大好きな幼馴染は僕の親友が欲しい

月夜の晩に

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②兄貴の代理になれないなら

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※今回は海里視点です。



勢い余って言ってしまった飛鳥への告白は、しかしあっさりと断られた。

「慶太じゃなきゃダメなんだ、ごめん・・」


兄貴の代用品でも俺は構わない。それすらもダメとは・・


「あんな奴のどこが良いんだよ」

苦し紛れにそう吐いた。

「・・慶太ほど素敵な人はいないよ」


ギリギリと拳を握った。爪の食い込む手のひらが痛かった。


俺は強力なライバルである兄を恨んだ。







何だか足元がおぼつかない飛鳥を家まで送った後、俺は自分の1人部屋のベッドで考えていた。


今まで大人しくして飛鳥が振り向いてくれるのを待っていたが、もう待ちの姿勢ではダメだ。


やっぱりあの兄がいる限り、俺の想いは叶いそうもない。


成績優秀、背も高く精悍なハンサム。スポーツも得意で人望もあって、大体の人間に好かれるタイプ。

物心ついた頃から飛鳥は兄貴の虜で、俺は兄貴が大嫌いだ。


アイツを消すならで・・兄貴と咲也さんをくっつけてしまうしかない。アルファとオメガ。番になってこの片想い劇から退場してくれればそれで結構。



飛鳥は心底悲しむだろうが俺なら飛鳥を幸せに出来る。あんなクソ兄貴と違って。

・・何も問題はないはずだ。




目を閉じれば、
兄貴が咲也さんに告白したと心底ショックそうな顔をしていた飛鳥の顔が、脳裏に浮かんだ。

好きな人が悲しむ姿を見るのは、やっぱり辛かった。何でだよ、どうして俺じゃダメなんだ飛鳥・・。

よく雰囲気は似てると言われる俺と兄貴。俺は飛鳥が好きなんだから、俺の方が上位互換だろう?飛鳥・・。




さて気を取り直して。この先どうするか。そう思っていたところでただいまと兄貴が帰ってきた。

クソ兄貴のおかえりだ。

階段を降りていく。リビングで炭酸飲んでた兄貴に、ようと声を掛けた。

部活帰りなのか、汗をかいたみたいだ。その精悍な横顔は、飛鳥がよく見つめている。


「今日おせえじゃん」
「まあな」
「咲也さんに告白したって本当」
「・・飛鳥から聞いたのか」
「まあね」


自分が告白している所を飛鳥に見られたとは思っていない様子。


「どう、手応えはさ」
「まあ薄いな・・でも諦めないぜ俺は」

兄貴はニッと笑った。

「咲也と番になれれば、俺はあの会社の次の社長候補。それにあの容姿。やっぱり咲也しかいない」


あっそとため息を吐いた。

野心家の兄貴は、すごい咲也さんだから好きなんだ。

でも咲也さん本人が好きって感じが俺はしない。好きは好きなんだろうけど、何だかなあという感じ。


まあ、でも別に良い。

俺は兄貴と咲也さんをくっつけると決めたんだ。咲也さんには本当、すまないという気持ちだが・・。



兄貴に持ち掛けた。

「そしたらさあ・・今度3人でどっか行かない?俺と兄貴と、咲也さんで。

・・飛鳥呼ぶとさ、どうせ咲也さんと飛鳥でベッタリだから飛鳥が来れない様にして」

「まじ?お前、気が利くようになったじゃん」


パッと笑顔になって俺の頭をワシャワシャと撫でてきた、その手から逃れる。


勘違いするなよ、兄貴の為じゃねえ。イライラが募った。


「んで、どうするんだよ。・・俺が誘っても多分咲也は来ないぜ」

「たとえばこんなのはどうだ?

飛鳥のことで、俺からふたりに相談したいことがあって・・とか言えばあの咲也さんだ、多分来てくれるだろ。

どっか良い感じに遊べる様な所で集まってさ。新宿でも、渋谷でも。それで何か相談事したあと、適当に咲也さんを連れまわせば良い。

はぐれた振りしてやるから後はどうにかしろ」


兄貴は思案した。


「相談ごとって何だよ」

「たとえば・・俺が飛鳥を好きだとか」




周りの人間に協力させてしまえば良い。

俺の役に立ってもらうよ、クソ兄貴。





続く
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