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【ヤンデレメーカー#43】アイドル失格でも構わない
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染谷さんの信じられない計画はこうだった。
『ドームの日、BREEZEを呼びだすのは空港。このまま藍さんと遠い海外に行きますねって挑発しとくんですよ。良い仲になれたんで一緒になりますって。
国外に出られたらもう2度と逢えない。
そう思えばテディくん血相変えてくるんじゃないですか?今までの様子から考えて目に浮かぶ様だ。
空港、大混乱でしょうけどね。いやあ、本当楽しみ。世紀のスクープになります。撮らせてくれたら悔いなしですね。
ま、僕の言う通りになるでしょう。直情型の若いテディくんは、この挑発を絶対無視出来ない』
それは随分自信たっぷりな言い方だった。でも染谷さんの予測って不幸なことに大体当たる。
僕は不安でゾクゾクして眠れなかった。
ドームの日までは少し日数あったけど、それはあっという間に過ぎていった。
なぜなら本当に信じられないことに、染谷さんは
僕にパスポートを無理やり準備させたからだ。
『ほ、本当に海外に連れてく気ですか!?』
『テディくんが来ないなら僕が貰うだけ。僕こう見えて藍さんのこと結構気に入ってるんですよ。
異国の地で僕のペットになるのも良いじゃないですか?』
そういって既に準備した航空券をヒラヒラと見せてきた。
唖然とした。呆然とした。
ドームの日に挑発をぶつけるだけだと思っていた。
けどこの記者、僕を本当に人質に取る気なんだ!おまけにペットって…!
テディに飼われていた時のことを思い出す。バスタブで、地下室で。あんな風に調教されてしまうのか?この人に?
ぞくりと身体が震えた。一体どんな目に遭うのか想像すらつかない。異国の地で、本当に今度こそ誰も助けになんか来ない場所で…。
ゴク、と喉が鳴る。例えばヤらせろと言われればどこでも足開いてしまう身体にされてしまうのか?
悪寒が身体中を駆け巡った。
いや、む、むりだ!そんなのイヤだ!!!
テディが来てくれなければ僕は連れて行かれてしまう。て、テディ!!!
■■■
どうかドームの日が来ませんようにという祈り虚しく、とうとう当日は来てしまった。
雷さんにとって復帰ステージになるらしいと、染谷さんが教えてくれた。
だけど今からそれを破壊しに行こうとしている僕ら…。
いま僕はミニバンに乗せられて、空港へと連れ去られている。
挑戦状はもう、送信してあるらしい…。
僕はもう、これからどうなるのか怖くてたまらなくてブルブル震えて消えてしまいそうだ。
青ざめた顔の僕。一方鼻歌まじりの染谷さん。
「な、なんでそんな機嫌良いんですか…?」
「楽しいから」
「…!っていうか、本当に業務妨害かなんかで逮捕されたり訴えられても知りませんよ!?」
あ、でもこの人スキャンダルさえ撮れれば自分の身はどうでも良い人だっけ…。うなだれた。
「まあそこら辺は大丈夫ですよ。多分逮捕はされないし」
「え…?」
顔を上げる。
「ちなみに藍さん。僕がどうしてここまでやって現時点で逮捕されたりしてないか、分かります?」
「え…警察の偉い人と友達とか?それか司法を握ってる…?え、染谷さんて本当に何なんですか…?あ、ヤクザ…!?」
車を運転しながらふふと染谷さんは笑った。
「惜しいですね藍さん。違います。
僕が弱みを握ってるのはBREEZEの事務所の社長だからです」
「え!?」
い、一体どんなスキャンダルを握ってるっていうんだ。愛人?隠し子?脱税?まさかクスリ!??
「社長ねえ、わか~い男の子の恋人いるんですよ」
「え!?」
またビックリした。あのシブキメの社長に?あっでも確かにハンサムではあるし…あり得るか…。
チラッとこっちを脇目に見て染谷さんは笑った。
「なんか純粋そうなおぼこい感じの子。んで若いって言っても、要は問題になるくらいの若さってことです。この意味分かりますね?」
!!!
「それでそのお若い恋人とくっついてる写真がついに撮れたんですよ。今まで撮れなかったんですけど。
僕ん家を出る前に『良い写真撮れた』って僕言ったでしょう?覚えてます?」
ああ…確かにそんなこと言ってた様な…。
「それで今回のBREEZEの件で、警察や裁判所動かしたらあなた達の蜜月写真を撒きますねってお伝えした訳です。
きっと社長も相当苦悩してるでしょうね。
恋人を護りたい男のサガってやつは相当厄介ですから。
まあだから僕は大丈夫です」
「はあ~…なるほど…」
僕はズルズルと車のシートをずり落ちた。
染谷さんは人を脅すことにかけて天下一品だ。そこまでしてスキャンダルを撮りたがる。狡猾な狐。地獄の門番。いやもっとなんか当てはまる言葉があるはずだ。
「あ、見えて来ましたよ空港。もうすぐですね」
死ぬほどワクワクした顔を見せた染谷さん。せっかくの端正な顔立ちはニヒリズムに歪んでいる。
その表情を見てひとつ閃いた。マモンだ。
マモンて悪魔が、確か強欲を司る悪魔だった気がする。
低俗でありながら強大な力を持つとか、そんな説明書きを昔どこかで見た気がする…。
■■■
空港のロビーに座って待つ。テレビが置いてあってワイドショーが流れている。
ああ…それにしても、どうしよう。どうしよう!?
心臓がバクバクして破裂してしまいそうだ。
どうしようテディ本当に来ちゃったら。社長になんて謝ろう。他のメンバーの皆にも。
でもテディが来てくれなかったら。僕は…。
俯いて掌をギュッと握った。ぼたりと手の甲に涙が落ちた。
「泣かないで…まあ僕と来ても後悔させませんから」
それが怖いんじゃないかと震える。ヒグ、と喉が鳴った。
「!!あ、藍さん。あれ見て!」
心底ウキウキする声に良くない知らせだと直感した。よっぽどのヤバいやつだ。同時にざわついたロビー。ぎくっとした。この雰囲気を僕は知っている。
染谷さんが指差した先。
それはテレビ画面だった。
『BREEZEテディ失踪』という見出しつきのニュース速報で…!
『ファンの皆さんへ。テディです。僕には大切な人がいます。事情があってその人がいま、居なくなってしまいそうです。僕は追いかけに行きます。その人といま会えなければ僕は一生後悔します。その人をひとりで行かせてしまった自分を生涯許せないと思います。その人がいなければ死んだ方がマシな人生です。迷惑かけてごめんなさい。ドーム当日にこんなことになって本当に申し訳ありません。ファンの皆さん、関係者の皆さま本当にごめんなさい。チケット代や掛かったお金は僕からちゃんと返します』
それはテディがついさっきSNSに発表したものだったらしい。
事務所スタッフもテディと連絡つかないらしいとか、事務所が返金対応でバタついてるらしいとか、いろんなことをキャスターがしゃべっている。
でも空間が歪んだみたいな感じで、頭に入ってこない。ヤバいことだけが分かる。
ついに動き出してしまった。
テディ…。
続く
『ドームの日、BREEZEを呼びだすのは空港。このまま藍さんと遠い海外に行きますねって挑発しとくんですよ。良い仲になれたんで一緒になりますって。
国外に出られたらもう2度と逢えない。
そう思えばテディくん血相変えてくるんじゃないですか?今までの様子から考えて目に浮かぶ様だ。
空港、大混乱でしょうけどね。いやあ、本当楽しみ。世紀のスクープになります。撮らせてくれたら悔いなしですね。
ま、僕の言う通りになるでしょう。直情型の若いテディくんは、この挑発を絶対無視出来ない』
それは随分自信たっぷりな言い方だった。でも染谷さんの予測って不幸なことに大体当たる。
僕は不安でゾクゾクして眠れなかった。
ドームの日までは少し日数あったけど、それはあっという間に過ぎていった。
なぜなら本当に信じられないことに、染谷さんは
僕にパスポートを無理やり準備させたからだ。
『ほ、本当に海外に連れてく気ですか!?』
『テディくんが来ないなら僕が貰うだけ。僕こう見えて藍さんのこと結構気に入ってるんですよ。
異国の地で僕のペットになるのも良いじゃないですか?』
そういって既に準備した航空券をヒラヒラと見せてきた。
唖然とした。呆然とした。
ドームの日に挑発をぶつけるだけだと思っていた。
けどこの記者、僕を本当に人質に取る気なんだ!おまけにペットって…!
テディに飼われていた時のことを思い出す。バスタブで、地下室で。あんな風に調教されてしまうのか?この人に?
ぞくりと身体が震えた。一体どんな目に遭うのか想像すらつかない。異国の地で、本当に今度こそ誰も助けになんか来ない場所で…。
ゴク、と喉が鳴る。例えばヤらせろと言われればどこでも足開いてしまう身体にされてしまうのか?
悪寒が身体中を駆け巡った。
いや、む、むりだ!そんなのイヤだ!!!
テディが来てくれなければ僕は連れて行かれてしまう。て、テディ!!!
■■■
どうかドームの日が来ませんようにという祈り虚しく、とうとう当日は来てしまった。
雷さんにとって復帰ステージになるらしいと、染谷さんが教えてくれた。
だけど今からそれを破壊しに行こうとしている僕ら…。
いま僕はミニバンに乗せられて、空港へと連れ去られている。
挑戦状はもう、送信してあるらしい…。
僕はもう、これからどうなるのか怖くてたまらなくてブルブル震えて消えてしまいそうだ。
青ざめた顔の僕。一方鼻歌まじりの染谷さん。
「な、なんでそんな機嫌良いんですか…?」
「楽しいから」
「…!っていうか、本当に業務妨害かなんかで逮捕されたり訴えられても知りませんよ!?」
あ、でもこの人スキャンダルさえ撮れれば自分の身はどうでも良い人だっけ…。うなだれた。
「まあそこら辺は大丈夫ですよ。多分逮捕はされないし」
「え…?」
顔を上げる。
「ちなみに藍さん。僕がどうしてここまでやって現時点で逮捕されたりしてないか、分かります?」
「え…警察の偉い人と友達とか?それか司法を握ってる…?え、染谷さんて本当に何なんですか…?あ、ヤクザ…!?」
車を運転しながらふふと染谷さんは笑った。
「惜しいですね藍さん。違います。
僕が弱みを握ってるのはBREEZEの事務所の社長だからです」
「え!?」
い、一体どんなスキャンダルを握ってるっていうんだ。愛人?隠し子?脱税?まさかクスリ!??
「社長ねえ、わか~い男の子の恋人いるんですよ」
「え!?」
またビックリした。あのシブキメの社長に?あっでも確かにハンサムではあるし…あり得るか…。
チラッとこっちを脇目に見て染谷さんは笑った。
「なんか純粋そうなおぼこい感じの子。んで若いって言っても、要は問題になるくらいの若さってことです。この意味分かりますね?」
!!!
「それでそのお若い恋人とくっついてる写真がついに撮れたんですよ。今まで撮れなかったんですけど。
僕ん家を出る前に『良い写真撮れた』って僕言ったでしょう?覚えてます?」
ああ…確かにそんなこと言ってた様な…。
「それで今回のBREEZEの件で、警察や裁判所動かしたらあなた達の蜜月写真を撒きますねってお伝えした訳です。
きっと社長も相当苦悩してるでしょうね。
恋人を護りたい男のサガってやつは相当厄介ですから。
まあだから僕は大丈夫です」
「はあ~…なるほど…」
僕はズルズルと車のシートをずり落ちた。
染谷さんは人を脅すことにかけて天下一品だ。そこまでしてスキャンダルを撮りたがる。狡猾な狐。地獄の門番。いやもっとなんか当てはまる言葉があるはずだ。
「あ、見えて来ましたよ空港。もうすぐですね」
死ぬほどワクワクした顔を見せた染谷さん。せっかくの端正な顔立ちはニヒリズムに歪んでいる。
その表情を見てひとつ閃いた。マモンだ。
マモンて悪魔が、確か強欲を司る悪魔だった気がする。
低俗でありながら強大な力を持つとか、そんな説明書きを昔どこかで見た気がする…。
■■■
空港のロビーに座って待つ。テレビが置いてあってワイドショーが流れている。
ああ…それにしても、どうしよう。どうしよう!?
心臓がバクバクして破裂してしまいそうだ。
どうしようテディ本当に来ちゃったら。社長になんて謝ろう。他のメンバーの皆にも。
でもテディが来てくれなかったら。僕は…。
俯いて掌をギュッと握った。ぼたりと手の甲に涙が落ちた。
「泣かないで…まあ僕と来ても後悔させませんから」
それが怖いんじゃないかと震える。ヒグ、と喉が鳴った。
「!!あ、藍さん。あれ見て!」
心底ウキウキする声に良くない知らせだと直感した。よっぽどのヤバいやつだ。同時にざわついたロビー。ぎくっとした。この雰囲気を僕は知っている。
染谷さんが指差した先。
それはテレビ画面だった。
『BREEZEテディ失踪』という見出しつきのニュース速報で…!
『ファンの皆さんへ。テディです。僕には大切な人がいます。事情があってその人がいま、居なくなってしまいそうです。僕は追いかけに行きます。その人といま会えなければ僕は一生後悔します。その人をひとりで行かせてしまった自分を生涯許せないと思います。その人がいなければ死んだ方がマシな人生です。迷惑かけてごめんなさい。ドーム当日にこんなことになって本当に申し訳ありません。ファンの皆さん、関係者の皆さま本当にごめんなさい。チケット代や掛かったお金は僕からちゃんと返します』
それはテディがついさっきSNSに発表したものだったらしい。
事務所スタッフもテディと連絡つかないらしいとか、事務所が返金対応でバタついてるらしいとか、いろんなことをキャスターがしゃべっている。
でも空間が歪んだみたいな感じで、頭に入ってこない。ヤバいことだけが分かる。
ついに動き出してしまった。
テディ…。
続く
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