美形アイドル達の寮母やることになったんだけど皆ヤンデレになっちゃった件

月夜の晩に

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#1ワンコ系ヤンデレ テディ

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『寮母さんバイト募集(男性のみ)賄いつき時給850円』

ある日そういうバイト募集を見かけて、貧乏フリーターだった僕は何も考えずに申し込んだ。

なんかオシャンな場所で働けるっぽかったし。
何で男性のみなんだろうなあってフワって思いはしたけど、あんまり気にはしなかった。

 
面接当日、指定の場所のビルに行ってみると、メガネかけたやたらカッコいいおじさん出てきた。

初めましてと挨拶し、その人から面接を受けることになった。一瞬まじまじと僕の顔を見られ、ちょっとドキッとした。『うわ~コイツ特徴ない顔してんなあ』とか思われてるかな、と思って。

なんて自意識過剰か。あれこれ色々聞かれた。

「まずお名前は」
「藤井 藍って言います」

「趣味は?」
「あ、えっとないです」

「アイドルのコンサートとかは?君くらいの年齢だと誰か応援してる子いたりするでしょ」
「いやー、すみません。アイドル系はあんまり知らなくて…特に推しとかいないです」

「本当に?」
「はい」

「二次元の方が好き?」
「ウッおっしゃる通り、です」


ふむ、とメガネを押したおじさん。面白みのない奴って思われたのかな。でも何でこんな質問を?

おじさんもしかしてドルオタ?アイドルトークしたかったのかな。

「じゃあ休日何してるの?」
「え。えーとYouTube流しながら来週分の晩御飯作り置きしてます」

「ふーん。家事全般どれくらい出来る?」
「家事系は何でも得意です!シミ抜きも得意ですよ。ワイシャツについたいかがわしい口紅なんかもキレイに落としますよ!」

あははと笑いを誘ったつもりがミリも笑ってくれないおじさん。

あー、これは雰囲気合わない系?面接ダメかなあ…と思っていたら。

「採用。明日から来て」

って言われてめちゃくちゃビックリした。

「え、何でですか!?嬉しいですけども」
「君なら安心だから」


どういうことだ?と思ったが。

それはなんと、僕の今後のバイト先が美形アイドルがまとめて住んでるマンションだったからだ!

『アイドルに興味なし、家事が得意、お金にそんなに興味がなく見た目は普通』という人材を探していたらしく、僕がピッタリと当てはまったということだった。

(見た目が普通ってのは、要はアイドル達と万が一にも恋愛関係にならないでねという配慮。くうう…!)

「そういう訳で、君今日からこの子達の世話よろしくね。彼ら忙しすぎて自分たちのことやる暇ないから。家事・雑用、何でも引き受けてあげて」
 
そう渡された資料を見て目を剥いた。僕ですら知っている、いや今やだれも知らない人のいないアイドルグループbreezeだったのだ!

それでただのおじさんだと思っていたこの人は、この芸能事務所の社長さんだった。
 

楽しそうなバイトに受かったな、なんてウキウキしちゃってたけど、これが後々の悲劇を産む序章だったのである…!



 
『ヤンデレメーカー』
 



訪れたマンションはあり得ない豪華なマンションだった。住み込みで働いてくれということもあり、僕も小さな一室を借りれることになっている。

早速荷物を運び入れたあと、僕は社長さんとアイドルくんに挨拶へと向かった。

「今日たまたまいるのがメンバー4人のうちの1人。テディ。ハーフの子で1番年下。人懐っこくて愛想は良いから。その子から他の子の連絡先聞いて」

聞けば年齢は僕よりも歳下。ちょっとホッとする。他のメンバーは僕よりも歳上だったから。

仲良くなれるかな?『藍さ~ん』とか呼んでくれたりして…?えへへ。


だけどテディって誰だっけメンバーの顔、うろ覚えなんだよなあ。皆ハーフっぽい顔っちゃそうだし…。

なんて思いながら長い廊下を一緒に歩いていく。
ピンポンと社長さんがインターホンを押した。
ガチャ、と出てきたのは。

「あ、社長どうも。この人が昨日言ってた人?」
「…!」

褐色肌に薄紫色の瞳。金髪。
あまりにも派手な容姿に身長も多分180はある。肩幅も広くて厚みがある。とにかくデカいイケメン、これが最初の印象だった。

間近で見下ろされると圧迫感があるくらい。
無意識に抱いていた小さくて可愛いテディベアみたいなイメージは一瞬で崩れ去った。

あまりにギャップがあるのでつい口を開けて無言で見上げてしまっていた。

「何その顔!テディですよろしく!名前は?」
「ふ、藤井 藍です…」

ニカと笑って僕を軽く抱きしめた。
チャーミングさがあってちょっと男の自分でもドキッとしてしまった。

このギャップに母性本能をやられる人、いっぱいいるんだろうなあ…。

「この人に何でも雑用、お願いして良いんですよね?」
「ああそうだ」
「やった!!!」

そう言って嬉しそうにテディ君は僕を部屋に引きずり込んだ。

***

訪れた部屋は、ザ・男の子の部屋でとっ散らかっていた。

「ねー藍、さっそく片付けお願いして良い?」

えっさっそく呼び捨てなんだ、良いけど、フーンっ…!

「も、もちろんですよ!この辺適当に片付けちゃいますね!」
「タメ語で良いよお。堅苦しいの辞めよ~?」

なんて肩を抱き寄せられた。うわ筋肉すごっ。随分フレンドリーな感じだった。お国柄?まあどこのハーフの人かは性格に当てれないけどさあ。

飲みかけのペットボトルやらお菓子のゴミなんかも袋にまとめていく。

「いや~助かる~!前は女のコにお願いしてたんだけどねー。アイドルそういうの厳しくてさあ。こんな寮みたいなとこに突っ込まれちゃったよ」
「ああ~大変、だねえ」

良いなあきっとお世話したい女の子とかわんさかいたんだろうな。僕はそんな子いなかったけど!

ポロッと女の子用の生理用品出てきて光の速さでしまった。おおい!こういうのはちゃんとしまっとけよ!!!
プチ嫉妬心が湧いたところで。

「お、藍。片付け早いねえ。へえ~そうやって収納すれば良いんだ。寮母さん、さっすがあ♪」

なんて煽てられ、僕は一気にいい気分になってしまったのである。チョロ。


 
 
その日は結局ずっとテディの部屋にいた。ソファに座ってると、ドッスとテディが隣に座ってソファが沈んだ。
ホント存在感あるなあ…。ハーフだから掘りが深い。鼻高い。アイドルってすごい…!!!

美しい横顔にドキドキしながら僕は聞いた。

「ところで他の皆は?」
「今日はねー、皆帰ってこないよ。何か地方でロケとか
撮影とか。俺はホント珍しく今日は一日オフ。…って訳でさ、スマブラでもやろーよ!」

感情表現豊かなテディ。ビッグスマイルがホントにカワイイ。ワイワイと過ごしていると楽しくて、ピザをつまみながらあっという間に時間は過ぎて行った。
 



その日の夜。そろそろ自室に帰ろうとした時。

「ねー、ところで俺さあ、1人だと夜眠れないんだよ」
「うん」

話し相手になれば良いのかな?って見通しは甘かった。

「だから俺の抱き枕になってくれない?」
「え!?」

「さあさあ。雑用何でもやってくれるんでしょ?泊まり込みの寮母さん、でしょ?」
「お、おう。そうだけど…!」

じゃあ良いじゃん!そう言ってベッドに引きずり込まれた。

後ろから抱きしめられている。大きな身体はあったかい。一方僕は変なドキドキでカッカしていた。

「藍ってさあ、なんか昔抱っこして寝てたウサちゃんのぬいぐるみに似てるなあ…」
「え、そう?」

「うん。ちょっと綿少なめでペラペラ感あって、そんでなんか落ち着くにおいだったんだよね…」

え、褒めてる?ってことで良いのかな???
まあ僕筋肉少ないからね、ペラペラはしてるんだけど!

「あのウサちゃん、親が勝手に捨てちゃったんだよなあ…ウサ太郎…こんな抱き心地の子、今までいなかった…」

ひとりごとの様にぽつぽつ何か言っている。

「藍」

テディは吸う様に僕の匂いを嗅いだ。
何かを確認するかの様に脇とか首らへんに顔突っ込んで匂いを嗅いでいく。いやすごい恥ずかしい。大型犬かよ!

「ちょっと!!テディ、辞めろって!!!」
「…ああー、俺、結構ホントに気に入ったかも…」

そして最後にともう一度大きく僕の匂いを吸った。スウウー!って。変なゾワゾワが背筋を駆け上がった!

「~~~!」
「ぶはあ、最高。
よし、今後は俺んとこ毎日抱き枕されに来てね。んで他のメンバーのベッドで添い寝禁止ね。俺だけね」

「え!?いやまあ僕と添い寝したい物好きなんてテディぐらいだろうけどさあ!?」

何だその決まりは!?

「いやー、藍はわかってないねー。アイドルには精神安定剤が不可欠ってのを。
そしてその精神安定剤はアイドル故に中々手に入らない…」


そっか、色々生活も制限されるしきっと大変なんだな。
いやでも耳元でヒソヒソ言われるとすっごい恥ずかしい。こんなの自然にやっちゃうとか、今まで何人の女の子を泣かせてきたんだろ。
一転、テディは機嫌良く言った。

「ま、もう決めたから。藍は夜24時になったら毎晩俺の部屋に来ること。良いね?」
「ええー!?いや、でも他の人から何かやって欲しいこととか頼まれるかもっ」

「ダメー。他のメンバーには俺から言っとくから。ダイジョブ!」

そういうもんなの??年功序列とかないの??風通し良い系?

「まっ今日という初顔合わせにいないのが悪いんじゃん?俺って運良いんだよね、昔から」
「うっうん…」

機嫌良く僕の手をにぎにぎしているテディ。
気に入ってくれて良かったけど、なあ…。
どうしよう、何か話決まっちゃったよ。強引だなあテディって。

「あー、もし約束破ったら皆の前で公開でヤるからね」

ゾッと背筋が凍りついた。
声だけで分かる。本気だと。
この男の子…。
そっと振り返る。

「何、言って…」

今までのカワイイ雰囲気は消え去り、1匹の雄が僕を見つめていた。

「俺のだよーって皆に教えてあげないと。
だめだよ寮母さん。俺たちの雑用がオシゴトなんだからあ。拒否権とかないんだよ。
俺以外の他の男に懐くのもダメだからね。分かった?」

そう言って僕にキスをした。
 
 



 
続く
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