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【doll#11】親友の告白
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「あお、い・・」
切長の瞳が迷いに揺れる。亮、困ってる。辞めろって言えないんだ、きっと!
それに気づいた瞬間、僕はハッと我に返った。頬がカアッと熱くなる。いや何やってんだろう、僕!
「ごめん!忘れて!」
飛び退く様に亮の上からどいた。
逃げる様にソファから離れようとした。
「!」
しかし力強い手でグイと引っ張られて引き戻される。本当ごめん!って言おうと振り返って、僕は亮に強く強く抱き締められた。
『進展』
「行くなよ葵。・・なんで逃げんだよ」
耳元で囁く声。大きな手の平が僕の頭を後ろから撫でる。
ホッとした。・・でもこれ以上甘えちゃいけないんだ。
「その、気の迷いでついやっちゃったんだけなんだ。ごめん、忘れて」
玲司と別れてやけくそで、優しい亮の方へついフラフラと・・だなんて、本当僕ってサイテーだ!自分が恥ずかしすぎて涙ぐんできた。
グスッと鼻を啜った僕に、亮がぎくりとして身体を離した。
「おい泣くなってぇ・・!俺が傷つくだろうが。そんな嫌なんか俺が」
間近に見る亮の顔に、またどきんとした。そんな切羽詰まった顔で見つめないで欲しかった。
「・・本当ごめんなさい・・」
その男前な美貌をじっと見上げた。ぽろりと一筋涙がこぼれ落ちてしまった。
亮がさらにあわあわと慌てた。
「いや謝らんでや、もう!てかな、気の迷いってなんやのん。悲しいやん・・」
滅多に使わない関西弁が、亮の戸惑いを物語っていた。
ごめん、フラフラして。
自分の気持ちに、ちゃんと蓋をしていたはずだったのに。
「・・その、笑わないでね?亮のこと、その、カッコ良いなーなんて、思っちゃった時があって。最近。
亮は頼りになるし、僕の味方でいてくれたから。・・亮が恋人だったら良かったなー、なんて・・。
あっでもこんなこと男に言われても嬉しくないよね!気の迷いなんだ全部!本当・・」
ごめんと続けて言おうとした言葉は僕の口から出ることはなかった。亮が唇で塞いだから。
「!」
手指を絡ませてギュッと握られた。強く抱きしめられて身動きが取れない。
亮、どうして?
心臓がどきどきいう音が聞こえてしまいそうだ。どうしよう・・!
ぷはとようやく離してくれた亮は破顔して言った。
「嬉しいよ、葵」
こんな亮の顔、見たことなかった。
あのいつもクールで、大会で優勝しても真顔で、あんまり多くは笑わない亮が。
「気の迷いでも俺は全然良いよ。おれ、葵がずっと好きだったから」
「・・ええ!?」
「葵は玲司に夢中だったもんな。俺の気持ちなんか、全然眼中になかったんだろ」
ううっ・・知らなかった、亮が、まさか僕に?嘘・・。だから今まで色々親身になってくれてたのかと、ようやく合点がいった。
とはいえ・・
「あの、でも・・僕、自分の気持ちに自信がないっていうか・・」
玲司に恋に落ちた時みたいに燃える様に好きかというと、そうじゃなかった。
「まだそんな好きじゃない?」
僕の手指にチュッと音を落としつつ亮は聞いた。
「えっと・・その・・」
亮への気持ちは、親友の延長線にあるほんのりした恋心チックなもの、みたいな感情だった。
好き、なんだけどふわふわしていた。
僕から亮にちょっかい出したら何故か亮から告白されて、でも自分はそこまで好きじゃないですとか、我ながら最低過ぎた。
「・・いや、良いよ。分かってるよ。お前の1番が玲司だったこと、俺はよく知ってるからさ。俺はちょこっと好きかも?みたいな感じなんだろう?
良いよ最初はそれで。玲司と別れて寂しいからって理由が大きくたって構わない。良いんだ、俺を選んでくれるなら何でも」
ギュッと僕の手を握り、亮は言う。
「俺と付き合ってよ、あお」
期待を込めた瞳で見つめられると困ってしまう。
良いんだろうか。玲司と別れてすぐ親友に乗り換えとか・・
「な?良いだろあお、絶対大事にするから・・」
「良いのかな?これ、本当に・・」
「良いって!良いに決まってる!文句言ってくる奴がいたら俺がまた蹴散らしてやるから!」
見知らぬ誰かをキックしてる亮を想像してふふっと笑ってしまった。やりかねないもんね、亮・・。
「じゃあ・・よろしく、おねがいします」
「ああ」
っしゃああやったぜ!ってその後亮の喜び様はすごいものだった。
でっかいワンコみたいだなあ。尻尾が見えるや・・なんて思っていたら、亮は僕にじゃれついてきた。
抱きついたり首周りの匂いふんふん嗅がれたりで、くすぐったかった。
やだやめてええとソファを転げ回っていたら。その時、ピンポンとチャイムが鳴った。
こんな真夜中に訪ねてくるのが、郵便な訳がなかった。
ぴたりと動きを止めた亮。無視しようとしたが、そのチャイムは何度もなった。
ピンポンピンポン!!
死ぬほど嫌そうに、立ち上がった亮。
「近所迷惑やめろって言ってくるわ。俺ん家の住所どうやって知ったんだよアイツは。あおはそこで待ってな」
嫌な予感100%は当たるのだろう。
ソファでぽつんと座って、進展を待った。
玄関でガチャリとドアが開く音が聞こえた。
「何しにきたんだよ玲司」
「葵、ここにいるんだろ」
「もう葵はお前のもんじゃないんだよ」
「・・!どけ!」
おいやめろ聞いてんのかと止める亮を無視してずかずかと玲司はリビングに入ってきた。
「・・葵、帰ろう。俺たちの家に。俺、変わるからさ、もう一度やり直そう」
続く
切長の瞳が迷いに揺れる。亮、困ってる。辞めろって言えないんだ、きっと!
それに気づいた瞬間、僕はハッと我に返った。頬がカアッと熱くなる。いや何やってんだろう、僕!
「ごめん!忘れて!」
飛び退く様に亮の上からどいた。
逃げる様にソファから離れようとした。
「!」
しかし力強い手でグイと引っ張られて引き戻される。本当ごめん!って言おうと振り返って、僕は亮に強く強く抱き締められた。
『進展』
「行くなよ葵。・・なんで逃げんだよ」
耳元で囁く声。大きな手の平が僕の頭を後ろから撫でる。
ホッとした。・・でもこれ以上甘えちゃいけないんだ。
「その、気の迷いでついやっちゃったんだけなんだ。ごめん、忘れて」
玲司と別れてやけくそで、優しい亮の方へついフラフラと・・だなんて、本当僕ってサイテーだ!自分が恥ずかしすぎて涙ぐんできた。
グスッと鼻を啜った僕に、亮がぎくりとして身体を離した。
「おい泣くなってぇ・・!俺が傷つくだろうが。そんな嫌なんか俺が」
間近に見る亮の顔に、またどきんとした。そんな切羽詰まった顔で見つめないで欲しかった。
「・・本当ごめんなさい・・」
その男前な美貌をじっと見上げた。ぽろりと一筋涙がこぼれ落ちてしまった。
亮がさらにあわあわと慌てた。
「いや謝らんでや、もう!てかな、気の迷いってなんやのん。悲しいやん・・」
滅多に使わない関西弁が、亮の戸惑いを物語っていた。
ごめん、フラフラして。
自分の気持ちに、ちゃんと蓋をしていたはずだったのに。
「・・その、笑わないでね?亮のこと、その、カッコ良いなーなんて、思っちゃった時があって。最近。
亮は頼りになるし、僕の味方でいてくれたから。・・亮が恋人だったら良かったなー、なんて・・。
あっでもこんなこと男に言われても嬉しくないよね!気の迷いなんだ全部!本当・・」
ごめんと続けて言おうとした言葉は僕の口から出ることはなかった。亮が唇で塞いだから。
「!」
手指を絡ませてギュッと握られた。強く抱きしめられて身動きが取れない。
亮、どうして?
心臓がどきどきいう音が聞こえてしまいそうだ。どうしよう・・!
ぷはとようやく離してくれた亮は破顔して言った。
「嬉しいよ、葵」
こんな亮の顔、見たことなかった。
あのいつもクールで、大会で優勝しても真顔で、あんまり多くは笑わない亮が。
「気の迷いでも俺は全然良いよ。おれ、葵がずっと好きだったから」
「・・ええ!?」
「葵は玲司に夢中だったもんな。俺の気持ちなんか、全然眼中になかったんだろ」
ううっ・・知らなかった、亮が、まさか僕に?嘘・・。だから今まで色々親身になってくれてたのかと、ようやく合点がいった。
とはいえ・・
「あの、でも・・僕、自分の気持ちに自信がないっていうか・・」
玲司に恋に落ちた時みたいに燃える様に好きかというと、そうじゃなかった。
「まだそんな好きじゃない?」
僕の手指にチュッと音を落としつつ亮は聞いた。
「えっと・・その・・」
亮への気持ちは、親友の延長線にあるほんのりした恋心チックなもの、みたいな感情だった。
好き、なんだけどふわふわしていた。
僕から亮にちょっかい出したら何故か亮から告白されて、でも自分はそこまで好きじゃないですとか、我ながら最低過ぎた。
「・・いや、良いよ。分かってるよ。お前の1番が玲司だったこと、俺はよく知ってるからさ。俺はちょこっと好きかも?みたいな感じなんだろう?
良いよ最初はそれで。玲司と別れて寂しいからって理由が大きくたって構わない。良いんだ、俺を選んでくれるなら何でも」
ギュッと僕の手を握り、亮は言う。
「俺と付き合ってよ、あお」
期待を込めた瞳で見つめられると困ってしまう。
良いんだろうか。玲司と別れてすぐ親友に乗り換えとか・・
「な?良いだろあお、絶対大事にするから・・」
「良いのかな?これ、本当に・・」
「良いって!良いに決まってる!文句言ってくる奴がいたら俺がまた蹴散らしてやるから!」
見知らぬ誰かをキックしてる亮を想像してふふっと笑ってしまった。やりかねないもんね、亮・・。
「じゃあ・・よろしく、おねがいします」
「ああ」
っしゃああやったぜ!ってその後亮の喜び様はすごいものだった。
でっかいワンコみたいだなあ。尻尾が見えるや・・なんて思っていたら、亮は僕にじゃれついてきた。
抱きついたり首周りの匂いふんふん嗅がれたりで、くすぐったかった。
やだやめてええとソファを転げ回っていたら。その時、ピンポンとチャイムが鳴った。
こんな真夜中に訪ねてくるのが、郵便な訳がなかった。
ぴたりと動きを止めた亮。無視しようとしたが、そのチャイムは何度もなった。
ピンポンピンポン!!
死ぬほど嫌そうに、立ち上がった亮。
「近所迷惑やめろって言ってくるわ。俺ん家の住所どうやって知ったんだよアイツは。あおはそこで待ってな」
嫌な予感100%は当たるのだろう。
ソファでぽつんと座って、進展を待った。
玄関でガチャリとドアが開く音が聞こえた。
「何しにきたんだよ玲司」
「葵、ここにいるんだろ」
「もう葵はお前のもんじゃないんだよ」
「・・!どけ!」
おいやめろ聞いてんのかと止める亮を無視してずかずかと玲司はリビングに入ってきた。
「・・葵、帰ろう。俺たちの家に。俺、変わるからさ、もう一度やり直そう」
続く
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