28 / 56
【ヤンデレメーカー#28】スキャンダルの入り口
しおりを挟む
※今回は亜蓮の視点です。
藍が突然いなくなって、突然冷たいメッセージが来て、それっきり。藍は忽然とどこかへ消えてしまった。
ここのところ皆どこかおかしい。妙に怒りっぽくなったりぼんやりしたり。雷は前以上にツンケンして研ぎたての刃みたいだ。サミーは荒れていた頃の様相を呈している。
だけど唯一、なんかそんな荒れた様子があまりないのがテディだった。
「…亜蓮」
当の本人に呼ばれて振り向く。俺たちはステージ終わりで、控え室で汗が引くのを待っていたところだった。
「テディ。…おつかれさん」
それにしても相変わらずデカい奴だ。ハーフさ故の華やかさとアイドル衣装はよくよくマッチしている。俺の嫌いな男…弟そっくりの。
「他のみんなは?」
「マネージャーと別件で打ち合わせ中。どっか行った。すぐ帰ってくんじゃない」
ふ~ん、と一声。ペットボトルの水を飲み出したテディ。俺はチラ、と一瞥だけした。
コイツもなあ。藍がいなくなったばかりの頃は感極まった様子だったりしたけれど。最近は立ち直ってきたのか、新しい相手でも出来たのか。機嫌が妙に良い気がする。抑えてはいるが。
「…藍、どこにいんだろうなあ」
「さあ…出てくると良いけどね」
「お前はもう良いの?あんなに懐いてたくせに」
「…いなくなっちゃったもんはしょうがないよね…諦めも肝心」
諦めも肝心。その一言がお互いの傷をえぐっていく。
「亜蓮は?まだ引きずってるんだ。意外とロマンチスト…っていうか執着するタイプなんだね」
「…別に。俺は俺で勝手にやってるから」
執着するタイプなのはお前だろうが。藍、藍ってはたからみて引くくらいに懐いてたくせに。相手取っ替え引っ替えだったお前が。
苛立ってガタ、と立ち上がる。俺を見上げるワンコみたいに人懐っこい顔したテディ。人懐っこいやつは嫌いだ。目が合うとかわいくウインクしてきて殺しそうになる。母性をくすぐるタイプ。俺の母さんのことを思い出して打ち消した。俺を置いて、弟の方を連れて行った…。
ダメだ、とにかくコイツといると無性にイライラしてしょうがない。
「亜蓮。今日これからどうすんの?プロデューサーさんが飲みたそうにしてたよ」
「俺は帰る。これからお楽しみがあんだよ」
「あっそお?お幸せに~♪」
大きな手をひらひらさせて俺を送り出したウザいテディ。俺はチッと舌打ちを返した。
■■■
タクシーに乗っていると携帯が鳴った。
「もしもし。…店もうすぐ着く」
今日飲むのはエライ社長さん…でも新しいオンナでもない。
「あ!こっちですよお」
会員制のくそ高いバーに着く。案内されて個室で2人で会っているのは…。
「どうも♪お久しぶりです。最近張込みきつくてえ」
人の良さような笑みの塩顔のまあまあハンサムな男。染谷 翔太郎。
革張りのソファに向かい合って座る。仕事終わりに会いたい相手ではもちろんない。
「どう?最近」
「俳優さんの不倫撮れました♡」
コイツは何よりも他人のスキャンダルが大好きだ。週刊誌の記者だから。
「あっそ。まあ、俺の分は黙っとけ。な」
そう言って目の前に札束を置く。コイツみたいに感が鋭く妙に鼻が利く記者の場合、逃げ回るよりもこうやっていっそ飼い慣らす方が得策だ。
「わあ~ありがとうございます♪…じゃ、この間言ってたコレ。破って差し上げましょう」
そういってバッグから出してきたのは、俺と藍の写る写真。以前に藍が社長の車から出てくるのを見た時、焦りつい背に手を回してしまったやつ。
「これに見出しをつけるなら『アイドル失格!白昼堂々、恋人自宅に呼びつけ逢瀬!』とかだったんですけどね~」
びりびりに破かれたその写真を醒めた瞳で見下ろす。
コイツはかつて俺に言った。
『大事なのは実際に誰と何をしているかじゃない。何をしているように見えるか?ですよ。煽りの文章も含めてね』
性根が腐っている。けど週刊誌の記者をやる才能はある。そんな厄介な男。
藍を変に世間の目に晒したくなかった。
はあとため息を吐いた。ちょうど現れたウエイターに注文をする。強い酒。
しばらくして運ばれてきたグラスに口をつける。
「…まあ、うちのメンバーの分は目をつぶやってくれよ。流石にな…」
今日のところはこれで必要な話は終わった、あとは適当に好きな様に飲むだけ…と思っていたのだが。
「そういえばあ。テディくんて最近引越しました?よね?
