14 / 17
【doll#14】翼に心変わりだなんて言わないで
しおりを挟む
亮が音信不通になって10日が過ぎた。
その効果は僕の胸を抉るほど。
亮に何度も送ってしまったLINEは未読のまま何も返信はない。
だけどごくたまに一気に既読がつくもんだから、期待してまたメッセージを送って。でも結局返信こなく更に不安になる。この繰り返し。
その一方、翼からメッセージがふいに届くことがあった。『亮くんて良い身体してんね。空手家の腕枕、最高だったよー♪』だの『案外遊んでんだねー亮くん。知ってた?』だの・・
どうせまた翼の変な嘘に決まってる!と思いつつも、亮自身と連絡が取れない中での意味深メッセージにバキバキに心折れそうだった。
だけど時折亮も写る2人の写真を送りつけてくるもんだから、もったいなくて翼をブロックも出来なくて・・
亮。何もかも狙い通りってことで、良いんだよね?そうだよね・・?
ああ、でもまさか・・?いや、亮に限ってそんなことあるわけが・・でも・・
悶々と過ごす日々。
亮が愛用していた青色のパーカーを素肌に着て眠るほど僕が病み始めた頃。
大学からある日帰ったら、亮のゲーミングPCだのデスクだのが一式なくなっていた。
僕は悟った。
亮が本当に長くこの家を留守にする気だと。そして今後戻ってこない可能性が浮上してきた、とも・・
『予兆』
気づけばもう11月。街中はクリスマスムード一色に染められていた。もちろん今の僕にそれを楽しむ余裕など1ミリもない。
出かける気にもならず、鬱々とベッドで過ごしていた。
思い出すのは『俺を信じて待ってて欲しい』と言ったあの日の亮の真摯な眼差し。今の唯一の心の支え。
だけど・・。どうにも不安で堪らなかった。亮がいなくなって3週間。もう限界だった。
亮を探しに行こうと決めた。
余計なことはしない方が良いかと思っていたが、もうそうも言ってられなかった。
きっと翼のいない場所で2人きりで話す分には大丈夫だ。きっと亮なら抱きしめてくれるはず。
その日の夜。僕は新宿のゲームセンターに来ていた。
亮といえば大体ここのはずだけど・・いつもの台にも、トイレにも見当たらなかった。
3時間ほど待ってみたけど、亮は現れなかった。
もしかして別のゲームセンターかと思い何軒か行ってみたのだが、やっぱり亮はいなかった。
最後に寄ったゲームセンター。
店内をうろついていたら、運悪く柄の悪い男の人に絡まれてしまった。身長190くらいはあろうかという大柄な男。
何してんのと大きな声で聞いてくるもんだから、人を探してたんですけどいないので帰りますと行ってそそくさと立ち去ろうとしたら。
「なら兄ちゃん、俺が遊んでやるよ」とタバコくさい吐息で迫られた。手首を掴まれそう、嫌な予感!
僕は脱兎の如く逃げ出した。
待てよ!という声は聞こえない振りをしてただただ走って逃げた!冗談じゃないよ、ホント!
だいぶ走って逃げた先で、トボトボと路地を歩いた。色んなことに萎えていた。
絡まれるとか本当最悪。てかどこに行ったら亮に会えるの?今日も翼と一緒にいるの?デートなんかしてるの?教えてよ亮・・
萎え萎えになりながらスマホを開く。亮からLINEなどもちろんない。知ってる。確認したかったのは時間。
もう時間は大分遅かった。帰ろう・・と思った矢先。少し先の小さな居酒屋から
、スッと誰かが退店した。
背の高い金髪の男性。あの後ろ姿、あの歩き方、もしかして・・!
「亮!!!」
びっくりして振り返ったのは、やっぱり亮だった。
逃げようとした亮のそばに駆け寄って捕まえた。すごいお酒の匂いがした。こんなに飲むなんて、らしくなかった。
「今までどこ行ってたの!?何で逃げるの!?」
「・・・」
気まずそうに視線を逸らした亮。どうして?
「会いたかったよ亮」
ギュッと抱きついた僕を、亮は引き剥がした。
「・・俺は別に」
ぷいとそっぽを向くと、またすたすたと歩き出した。そんな。
「ねえ亮、どうしちゃったの?ここなら2人っきりだよ、翼を気にすることもない」
「別に気にしてねえ」
待ってよとその腕に縋りついた。雑に振り解かれた。
「帰ってくれ、邪魔だ」
「そんな・・なんで!?」
それでもめげない僕を、亮は無理矢理タクシーを捕まえて押し込んだ。
「コイツ新宿駅まで。大分酔っ払っとるんですわ。何言おうが絶対新宿駅までは連れてって下さいね。たのんますわ」
そういってタクシー運転手に数万渡し、バタンとドアを閉めた。
「亮!!!」
タクシーは走り出した。遠ざかる亮。そっぽを向いて、反対側に向かって歩き出したその寂しげな後ろ姿だけが焼きついた。
絶望的な気持ちで家に着いた。着いてしまった。
どうして・・?
翼に何か弱みでも握られてるの・・?
脅されてるとか・・?
サイコパス翼ならあり得る。
・・それなら僕に相談してくれたら良いのに。あの場に翼はいなかった。
それか翼に無理矢理押し倒されて心に傷を負ったとか・・?
でも2人の体格差を考えるとそれはありえない。それに亮は空手家だ。多少力が強いくらいの翼に押し倒されたところでどうにでもなる。
じゃあ・・もしかして・・
『亮くんて良い身体してんね。空手家の腕枕、最高だったよー♪』
翼のメッセージが頭をよぎった。どうせしょうもないハッタリのはずだと思っていたけれど・・
まさか・・あのメッセージは本当だったりする?
翼に心変わりしそうなの?亮・・
続く
その効果は僕の胸を抉るほど。
亮に何度も送ってしまったLINEは未読のまま何も返信はない。
だけどごくたまに一気に既読がつくもんだから、期待してまたメッセージを送って。でも結局返信こなく更に不安になる。この繰り返し。
その一方、翼からメッセージがふいに届くことがあった。『亮くんて良い身体してんね。空手家の腕枕、最高だったよー♪』だの『案外遊んでんだねー亮くん。知ってた?』だの・・
どうせまた翼の変な嘘に決まってる!と思いつつも、亮自身と連絡が取れない中での意味深メッセージにバキバキに心折れそうだった。
だけど時折亮も写る2人の写真を送りつけてくるもんだから、もったいなくて翼をブロックも出来なくて・・
亮。何もかも狙い通りってことで、良いんだよね?そうだよね・・?
ああ、でもまさか・・?いや、亮に限ってそんなことあるわけが・・でも・・
悶々と過ごす日々。
亮が愛用していた青色のパーカーを素肌に着て眠るほど僕が病み始めた頃。
大学からある日帰ったら、亮のゲーミングPCだのデスクだのが一式なくなっていた。
僕は悟った。
亮が本当に長くこの家を留守にする気だと。そして今後戻ってこない可能性が浮上してきた、とも・・
『予兆』
気づけばもう11月。街中はクリスマスムード一色に染められていた。もちろん今の僕にそれを楽しむ余裕など1ミリもない。
出かける気にもならず、鬱々とベッドで過ごしていた。
思い出すのは『俺を信じて待ってて欲しい』と言ったあの日の亮の真摯な眼差し。今の唯一の心の支え。
だけど・・。どうにも不安で堪らなかった。亮がいなくなって3週間。もう限界だった。
亮を探しに行こうと決めた。
余計なことはしない方が良いかと思っていたが、もうそうも言ってられなかった。
きっと翼のいない場所で2人きりで話す分には大丈夫だ。きっと亮なら抱きしめてくれるはず。
その日の夜。僕は新宿のゲームセンターに来ていた。
亮といえば大体ここのはずだけど・・いつもの台にも、トイレにも見当たらなかった。
3時間ほど待ってみたけど、亮は現れなかった。
もしかして別のゲームセンターかと思い何軒か行ってみたのだが、やっぱり亮はいなかった。
最後に寄ったゲームセンター。
店内をうろついていたら、運悪く柄の悪い男の人に絡まれてしまった。身長190くらいはあろうかという大柄な男。
何してんのと大きな声で聞いてくるもんだから、人を探してたんですけどいないので帰りますと行ってそそくさと立ち去ろうとしたら。
「なら兄ちゃん、俺が遊んでやるよ」とタバコくさい吐息で迫られた。手首を掴まれそう、嫌な予感!
僕は脱兎の如く逃げ出した。
待てよ!という声は聞こえない振りをしてただただ走って逃げた!冗談じゃないよ、ホント!
だいぶ走って逃げた先で、トボトボと路地を歩いた。色んなことに萎えていた。
絡まれるとか本当最悪。てかどこに行ったら亮に会えるの?今日も翼と一緒にいるの?デートなんかしてるの?教えてよ亮・・
萎え萎えになりながらスマホを開く。亮からLINEなどもちろんない。知ってる。確認したかったのは時間。
もう時間は大分遅かった。帰ろう・・と思った矢先。少し先の小さな居酒屋から
、スッと誰かが退店した。
背の高い金髪の男性。あの後ろ姿、あの歩き方、もしかして・・!
「亮!!!」
びっくりして振り返ったのは、やっぱり亮だった。
逃げようとした亮のそばに駆け寄って捕まえた。すごいお酒の匂いがした。こんなに飲むなんて、らしくなかった。
「今までどこ行ってたの!?何で逃げるの!?」
「・・・」
気まずそうに視線を逸らした亮。どうして?
「会いたかったよ亮」
ギュッと抱きついた僕を、亮は引き剥がした。
「・・俺は別に」
ぷいとそっぽを向くと、またすたすたと歩き出した。そんな。
「ねえ亮、どうしちゃったの?ここなら2人っきりだよ、翼を気にすることもない」
「別に気にしてねえ」
待ってよとその腕に縋りついた。雑に振り解かれた。
「帰ってくれ、邪魔だ」
「そんな・・なんで!?」
それでもめげない僕を、亮は無理矢理タクシーを捕まえて押し込んだ。
「コイツ新宿駅まで。大分酔っ払っとるんですわ。何言おうが絶対新宿駅までは連れてって下さいね。たのんますわ」
そういってタクシー運転手に数万渡し、バタンとドアを閉めた。
「亮!!!」
タクシーは走り出した。遠ざかる亮。そっぽを向いて、反対側に向かって歩き出したその寂しげな後ろ姿だけが焼きついた。
絶望的な気持ちで家に着いた。着いてしまった。
どうして・・?
翼に何か弱みでも握られてるの・・?
脅されてるとか・・?
サイコパス翼ならあり得る。
・・それなら僕に相談してくれたら良いのに。あの場に翼はいなかった。
それか翼に無理矢理押し倒されて心に傷を負ったとか・・?
でも2人の体格差を考えるとそれはありえない。それに亮は空手家だ。多少力が強いくらいの翼に押し倒されたところでどうにでもなる。
じゃあ・・もしかして・・
『亮くんて良い身体してんね。空手家の腕枕、最高だったよー♪』
翼のメッセージが頭をよぎった。どうせしょうもないハッタリのはずだと思っていたけれど・・
まさか・・あのメッセージは本当だったりする?
翼に心変わりしそうなの?亮・・
続く
77
お気に入りに追加
291
あなたにおすすめの小説

