美形アイドル達の寮母やることになったんだけど皆ヤンデレになっちゃった件

月夜の晩に

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◆ヤンデレメーカー#25 出来損ない計画

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それからテディは本当に新しく家を探し始めたみたいだった。みたいっていうのは、僕にはそれしか分からないから。

テディが社長と電話でやり合ってる声だけたまに聞こえてくるだけで、詳しいことを教えてくれなかった。

多分新しい家なんかダメだって言われてるんだろう。テディはそれでなくても元々マンションに女の子連れ込むやんちゃなタイプだったから。

でも…。

「テディ、どう?ぼくらのお家、見つけられそう…?」
「藍は何も心配しなくて良いんだよ」
「うん…」

テディの胸に頭を預けると、彼は僕をギュッと抱きしめた。厚みのあって大きな体はぬいぐるみのクマさんみたいだけど、実態は獰猛な本物の熊みたいなもんなんだって僕はもうよく分かっている…。

「テディ、新しいお家。お願いね」
「任せておいてよ」

僕はテディを騙している。罪悪感で胸がギュッと苦しくなる。でも引越しの隙をついて逃げるという、そんなやり方じゃなければテディから逃げられないのも事実だった。そして逃げなければ僕はずっとここで飼われるままだ。


「…そういえばさ、社長。僕のことなんか言ってた?怒ってるかな…?怒ってるよね…」
「うん?まあ、すごく心配はしてたよ。急に実家帰るなんて一体どうしちゃったんだーって」

まあ、僕の携帯を勝手に使って他の人に勝手にメッセージを送っているのは他ならないテディなのだけれど。

「藍の携帯にもちょくちょく連絡くるよ。やっぱりメンバーの扱い、難しかったのかって。悩んでるなら俺に言ってこい、って。社長さあ男前だよねイケメンだしさ」

「うん…」

ふわふわと僕の頭を撫でたままテディは言う。だけど注意が必要だ。僕自身、社長は頼もしく思っているけれど、誰か他の男の人をうっかりテディの前で褒めたりすればエライ目に遭うのは明白だった。


「でさあ、社長があまりにも藍に優しいメッセージ送ってくるから俺は嫌になって、すみませんもう寮母辞めますさようなら。って送っちゃった。まあ、でも良いよね」

「え!?あ、うん…そうだね」

まあ元々辞めなきゃとは思っていたんで、それはそれで良かったのかもしれないけどさ。でもそれぐらい自分でちゃんと社長に言いたかったな。お世話になったし…。


一瞬間の空いた僕をどう思ったのか。

「藍はさあ。もしかして社長のこと、好きだったりした?」

地を這うみたいな声でテディはそう言った。

そんな訳ないでしょうよ、と僕からそっとキスをした。こうしないと機嫌が取れないのもようく分かっていたから。



テディはまるで3歳児だ。自分ひとりだけを見てくれなければイヤなんだ。ちょっとでも僕の関心がどこか別の方向に向きそうだと思えばこうして独占欲をむき出しにする。

テディ、頼むよ。僕なんかどこにでもいるただの平凡な男なんだって早く目覚めてくれよ。



■■■



それからしばらくして、僕自身諦めかけたころ。テディはめっちゃ嬉しそうな顔をしてある日帰ってきた。

「藍!社長が引越しして良いって!」
「え!?ホントに!?」


一体どうやって説得したのだろう。もしやあの社長まで脅して…?この体格でこられたら社長もウンと言わざるを得なかった、とか…?


「藍がいなくて寂しいから、この家から出て行きたいってずっと言ってたんだけど!それぐらい我慢しろ。他の子も皆ちゃんと我慢してるって言われてさ。ずっと押し問答してたんだけどお、じゃあ俺もう辞めますって言ってみたらOK出たよ」

「え!?」

アイドル辞めるって最後の切札じゃないのか…?僕ごときにそんなの使っていいの?

「もう家決めたから!ふたりで住もうねえ」

ペラ、と出してきたのは1枚の紙。それは物件のチラシだった。



ここから結構離れた場所。まあでもさすがに郊外ではないか。仕事あるもんな。

僕は間取りのある問題点に気づいた。冷や汗が背中にリアルに滲んだ。

「ね、ねえ。この物件。地下室あるんだけど…?

「そうだよ。藍をずっと独り占めするお部屋。誰にも見せたくないし。隠しときたいし。例えカーテンの隙間からでも誰にも見せたくないじゃない?まあここのバスルームじゃさすがに狭いからね。

それでね、その地下室が俺たちの愛の巣になるんだよ」


テディはにこにこ笑って言ってるけど、僕は生まれて初めて味わうホンモノの恐怖を感じていた。


テディはホンモノだ。本当に闇深い子で、僕を飼い殺す気だ。本当にうまく逃げなきゃ本当にやばいことになる。引越しを提案したのは失敗だったのか?ここにいた方が安全だった?分からない。
でももう動き出してしまったのだ。


「…っ楽しみだね」
「藍ぃ。俺も。愛してるよ。ずっと一緒だ」

ギュッと僕を抱きしめたテディ。その力が強ければ強いほど、彼の闇深さを伝えてくるようだった。






続く
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