な~んかおかしいんですよね。1人で住んでるはずなのに、出るゴミは常に2人分。前にテディくんが割と普通っぽい男の子車に乗せてるのはみたことありますけど、撮る前に途中で撒かれたんですよねえ。
まあ記者の意地で新居を見つけ出して、恒例・ゴミチェックもしましたけど。あー、怒んないで!記者っていうかファンですらやってる子いますでしょ!?
…まあそれでえ。チェックしたら出るティッシュの量がえげつなくてえ。これは記者の感なんですけどお。
テディくん、あの家に誰か男の恋人を住まわせてません?」
「何だって…?」
続く
藍が突然いなくなって、突然冷たいメッセージが来て、それっきり。藍は忽然とどこかへ消えてしまった。
ここのところ皆どこかおかしい。妙に怒りっぽくなったりぼんやりしたり。雷は前以上にツンケンして研ぎたての刃みたいだ。サミーは荒れていた頃の様相を呈している。
だけど唯一、なんかそんな荒れた様子があまりないのがテディだった。
「…亜蓮」
当の本人に呼ばれて振り向く。俺たちはステージ終わりで、控え室で汗が引くのを待っていたところだった。
「テディ。…おつかれさん」
それにしても相変わらずデカい奴だ。ハーフさ故の華やかさとアイドル衣装はよくよくマッチしている。俺の嫌いな男…弟そっくりの。
「他のみんなは?」
「マネージャーと別件で打ち合わせ中。どっか行った。すぐ帰ってくんじゃない」
ふ~ん、と一声。ペットボトルの水を飲み出したテディ。俺はチラ、と一瞥だけした。
コイツもなあ。藍がいなくなったばかりの頃は感極まった様子だったりしたけれど。最近は立ち直ってきたのか、新しい相手でも出来たのか。機嫌が妙に良い気がする。抑えてはいるが。
「…藍、どこにいんだろうなあ」
「さあ…出てくると良いけどね」
「お前はもう良いの?あんなに懐いてたくせに」
「…いなくなっちゃったもんはしょうがないよね…諦めも肝心」
諦めも肝心。その一言がお互いの傷をえぐっていく。
「亜蓮は?まだ引きずってるんだ。意外とロマンチスト…っていうか執着するタイプなんだね」
「…別に。俺は俺で勝手にやってるから」
執着するタイプなのはお前だろうが。藍、藍ってはたからみて引くくらいに懐いてたくせに。相手取っ替え引っ替えだったお前が。
苛立ってガタ、と立ち上がる。俺を見上げるワンコみたいに人懐っこい顔したテディ。人懐っこいやつは嫌いだ。目が合うとかわいくウインクしてきて殺しそうになる。母性をくすぐるタイプ。俺の母さんのことを思い出して打ち消した。俺を置いて、弟の方を連れて行った…。
ダメだ、とにかくコイツといると無性にイライラしてしょうがない。
「亜蓮。今日これからどうすんの?プロデューサーさんが飲みたそうにしてたよ」
「俺は帰る。これからお楽しみがあんだよ」
「あっそお?お幸せに~♪」
大きな手をひらひらさせて俺を送り出したウザいテディ。俺はチッと舌打ちを返した。
■■■
タクシーに乗っていると携帯が鳴った。
「もしもし。…店もうすぐ着く」
今日飲むのはエライ社長さん…でも新しいオンナでもない。
「あ!こっちですよお」
会員制のくそ高いバーに着く。案内されて個室で2人で会っているのは…。
「どうも♪お久しぶりです。最近張込みきつくてえ」
人の良さような笑みの塩顔のまあまあハンサムな男。染谷 翔太郎。
革張りのソファに向かい合って座る。仕事終わりに会いたい相手ではもちろんない。
「どう?最近」
「俳優さんの不倫撮れました♡」
コイツは何よりも他人のスキャンダルが大好きだ。週刊誌の記者だから。
「あっそ。まあ、俺の分は黙っとけ。な」
そう言って目の前に札束を置く。コイツみたいに感が鋭く妙に鼻が利く記者の場合、逃げ回るよりもこうやっていっそ飼い慣らす方が得策だ。
「わあ~ありがとうございます♪…じゃ、この間言ってたコレ。破って差し上げましょう」
そういってバッグから出してきたのは、俺と藍の写る写真。以前に藍が社長の車から出てくるのを見た時、焦りつい背に手を回してしまったやつ。
「これに見出しをつけるなら『アイドル失格!白昼堂々、恋人自宅に呼びつけ逢瀬!』とかだったんですけどね~」
びりびりに破かれたその写真を醒めた瞳で見下ろす。
コイツはかつて俺に言った。
『大事なのは実際に誰と何をしているかじゃない。何をしているように見えるか?ですよ。煽りの文章も含めてね』
性根が腐っている。けど週刊誌の記者をやる才能はある。そんな厄介な男。
藍を変に世間の目に晒したくなかった。
はあとため息を吐いた。ちょうど現れたウエイターに注文をする。強い酒。
しばらくして運ばれてきたグラスに口をつける。
「…まあ、うちのメンバーの分は目をつぶやってくれよ。流石にな…」
今日のところはこれで必要な話は終わった、あとは適当に好きな様に飲むだけ…と思っていたのだが。
「そういえばあ。テディくんて最近引越しました?よね?
な~んかおかしいんですよね。1人で住んでるはずなのに、出るゴミは常に2人分。前にテディくんが割と普通っぽい男の子車に乗せてるのはみたことありますけど、撮る前に途中で撒かれたんですよねえ。
まあ記者の意地で新居を見つけ出して、恒例・ゴミチェックもしましたけど。あー、怒んないで!記者っていうかファンですらやってる子いますでしょ!?
…まあそれでえ。チェックしたら出るティッシュの量がえげつなくてえ。これは記者の感なんですけどお。
テディくん、あの家に誰か男の恋人を住まわせてません?」
「何だって…?」
続く
26
お気に入りに追加
690
あなたにおすすめの小説
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
頭の上に現れた数字が平凡な俺で抜いた数って冗談ですよね?
いぶぷろふぇ
BL
ある日突然頭の上に謎の数字が見えるようになったごくごく普通の高校生、佐藤栄司。何やら規則性があるらしい数字だが、その意味は分からないまま。
ところが、数字が頭上にある事にも慣れたある日、クラス替えによって隣の席になった学年一のイケメン白田慶は数字に何やら心当たりがあるようで……?
頭上の数字を発端に、普通のはずの高校生がヤンデレ達の愛に巻き込まれていく!?
「白田君!? っていうか、和真も!? 慎吾まで!? ちょ、やめて! そんな目で見つめてこないで!」
美形ヤンデレ攻め×平凡受け
※この作品は以前ぷらいべったーに載せた作品を改題・改稿したものです
※物語は高校生から始まりますが、主人公が成人する後半まで性描写はありません
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる