大悪魔を駆使して始まる世界征服

丹波 新

文字の大きさ
上 下
48 / 52
第四章 ダークネス・カイザー様の行方

48話 お願いごと

しおりを挟む
デビルンがイビルンを制圧し、無事にダークネス・カイザー様を救出するのに成功した。
彼の意識は覚醒したが、バステトはまだお香の効果が聞いているようでぐっすりだ。

(覚醒したせいで、膝枕の時間はもうおしまいだ。ぐすん)

「――デイネブリスパピヨン!? 何故お前がこの世界に居るというのだ!!」

寝起き早々、めいっぱい目を開いて聞いてきた。

「えっと、話せば長くなるんですけど……簡潔に言うと私も契約者だからです」

「契約者……? まさかお前にも悪魔からのささやきのラインが来るのか?」

「えっと、私はラインではなくて実際に会話してしゃっべているのですが……あっ、はい、これダークネス・カイザー様の魔道具でございます」

私はそう言って、彼の持ち物であったスマートフォンを返す。

「これは……我が魔の結晶」

「ごめんなさい! 私その……ダークネス・カイザー様の個人情報を少しだけ見てしまいました! 帰ったあかつきにはどんな罰でも攻めでも耐え抜いて見せます!」

「……………………そうか、暗証番号を突破したのだな。さすがはデイネブリスパピヨンと言ったところか……」

「…………あの~~、怒らないんですか……?」

「何故起こる必要がある。我はこれを一度捨てたのだ。まさか間抜けにも我が観覧車に落としてきた。という話でもしているのではあるまいな」

「捨てたって……? どうしてそんなことを……」

「悪魔と契約してここまで来れたのであろう。ならば契約者ならわかるはずだ、我がどうしてここに来たのかを……」

「えっと食べられるため?」

「――その通りだデイネブリスパピヨンよ。我は願いを叶え、喰われるところだったのだ」

ダークネス・カイザー様は周囲を見渡していた。そして状況を察した。

「この惨状を見るにイビルンはお前の悪魔にやられてしまったようだな。さっきはこの魔の結晶を捨てたと言ったな。違うぞ、あれは我が最後にあの世界に居た証として、故意に置いて来たんだ」

「ダークネス・カイザー様には見えているんですか? あの悪魔たちが……?」

「見えるようになったのはこっちの世界に来てからだ。その口ぶりから察するにお前は人間世界でも悪魔が見えていたということか?」

「はい、ついでに幽霊たちも……」

「ほう、なるほど。それで遊園地に居たときはあんなにはしゃいでいたんだな」

「それは、その通りです(実際に力を使うのは超楽しかったわ)」

「それで! そこの悪魔よ! このデイネブリスパピヨンを食おうという腹積もりでこちらの世界に来たのか!」

突然ダークネス・カイザー様は立ち上がりデビルンと目を合わせた。

「――ちげーし! お前を助けたいって気持ちを尊重してここまで連れて来たんだぜ」

「ふむ、そうか、なるほど状況は大体把握した」

「では、そろそろバナナ遊園地へ帰りましょう皆も心配して探してくれてますし」

私も立ち上がった。

「気持ちはありがたいが、残念だ。そちらの言うことを聞けないのが悪魔と交わした取引だ。今更、契約破棄も出来んし、するつもりもない約束を守って大人しく喰われてやることにしたんだよ」

「そんな! ダークネス・カイザー様このまま人生をお仕舞いにしてしまおうというのですか!?」

「そうだ。何せ我の願いごとは無事イビルンが成就してくれたのだからな」

「願いごと……わかります世界征服ですよね! でもツイート数や遊園地の再園だけでは世界を牛耳ったとはとても言えませんよ……?」

「その口ぶりだと、黒い流れ星を見てデイネブリスパピヨンも何かお願いごとをしたようだな」

「はい……ダークネス・カイザー様はやっぱり世界征服ですよね」

「違う。我の要求した願いはそんな大それたものではない。もっとささやかなことだ」

「えっ……(意外だ。いつもいつも世界征服世界征服と言っていた先輩が違うことを願うなんて……)それは一体なんですか? お願いごと聞かせてください」

「お前の成長だ」

「えっ――私の成長?」

「そう、我とビーブリオテーカはもうすぐ卒業の時期だ。いずれはオカルト研究部から去る。だからその前に我は願ったのだ、あの黒い流れ星に――どうか後輩たちが部を存続できるようになる力をお貸しください――とな」

「たったそれだけですか? それだけの為に命を掛けたのですか」

「そうとも、後続が育たねば次に入ってくる部員たちにも申し訳が立たんだろう。だから――」

「――――――馬鹿!!」

私は思わず叫んでしまった、そのおかげで教会中に大きな声が響き渡る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

М女と三人の少年

浅野浩二
恋愛
SМ的恋愛小説。

ハンガク!

化野 雫
キャラ文芸
周りに壁を作っていた葵高二年生の僕。五月の連休明け、その僕のクラスに長身美少女で僕っ娘の『板額』が転校して来た。転校初日、ボッチの僕に、この変わった名を持つ転校生はクラス全員の前で突然『彼女にして!宣言』をした。どうやら板額は僕を知ってるらしいが、僕にはまったく心当たりがない。そんな破天荒で謎多き美少女板額が葵高にやって来た事で僕の平穏で退屈な高校生活が全く違う様相を見せ始める。これは僕とちょっと変わった彼女で紡がれる青春の物語。 感想、メッセージ等は気楽な気持ちで送って頂けると嬉しいです。 気にいって頂けたら、『お気に入り』への登録も是非お願いします。

処理中です...