平凡顔のΩですが、何かご用でしょうか。
無糸
BL
Ωなのに顔は平凡、しかも表情の変化が乏しい俺。
そんな俺に番などできるわけ無いとそうそう諦めていたのだが、なんと超絶美系でお優しい旦那様と結婚できる事になった。
でも愛しては貰えて無いようなので、俺はこの気持ちを心に閉じ込めて置こうと思います。
___________________
異世界オメガバース、受け視点では異世界感ほとんど出ません(多分)
些細なお気持ちでも嬉しいので、感想沢山お待ちしてます。
現在体調不良により休止中 2021/9月20日
最新話更新 2022/12月27日

執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。

彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。

王冠にかける恋【完結】番外編更新中
毬谷
BL
完結済み・番外編更新中
◆
国立天風学園にはこんな噂があった。
『この学園に在籍する生徒は全員オメガである』
もちろん、根も歯もない噂だったが、学園になんら関わりのない国民たちはその噂を疑うことはなかった。
何故そんな噂が出回ったかというと、出入りの業者がこんなことを漏らしたからである。
『生徒たちは、全員首輪をしている』
◆
王制がある現代のとある国。
次期国王である第一王子・五鳳院景(ごおういんけい)も通う超エリート校・国立天風学園。
そこの生徒である笠間真加(かさままなか)は、ある日「ハル」という名前しかわからない謎の生徒と出会って……
◆
オメガバース学園もの
超ロイヤルアルファ×(比較的)普通の男子高校生オメガです。

婚約者の恋
うりぼう
BL
親が決めた婚約者に突然婚約を破棄したいと言われた。
そんな時、俺は「前世」の記憶を取り戻した!
婚約破棄?
どうぞどうぞ
それよりも魔法と剣の世界を楽しみたい!
……のになんで王子はしつこく追いかけてくるんですかね?
そんな主人公のお話。
※異世界転生
※エセファンタジー
※なんちゃって王室
※なんちゃって魔法
※婚約破棄
※婚約解消を解消
※みんなちょろい
※普通に日本食出てきます
※とんでも展開
※細かいツッコミはなしでお願いします
※勇者の料理番とほんの少しだけリンクしてます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる