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【ヤンデレメーカー#36】埋めました
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※雷視点→サミー視点
俺の首をぎりぎりと締め上げるテディの手。本当に容赦が無い。だけど…!
「…んの、離せよ!!!」
俺は俺でテディの手をめちゃくちゃに爪で引っ掻き、遠慮なく膝を蹴っ飛ばした。本当に容赦なくやった。
「…ってえ…雷」
「ふざけんなよ!」
おまけに一発その頬に入れてやった。唇が切れたらしく血が滲んでいる。
「!」
「正気に戻れよこの野郎!」
ギ、とテディは俺を見下ろした。
「なあ…藍はどこにいるんだよ!?どこ隠したんだよ!!」
「知らねえよ!!!俺じゃねえって言ってんだろ!!」
「信じられない」
ぐいと厚い手のひらで唇を拭ったテディ。
一気に距離を詰めて俺の胸ぐらを掴んで揺さぶった。
「!」
「雷は誰にも興味なんか持たなかったろ!オンナも男もだ!それが俺がいない間にウチに滑り込むくらい、ホントは藍を気に入ってた!
前の雷ならそんなことしない!藍もどうして全部俺に言ってくれなかった!?
俺の知らない藍がいると思うと、俺は考えただけでゾワゾワするんだ!」
「…てんめえ、落ち着けったら…!」
藍がいなくなっておかしくなってしまったんだテディは。
「雷なら他に見つかるって!藍は俺にくれよ!」
「んなことお前が決めんな!ぐ…ッ!」
息が苦しい。
次に下手なこと言ったらこの激昂した男に殺されるかもしれない。でも俺は自分の気持ちに正直でいたかった。
「俺だって…!俺だって藍が欲しい!こんな気持ちは初めてなんだ!」
それは俺が初めて自分の気持ちを曝け出した瞬間だった。
でもテディは声にならない声をあげて…
■■■
俺はどうしてもテディと雷が気になって、撮影が終わるや否やまた飛行機ですっ飛んで帰ってきた。
一応、マネージャーにはテディから連絡があったらしい。『ハメ外して飲み過ぎました、具合悪くしちゃって動けないので日を改めて事務所に謝りに行きます』って…。
でも変な違和感があった。
確かに亜蓮の言うとおり、遅刻なんかしない雷が撮影すっぽかし。ってか動けなくなる程飲むって、あのストイックな雷が…?
それにマネージャーが水でも届けるって言っても頑なに拒否らしいし。
テディはここのところ様子が何だか変だったし、
何だかどうも気がかりで様子を見に行こうと思ったのだ。
マネージャーから場所を聞いて訪れたテディの家。1人暮らしするって言って勝手に引っ越しやがった一軒家。
チャイムを押す。出ない。
「…テディ!おい!俺だよ、サミーだよ。出ろよ」
しばらくガンガンと扉を叩く。いるはずなのに、出ない。
「おい!テディ!開けないとしめ殺すぞ!!」
なんて冗談半分で言った脅し文句だったが、意外にもテディは扉を開けた。
「…サミー…」
「おっお前…すごい顔色悪いぞ。それに殴り合いの喧嘩でもしたんか?大丈夫かその顔…?」
一体何があったっていうんだ。
それに…。
雷が見当たらない。てっきりこの家で一緒にいると思ってたんだけど。
「なあ、雷は?」
「…雷なら埋めたよ」
「…!!!」
耳を疑う言葉だった。
「な、何で…」
「…雷も藍が欲しいって言うから…」
ギクッとして、ギュッと手のひらを握った。いや指先の感覚なんてまるでない。
暗い瞳だったテディだが、次の瞬間ふふと笑った。
「やだなあ。埋めたなんて嘘だよ」
「だ、だよなあ!?お前変な冗談なんか…」
「まだ埋めてない。見る?」
「…!!」
今なんて言った…?
「こっち。着いてきて」
テディが地下室へと降りていく。階段下の納戸の前で立ち止まる。
「ここ」
「雷!!!」
俺は信じられない気持ちで納戸を開けた。
瞳を閉じてグッタリと横たわる雷。相変わらず綺麗な顔をしていた。
慌てて駆け寄った。
「雷!!」
祈るような気持ちで確認した!
…息はしているし心臓も動いている…。
俺はホーッと安堵して魂が抜ける思いだった。
「…ごめん、全部嘘だよ。
藍のことで喧嘩しちゃって、その…手が出ちゃったんだ。今気絶してるだけ。
マネージャーも一緒に来てたら面倒くさいなと思って何度にとりあえず隠したんだ」
安堵ゆえだろうか。今度は俺の怒りが爆発した。
「テディ。お前なあ、やって良いことと悪いことあるだろ!!!」
胸ぐらを掴んでブチギレた俺に、テディは素直に謝った。
「ごめん!皆に迷惑かけて!!すいませんでした…謹慎でも何でもするから…」
「お前なあ、一体どうしちまったんだよ!?おかしいぞお前」
「…藍は譲れないんだよ、俺…。藍がいないのも辛くて…すまない、分かってくれ…」
それは何がなんだか分からない懺悔だったが、テディは反省はしている様だった。
テディは俺の拘束を抜け、崩れ落ちる様に雷の前に跪いた。
「…ごめん雷。さっきは酷いことして…許して」
眠る雷の額に、テディはそっとキスをした。
その薄紫色の瞳は少しだけ潤んでいる。
狂気が棲むテディの中に、確かに良心は残っている。
でもそれは一歩間違えばテディを止められなかったかもしれないと、俺は思った。
『雷なら埋めたよ。だって藍が欲しいだなんて言うから』
下手するとこのセリフはホンモノだったかもしれない。
それにしても皆、藍が欲しいんだなあ。
俺も愛憎入り混じり、誰かを埋めてしまうことがあるんだろうか。
なあ…?
荒れていた頃の血生臭い匂いが、心のどこかで香る気がした。
続く
俺の首をぎりぎりと締め上げるテディの手。本当に容赦が無い。だけど…!
「…んの、離せよ!!!」
俺は俺でテディの手をめちゃくちゃに爪で引っ掻き、遠慮なく膝を蹴っ飛ばした。本当に容赦なくやった。
「…ってえ…雷」
「ふざけんなよ!」
おまけに一発その頬に入れてやった。唇が切れたらしく血が滲んでいる。
「!」
「正気に戻れよこの野郎!」
ギ、とテディは俺を見下ろした。
「なあ…藍はどこにいるんだよ!?どこ隠したんだよ!!」
「知らねえよ!!!俺じゃねえって言ってんだろ!!」
「信じられない」
ぐいと厚い手のひらで唇を拭ったテディ。
一気に距離を詰めて俺の胸ぐらを掴んで揺さぶった。
「!」
「雷は誰にも興味なんか持たなかったろ!オンナも男もだ!それが俺がいない間にウチに滑り込むくらい、ホントは藍を気に入ってた!
前の雷ならそんなことしない!藍もどうして全部俺に言ってくれなかった!?
俺の知らない藍がいると思うと、俺は考えただけでゾワゾワするんだ!」
「…てんめえ、落ち着けったら…!」
藍がいなくなっておかしくなってしまったんだテディは。
「雷なら他に見つかるって!藍は俺にくれよ!」
「んなことお前が決めんな!ぐ…ッ!」
息が苦しい。
次に下手なこと言ったらこの激昂した男に殺されるかもしれない。でも俺は自分の気持ちに正直でいたかった。
「俺だって…!俺だって藍が欲しい!こんな気持ちは初めてなんだ!」
それは俺が初めて自分の気持ちを曝け出した瞬間だった。
でもテディは声にならない声をあげて…
■■■
俺はどうしてもテディと雷が気になって、撮影が終わるや否やまた飛行機ですっ飛んで帰ってきた。
一応、マネージャーにはテディから連絡があったらしい。『ハメ外して飲み過ぎました、具合悪くしちゃって動けないので日を改めて事務所に謝りに行きます』って…。
でも変な違和感があった。
確かに亜蓮の言うとおり、遅刻なんかしない雷が撮影すっぽかし。ってか動けなくなる程飲むって、あのストイックな雷が…?
それにマネージャーが水でも届けるって言っても頑なに拒否らしいし。
テディはここのところ様子が何だか変だったし、
何だかどうも気がかりで様子を見に行こうと思ったのだ。
マネージャーから場所を聞いて訪れたテディの家。1人暮らしするって言って勝手に引っ越しやがった一軒家。
チャイムを押す。出ない。
「…テディ!おい!俺だよ、サミーだよ。出ろよ」
しばらくガンガンと扉を叩く。いるはずなのに、出ない。
「おい!テディ!開けないとしめ殺すぞ!!」
なんて冗談半分で言った脅し文句だったが、意外にもテディは扉を開けた。
「…サミー…」
「おっお前…すごい顔色悪いぞ。それに殴り合いの喧嘩でもしたんか?大丈夫かその顔…?」
一体何があったっていうんだ。
それに…。
雷が見当たらない。てっきりこの家で一緒にいると思ってたんだけど。
「なあ、雷は?」
「…雷なら埋めたよ」
「…!!!」
耳を疑う言葉だった。
「な、何で…」
「…雷も藍が欲しいって言うから…」
ギクッとして、ギュッと手のひらを握った。いや指先の感覚なんてまるでない。
暗い瞳だったテディだが、次の瞬間ふふと笑った。
「やだなあ。埋めたなんて嘘だよ」
「だ、だよなあ!?お前変な冗談なんか…」
「まだ埋めてない。見る?」
「…!!」
今なんて言った…?
「こっち。着いてきて」
テディが地下室へと降りていく。階段下の納戸の前で立ち止まる。
「ここ」
「雷!!!」
俺は信じられない気持ちで納戸を開けた。
瞳を閉じてグッタリと横たわる雷。相変わらず綺麗な顔をしていた。
慌てて駆け寄った。
「雷!!」
祈るような気持ちで確認した!
…息はしているし心臓も動いている…。
俺はホーッと安堵して魂が抜ける思いだった。
「…ごめん、全部嘘だよ。
藍のことで喧嘩しちゃって、その…手が出ちゃったんだ。今気絶してるだけ。
マネージャーも一緒に来てたら面倒くさいなと思って何度にとりあえず隠したんだ」
安堵ゆえだろうか。今度は俺の怒りが爆発した。
「テディ。お前なあ、やって良いことと悪いことあるだろ!!!」
胸ぐらを掴んでブチギレた俺に、テディは素直に謝った。
「ごめん!皆に迷惑かけて!!すいませんでした…謹慎でも何でもするから…」
「お前なあ、一体どうしちまったんだよ!?おかしいぞお前」
「…藍は譲れないんだよ、俺…。藍がいないのも辛くて…すまない、分かってくれ…」
それは何がなんだか分からない懺悔だったが、テディは反省はしている様だった。
テディは俺の拘束を抜け、崩れ落ちる様に雷の前に跪いた。
「…ごめん雷。さっきは酷いことして…許して」
眠る雷の額に、テディはそっとキスをした。
その薄紫色の瞳は少しだけ潤んでいる。
狂気が棲むテディの中に、確かに良心は残っている。
でもそれは一歩間違えばテディを止められなかったかもしれないと、俺は思った。
『雷なら埋めたよ。だって藍が欲しいだなんて言うから』
下手するとこのセリフはホンモノだったかもしれない。
それにしても皆、藍が欲しいんだなあ。
俺も愛憎入り混じり、誰かを埋めてしまうことがあるんだろうか。
なあ…?
荒れていた頃の血生臭い匂いが、心のどこかで香る気がした。
続く
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