31 / 56
【ヤンデレメーカー#31】スキャンダルの代償
しおりを挟む
続いてバシャバシャバシャ!と連写で写真を撮られた。近接のフラッシュは眩しくてとっさに目を背けた僕。
でもしっかり写ってしまったと思う。
まんまるのレンズがこっちを覗いている。いやらしくておぞましく、妙に綺麗に磨かれたそのカメラのレンズ…。
データを確認すると男は破顔して言った。
「やった撮れた。最高の写真」
呆然としていたが、僕はようやく我に返って反撃した。
「…あ、あなた何なんですか!勝手に家に入ったりして!警察呼びますからね!?」
「良いですよお。僕が逮捕されて牢屋にぶっ込まれても、このスキャンダルは死なないから」
「かっ返して!」
ベッド下からカメラを奪おうとした僕の手は、容易に跳ね除けられた。どうしよう、あんなの週刊誌に載ったら!
「あっは。やっぱり恋人のスキャンダルは嫌なんですね?」
ベッド下を覗き込む記者とやり合う。
「恋人じゃないです!」
「へえ~?じゃあただのメイドさん?男の子の。ベッド下に潜むのがお仕事?」
「ち、ちがいます!」
男の骨ばった色白の指先が挑発的に僕のほおを撫でる。
「辞めて!」
「他の男に触れられるとテディくんが怒るから?いやあ怒らせてみたいなあ」
「あなたテディに殺されますよ!?」
ニコ、と男は笑った。
「テディって言った。やっぱり直接の知り合いなんだ。知らないって白々しく言い張れば良いのに。素直なんですねえ」
くそ、と僕は唇を噛んだ。
「まあほらほら!出てきてくださいよ!そんなベッド下じゃ話も出来ない!」
僕を力ずくで引き摺り出したその男。
ジャラ、と僕の足に巻きついたチェーンを見て一瞬固まり、その意味を理解するやいなや手を叩いて喜んだ。
■■■
「それで、と。馴れ初めを教えてください?」
「……」
僕は後ろ手に拘束されてベッドに座らされている。信じられないけどあっという間に縛り上げられてしまったんだ。この記者何なんだよ!?何者だって言うんだ…。
僕の隣に機嫌良く座るその男。
「ねえねえ。メイドさん」
「……」
プイッとそっぽを向いた。当たり前だった。これ絶対レコーダーかなんかで録られてる。変なことなんかもうこれ以上言いたくなかった。
「ケチせず教えてくださいよお。男の恋人を地下で飼うなんて最高じゃないですか?
まさかあのトップアイドルが。世も末ですよねえ」
「!放っておいてくださいよ!」
記者はクスクス笑った。
「世も末なのは本当でしょう。あなたこんな逃げられない様にチェーン巻きつけられて拘束されてるんですよ?…あの子はおかしい」
「あ、あなたに何が分かるんですか!?」
ブチッと来た。テディはホントの性根の部分は悪い子じゃないんだ。誰かがテディを悪く言うのは耐えられなかった!
に、と一瞬笑った記者。
「じゃあ同意でこんなことしてるんですか?ラブラブってこと?その方が怖いんですけど」
「…!」
痛いところを突かれた。僕だって…こんなことをしたくてしてるんじゃない。逃げ出したいって僕だって思ってはいる。だけど…。
「…放っておいてください」
僕はスッと視線を逸らした。
この記者と喋っているのは苦手だ。ぱっと見は人の良さそうな顔をしていて、そのくせ何でも明け透けに心の中を覗いて何か盗んでいきそうな気がする。
「ねえねえ。だからあ馴れ初めは?あなたはテディくんのファンの1人だった?それともナンパでもされて?」
「……」
とにかく口を割らないようにしようと決めていた。寮母でとか言ったらもっとめんどくさそうだし。
それに無言を貫いていれば、いつかはテディが帰ってくるんだ。
だけどそれは記者側も分かっていたのか、向こうは別の手に打って出てきた。
「だんまりなんて卑怯ですよ?
…というかね。僕はテディ君が今日相当長いこと帰ってこないことを知っている。ということは?あなたの制裁与奪は僕が今握ってるんですよ?分かります?」
一瞬僕は怯んだ。こ、殺すとか言い出す気か…?
「あなたがいま選べる選択肢は2つです。
1、僕と一緒に来る」
「え、な…何言って…」
驚いて顔を上げる。楽しそうな記者と目が合った。
「それでね?
テディ君に挑戦状出すんですよ。恋人預かったよって。彼は必ず僕のところに恋人を取り返しにくる。もうハチャメチャにブチギレて僕のことぶん殴りに来るかも。あのトップアイドルのテディ君がですよ?
そうですね。挑発するなら大きいライブの時とか、なんかデカい仕事やってる時が良い。その仕事放り投げてきたらどうです?一連のスキャンダルだ。
アイドルが一般人に向ける偏愛。しかも男のね。僕をぶん殴ったあと君を抱きしめるテディくん。
これだ。この写真が世に出せたら僕は記者引退しても良い」
「…あ、あ、あなた…本当に何いってるんですかあ!?」
怒りで震えた。ひどい。酷すぎる。テディは激情家で、下手に挑発したらやりかねない。そんな写真が出たら本当にテディはおしまいだ。
そんな。ひどい。テディはテディなりに仕事を頑張っているのに!
睨みつける僕にアハハと笑って記者は言った。
「じゃあ2つめの選択肢」
ウグと僕は怯んだ。今度は一体どんな酷い選択肢を…。
「今ここで僕と寝る。それなら口封じされてあげましょうか」
「…!!
…あ、あなた…本当に何言って…」
そいつは震える僕の頬を両手で挟んだ。
「だって知りたいじゃないですか?トップアイドルが夢中になる男の子ってどんななのか。
顔は普通~なのにこんなに夢中になるなんて、よっぽど床上手としか思えない。じゃあありついてみよっかなって考えるのはオトコなら普通のことですよ」
「こ、この悪魔!」
「さあどっちですか?
10秒待ってあげるから自分で決めて!」
続く
でもしっかり写ってしまったと思う。
まんまるのレンズがこっちを覗いている。いやらしくておぞましく、妙に綺麗に磨かれたそのカメラのレンズ…。
データを確認すると男は破顔して言った。
「やった撮れた。最高の写真」
呆然としていたが、僕はようやく我に返って反撃した。
「…あ、あなた何なんですか!勝手に家に入ったりして!警察呼びますからね!?」
「良いですよお。僕が逮捕されて牢屋にぶっ込まれても、このスキャンダルは死なないから」
「かっ返して!」
ベッド下からカメラを奪おうとした僕の手は、容易に跳ね除けられた。どうしよう、あんなの週刊誌に載ったら!
「あっは。やっぱり恋人のスキャンダルは嫌なんですね?」
ベッド下を覗き込む記者とやり合う。
「恋人じゃないです!」
「へえ~?じゃあただのメイドさん?男の子の。ベッド下に潜むのがお仕事?」
「ち、ちがいます!」
男の骨ばった色白の指先が挑発的に僕のほおを撫でる。
「辞めて!」
「他の男に触れられるとテディくんが怒るから?いやあ怒らせてみたいなあ」
「あなたテディに殺されますよ!?」
ニコ、と男は笑った。
「テディって言った。やっぱり直接の知り合いなんだ。知らないって白々しく言い張れば良いのに。素直なんですねえ」
くそ、と僕は唇を噛んだ。
「まあほらほら!出てきてくださいよ!そんなベッド下じゃ話も出来ない!」
僕を力ずくで引き摺り出したその男。
ジャラ、と僕の足に巻きついたチェーンを見て一瞬固まり、その意味を理解するやいなや手を叩いて喜んだ。
■■■
「それで、と。馴れ初めを教えてください?」
「……」
僕は後ろ手に拘束されてベッドに座らされている。信じられないけどあっという間に縛り上げられてしまったんだ。この記者何なんだよ!?何者だって言うんだ…。
僕の隣に機嫌良く座るその男。
「ねえねえ。メイドさん」
「……」
プイッとそっぽを向いた。当たり前だった。これ絶対レコーダーかなんかで録られてる。変なことなんかもうこれ以上言いたくなかった。
「ケチせず教えてくださいよお。男の恋人を地下で飼うなんて最高じゃないですか?
まさかあのトップアイドルが。世も末ですよねえ」
「!放っておいてくださいよ!」
記者はクスクス笑った。
「世も末なのは本当でしょう。あなたこんな逃げられない様にチェーン巻きつけられて拘束されてるんですよ?…あの子はおかしい」
「あ、あなたに何が分かるんですか!?」
ブチッと来た。テディはホントの性根の部分は悪い子じゃないんだ。誰かがテディを悪く言うのは耐えられなかった!
に、と一瞬笑った記者。
「じゃあ同意でこんなことしてるんですか?ラブラブってこと?その方が怖いんですけど」
「…!」
痛いところを突かれた。僕だって…こんなことをしたくてしてるんじゃない。逃げ出したいって僕だって思ってはいる。だけど…。
「…放っておいてください」
僕はスッと視線を逸らした。
この記者と喋っているのは苦手だ。ぱっと見は人の良さそうな顔をしていて、そのくせ何でも明け透けに心の中を覗いて何か盗んでいきそうな気がする。
「ねえねえ。だからあ馴れ初めは?あなたはテディくんのファンの1人だった?それともナンパでもされて?」
「……」
とにかく口を割らないようにしようと決めていた。寮母でとか言ったらもっとめんどくさそうだし。
それに無言を貫いていれば、いつかはテディが帰ってくるんだ。
だけどそれは記者側も分かっていたのか、向こうは別の手に打って出てきた。
「だんまりなんて卑怯ですよ?
…というかね。僕はテディ君が今日相当長いこと帰ってこないことを知っている。ということは?あなたの制裁与奪は僕が今握ってるんですよ?分かります?」
一瞬僕は怯んだ。こ、殺すとか言い出す気か…?
「あなたがいま選べる選択肢は2つです。
1、僕と一緒に来る」
「え、な…何言って…」
驚いて顔を上げる。楽しそうな記者と目が合った。
「それでね?
テディ君に挑戦状出すんですよ。恋人預かったよって。彼は必ず僕のところに恋人を取り返しにくる。もうハチャメチャにブチギレて僕のことぶん殴りに来るかも。あのトップアイドルのテディ君がですよ?
そうですね。挑発するなら大きいライブの時とか、なんかデカい仕事やってる時が良い。その仕事放り投げてきたらどうです?一連のスキャンダルだ。
アイドルが一般人に向ける偏愛。しかも男のね。僕をぶん殴ったあと君を抱きしめるテディくん。
これだ。この写真が世に出せたら僕は記者引退しても良い」
「…あ、あ、あなた…本当に何いってるんですかあ!?」
怒りで震えた。ひどい。酷すぎる。テディは激情家で、下手に挑発したらやりかねない。そんな写真が出たら本当にテディはおしまいだ。
そんな。ひどい。テディはテディなりに仕事を頑張っているのに!
睨みつける僕にアハハと笑って記者は言った。
「じゃあ2つめの選択肢」
ウグと僕は怯んだ。今度は一体どんな酷い選択肢を…。
「今ここで僕と寝る。それなら口封じされてあげましょうか」
「…!!
…あ、あなた…本当に何言って…」
そいつは震える僕の頬を両手で挟んだ。
「だって知りたいじゃないですか?トップアイドルが夢中になる男の子ってどんななのか。
顔は普通~なのにこんなに夢中になるなんて、よっぽど床上手としか思えない。じゃあありついてみよっかなって考えるのはオトコなら普通のことですよ」
「こ、この悪魔!」
「さあどっちですか?
10秒待ってあげるから自分で決めて!」
続く
37
お気に入りに追加
704
あなたにおすすめの小説

頭の上に現れた数字が平凡な俺で抜いた数って冗談ですよね?
いぶぷろふぇ
BL
ある日突然頭の上に謎の数字が見えるようになったごくごく普通の高校生、佐藤栄司。何やら規則性があるらしい数字だが、その意味は分からないまま。
ところが、数字が頭上にある事にも慣れたある日、クラス替えによって隣の席になった学年一のイケメン白田慶は数字に何やら心当たりがあるようで……?
頭上の数字を発端に、普通のはずの高校生がヤンデレ達の愛に巻き込まれていく!?
「白田君!? っていうか、和真も!? 慎吾まで!? ちょ、やめて! そんな目で見つめてこないで!」
美形ヤンデレ攻め×平凡受け
※この作品は以前ぷらいべったーに載せた作品を改題・改稿したものです
※物語は高校生から始まりますが、主人公が成人する後半まで性描写はありません

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
ド平凡な俺が全員美形な四兄弟からなぜか愛され…執着されているらしい
パイ生地製作委員会
BL
それぞれ別ベクトルの執着攻め4人×平凡受け
★一言でも感想・質問嬉しいです:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion
更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です
X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる