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【ヤンデレメーカー#40-2】
しおりを挟むぞくりと戦慄した。こんなの迷惑どころじゃない。
「染谷さん!!!もう良い加減にこんなことするのは」
辞めてと言おうとしたキスで止められた。
遠慮なく唇にかみついた。
「いってえ…そうそう、それですよ。そう来なきゃ」
目の前の悪魔はペロリと唇の血を自分で舐めた。
「あのね?あとこれ見て。さっき僕らが移動中にウチの監視カメラが撮った映像。動きあったんですよ。
来たの誰だと思います?」
染谷さんは嬉しそうにニコニコしてるから、僕は嫌な予感が当たったんだと確信しながらも答えた。
「…テ、テディ…?」
「そ、正解!僕らが部屋を後して、そのものの数時間後に本当に来たみたい。
すごい執着心ですねえ。さすがです。
…監視カメラの映像、見たい?」
そんなの頷くしかないじゃないか。
地獄の深淵を覗くような気持ちで僕は画面を見つめた。
最初にぱっと写ったのは、背の高い男の首から下の姿だった。でも顔写らなくたって僕には分かる。この体格の良さ、この歩き方。
テディ。本当に来たんだ。
食い入るように画面を見つめた。
…部屋を彷徨いて、周りのスキャンダル写真を見て唖然としている様だった。
テディの顔が映ったんだけれど…。
僕が知っていたテディとは変わってしまっていた。やつれて憔悴して、知り合ったばかりの頃のはつらつとした様子はすっかり消えてしまっている。
ハラハラしてテディを見守る。録画映像ではあるけれど…。画面越しに今テディがいるような気がしたのだ。
部屋をあっちこっち見て回っていたテディだったけれど、やがてベッド上の写真に気づいた。
掛けて行って僕の写真を両手で掴んだ。一枚一枚確認する様に食い入るように見ている。やがて問題の…僕の写真に行き着いたっぽかった。
テディは目を見開いて…あらぬ予想をしてしまったのだろうか。
『あ“あ”あ“あ”あ“あ”!!!!!』
咆哮して、狂ってしまったかの様に髪を掻きむしってそのまま爪先で両頬を引っ掻いた。可哀想なテディ。せっかくの綺麗な顔立ちに赤い筋が走る。
ベッドを蹴っ飛ばし、枕を引き摺り落とし、サイドボードを渾身の力で蹴っ飛ばし、それは容易に遠くまで飛んだ。
目的もなく机上の書類だの写真だのを床に投げ捨て、荒れ果てている。
やがてクマのぬいぐるみの存在に気づいた彼は、怒りに囚われたままそのぬいぐるみのおかしさにも気づいた様だった。
クマに向かって何か叫んだ。
『…!…!!!!』
それは僕には聞き取れない外国の言葉で、テディはハーフだからきっとそっちの言葉だったのだろう。
クマは床に捨てられ、カメラにはもう何も写らなくなった。破損した様だった。
テディの最後のセリフ。僕には『殺してやる』って言っているような気がした。
いや、でもその言葉よりも。
憔悴しきったテディの怒りと地獄の果てまで行って捕まえてやるという執着に染まった顔が、僕には忘れられなかった。
心底傷ついた彼の瞳も、僕を捉えて離さなかった。
続く
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