心していた。
学校に着いて、秋良となんとなく教室でそのまま話していると・・
「秋良!ちょっとこっち来てよ。委員のことで」
割って入ってきたのは同じクラスの瀬央。目が大きくてまつ毛長くて色白で、正にヒロインという感じ。男の子なんだけどね。
「え~今?」
「今!」
ぶうたれる秋良を割と強引に引っ張っていく瀬央。秋良に片想いしてることで有名なあの子。僕と同じオメガ・・。
僕が秋良に告白なんて出来ないのは、実際のところ瀬央の存在が大きかった。どう考えても結局くっついちゃうんだろうなって2人だったから。
その後ホームルームが始まり、先生から今度の文化祭についてお知らせがあった。出し物をクラスで決めましょうと。
話し合いの結果、ウチのクラスは恋物語の舞台をやることになった。王子役・秋良、お姫様役・瀬央。満場一致で即決。
反対の票を入れる勇気は僕にはなかった。
ちなみに僕はというと、セリフ一言しかない靴屋の役だった。僕ってやっぱ舞台の中でもモブなんだなあと実感した。
それから文化祭の準備や練習が始まった。
僕は教室で見なければいけなかった。美男美女(?)のふたりが舞台の練習で絡むところを・・
「君を世界で一番愛してる」
秋良がそう言って瀬央を抱き寄せじっと見つめるシーンを。
何度そのシーン練習しても、瀬央は可哀想になるくらい顔が真っ赤になっちゃうんだ。きっと何度も秋良に恋に落ちてるんだろう。瀬央が恥ずかしがって続きのセリフ言わないから何度もカットになって、また何回も同じくだりを見て・・
僕はその度に胸がズキズキと痛んでハラハラして、でもどうしようもなかった。
ある日。練習がたまたま早く終わって早めに帰れると言う日。
リハーサルでお姫様の衣装を着た瀬央があまりに麗しくて、僕は打ちのめされていた。
だからひとりこっそり帰ろうとしてたら秋良に靴箱のところで捕まった。なんでバレたんだろう。
並んで歩く。
「練習、毎日大変だね」
「まあね。でもどう?俺さ、ちゃんと王子様になってるかな?」
「ん、うん、カッコいいよ」
本気でそう答えた。
「瀬央も本当、お姫様役ぴったり」
それも本当の気持ちだった。
「そう?」
「うん。舞台で本当、お似合いって感じ」
「・・まあ瀬央は確かに美人だし可憐だね。あれなら惚れる男が沢山いるのも分かるな」
心底ドキッとして、冷たい風が僕らの間を通り抜けていくのを感じた。
秋良。それってやっぱり・・?
瀬央と秋良が一緒にいるところをしょっちゅう見かける様になった。委員も舞台も一緒のふたり。瀬央は片想いしてる。瀬央が秋良に絡む理由なんていくらでもあった。
それを拒まない秋良。いや当たり前だ。全部まっとうな用事だもの。
秋良は瀬央と過ごす時間が増えて、僕と過ごす時間がものすごく減った。
秋良にカワイイ~!って写真を勝手に撮られることがなくなるのがこんなに寂しいなんて、知らなかった。
毎日ただげっそりと僕は思い悩んでいた。
秋良が瀬央に取られることが現実味を帯びてきていたんだ。
そうしてやってきた文化祭当日。秋良と瑠衣の主演の恋物語は最高の出来だった。彼らは正に絵本の中から抜け出してきた王子様とお姫様だった。
美しいふたりの悲恋の物語は多くの観客の心を掴み、僕の心には計り知れないダメージを与えた。
大盛況のうちに終わった舞台。片付けに追われている最中。
「秋良。・・ちょっと良い?」
ふと瀬央が秋良を連れてどこかへ行こうとしているのを見てしまった。悪い胸騒ぎ。
僕は卑怯にもふたりの後ろを慎重について行った。どうかバレません様にと。
そして僕は見てしまった。瀬央が秋良に告白するところを。
「秋良。舞台で終わりなんて嫌だよ。僕と本物の番になって欲しい」
そう言って抱きついて、キスを奪ったところも。僕が直視してられたのはそこまでだった。
気づいたら屋上にいた。フェンス越しに外を見つめていた。頭の中をさっきの映像が何度も流れる。離れてくれなかった。
秋良。あの後どうしたんだろう。なんて答えたのかな。美人で可憐だって前言ってたし。
舞台を通してやっぱり本当に好きになっちゃった・・?
僕はどうしたら良いんだろう。
気づいたらポロポロ泣いていた。こんなにショック受けるんなら、僕がもっと早くに告白していれば良かった。どうして勇気が出せなかったんだろう?
でもきっと今更遅いんだ。
それに瀬央ならあの秋良にお似合いだ。
秋良にはおめでとうって言わなくちゃ・・。
その時。キイと後ろのドアが開いた。
「彩葉」
ドキッとして振り向いた。
「・・秋良」
「ここにいたんだ。探したよ・・って泣いてるじゃん」
慌てて拭った。
「泣いてない」
「泣いてる!良いから顔あげて」
真剣な瞳が僕を見下ろしていた。じわ・・と滲んだ右目の涙を秋良の指先がそっと拭った。
「誰に泣かされたの」
「・・秋良」
「ああ・・瀬央とのアレ、見ちゃった?」
頷いた。
心臓をギュウと押しつぶされていた。
でも言わなきゃ、用意してたあの台詞・・
「彩葉。『瀬央ならお似合いだよ、おめでとう』だなんて聞きたくないよ」
心底ビックリした。
「ど、どうして僕が言おうと思ってること分かったの?」
秋良は僕をじっと見つめたまま言った。
「俺、彩葉のことなら何でも分かるって前も言ったじゃん。・・そういう超能力だから。本当だよ」
「何それ」
ついふふっと吹き出してしまった。秋良も笑った。
「ま、超能力はさておきさ。
俺、ただ彩葉の写真撮ってるだけじゃないんだよ。彩葉の気持ちなら何でも分かるつもり」
「秋良・・」
「俺と瀬央の舞台を見てモヤモヤしたり、瀬央に取られるかも~・・!ってようやく焦ってくれたんでしょ?ずっと俺の片想いと思ってたけどさ」
この幼馴染には何でもお見通しだったのだ。
「俺、彩葉が好きだよ。俺と番になってくれますか」
「!!・・はい・・」
秋良は僕をぎゅっと抱きしめた。
爽やかな風が通り過ぎていった。いつの日かの風とは随分違って。
「・・失恋したと思い込んで泣いちゃう彩葉、超超かわいかったなあ。
あれは本当何回見ても飽きない・・んだろうなあ」
あんなの何回もあってたまるかと、コツンとぶってやった。
こうして正式に番になった僕ら。高校を卒業して大学生になったタイミングで一緒に暮らし始めた。
秋良の溺愛は勢いを増した。朝から晩まで僕を可愛いと良い、色んな旅行先に連れてってくれて、僕が食べたいもの・欲しいものは何でもくれた。
「嬉しい~!」と僕がただひたすらに喜ぶ様をすごく嬉しそうに見つめ、そして僕のことを写真に撮り続けた。
僕が辛い時があった時は、僕が言うよりも早く『何かあったでしょ・・例えばアレとか?』と僕の心の内をまるで本当に読んでいるかの様に言ってきた。
「秋良って本当、僕のこと何でも分かっちゃうんだ」
そう言えば秋良はいつも嬉しそうに笑った。
学生のうちは無理だけど、働く様になったら子供つくろうねって話を秋良とはしていた。
「彩葉の子供なら絶対カワイイ!超楽しみ。名前はどうしようかなあ」
なんて秋良はしょっちゅう僕のお腹を撫でた。まだいないってのに。
そこから時は流れ、僕らはついに社会人になった。ハネムーン旅行ってことで海外の綺麗な南の島をふたりで訪れた。
豪華な旅行先のホテルで2人っきりのとき、ベッドでむにゃむにゃと寝っ転がってるだけの僕を楽しそうにパシャパシャと写真を撮ってきたんでつい苦笑してしまった。
「そんなのまで撮るの?」
「撮るよ。俺、彩葉の全部の顔をコンプリートするんだから」
「出た。彩葉コンプリート」
「そうだよ」
僕にここまでの関心を寄せてくれるなんて、地球で秋良だけだろう。そんな人と巡り会えて番になれて僕はなんて幸運なんだろう。
真面目な顔で秋良は言った。
「俺、たとえ生まれ変わってもまた彩葉見つけるもん」
「・・愛されてるなあ僕」
こそばゆくて心底甘い苦笑が込み上げていた。
ホテルでの夜。秋良がシャワー浴びにいってる間、僕は何だか喉が乾いてしまってふと飲み物でも売店に買いに行こうと思い立った。おつまみスナックも欲しいし。
外国人だらけのホテルだけど、さすがに僕1人でも大丈夫、大丈夫。秋良に言ったらダメって絶対言われるから、1人でサッと行って買ってきて秋良を驚かせよう。
秋良に何も言わずに部屋を出た。
なんだけど・・
ただ売店に行くだけのはずが、僕は道に迷ってしまっていた。
ホテルが大きくて連絡通路だのなんだのアレコレ入り組んでるせいでちょっと分かりづらい。案内図も見づらいし・・。
あれ、こっちだっけ、あっちだっけ・・?ウロウロする間に更に迷ってしまった。
仕方ない、一度ロビーに戻って部屋の行き方確認するかあ。あ、でもロビーどうやって行くんだろ。
なんてモタモタしてる間に、徐々に身体に嫌な変化が起き始めていた。なんか熱いっぽいし変な気分に・・ってこれやば、ヒートじゃん・・
最悪、こんなところで。本気でどうしよう。急に欲を孕んだ熱がうねりだし、僕はクラクラとして階段の踊り場のところで座り込んでしまった。
はふはふと息が上がる。ああ、こんなことなら秋良と一緒にいれば良かった。秋良・・
その時。突然後ろから外国語で何か話しかけられた。
振り返ると、随分背が高いハンサムな外国人が立っていた。ペラペラと何かまた追加で言われる。
大丈夫?とか言われてるのかなと思って、つい反射的にOKと答えてしまった。その瞬間、ギラリと目の色を変えた相手の男。
僕の手を掴み、いきなりぐいぐいと引っ張っていく。訳も分からずにいたけど、相手の部屋っぽいところに連れ込まれそうになってると気づいた。そしてsexって単語だけかろうじて聞き取れて、僕はサーッと青ざめた。マジでヤバいと気づき・・!
「本当に無理ですから!!離して・・!!!秋良あ!!」
だけど強引に部屋に押し込まれ、床に投げ出された。ギラついた瞳の男が見下ろしていた。
その男の背後。もうあと少しで無常にもパタンと閉まりそうなドア。ここはオートロック。外からじゃどうにもならない・・!
「秋良ああ!!!」
僕は終わりだ・・こんなデカい奴を跳ね除けるなんて無理だ。ああ、ごめんなさい秋良
。
諦めかけたその時。すんでのところでドアがグイと大きく開き、救世主がその外国人の男を吹っ飛ばした。
「あ、秋良!!」
グイと強く僕を引っ張った秋良の腕。ものすごい剣幕で怒鳴り散らしたその外国人の男に、秋良は更に凄い剣幕で英語で怒鳴り返した。
何も聞き取れなかったけど、秋良はものすごく怒っていることだけは分かった・・。
僕の手を掴んで何も言わずぐんぐん歩いていく秋良。どうしよう、なんて言おう・・まずはお礼を・・と思ったら。
「俺ねえ。彩葉のどんな顔でも好きだけど、中には嫌いな顔があるよ」
「えっな、何・・」
心底ドキッとしていた。やだ、僕のこと嫌わないでよ秋良。
「他の男を見つめる時の顔。さっきの男、アルファだったらしいんだけど。ヒートの彩葉の色気に誘惑されただの言ってたけど。
・・俺じゃないアルファを見つめる彩葉の顔。俺は大っ嫌いだ。浮ついてて」
「うっご、ごめんなさい・・でも浮ついてなんて・・」
「嘘だ!」
部屋につくと早々にベッドに僕を押し倒した秋良。行為はいつもの甘い優しい感じじゃなくて、怖くて激しくて、一方的なものだった。
旅行から帰ってきてしばらく経った頃。何か身体が重くてもしかして・・と検査したら、僕にはなんと赤ちゃんが出来ていた。
「ハネムーンベビーだ!」
秋良はめちゃくちゃ喜んでくれたけど、僕はちょっと複雑。あ、あの時のアレでかあ・・
その後、僕は無事赤ちゃんを生んだ。女の子で、しずくって名前のオメガ。可愛いんだ本当。
始まったばかりの子育ては分からないことだらけ。僕はある日の夜、皆が寝静まった頃にパソコンで調べ物をしようとした。
その時ふとあることに気づいた。
「ん?何これ」
僕らの共通のパソコンに、外付けメモリのカードが刺さっていたのだ。秋良のかな?だよね、多分。
大分迷ったけど、好奇心が勝ってしまって僕はその中身を見た。僕の写真か、すけべなやつか。どっちかだろうと思って。すけべなやつだったら後で秋良を揶揄ってやろうと思ってさ。
さて、予想は当たった。中は今まで秋良が撮ってきた僕の写真だった。
ただし・・
「何これ・・!?」
僕は戦慄した。
秋良の写真フォルダには、僕が撮った覚えのない写真が大量に混ざっていたから。一緒に行ったはずのない海外の観光地の写真がわんさか。
それが僕もちゃんと笑顔でピースとかしてるんだ。こんなとこ行った記憶なんかないのに!
それに・・それに・・!
データを遡っていくと、僕らが知らない子供を育てている写真があった。
知らない病院で、知らない男の子の赤ちゃんを抱いてる僕。それで、それがどんどん大きくなって・・!
「何なんだよこれえ!!!」
ぶるぶる身体が震えて止まらない。何、合成写真か何か?それにしたって悪趣味が過ぎる!!
更にデータを遡っていくと、また僕は知らない観光地にいて、そしてまた別の子を育てていた。今度は双子で・・!
「い、イヤああああ!!!!」
思わず後退りして悲鳴を上げた。
その時。
「彩葉。見ちゃったんだね」
「ヒイ!!!」
振り返ると、秋良が僕を無表情に見下ろしている。不気味で恐ろしい雰囲気だった。
秋良はメモリのカードを抜くとポケットにしまった。
「な、な、な・・何なのこれ!?」
半笑いで聞いた。知らなかった、人って怖過ぎると笑ってしまうんだ。
あははと秋良も笑った。ただしいつもみたいな優しい笑顔じゃない笑い方で。
「・・俺ねえ、彩葉のことなら何でも分かる、超能力あるんだって前言ったでしょ。
あれ、嘘でさ・・本当の超能力はね、タイムリープ出来ることなんだ。これはまじで本当」
な、何言って・・
「な、何言って・・って言おうとしてるんでしょ?彩葉は毎回そう言うんだよなあ・・前回もそうだった。かわいいなあ彩葉は」
しみじみと愛おしそうに言う秋良。
「どうして俺がタイムリープなんて出来るのかは分からない。気がついた時には出来る様になっていた。神様の気まぐれかな?
でもおかげで色んな彩葉を味わえたよ」
背筋を冷たい何かが這い上がった。
「俺はタイムリープして何度も彩葉と人生をやり直してきた。彩葉の全ての顔をコンプリートしたくてさ」
秋良・・?
「俺ね、彩葉があんまり可愛いから実は誘拐して監禁なんてしてたこともあるんだよ」
うっとり僕を見下ろす秋良が心底怖くて、突き上げる様な吐き気を感じた。
「俺たちは何回も番になっている。彩葉と両想いになる瞬間は何度味わっても堪らない。本当に飽きない。
俺のお気に入りは高校のあの文化祭の時のやつ。嫉妬心に唇を噛む彩葉って本当に最高で可愛くて・・ついあの場面からやり直しちゃうんだよな。
ちなみにね、瀬央とわざとくっついて見せたこともある。彩葉がメンタルを病んで飛び降りようとしたこともあったね・・あれはあれで可愛かったっけな」
「!!」
「まあそんな訳でさ。俺のお気に入りの高校時代からやり直して、その都合俺たちは子供を作ってきたんだ。さっき彩葉が見てた写真の子は、80回目にタイムリープした時の子だったかな?いや90回目だっけ。
月をずらしたりシチュエーション変えるだけでも違う子が産まれるんだ、面白いよね」
「・・・」
何で子供が産まれてるのにタイムリープなんかするのか?頭の中で疑問が湧いた。今気にするのはそこじゃないのに。ショックでうまく頭が回らない、言葉が出ない・・。
「『何で子供産まれてもタイムリープしてんの?』でしょ?だって俺と彩葉のベビーだよ?何百人だって欲しいじゃん。
でも一回の人生でそれは無理だから、仕方なくタイムリープしてるって訳」
ぞっとする様な冷たい瞳。
震える声でようやく聞いた。
「・・今・・タイムリープ何回目・・」
「なんと記念すべき800回目。・・さ、バレたことだし。またタイムリープしてこよっかな。
いちにのさん、で俺は飛ぶ」
ひざが震える。僕は僕の知らないところで何度もこの人の子供を産んでいたのか。何人も、何十人も、いや何百人もか?
その時ふと思いついた怖い疑問。1回深呼吸して聞こうとしたら。
「最後ってどうなるの?って聞こうとしてるでしょ。まあこの説明も何百回もしてきたけど、教えてあげるよ」
恍惚とした顔でその男は言った。
「最後なんて来ないよ。永遠にね。
俺はこれからも彩葉を貪り続ける。俺の彩葉コレクションに終わりはない。俺はタイムリープ能力を授けてくれた神に心底感謝してる。
彩葉を全部独り占めだなんて・・俺にとってこれ以上の幸せはないからね。
ちなみに次回はね、子作りする旅行先をちょっと変えようと思ってる。雪国でオーロラ見ながらとか良いなって思ってさ。どう?楽しみにしててよ。
って訳でまだまだ俺の子産んでよね。
それじゃあまた高校ん時の映画デートからね。
おでこにキスされて顔真っ赤な彩葉をもう一回見たいし。
いちにの、さん」
end
映画館でたったいま見終えたばかりの映画の余韻に浸ってそんな感想を漏らし、僕はうっとりと虚空を見上げた。
「あ~!その表情かわいい、もらい!」
そんな僕・彩葉(いろは)の横顔は、大層な台詞と共にカシャと勝手に撮られた。
幼馴染の秋良(あきら)だ。
「あのさあ・・」
居た堪れない思いで振り返る。
「何?」
にこにこ満面な超ハンサムボーイ・秋良は悪びれる様子などない。
「秋良、良い加減」
「『恥ずかしいから辞めてくれない?』でしょ?」
「僕の気持ちが分かってるなら辞めてよお・・」
この要請も何度目か。
でも今だって後ろの方にいる女子2人組にチラチラ見られているのだ。
「死んでも辞めない。俺、彩葉コレクターだからって前も言ったじゃん」
大声で言うのをワーっと制して止めた。
僕はため息を吐いた。
秋良は良いところのお坊ちゃんで正統派ハンサムボーイ、将来有望なアルファなのに偉そうなところがなく優しい性格の超完璧人間。身長178。
なのにこの平凡オメガの僕がツボだと言う、すごく勿体無い謎の性癖を持つ男の子。
なお趣味は僕の観察。生きがいは僕の写真を撮ること・・。
『コレクション』
映画館帰りの喫茶店。秋良にせっかくだし寄ってこうよと連れ込まれ、コーヒーに併せてドーナツまでご馳走されている。遠慮しないでとホイップまで増量。僕はいつもこうやって甘やかされている。
ドーナツにかぶりつく僕をうっとり見つめる主はもちろん秋良・・
「ほんと、可愛いなあ彩葉は」
すっと携帯に手を伸ばして僕の写真を撮ろうとしたのを察知し、僕は阻止した。
「・・けち」
ふふと苦笑した秋良。そんな顔もカッコ良かった。ただひたすらに写真を撮られるべきなのはどう考えたって秋良の方だ。
「ま、そんなことよりさ。彩葉のさっきの映画の感想教えてよ」
「・・や、その。大層な意見は言えないんだ。面白かったです、みたいな小学生の読書感想文みたいなヤツでさ・・」
偏差値70越えの秋良に、僕のちっぽけな頭脳を晒すことは憚られた。
「それでも全然良いよ。彩葉の話なら何でも聞きたいんだ。
・・俺の予想だとそうだなあ。彩葉が一番気に入ったシーンは多分あれだ。
脇役くんがヒロインに報われない片想いしてて誕生日プレゼント準備するんだけど、結局渡せなくて妹にあげちゃうシーンとかじゃない?
「えっ何で分かったの!?」
正確に言い当てられてビックリした。ちっぽけな自分に重なるものがあったんだ。
「おっ当たり?そうだなあ。彩葉は自分から好きって言ったり出来ないから・・自分に重なってあのシーン気に入ったんじゃない?」
「すごい秋良、どうしてそこまで分かるの?」
「俺、彩葉のことなら何でも分かるよ。彩葉コレクターだからね」
秋良は嬉しそうにニコニコと笑う。僕は嬉しくなって、ぺらぺらと沢山映画の話をした。
映画の脇役くんと、僕は重なるところがあった。身の丈に合わない想いを抱えてるってところ。
喫茶店からの帰り道。僕ん家の前まで送ってくれた秋良。
「それじゃ彩葉、今日はありがとう」
「うん」
「そういえば俺さあ、言ってなかったんだけど」
「何?」
「俺もね、あの映画の脇役くんに共感するとこあるんだよ」
ええ?どう見てもメインヒーローになれる秋良が?
「素直に好きっていうのは、俺もなかなか言えないからね」
そう言ってさっと僕のおでこにキスをしていった。
「!!!」
「じゃあね!」
機嫌良く帰っていく後ろ姿を、しゅ~っと赤い顔をして僕はただ見つめていた。ファーストキスどころかおでこにキスでさえ、人生で初めてだったから。
家の扉を開ければ、おかえりと聞こえてきた母さんの声。なんとなく罪悪感で母さんと顔を合わせられず、僕は帰ってきたばかりで風呂場へ直行した。
洗面台の鏡には、ぽや~っと頬の赤い僕が立っていた。それもまた恥ずかしくって、ぱっと目を逸らすとばばばっと服を脱いでガラと風呂場の扉を開けた。
浴槽につかって目を閉じる。ほわほわほわ~ん・・と思い出すのは今日の秋良。
相変わらずカッコ良かった、優しかった、ありがとう。こんなどこにでもいそうな平凡オメガになんか興味持ってくれて。あまつさえお出かけ帰りにはおでこにキスとか、多分世の女子に言ったら僕は刺し殺されるだろう。
今日のあれはどういう意味だったんだろう。
期待とかしても良いのかな・・?
いや、いや!揶揄われただけ!
というより、僕なんかが好きになって良い相手じゃないし。
ファンサービスを間に受けて本気で好きになっちゃうのと一緒でさ。思いあまって告白なんかして『え?俺そんなつもりないけど?』とか言われたら、僕は一生立ち直れないし・・。
まあ、アレだよね。可愛いとか普段言われてはいるけれど、あれはぶさかわいいペットを愛でるとかそういう気持ちだ多分。手持ち無沙汰に湯船の中で浴用タオルを弄ぶ。まあこんな姿ですら秋良に見られたら『カワイイ~!』とか言われて写真撮られてしまう、不思議・・。
翌日。いつもの高校への通学路の待ち合わせ場所で秋良を待っていた。幼馴染なんで学校は今までずっと一緒に通ってる。
家を出る時に飴ちゃんを口に一個放り込んできたので、カラコロと鳴っている。お気に入りの桃味・・がなかったので今日はレモン味。
しばらく待ってると、後ろから秋良が颯爽と現れた。
「おはよう彩葉。寝癖ついてる!珍しい。かわいいねえ~」
また朝からパシャと一枚撮られた。
「あ、うん、そういうのやめて・・」
「辞めない」
ニコニコ顔の秋良。何でもかんでもこう。なぜ彼がこうなってしまったのは僕にも分からない。
並んで歩き出す。
「彩葉、飴舐めてんの。俺にもちょうだいよ」
「ごめんコレ一個しかない」
「どれ?」
「これ」
「だからどれ?」
「だからあコレ!」
あ、と口を開けてレモンキャンディを見せたその瞬間。それを指で掠め取られた。
「彩葉のレアアイテムゲットー♪今日はレモンか、珍しいね」
そしてそのハンサム男はあむと自身の口に迷わず入れた。
「えっ・・さすがにそれはちょっと・・」
やや引き気味の僕に、秋良は良いじゃんと満足そうに笑った。その綺麗な横顔と言ったら。
あ、飴がそんなに欲しかったのかなあ・・明日は秋良の分も持ってきてあげよう。そう決心していた。
学校に着いて、秋良となんとなく教室でそのまま話していると・・
「秋良!ちょっとこっち来てよ。委員のことで」
割って入ってきたのは同じクラスの瀬央。目が大きくてまつ毛長くて色白で、正にヒロインという感じ。男の子なんだけどね。
「え~今?」
「今!」
ぶうたれる秋良を割と強引に引っ張っていく瀬央。秋良に片想いしてることで有名なあの子。僕と同じオメガ・・。
僕が秋良に告白なんて出来ないのは、実際のところ瀬央の存在が大きかった。どう考えても結局くっついちゃうんだろうなって2人だったから。
その後ホームルームが始まり、先生から今度の文化祭についてお知らせがあった。出し物をクラスで決めましょうと。
話し合いの結果、ウチのクラスは恋物語の舞台をやることになった。王子役・秋良、お姫様役・瀬央。満場一致で即決。
反対の票を入れる勇気は僕にはなかった。
ちなみに僕はというと、セリフ一言しかない靴屋の役だった。僕ってやっぱ舞台の中でもモブなんだなあと実感した。
それから文化祭の準備や練習が始まった。
僕は教室で見なければいけなかった。美男美女(?)のふたりが舞台の練習で絡むところを・・
「君を世界で一番愛してる」
秋良がそう言って瀬央を抱き寄せじっと見つめるシーンを。
何度そのシーン練習しても、瀬央は可哀想になるくらい顔が真っ赤になっちゃうんだ。きっと何度も秋良に恋に落ちてるんだろう。瀬央が恥ずかしがって続きのセリフ言わないから何度もカットになって、また何回も同じくだりを見て・・
僕はその度に胸がズキズキと痛んでハラハラして、でもどうしようもなかった。
ある日。練習がたまたま早く終わって早めに帰れると言う日。
リハーサルでお姫様の衣装を着た瀬央があまりに麗しくて、僕は打ちのめされていた。
だからひとりこっそり帰ろうとしてたら秋良に靴箱のところで捕まった。なんでバレたんだろう。
並んで歩く。
「練習、毎日大変だね」
「まあね。でもどう?俺さ、ちゃんと王子様になってるかな?」
「ん、うん、カッコいいよ」
本気でそう答えた。
「瀬央も本当、お姫様役ぴったり」
それも本当の気持ちだった。
「そう?」
「うん。舞台で本当、お似合いって感じ」
「・・まあ瀬央は確かに美人だし可憐だね。あれなら惚れる男が沢山いるのも分かるな」
心底ドキッとして、冷たい風が僕らの間を通り抜けていくのを感じた。
秋良。それってやっぱり・・?
瀬央と秋良が一緒にいるところをしょっちゅう見かける様になった。委員も舞台も一緒のふたり。瀬央は片想いしてる。瀬央が秋良に絡む理由なんていくらでもあった。
それを拒まない秋良。いや当たり前だ。全部まっとうな用事だもの。
秋良は瀬央と過ごす時間が増えて、僕と過ごす時間がものすごく減った。
秋良にカワイイ~!って写真を勝手に撮られることがなくなるのがこんなに寂しいなんて、知らなかった。
毎日ただげっそりと僕は思い悩んでいた。
秋良が瀬央に取られることが現実味を帯びてきていたんだ。
そうしてやってきた文化祭当日。秋良と瑠衣の主演の恋物語は最高の出来だった。彼らは正に絵本の中から抜け出してきた王子様とお姫様だった。
美しいふたりの悲恋の物語は多くの観客の心を掴み、僕の心には計り知れないダメージを与えた。
大盛況のうちに終わった舞台。片付けに追われている最中。
「秋良。・・ちょっと良い?」
ふと瀬央が秋良を連れてどこかへ行こうとしているのを見てしまった。悪い胸騒ぎ。
僕は卑怯にもふたりの後ろを慎重について行った。どうかバレません様にと。
そして僕は見てしまった。瀬央が秋良に告白するところを。
「秋良。舞台で終わりなんて嫌だよ。僕と本物の番になって欲しい」
そう言って抱きついて、キスを奪ったところも。僕が直視してられたのはそこまでだった。
気づいたら屋上にいた。フェンス越しに外を見つめていた。頭の中をさっきの映像が何度も流れる。離れてくれなかった。
秋良。あの後どうしたんだろう。なんて答えたのかな。美人で可憐だって前言ってたし。
舞台を通してやっぱり本当に好きになっちゃった・・?
僕はどうしたら良いんだろう。
気づいたらポロポロ泣いていた。こんなにショック受けるんなら、僕がもっと早くに告白していれば良かった。どうして勇気が出せなかったんだろう?
でもきっと今更遅いんだ。
それに瀬央ならあの秋良にお似合いだ。
秋良にはおめでとうって言わなくちゃ・・。
その時。キイと後ろのドアが開いた。
「彩葉」
ドキッとして振り向いた。
「・・秋良」
「ここにいたんだ。探したよ・・って泣いてるじゃん」
慌てて拭った。
「泣いてない」
「泣いてる!良いから顔あげて」
真剣な瞳が僕を見下ろしていた。じわ・・と滲んだ右目の涙を秋良の指先がそっと拭った。
「誰に泣かされたの」
「・・秋良」
「ああ・・瀬央とのアレ、見ちゃった?」
頷いた。
心臓をギュウと押しつぶされていた。
でも言わなきゃ、用意してたあの台詞・・
「彩葉。『瀬央ならお似合いだよ、おめでとう』だなんて聞きたくないよ」
心底ビックリした。
「ど、どうして僕が言おうと思ってること分かったの?」
秋良は僕をじっと見つめたまま言った。
「俺、彩葉のことなら何でも分かるって前も言ったじゃん。・・そういう超能力だから。本当だよ」
「何それ」
ついふふっと吹き出してしまった。秋良も笑った。
「ま、超能力はさておきさ。
俺、ただ彩葉の写真撮ってるだけじゃないんだよ。彩葉の気持ちなら何でも分かるつもり」
「秋良・・」
「俺と瀬央の舞台を見てモヤモヤしたり、瀬央に取られるかも~・・!ってようやく焦ってくれたんでしょ?ずっと俺の片想いと思ってたけどさ」
この幼馴染には何でもお見通しだったのだ。
「俺、彩葉が好きだよ。俺と番になってくれますか」
「!!・・はい・・」
秋良は僕をぎゅっと抱きしめた。
爽やかな風が通り過ぎていった。いつの日かの風とは随分違って。
「・・失恋したと思い込んで泣いちゃう彩葉、超超かわいかったなあ。
あれは本当何回見ても飽きない・・んだろうなあ」
あんなの何回もあってたまるかと、コツンとぶってやった。
こうして正式に番になった僕ら。高校を卒業して大学生になったタイミングで一緒に暮らし始めた。
秋良の溺愛は勢いを増した。朝から晩まで僕を可愛いと良い、色んな旅行先に連れてってくれて、僕が食べたいもの・欲しいものは何でもくれた。
「嬉しい~!」と僕がただひたすらに喜ぶ様をすごく嬉しそうに見つめ、そして僕のことを写真に撮り続けた。
僕が辛い時があった時は、僕が言うよりも早く『何かあったでしょ・・例えばアレとか?』と僕の心の内をまるで本当に読んでいるかの様に言ってきた。
「秋良って本当、僕のこと何でも分かっちゃうんだ」
そう言えば秋良はいつも嬉しそうに笑った。
学生のうちは無理だけど、働く様になったら子供つくろうねって話を秋良とはしていた。
「彩葉の子供なら絶対カワイイ!超楽しみ。名前はどうしようかなあ」
なんて秋良はしょっちゅう僕のお腹を撫でた。まだいないってのに。
そこから時は流れ、僕らはついに社会人になった。ハネムーン旅行ってことで海外の綺麗な南の島をふたりで訪れた。
豪華な旅行先のホテルで2人っきりのとき、ベッドでむにゃむにゃと寝っ転がってるだけの僕を楽しそうにパシャパシャと写真を撮ってきたんでつい苦笑してしまった。
「そんなのまで撮るの?」
「撮るよ。俺、彩葉の全部の顔をコンプリートするんだから」
「出た。彩葉コンプリート」
「そうだよ」
僕にここまでの関心を寄せてくれるなんて、地球で秋良だけだろう。そんな人と巡り会えて番になれて僕はなんて幸運なんだろう。
真面目な顔で秋良は言った。
「俺、たとえ生まれ変わってもまた彩葉見つけるもん」
「・・愛されてるなあ僕」
こそばゆくて心底甘い苦笑が込み上げていた。
ホテルでの夜。秋良がシャワー浴びにいってる間、僕は何だか喉が乾いてしまってふと飲み物でも売店に買いに行こうと思い立った。おつまみスナックも欲しいし。
外国人だらけのホテルだけど、さすがに僕1人でも大丈夫、大丈夫。秋良に言ったらダメって絶対言われるから、1人でサッと行って買ってきて秋良を驚かせよう。
秋良に何も言わずに部屋を出た。
なんだけど・・
ただ売店に行くだけのはずが、僕は道に迷ってしまっていた。
ホテルが大きくて連絡通路だのなんだのアレコレ入り組んでるせいでちょっと分かりづらい。案内図も見づらいし・・。
あれ、こっちだっけ、あっちだっけ・・?ウロウロする間に更に迷ってしまった。
仕方ない、一度ロビーに戻って部屋の行き方確認するかあ。あ、でもロビーどうやって行くんだろ。
なんてモタモタしてる間に、徐々に身体に嫌な変化が起き始めていた。なんか熱いっぽいし変な気分に・・ってこれやば、ヒートじゃん・・
最悪、こんなところで。本気でどうしよう。急に欲を孕んだ熱がうねりだし、僕はクラクラとして階段の踊り場のところで座り込んでしまった。
はふはふと息が上がる。ああ、こんなことなら秋良と一緒にいれば良かった。秋良・・
その時。突然後ろから外国語で何か話しかけられた。
振り返ると、随分背が高いハンサムな外国人が立っていた。ペラペラと何かまた追加で言われる。
大丈夫?とか言われてるのかなと思って、つい反射的にOKと答えてしまった。その瞬間、ギラリと目の色を変えた相手の男。
僕の手を掴み、いきなりぐいぐいと引っ張っていく。訳も分からずにいたけど、相手の部屋っぽいところに連れ込まれそうになってると気づいた。そしてsexって単語だけかろうじて聞き取れて、僕はサーッと青ざめた。マジでヤバいと気づき・・!
「本当に無理ですから!!離して・・!!!秋良あ!!」
だけど強引に部屋に押し込まれ、床に投げ出された。ギラついた瞳の男が見下ろしていた。
その男の背後。もうあと少しで無常にもパタンと閉まりそうなドア。ここはオートロック。外からじゃどうにもならない・・!
「秋良ああ!!!」
僕は終わりだ・・こんなデカい奴を跳ね除けるなんて無理だ。ああ、ごめんなさい秋良
。
諦めかけたその時。すんでのところでドアがグイと大きく開き、救世主がその外国人の男を吹っ飛ばした。
「あ、秋良!!」
グイと強く僕を引っ張った秋良の腕。ものすごい剣幕で怒鳴り散らしたその外国人の男に、秋良は更に凄い剣幕で英語で怒鳴り返した。
何も聞き取れなかったけど、秋良はものすごく怒っていることだけは分かった・・。
僕の手を掴んで何も言わずぐんぐん歩いていく秋良。どうしよう、なんて言おう・・まずはお礼を・・と思ったら。
「俺ねえ。彩葉のどんな顔でも好きだけど、中には嫌いな顔があるよ」
「えっな、何・・」
心底ドキッとしていた。やだ、僕のこと嫌わないでよ秋良。
「他の男を見つめる時の顔。さっきの男、アルファだったらしいんだけど。ヒートの彩葉の色気に誘惑されただの言ってたけど。
・・俺じゃないアルファを見つめる彩葉の顔。俺は大っ嫌いだ。浮ついてて」
「うっご、ごめんなさい・・でも浮ついてなんて・・」
「嘘だ!」
部屋につくと早々にベッドに僕を押し倒した秋良。行為はいつもの甘い優しい感じじゃなくて、怖くて激しくて、一方的なものだった。
旅行から帰ってきてしばらく経った頃。何か身体が重くてもしかして・・と検査したら、僕にはなんと赤ちゃんが出来ていた。
「ハネムーンベビーだ!」
秋良はめちゃくちゃ喜んでくれたけど、僕はちょっと複雑。あ、あの時のアレでかあ・・
その後、僕は無事赤ちゃんを生んだ。女の子で、しずくって名前のオメガ。可愛いんだ本当。
始まったばかりの子育ては分からないことだらけ。僕はある日の夜、皆が寝静まった頃にパソコンで調べ物をしようとした。
その時ふとあることに気づいた。
「ん?何これ」
僕らの共通のパソコンに、外付けメモリのカードが刺さっていたのだ。秋良のかな?だよね、多分。
大分迷ったけど、好奇心が勝ってしまって僕はその中身を見た。僕の写真か、すけべなやつか。どっちかだろうと思って。すけべなやつだったら後で秋良を揶揄ってやろうと思ってさ。
さて、予想は当たった。中は今まで秋良が撮ってきた僕の写真だった。
ただし・・
「何これ・・!?」
僕は戦慄した。
秋良の写真フォルダには、僕が撮った覚えのない写真が大量に混ざっていたから。一緒に行ったはずのない海外の観光地の写真がわんさか。
それが僕もちゃんと笑顔でピースとかしてるんだ。こんなとこ行った記憶なんかないのに!
それに・・それに・・!
データを遡っていくと、僕らが知らない子供を育てている写真があった。
知らない病院で、知らない男の子の赤ちゃんを抱いてる僕。それで、それがどんどん大きくなって・・!
「何なんだよこれえ!!!」
ぶるぶる身体が震えて止まらない。何、合成写真か何か?それにしたって悪趣味が過ぎる!!
更にデータを遡っていくと、また僕は知らない観光地にいて、そしてまた別の子を育てていた。今度は双子で・・!
「い、イヤああああ!!!!」
思わず後退りして悲鳴を上げた。
その時。
「彩葉。見ちゃったんだね」
「ヒイ!!!」
振り返ると、秋良が僕を無表情に見下ろしている。不気味で恐ろしい雰囲気だった。
秋良はメモリのカードを抜くとポケットにしまった。
「な、な、な・・何なのこれ!?」
半笑いで聞いた。知らなかった、人って怖過ぎると笑ってしまうんだ。
あははと秋良も笑った。ただしいつもみたいな優しい笑顔じゃない笑い方で。
「・・俺ねえ、彩葉のことなら何でも分かる、超能力あるんだって前言ったでしょ。
あれ、嘘でさ・・本当の超能力はね、タイムリープ出来ることなんだ。これはまじで本当」
な、何言って・・
「な、何言って・・って言おうとしてるんでしょ?彩葉は毎回そう言うんだよなあ・・前回もそうだった。かわいいなあ彩葉は」
しみじみと愛おしそうに言う秋良。
「どうして俺がタイムリープなんて出来るのかは分からない。気がついた時には出来る様になっていた。神様の気まぐれかな?
でもおかげで色んな彩葉を味わえたよ」
背筋を冷たい何かが這い上がった。
「俺はタイムリープして何度も彩葉と人生をやり直してきた。彩葉の全ての顔をコンプリートしたくてさ」
秋良・・?
「俺ね、彩葉があんまり可愛いから実は誘拐して監禁なんてしてたこともあるんだよ」
うっとり僕を見下ろす秋良が心底怖くて、突き上げる様な吐き気を感じた。
「俺たちは何回も番になっている。彩葉と両想いになる瞬間は何度味わっても堪らない。本当に飽きない。
俺のお気に入りは高校のあの文化祭の時のやつ。嫉妬心に唇を噛む彩葉って本当に最高で可愛くて・・ついあの場面からやり直しちゃうんだよな。
ちなみにね、瀬央とわざとくっついて見せたこともある。彩葉がメンタルを病んで飛び降りようとしたこともあったね・・あれはあれで可愛かったっけな」
「!!」
「まあそんな訳でさ。俺のお気に入りの高校時代からやり直して、その都合俺たちは子供を作ってきたんだ。さっき彩葉が見てた写真の子は、80回目にタイムリープした時の子だったかな?いや90回目だっけ。
月をずらしたりシチュエーション変えるだけでも違う子が産まれるんだ、面白いよね」
「・・・」
何で子供が産まれてるのにタイムリープなんかするのか?頭の中で疑問が湧いた。今気にするのはそこじゃないのに。ショックでうまく頭が回らない、言葉が出ない・・。
「『何で子供産まれてもタイムリープしてんの?』でしょ?だって俺と彩葉のベビーだよ?何百人だって欲しいじゃん。
でも一回の人生でそれは無理だから、仕方なくタイムリープしてるって訳」
ぞっとする様な冷たい瞳。
震える声でようやく聞いた。
「・・今・・タイムリープ何回目・・」
「なんと記念すべき800回目。・・さ、バレたことだし。またタイムリープしてこよっかな。
いちにのさん、で俺は飛ぶ」
ひざが震える。僕は僕の知らないところで何度もこの人の子供を産んでいたのか。何人も、何十人も、いや何百人もか?
その時ふと思いついた怖い疑問。1回深呼吸して聞こうとしたら。
「最後ってどうなるの?って聞こうとしてるでしょ。まあこの説明も何百回もしてきたけど、教えてあげるよ」
恍惚とした顔でその男は言った。
「最後なんて来ないよ。永遠にね。
俺はこれからも彩葉を貪り続ける。俺の彩葉コレクションに終わりはない。俺はタイムリープ能力を授けてくれた神に心底感謝してる。
彩葉を全部独り占めだなんて・・俺にとってこれ以上の幸せはないからね。
ちなみに次回はね、子作りする旅行先をちょっと変えようと思ってる。雪国でオーロラ見ながらとか良いなって思ってさ。どう?楽しみにしててよ。
って訳でまだまだ俺の子産んでよね。
それじゃあまた高校ん時の映画デートからね。
おでこにキスされて顔真っ赤な彩葉をもう一回見たいし。
いちにの、さん」
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