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【ヤンデレメーカー#34】疑心暗鬼
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※雷視点→藍視点
「…っ」
テディが重い唇を開こうとした時。
「すみません!本番までもうすぐなのでステージの方まで来てください!」
「あ、はい…!」
俺たちを呼びに来たスタッフに遮られ話はうやむやに。
だけどさっきのテディの表情でもう概ね答えは出ている。
ファンの子達には本当に申し訳ないけれど俺は心ここにあらずのステージをやってしまった。
俺はダンスの振りを何回も間違えた。こんなのあり得ない。恥ずかしくって情けなくって首でもくくっちまいたいくらいだ。
だけど俺以上にヤバかったのはテディの方だ。
ライブの最後の方。恋人を想って歌う曲の時。
突然音程を外して涙溢したんだ。
『ファンが来てくれるのが嬉しくて。皆だいすき!』
とかなんとかテディは上手いこと言って、観客席からは歓声というか共感の声が寄せられていたが。
絶対嘘だろあいつ。
まあ確かにテディは元々感受性豊かな奴ではあるけれど、あれは絶対藍を想って泣いたやつだ。俺は確信していた。
「待てよ!」
ライブ終わりにいの一番に帰ろうとしたテディを会場の裏出口んところで捕まえた。
「俺急いでるんだ」
「んなこと言ってる場合じゃないだろ!お前泣くほどヤバい状況って何なんだよ!」
「雷に話してどうなる」
「だからあ一緒に考えてやるって言ってんだよ」
「……」
テディと俺は、実態は藍を取り合う仲だ。
だけど唯一の藍との繋がりはコイツ。うまく話を聞き出さなければどうにもならない。
協力者の振りをしろ俺…。全神経を集中させて役に没頭する。
「お前ひとりで見つけられないんだろう?社長とか他のメンバーには内緒にしててやる。俺だってこれでも心配してるんだ。協力してやるから…」
「……。
分かった着いて来て…」
そのままテディの車に一緒に乗り込んだ。
外はざあざあ降りの雨が振っている。
美男の運転する暗闇の車内。無言のテディは威圧感が凄い。
こういうホラー映画に小役時代に出たことがあったとふいに思い出した。
「…ところでさあ。雷」
ふいにテディは重い口を開いた。
「何だよ」
「何で俺が藍を閉じ込めてたって知ってたの?まさか2人デキて…」
車内のミラー越しに睨まれる。映画だったら激昂したこの男にここで殺される流れだろう。
「ちげーよ。藍が突然いなくなった時にお前が1番怪しいからお前のマンションの部屋の鍵をくすねて一回だけ部屋入ったことあるんだよ。
その時に想定通り藍を見つけただけ」
「はあ!?そんなこと藍は一回も俺に…!」
「余計な心配かけたくなかったんじゃない!別に俺は…特に何も言われなかったよ。僕らこれでも仲良しですよーって…言ってた」
俺はフラれただけ。
「…ふうん、そうなんだ」
車は急カーブを曲がった後、更にスピードを出した。
一緒に連れていかれたテディの家は、まあまあ大きな一軒家だった。
これか噂の…キャッシュで買ったという家は。
驚いたのは地下室の存在。亜蓮がなんかこの前話してた気がするけど。
地下室を見渡していた俺。テディの声が背後から聞こえた。
「俺たちはここで暮らしてたんだ。2人っきりでね。
俺はちゃんと藍を閉じ込めていたはずだった…。でも家に帰ったら藍にしっかり繋いでいたはずのチェーンが切れてたんだよ。
一体どうやってだと思う?雷」
ゾク、とした。
ふと見てみれば、ベッド下に頑強なチェーンが落ちている。あれで藍を飼っていたというのか?
「俺たちは愛し合っていたはずだった。なのに逃げるなんてあり得ない。そう思うだろ?雷」
背後にぺた、ぺたと近づいてくるテディの気配を感じとる。得体の知れないヤバい気配に肌が一気に粟立つ。
「じゃあ何でいないのかって、誰かが連れ去ったんだ。そうに決まってる。
…なあ、雷。俺さあ思ったんだけど。
藍を逃したのは雷?これは自作自演?
何か俺を騙そうとしていないか」
「んな訳…っ!」
振り向いた。だけど逃げるのが一瞬遅れて俺は信じられない力で首を絞められた。動物的な恐怖心で体が震えた。
余計なところで勘の鋭いこの男。
「それに…俺のいないところで藍に関わるのは許さない!言えよ、藍は今どこにいる!」
血の滲む様なこの執着心。
藍を…藍をコイツのところに戻してはいけない。
逃げろ、藍。
■■■
「…藍さんて結構ケナゲなんですね。そんなに彼らを守りたいなんて。
その痩せ我慢もいつまで持つか…まあ、僕は楽しかったんで良いですけど。
シャワー浴びます?ドロドロにしちゃったお詫びに洗ってさしあげても良いですよ」
「……」
続く
「…っ」
テディが重い唇を開こうとした時。
「すみません!本番までもうすぐなのでステージの方まで来てください!」
「あ、はい…!」
俺たちを呼びに来たスタッフに遮られ話はうやむやに。
だけどさっきのテディの表情でもう概ね答えは出ている。
ファンの子達には本当に申し訳ないけれど俺は心ここにあらずのステージをやってしまった。
俺はダンスの振りを何回も間違えた。こんなのあり得ない。恥ずかしくって情けなくって首でもくくっちまいたいくらいだ。
だけど俺以上にヤバかったのはテディの方だ。
ライブの最後の方。恋人を想って歌う曲の時。
突然音程を外して涙溢したんだ。
『ファンが来てくれるのが嬉しくて。皆だいすき!』
とかなんとかテディは上手いこと言って、観客席からは歓声というか共感の声が寄せられていたが。
絶対嘘だろあいつ。
まあ確かにテディは元々感受性豊かな奴ではあるけれど、あれは絶対藍を想って泣いたやつだ。俺は確信していた。
「待てよ!」
ライブ終わりにいの一番に帰ろうとしたテディを会場の裏出口んところで捕まえた。
「俺急いでるんだ」
「んなこと言ってる場合じゃないだろ!お前泣くほどヤバい状況って何なんだよ!」
「雷に話してどうなる」
「だからあ一緒に考えてやるって言ってんだよ」
「……」
テディと俺は、実態は藍を取り合う仲だ。
だけど唯一の藍との繋がりはコイツ。うまく話を聞き出さなければどうにもならない。
協力者の振りをしろ俺…。全神経を集中させて役に没頭する。
「お前ひとりで見つけられないんだろう?社長とか他のメンバーには内緒にしててやる。俺だってこれでも心配してるんだ。協力してやるから…」
「……。
分かった着いて来て…」
そのままテディの車に一緒に乗り込んだ。
外はざあざあ降りの雨が振っている。
美男の運転する暗闇の車内。無言のテディは威圧感が凄い。
こういうホラー映画に小役時代に出たことがあったとふいに思い出した。
「…ところでさあ。雷」
ふいにテディは重い口を開いた。
「何だよ」
「何で俺が藍を閉じ込めてたって知ってたの?まさか2人デキて…」
車内のミラー越しに睨まれる。映画だったら激昂したこの男にここで殺される流れだろう。
「ちげーよ。藍が突然いなくなった時にお前が1番怪しいからお前のマンションの部屋の鍵をくすねて一回だけ部屋入ったことあるんだよ。
その時に想定通り藍を見つけただけ」
「はあ!?そんなこと藍は一回も俺に…!」
「余計な心配かけたくなかったんじゃない!別に俺は…特に何も言われなかったよ。僕らこれでも仲良しですよーって…言ってた」
俺はフラれただけ。
「…ふうん、そうなんだ」
車は急カーブを曲がった後、更にスピードを出した。
一緒に連れていかれたテディの家は、まあまあ大きな一軒家だった。
これか噂の…キャッシュで買ったという家は。
驚いたのは地下室の存在。亜蓮がなんかこの前話してた気がするけど。
地下室を見渡していた俺。テディの声が背後から聞こえた。
「俺たちはここで暮らしてたんだ。2人っきりでね。
俺はちゃんと藍を閉じ込めていたはずだった…。でも家に帰ったら藍にしっかり繋いでいたはずのチェーンが切れてたんだよ。
一体どうやってだと思う?雷」
ゾク、とした。
ふと見てみれば、ベッド下に頑強なチェーンが落ちている。あれで藍を飼っていたというのか?
「俺たちは愛し合っていたはずだった。なのに逃げるなんてあり得ない。そう思うだろ?雷」
背後にぺた、ぺたと近づいてくるテディの気配を感じとる。得体の知れないヤバい気配に肌が一気に粟立つ。
「じゃあ何でいないのかって、誰かが連れ去ったんだ。そうに決まってる。
…なあ、雷。俺さあ思ったんだけど。
藍を逃したのは雷?これは自作自演?
何か俺を騙そうとしていないか」
「んな訳…っ!」
振り向いた。だけど逃げるのが一瞬遅れて俺は信じられない力で首を絞められた。動物的な恐怖心で体が震えた。
余計なところで勘の鋭いこの男。
「それに…俺のいないところで藍に関わるのは許さない!言えよ、藍は今どこにいる!」
血の滲む様なこの執着心。
藍を…藍をコイツのところに戻してはいけない。
逃げろ、藍。
■■■
「…藍さんて結構ケナゲなんですね。そんなに彼らを守りたいなんて。
その痩せ我慢もいつまで持つか…まあ、僕は楽しかったんで良いですけど。
シャワー浴びます?ドロドロにしちゃったお詫びに洗ってさしあげても良いですよ」
「……」
続く
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